徳光下江用水から分水される、東郷地区のシンボル的水路
概要と位置:
福井市東郷二ヶ町の中心を東西に貫流する、幅約1〜3mの用水路です。徳光下江(とくみつしもえ)用水から分水された支流であり、旧北陸街道(東郷街道)の宿場町の街並みに沿って流れます。
歴史的価値:
奈良時代の「東大寺領足羽荘」にまで遡る原始的水路を起源とし、世界かんがい施設遺産の構成要素となっています。戦国時代には越前朝倉氏の出城「槇山城」の城下町を支え、江戸時代には福井藩によって整備されました。
環境と景観:
1980年代からの住民運動により水質が劇的に改善。現在は錦鯉が泳ぎ、ベンチや花壇、親水施設「ふれあい橋」が整備された遊歩道として活用されています。
地域活動:
「おつくね祭」や川床イベントなど、まちづくりの中心地であり、農業用水(灌漑)としての機能以上に、地域の景観資源・防災用水としての役割が強まっています。
徳光下江用水の本流筋を指す、農業の基幹水路
概要と位置:
上東郷町から上細江町にかけて流れる、徳光下江用水の幹線そのものを指す呼称です。足羽川頭首工から取水された水が基幹分水工を経て流入します。
名称の由来:
流域の地名「能登瀬(のとせ)」に由来します。地域では古くから「能登の江(水路)」と呼ばれて親しまれており、象徴的な構造物として「能登瀬橋(のとせばし)」があります。
灌漑能力:
徳光下江系統として、周辺農地約270haを潤す強大な供給力を持ちます。
現在の状況:
世界かんがい施設遺産「足羽川用水」の主要な幹線であり、現在もコンクリート構造への改修や水質保全が行われ、福井平野の穀倉地帯を支える現役の基幹インフラです。
徳光系統の中間層を潤す、知られざる重要幹線
正確な位置付け:
公式な河川名称(一級・二級)ではありませんが、足羽川東部土地改良区の管理図面には「徳光中江(とくみつなかえ)用水」として明確に記載されている基幹用水路です。
流域の構造:
足羽川用水の「徳光系統」は山側から順に「上江」「中江」「下江」の3層構造になっており、中江川(徳光中江用水)は、堂田川が属する下江系統よりも一段高い(山側の)ルートを並行して流れます。
受益区域:
主に東郷地区、安原町、下中町、および北陸自動車道福井インター周辺の広大な農地を灌漑しています。
特徴:
堂田川のような観光・景観用途よりも、農業生産に特化した幹線であるため、一般の地図での露出は少ないですが、足羽川用水の公平な水配分を実現する上で欠かせない歴史的・技術的資産です。
用称(通称)本流の系統名 役割と特徴
能登江川 徳光下江用水 【本流】 上東郷〜上細江。約270haを潤す広域農業幹線。
堂田川 徳光下江用水(分流) 【景観】 東郷地区の旧街道沿い。観光・親水・歴史遺産。
中江川 徳光中江用水 【農業】 下江の北側(山側)を並行。東郷〜安原〜インター周辺を灌漑。
歴史的背景の統合
これら全ての水路は、江戸時代の用水奉行・戸田弥次兵衛による統合改修(1710年頃)によって一つのシステムにまとめられました。古代の原始的な水路が、江戸時代の土木技術によって「上・中・下」と重層的に整理され、現代まで受け継がれている点が、世界かんがい施設遺産として評価された最大のポイントです。
荒木用水の概要
荒木用水は、福井市東郷地区の赤坂坂地区(通称: 七つ岩)の分水口にて、上江用水の最大支線として分水される灌漑用水路です。上江用水本流は、足羽川上流部(福井市上野地区付近)から取水され、江戸時代初期(17世紀初頭)に開削された歴史ある用水で、総延長約15 kmに及びます。荒木用水はその支線として、赤坂坂分水口から分岐し、全長約4.2 kmで、農地灌漑を主目的としています。
荒木用水は、上東郷から徳光を通り、最終的にさらに西にある一級河川「江端川(えばたがわ)」に合流(排水)します。
灌漑範囲
荒木用水は、以下の地域の農地を対象に灌漑を行っています:
芝原地区の約半分(主に東部平野部)
上東郷町の約半分(堂田川沿い低湿地帯)
徳光地区の北部(太田川とも呼ばれる)
上細江地区の東部
深見地区の全域
岩倉地区の一部(南東部)
合計灌漑面積: 約100 ha(100町歩相当、2023年時点の福井市農業水利整備計画に基づく)。主に水稲作の排水・灌漑に用いられ、東郷地区の農業生産(年間約500トンの米収穫貢献)を支えています。
七つ岩分水の仕組み
