機械構造物には一度運転を開始すると長期間運転をし続けるものが多くあります.その種の機械では一般に定期的に機械を止めて検査するが,その頻度が多いとコストが大きくなり,少ないと機械の故障や異常を初期に発見できません.また,このような故障や異常に伴う事故は,一度起きてしまうと多大な費用が発生します.また,生活基盤を支える電力供給や交通にまで影響し,社会的な問題にもなります.このような背景から,振動信号を用いた状態監視保全,予知保全のためのモニタリングと診断技術手法の開発を行っています. 最近は,数理モデルの手法,電流やAE(アコースティックエミッション)との総合診断にも着手しています.
Keyword: Condition monitoring and Diagnosis of Machine system, Prognosis, Vibration, Motor current, Bearing, Gear, Ball screw, Wear, Crack, Model-based method, Data driven method, Full Operational modal analysis (OMA)
振れ回り振動を与えることで深溝玉軸受の正常状態から初期損傷が発生するまでの時間を早めるための故障促進実験を行った.軸受の損傷を切断分解検査により確認した.これにより外輪転送面に転動体ピッチ間隔に損傷が発生していることを確認した.また振れ回り周波数ごとに損傷度合いに違いが見られた.またその際の損傷原因となる油膜破断現象のメカニズムを捉えるため,粒子法解析と画像処理を用いた油膜厚さ評価を行った.
ふれ回り方向を分離した擬似FRFを作成する新しいOMA手法(フルOMA)を構築しました.長江らの提案した相関関数を用いる方法を拡張し,x,y2方向の振動時刻歴の自己相関関数と相互相関関数のFFTを用い,ふれ回り方向を分離した擬似フルFRFを始めて作成した.シミュレーションと実験データにフルOMAを適用し,擬似フルFRFが作成できることを確認した.そして,擬似フルFRFから振動モード特性をフィッティングにより推定し,振れ回り方向を特定しつつ,そのモードの減衰比の変化から系の不安定化速度を予測し,フルOMAの有用性を示した.
すべり軸受の摩耗診断を行うための数理モデルを構築し,構築したモデル用いたシミュレーションによる振動データの取得,そのデータを用いた機械学習モデルの作成により摩耗診断性能を検証した.そして作成したSVMモデルについて解釈も行い,予測に重要な特徴量を調べた.さらに,実際の試験装置で軸受の実験データを取得し,構築した数理モデルと機械学習モデルの妥当性について検討した.
エンコーダ信号を用いたボールねじアクチュエータの状態監視技術の開発を目的として,アクチュエータの特性を把握するための実験と駆動データの収集,得られたデータの解析を行った.実データから作成された特徴量を定量評価し,状態監視に有効なものを特定した(D&D2024).
終了・一区切りした過去のテーマ
磁気軸受をアクチュエータとしたアクティブな振動診断法を提案しています.クラックを有するロータ系の有限要素モデルの構築を行い,その解析手法を検討してきました.そして,その解析結果を用い,高精度なクラック検出の実現を目指しています.また,軸受の支持剛性に方向差がある場合について,周波数伝達関数の構築も行っています.さらには,亀裂の進展の度合いや位置・深さを推定する診断手法の開発を目指して研究を進めていきます.