ロータ系には,インペラやインデューサ,シールなどの流体作動部品があり,また,振動低減のためにすべり軸受やスクイズフィルムダンパ軸受で支持されます.本研究室では,それらの流体力を考慮したロータ系のモデル化と振動解析を行っています.また,磁気軸受で支持されたロータ系の振動解析や軌道制御も行っています.特に,流体力や電磁力はロータの位置や速度の非線形関数となるため,非線形モデリングや非線形性を考慮した振動解析に力を入れています.そして,従来知られている解析手法や成果をさらに一歩押し広げることに挑戦しています.
Keyword: Coupled system, Rotor system, Fluid Structure Interaction, Thermal Structure Interaction, Electro-magnetic Structure Interaction, Numerical simulation, Nonlinear theoretical analysis, Stability analysis
H2A,H3ロケットは日本独自技術(純国産ロケット)です.(写真はH2AロケットのLE-7メインエンジン)ロケットの中で唯一動く機械がエンジンのターボポンプです.ロケットのターボポンプは構造と流体,熱(極低温部と高温部が存在)が複雑に絡み合うマルチフィジックス系です.本研究室ではそのような連成系の高精度なモデル化とダイナミクス解析手法の開発を目指しています.
円弧バネ型油膜ダンパ軸受のFSI解析
(2021 社会人博士テーマ)
左の動画は,航空機エンジン等に用いる円弧バネ型油膜ダンパ軸受です.構造を工夫し,省スペースで減衰性能を得ることを目指し,流体構造連成(FSI)解析を実施しています.
本研究室ではこれらのように,連成系のモデル化とそのダイナミクスの解析を行っています.
ロケットエンジンのターボポンプの最上流部のインデューサでは,旋回キャビテーション現象は大きな問題となりました.本研究では,インデューサ翼間流路モデルを用い,インデューサ部の流体のダイナミクスを2D翼間流路モデルと1D3流路パイプモデル,軸振動との連成モデルを構築し,旋回キャビテーションから非対称付着キャビテーションへの遷移現象の説明を行いました
ロケットエンジンのターボポンプは吐出圧力が高いため,軸方向荷重を軸受のみでは支持できません.そのため,バランスピストン(BP)と呼ばれる“流体ばね”機構を用いて軸スラストを自律調整します.このBPは静的には安定(正の復元力が作用)な特性ですが,作動流体の圧縮性により動的には不安定(減衰力の作用が速度と同方向)となり自励振動を起こす場合があります.本研究では,シミュレーションと実験の両面からBPの動特性の解明と提案を行っています.
本研究室では,任意の形状の回転軸・ディスク系が玉軸受(ばねダンパモデル),すべり軸受(レイノルズ方程式の有限幅モデル)で支持されている場合の固有値解析,周波数応答解析,静たわみを解析する汎用ソフトウェアを開発している.複数部品の組み立ても表現でき,RD流体力(MCKモデル)の組み込みも可能です.曲げ振動に加えて,ねじり振動の解析へ拡張を行っています.
終了・一区切りした過去のテーマ
ターボチャージャーは排気を利用してエンジンに高圧の空気を供給することで,エンジンの出力向上や高効率化を図る,主に自動車に用いられている装置です.このターボチャージャーの軸は,毎分20万回転という非常に高速で回転しているため,一般にすべり軸受によって支持されています.しかしながら,すべり軸受で発生する油膜力が原因となって,自励振動が発生してしまう問題があります.ターボチャージャーで激しい振動が発生すると騒音や不快感,さらには故障の原因となってしまうため,油膜力及び軸振動の詳細な解析により自励振動発生のメカニズムを明らかにすることが強く求められています.本研究では,一般的にターボチャージャーに用いられているセミフロート軸受とフルフロート軸受の2種類の単純化モデルを作成し,シミュレーションを実施しました.そして,解析結果を比較することで,従来明確にされてこなかった,セミフロート軸受とフルフロート軸受それぞれの特徴の違いを調査しました.今後は構築した解析コードを用いて,自励振動発生のメカニズムの解明および制振手法の提案を行うことを目指しています.
磁気浮上技術は非接触での物体保持力という特徴から近年実用化が進められています.磁気浮上技術を軸受に応用した磁気軸受は,その優れた特徴からかつては“夢の軸受”とも呼ばれ,これまで性能向上に関する多くの研究が行われてきました.また,磁気軸受には上記の軸受としての機能の他に,アクチュエータとしての機能も期待されています.一方,回転機械の不安定振動の発生要因としてロータダイナミック(RD)流体力が挙げられます.RD流体力に関しての研究は多く存在するものの,その殆どはロータがステータと同心円軌道で振れ回る場合に限られています.しかし実際の回転機械では静的偏心がある場合や,振れまわり軌道が楕円になる場合が考えられ,そのような際のRD流体力の特性を計測するための技術が求められています.本研究では磁気軸受のアクチュエータとしての機能を応用した任意形状の振れ回り軌道におけるRD流体力の計測を目指し,高精度な回転軸の軌道追従が可能な制御系設計および実験による有効性の検証を行っています.