ロータ系には,インペラやインデューサ,シールなどの流体作動部品があり,また,振動低減のためにすべり軸受やスクイズフィルムダンパ軸受で支持されます.本研究室では,それらの流体力を考慮したロータ系のモデル化と振動解析を行っています.また,磁気軸受で支持されたロータ系の振動解析や軌道制御も行っています.特に,流体力や電磁力はロータの位置や速度の非線形関数となるため,非線形モデリングや非線形性を考慮した振動解析に力を入れています.そして,従来知られている解析手法や成果をさらに一歩押し広げることに挑戦しています.
H2A,H3ロケットは日本独自技術(純国産ロケット)です.ロケットの中で唯一動く機械がエンジンのターボポンプです.ロケットのターボポンプはインデューサ,インペラ,タービン,シール部などで構造と流体,熱(極低温部と高温部が存在)が複雑に絡み合うマルチフィジックス系です.本研究室ではそのような連成系の高精度なモデル化とダイナミクス解析手法の開発を目指しています.現在,日本の宇宙スタートアップは100社以上と推定され,世界的にはロケットのハイパワー化の傾向の中で,今後このような高精度振動解析・予測技術へのニーズはさらに高まっていくでしょう. (update 2026/01)
ロケットエンジンのターボポンプの最上流部のインデューサでは,旋回キャビテーション現象は大きな問題となりました.本研究では,インデューサ翼間流路モデルを用い,インデューサ部の流体のダイナミクスを2D翼間流路モデルと1D3流路パイプモデル,軸振動との連成モデルを構築し,旋回キャビテーションから非対称付着キャビテーションへの遷移現象の説明を行いました.今後,ターボポンプのフルモデルとのFSI解析を進めようとしており,この旋回キャビテーションとの連成も組み込んでいきます.(2023 JVET)(update 2026/01)
ロケットエンジンに用いられるターボポンプは吐出圧力が高く軸方向に発生する荷重を軸受のみで支持することができません.そのため,バランスピストン(BP)と呼ばれる機構を用いて軸スラストを自律調整します.BPはインペラ背部に搭載されており,ポンプ内部を循環する流れを利用した“流体ばね”のようなものです.静的には安定(正の復元力が作用)な特性を持ちますが,作動流体の圧縮性により動的に不安定(減衰力の作用が速度と同方向)となり自励振動を起こす場合があります.そのため,信頼性の高いターボポンプ設計のために,静特性だけでなく動特性ついても十分に評価する必要があります.本研究では,シミュレーションと実験の両面からBPの動特性の解明を行っており,その制振技術も研究を進めています.(JSME MEJ 2023) (2026/01)
ターボチャージャーは排気を利用してエンジンに高圧の空気を供給することでエンジンの出力向上や高効率化を図る装置で,主に自動車に用いられています.毎分20万回転という非常に高速で回転しているため,一般にすべり軸受によって支持されています.しかしながら,すべり軸受で発生する油膜力が原因となって,自励振動が発生してしまう問題があります.ターボチャージャーで振動が発生すると騒音や不快感,さらには故障の原因となってしまうため,油膜力及び軸振動の詳細な解析により自励振動発生のメカニズムを明らかにすることが強く求められています.本研究では,一般的にターボチャージャーに用いられているセミフロート軸受とフルフロート軸受の2種類の単純化モデルを作成し,解析を行い,セミフロート軸受とフルフロート軸受それぞれの特徴の違いを調査しました.現在は,解析技術の高度化により,大域的な周波数応答の効率的な解析,自励振動を含めた非線形解析,自励振動発生のメカニズムの解明を進めています. (2026/01)
ターボ機械要素の1つに“シール”と呼ばれる流体漏れを抑制するための機械要素があります.シール部に作用するロータダイナミック(RD)流体力は,近年高速・高圧化が進むターボ機械の軸振動問題の要因の1つとして挙げられます.バルクフロー理論はRD流体力の解析手法であり,従来より回転機械の設計にも多用されてきました.最近では数値流体解析(CFD)の発達により高精度な解析が可能となり,設計の現場で用いられることも多くなっています.しかしCFDには,計算コストが大きい,メッシュ生成の制限などにより複雑な振れ回り軌道を対象とすることが困難である,などの難点も依然としてあります.そこで本研究ではCFDとバルクフロー理論を両面で扱い,高精度,高効率な解析手法の構築を実施しています.(ASME JCND 2022)(update 2026/01)
ジャーナル軸受は回転軸と軸受の間に存在する液膜のくさび効果を利用して回転軸を支持する軸受です.減衰特性,耐衝撃性,耐摩耗性に優れ,蒸気タービンやターボチャージャーロータなど様々な回転機械で用いられています.従来,ジャーナル軸受の油膜反力は線形モデルで表現され,軸振動解析に用いられてきました.本研究では,スターブ状態(給油量が不十分な状態)におけるジャーナル軸受・弾性ロータ系の非線形解析手法の構築を達成し,系のパラメータが分岐特性に及ぼす影響を明らかにしました.今後はティルティングパッドジャーナル軸受の解析に発展していきます.(ASME JGP2026)(JSV 2025) (2026/01)
近年のターボ機械に求められる気体の圧力比の仕様は,より高性能である製品設計を実現するために高くなっています.圧力比の増大させるためには,ロータを高速に回転させる必要がありますが,ロータの高速回転に伴い,様々な振動が発生し,安定な回転動作に悪影響を与える可能性があります.その一つにジャーナル軸受を用いたロータ系においては,軸受内部の温度不均衡によって振動が発生するモートン効果と呼ばれる現象が挙げられます.本研究では,モートン効果による振動現象を再現可能な実験装置を開発しました.剛体ロータをジャーナル軸受で支持しており,モートン効果に起因して生じる振動現象を再現できます.そして,THL解析モデルを構築し,結果の検証を行いました.今後はティルティングパッドジャーナル軸受の解析に発展させていきます.(JSME 2023 日本語)(2026/01)
本研究室では,任意の形状の回転軸・ディスク系が玉軸受(ばねダンパモデル),すべり軸受(レイノルズ方程式の有限幅モデル)で支持されている場合の固有値解析,周波数応答解析,静たわみを解析する汎用ソフトウェアを開発している.複数部品の組み立ても表現でき,RD流体力(MCKモデル)の組み込みも可能です.曲げ振動に加えて,ねじり振動の解析へ拡張を行っています.
