マルチボディ/ 非線形ダイナミクスの解析

マルチボディ理論を用いたロータダイナミクス解析

最近の機械力学で最も活発に研究されている分野の1つはマルチボディダイナミクスです.本研究では,例えば船や飛行機のように基礎が大きく運動する場合のロータダイナミクスを調べます.これらは従来モデルでは解析が難しいため,マルチボディ理論を用いたロータ系のモデリング,解析手法,その特性の解明を行います.

糸の解舒挙動の柔軟マルチボディモデリングと数値解析

糸の加工工程高速化のニーズは近年益々大きくなっており,高速化に向けた機械の開発が求められています.従来の糸加工工程の高速化は,実験や空気の数値流体解析から糸の挙動の概要を間接的に推測し,部品改良を行ってきました.しかし,最近ではその方法は限界に達しつつあります.それは糸と部品間の相互作用が強くなり,糸の品質を保つことが困難になってきているためです.そのため,糸の挙動や力学特性を詳細に把握して,工程の高速化と糸の品質を直接関連付ける手法の確立が強く望まれています.特に“解舒:かいじょ”と呼ばれるボビンから糸を解く工程は糸の品質に大きく影響します.本研究では,糸をマルチボディダイナミクスの考えに基づいてモデル化し,解舒時の運動のシミュレーションを行うことで糸の力学特性を明らかにすることを目的としています.

拡張バルクフロー理論によるロータダイナミック流体力解析

ターボ機械要素の1つに“シール”と呼ばれる流体漏れを抑制するための機械要素があります.シール部に作用するロータダイナミック(RD)流体力は,近年高速・高圧化が進むターボ機械の軸振動問題の要因の1つとして挙げられます.バルクフロー理論はRD流体力の解析手法であり,従来より回転機械の設計にも多用されてきました.最近では数値流体解析(CFD)の発達により高精度な解析が可能となり,設計の現場で用いられることも多くなっています.しかしCFDには,計算コストが大きい,メッシュ生成の制限などにより複雑な振れ回り軌道を対象とすることが困難である,などの難点も依然としてあります.そこで本研究ではバルクフロー理論に再度着目し,解析範囲の拡張や新たな考え方の構築による汎用性の向上を目指しています.これまでに,より実機の運転条件に沿った大振幅や静的偏心を有する場合の動特性解析を達成しました.

ジャーナル軸受で支持されたロータ系の非線形解析

ジャーナル軸受は軸と軸受の間に存在する油膜の反力で回転軸を支持する軸受です.油膜の潤滑作用により非接触で軸を支持するため減衰特性,耐衝撃性,耐摩耗性に優れ,蒸気タービンやターボチャージャーロータなど様々な回転機械で用いられています.従来,ジャーナル軸受の油膜反力は線形モデルで表現され,軸振動解析に用いられてきました.しかし,安定域で回転しているロータが小さな衝撃により大振幅振動を引き起こす現象が報告されています.この現象はジャーナル軸受の油膜反力が持つ非線形性に起因して発生する分岐によるものであり,このメカニズムを解明し,その分岐特性も設計に考慮することは回転機械の安全性を検討・改善するうえでは非常に重要です.本研究では,有限幅ジャーナル軸受・弾性ロータ系の分岐現象に着目した非線形解析を行いました.そして,系のパラメータが分岐特性に及ぼす影響を明らかにしました.

ジャーナル軸受のモートン効果による振動解析とモデル化

近年のターボ機械に求められる気体の圧力比の仕様は,より高性能である製品設計を実現するために高くなっています.圧力比の増大させるためには,ロータを高速に回転させる必要がありますが,ロータの高速回転に伴い,様々な振動が発生し,安定な回転動作に悪影響を与える可能性があります.その一つにジャーナル軸受を用いたロータ系においては,軸受内部の温度不均衡によって振動が発生するモートン効果と呼ばれる現象が挙げられます.本研究室では,モートン効果による振動現象を実験的に検証するため,モートン効果による振動現象を再現可能な実験装置を開発しました.本実験装置では,剛体ロータをジャーナル軸受で支持しており,回転中のロータの位置と軸受部の温度を非接触型センサで測定することで,モートン効果に起因して生じる振動現象を再現できます.そして,実験結果を元に,モートン効果に起因する振動現象を解析できるモデルを作成し,ジャーナル軸受を用いた各種ロータ系の設計への援用を目指して研究を行っています.