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Supported by GTIE
※本記事は、無機材会会報(2026)に掲載されたものです。
「磯部さん、ちょっと見てほしいセラミックスがあるんですが……」。
そう切り出したのは、クリエイティブディレクターの 甲賀ゆうこ氏と、本学の安井伸太郎先生でした。お二人が持ってきたのは、精巧に作られた陶磁器製の緑色のボタンです。形状はスーツのボタンと同じで、表側の縁はわずかに盛り上がり、裏面は中心からテーパー状に削られています。中央には、糸を通すための小さな貫通穴が四つ、きれいに仕上げられていました。
「どうやって作ったと思いますか?」
「うーん・・・」
私は答えることができませんでした。プレス成形、鋳込み成形、射出成形……。円盤状の成形自体は問題ないとしても、四つの穴をどうやって開けたのか。どの方法を考えても、焼成時の収縮によって割れてしまうことは容易に想像できました。
この日をきっかけに、奇妙ともいえる研究プロジェクトが始まりました。甲賀氏のフィールドワークにより、このボタンが戦時中に作られたものであること、製造方法が意図的に隠されたこと、そして現在では誰も再現できない技術であることが、次々と明らかになっていきました。そうして集った三人の思いは、自然と一つに収束していきます。
「⋯⋯再現したい!」
成形方法の検討、スラリーの調製、そして最大の難関である四つ穴の形成。
ようやく完成が見えてきたそのとき、さらに大きな課題が持ち込まれました。
― トシカネ ―
それは、わずか二センチほどの大きさの陶磁器でありながら、驚くほど精緻な造形と絵付けが施された作品群でした。動物、草花、富士山、能面、七福神――。深川製磁の小島俊一氏と、有田焼の絵付師・南兼蔵氏が手がけたそれらの作品は、現代の3Dプリンタでも再現できないほどの圧倒的な解像度を誇っていました。
その美しさから「ポーセリンジュエリー(磁器の宝石)」と呼ばれるこれらの作品に魅了される一方で、大先輩たちの技術を超えてみたいという技術者としての思いに突き動かされ、成形方法の研究が本格的に始まりました。そして、Greater Tokyo Innovation Ecosystem(GTIE)の支援を受け、トシカネジュエリーに決して引けを取らない成形技術の確立に成功したのです。
さて、以上はあくまで私の立場からの話。甲賀氏の奮闘記は、ぜひウェブサイトをご覧ください。そして、挑戦の結晶は、ついに販売へ……!?
甲賀ゆうこ氏の手記(セラミックボタン編):https://www.missinglink.jp/project/ceramicbutton
甲賀ゆうこ氏の手記(ポーセリンジュエリー編):https://www.missinglink.jp/project/toshikane
図1. 小学校の新築工事中に偶然発見されたセラミックボタン。(Missinglink.jpより引用。)
図2.トシカネジュエリー。2019年には全国のコレクターさんたちのご厚意を受け、渋谷で展示会を主催しました。(Missinglink.jpより引用。)
図3. プロジェクトで作製したポーセリンジュエリーのプロトタイプ。
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