最近の機械力学で最も活発に研究されている分野の1つはマルチボディダイナミクスです.本研究では,例えば船や飛行機のように基礎が大きく運動する場合のロータダイナミクスを調べます.これらは従来モデルでは解析が難しいため,マルチボディ理論を用いたロータ系のモデリング,解析手法,その特性の解明を行います.
幾何学的に厳密なはり理論を用いたはり構造物の柔軟マルチボディモデルに対し,周期運動を効率的に解く解析手法を構築した.手法としては,HB-AFT手法を用い,はり構造の回転慣性とジャイロ項について考慮する拡張を行った.そして,その解析結果の精度および計算効率の向上を確認した.(JSV2025, JVET2025)(update 2026/01)
糸の加工工程高速化のニーズは近年益々大きくなっており,高速化に向けた機械の開発が求められています.従来の糸加工工程の高速化は,実験や空気の数値流体解析から糸の挙動の概要を間接的に推測し,部品改良を行ってきました.しかし,最近ではその方法は限界に達しつつあります.それは糸と部品間の相互作用が強くなり,糸の品質を保つことが困難になってきているためです.そのため,糸の挙動や力学特性を詳細に把握して,工程の高速化と糸の品質を直接関連付ける手法の確立が強く望まれています.特に“解舒:かいじょ”と呼ばれるボビンから糸を解く工程は糸の品質に大きく影響します.本研究では,糸をマルチボディダイナミクスの考えに基づいてモデル化し,解舒時の運動のシミュレーションを行うことで糸の力学特性を明らかにすることを目的としています. (JSME2018日本語)
従来のロボット眼球は複数のモータとリンクを組み合わせた機構で構成されています。しかし,人の眼球と同じサイズで同等の運動性能を有するロボット眼球の実現のためには多自由度駆動機構の簡素化と小球体積内への集約が課題となります。
そこで,1台で多自由度駆動可能な多自由度アクチュエータに着目し,ロボット眼球のための新しいアクチュエータを提案しています。
従来の多自由度アクチュエータは1台で多自由度運動を生成可能な一方で,コイル数や駆動回路の最小化に課題が残されていました。そこで,4個の磁石と4コイルを3次元的に配置し,それぞれで発生する電磁力を合成することで3自由度回転を実現するアクチュエータを提案しています。4コイルを中性点で繋ぎ,4相ハーフブリッジにより駆動することで駆動回路の簡素化も可能です。
メタバースの触覚をはじめとして携帯可能な小型力覚提示デバイスが注目されています。従来のアクチュエータを用いて様々な方向に力を提示するためには,複数のアクチュエータを組み合わせる必要があります。そのため,サイズの大型化・重量の増加,振動中心のずれが課題となり,機構の簡素化と集約が必要でした。そこで1台で空間上の任意方向に力覚提示可能な新しいアクチュエータを提案しています。
3次元振動モータ
高推力型3次元振動モータ
指輪型3次元振動モータ
指先装着型3次元振動モータ
空圧アクチュエータは体積あたりの出力密度が大きく,空気の圧縮性による柔軟性を持つため,協働ロボットの駆動源としての活用が期待されています.
従来の空圧アクチュエータは直線往復運動のエアシリンダと,回転運動のベーンモータに代表され,1自由度運動のみ生成しています.しかし,これらを用いて多自由度運動を生み出す場合,複数の1自由度アクチュエータが必要であるためロボットが大型であり,狭小空間で活用できないという課題があります.
