『全部置いていく』と、

がむしゃらに言い放ったけど

結局のところ　分厚いアルバムだけは

どうしても捨てることができなかった。

手放すと『自分』がどこかへと消えてしまうような

そんな気がしたから。

去り際に　背中のほうから名前を呼ぶ声が

聞こえたような気がしたけれども

怖いから　振り返りはしなかった。

自分がダメなことなんてのは　よく知っている

言わないでよ。忘れたフリしたいんだからさ。

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『トローネ・ヘーゼル』は　クジャクハゴロモの青年

　できることといえば　霊術と、多少の超能力。

　それから皮肉を言うこと。

　いつの日だったか

　ド辺境の宿で過ごしていたこともあったけど

　居心地が悪くなって飛び出した。

　今は学園から寮を借りて住んでいる

　この学園に滞在するのは『住処を確保するため』。

　綺麗なものを壊すのが好き。

　身体は蝋と嘘で塗り固められてあり

　それでも奥底には本音が眠っている。