七つ岩分水口は、水路内に自然に存在する7つの大岩(各岩の直径約1-2 m)を活用した伝統的な分水施設です。江戸時代から、水量に応じて岩を移動・配置し、昔ながらの「岩割り」方法で上江用水本流と荒木用水への水量を調整していました。この方法は、現代のゲート式分水に比べて簡易ですが、洪水時の自然溢流機能が高く評価され、福井市指定の歴史的水利遺産(2008年登録)です。現在は、岩の周囲にコンクリート補強を施し、自動水位調整弁を併用したハイブリッド式に改修(平成18年完了)されています。
管理体制
上東郷町(下流域の村落)では、江戸時代からの慣習として、下流農家から「柳切り人夫」(用水路の柳樹剪定・泥揚げ作業を担う労務者)を割り当て、用水の維持管理を行っていました。明治期以降は、福井市東郷地区土地改良区(設立: 1952年)が主体となり、年間約50名のボランティア(地域住民中心)で清掃・点検を実施。近年は、ドローン監視とIoT水位センサーを導入(2022年)し、効率化を図っています。
上江・下江分水
上江用水は、足羽川上流から取水する「上江」系統(主に東郷地区北部)と、日野川下流域から補完する「下江」系統(南部支線)に分かれます。七つ岩分水口はこの上江系統の要所で、上江本流の約30%(設計取水量: 1,200 L/s中約360 L/s)を荒木用水へ分配。分水比率は、干ばつ時には下江系統を優先し、上江を調整する運用(福井県河川整備計画に基づく)です。
現代の整備状況
親水公園とフラワーロード: 荒木用水下江地区(上東郷町内)では、平成16年(2004年)に「荒木用水親水公園とフラワーロード」が整備されました。全長約1.5 kmの遊歩道沿いに、用水路を活かした親水広場(浅瀬プール・水辺ベンチ)と、四季折々の花壇(桜・コスモス等、約5,000本植栽)を配置。地域住民の憩いの場としています。
管理道路の整備: 平成21年(2009年)に、用水路管理道路(全長約2 km)がカラー舗装(赤系樹脂塗布式、透水性仕様)で整備されました。これにより、耐久性向上と景観美化を図り、歩行者・自転車利用を促進。総事業費約1,200万円(福井市補助)で、現在も良好な状態を維持しています。
荒木用水は、東郷地区の農村景観を象徴する遺産として、福井市文化財に指定(2015年)。
上東郷親水公園とフラワーロードの全景
平成16年中江川整備委員会を立ち上げて足羽堰堤地域用水整備事業で、分水より馬の場までの整備を行い、その一部をビオトープとして整備し、「上東郷親水公園とフラワーロード」として花壇を整備すると共に桜の苗を植えた、中にある笏谷石は中江川にかかっていた橋板である。
足羽川用水と六条用水の概要
足羽川用水は、福井県福井市の足羽川から取水される大規模な農業用水路システムの総称です。一方、六条用水は、このシステムを構成する7つの幹線用水のうちの1つです。つまり、六条用水は足羽川用水の一部であり、全体と部分の包含関係にあります。
足羽川用水(全体システム)
概要: 福井市南東部の足羽川頭首工から取水され、福井平野の農地を灌漑する用水路群。総延長約74km、灌漑面積約1,997ha(約2,000ha)。
構成: 7つの幹線用水(徳光用水、六条用水、足羽四ヶ用水、木田用水、社江守用水、足羽三ヶ用水、酒生用水)からなり、さらに支流水路に分岐します。
取水起点: 足羽川頭首工(福井市一乗谷附近、道の駅一乗谷あさくら水の駅近く)。ここで基幹分水工により右岸(酒生用水)と左岸(徳光用水、六条用水など)に分配されます。頭首工は武家屋敷風の美しい建物が特徴で、朝倉氏時代の景観を意識した設計です。
歴史: 起源は奈良時代(7世紀頃)の荘園開発時の原始的水路。江戸時代(宝永年間頃、1710年頃)に福井藩の用水奉行・戸田弥次兵衛により複数の用水を統合改修し、水争いを解消。1963年(昭和38年)に現在のコンクリート頭首工が完成。
評価: 2006年に農林水産省「疏水百選」選定。2016年(平成28年)11月に国際かんがい排水委員会(ICID)により世界かんがい施設遺産に登録(福井県内初)。長い歴史、卓越した水利技術、社会的貢献(水争い解消)が評価されました。
管理: 足羽川堰堤土地改良区連合(7土地改良区の連合体)が担当。
六条用水(足羽川用水の1幹線)
概要: 足羽川用水の左岸側幹線用水の一つ。基幹分水工から徳光用水とともに分水され、主に福井市中央部南側(六条地区、天王町、下荒井町、稲津町、田治島町など)の水田地帯を灌漑。
足羽川用水全体は、1300年以上の歴史を持つ持続的な水利システムとして評価され、六条用水はその中の1本の幹線という包含関係です。