そこで,1自由度モータの組み合わせによる多自由度機構ではなく,1台で多自由度駆動可能な新たな2自由度球面空圧アクチュエータを提案しています.
MRI・CT 画像を見ながら術者が病変に針を刺すのみで肝・腎・肺などのがん治療や病変採取等を行う画像下治療が注目されています.しかし,MRI・CT 内は狭小空間である上,撮像面に金属が存在するとアーチファクトが発生し画像診断が困難になるという問題があります.
そこで,手術室外から遠隔操作する非金属性手術支援ロボットが開発されています.現在,針の姿勢変更機構として用いられる非金属の空圧モータは1自由度のみであり,また多自由度回転を実現する球面歯車機構では多数の電磁モータを必須とするためMRI・CT 環境下で使用できません.
そこで,樹脂のみで構成可能な,球状ギアに対する歯の噛み合いによって1台で2自由度回転を実現する2自由度空圧ステッピングアクチュエータを提案しています.
人と同じ空間で動作する協働ロボットのアクチュエータには,作業時の高出力だけでなく,人との予期しない接触時の柔軟性が求められます。
そこで磁力により非接触で回転直動変換を実現する送りねじである磁気ねじに着目し,円弧形状磁石を用いた最小構成の新しい磁気ねじを提案しました。また,センサレス力制御手法,可変剛性化,磁気浮上による完全非接触化を提案しています。
近年のEV化により新たに発生したねじりトルク成分が高次のねじり振動を新たに発生させる可能性が指摘されている.本研究では,このような高次ねじり振動を抑制する遠心振り子式動吸振器(CPVA)の形態を提案している.現在では4次成分までの制振のためのCPVAの数理モデルを構築してその非線形振動解析手法を開発するとともに実験的にも制振効果を定量的に検証している.そして,さらに高次の制振デバイスの開発に取り組んでいる.(JVET2024, JSV2025)(2026/01)
液体水素等の極低温環境においては,従来の制振材料となる油やゴムが使用できません。そのため,摩擦を利用したダンパが活用されていますが,摩耗するため寿命に課題があります。
そこで,渦電流による減衰力を利用した極低温用渦電流ダンパを開発しています。空間の様々な方向へ制振性能が最大化するような構造を目指し,電磁場解析・実験によって様々な条件下での性能を評価しています。
磁力により非接触で回転軸を支持する多自由度磁気軸受は摩耗が発生せず,メンテナンスフリーで運用可能など様々な利点を有しています。しかし,従来構造では永久磁石を用いるため,環境の温度によっては減磁による性能劣化があり,組立・分解性が低いという課題がありました。
そこで,永久磁石を用いずに大支持力を発生可能な新しい3自由度磁気軸受を提案しています。また,他軸への干渉抑制を目的とした新しい非線形制御手法を提案しています。
一度運転を開始すると長期間運転をし続ける機械構造物が多くあります.その種の機械では一般に定期的に機械を止めて検査をします.この検査の頻度が多いとコストが大きくなり,逆に頻度が少ないと機械の故障や異常を初期に発見できません.また,このような故障や異常に伴う事故は,一度起きてしまうと多大な費用が発生します.また,生活基盤を支える電力供給や交通にまで影響し,社会的な問題にもなります.このような故障の例として,疲労クラックや軸受の故障は振動や音などにその兆候が表れます.このような背景から,機械を止めて検査をするタイミングを適切に決めるために,振動のモニタリングと診断技術手法の開発が強く望まれています.
機械の運転中の振動を計測し,入力信号の情報を得ることなしに対象の機械の周波数応答伝達関数(FRF)を疑似的に求めることができる実稼働モード解析(OMA)という手法がある.従来は1軸信号のみを用いた手法であったため,回転機械における本質的な情報である「前向きモード」と「後向きモード」を分離できなかった.本研究では,x,yの2軸信号を計測し,信号処理の工夫により,「前向きモード」と「後向きモード」を分離できるフル実稼働モード解析(フルOMA)手法を開発し,実験的にも検証してその有用性を明らかにした (ASME 2025)(update 2026/01)
機械システムの状態監視と診断技術へのニーズが高まっている.ポンプ系のすべり軸受においては,スラリを含む水をくみ上げるため摩耗状態を調べる必要がある.本研究では,すべり軸受で支持された回転機械の数理モデルを構築し,計測した振動信号との比較によりすべり軸受の摩耗量,摩耗形状を推定する手法を開発した.(Trib.Int.2026)(update 2026/01)
磁気軸受をアクチュエータとしたアクティブな振動診断法を提案しています.クラックを有するロータ系の有限要素モデルの構築を行い,その解析手法を検討してきました.そして,その解析結果を用い,高精度なクラック検出の実現を目指しています.また,軸受の支持剛性に方向差がある場合について,周波数伝達関数の構築も行っています.さらには,亀裂の進展の度合いや位置・深さを推定する診断手法の開発を目指して研究を進めていきます. (ASME2018)(update 2026/01)