少子化により大学は「早期に優秀な学生を確保」したい。一方、受験生・保護者は「早く進学先を決めたい」という思惑が一致し、年内入試が拡大している。
総合型選抜(旧AO入試)は平成12年度に0.4%で始まり、平成27年度には8.8%、現在では30%超にまで増加。
一方で「学力試験が課されない」ことによる入学後の成績不振や中退の問題も顕在化。これを背景に「年内×学力重視」の入試制度へと移行。
「公平性」と「多面的評価」を両立させることが目標。
書類選考・面接・事前課題に加え、国数英などの基礎学力テストを導入。
大学での成績(GPA)と高校の評定平均に相関があるため、評定も重要視。
■神奈川大学
【適性検査型】評定平均を点数化し、学力を確認。
【給費生試験】2025年度志願者8,962名、合格者296名。給費生合格者の約3分の1が一般入試を免除。
■共立女子大学
2025年度より【基礎学力型の年内入試】を導入。
一般選抜では入学しなかった高得点者が、年内学力入試では入学に至ったケースが増加。
評定平均とGPAに相関があるため、成績を重視。英語・国語(または数学)・事前課題で選抜。
初年度は442名が受験し、71%が手続き。最終的な入学者数は60名程度。
■大東文化大学
【基礎学力テスト型】の年内入試を導入。
初年度の志願者859名、合格者474名、入学者147名。英語平均点55点、国語65点。
入学後の学修基盤形成を目的に、共通テスト型一般入試との併用を奨励。
■東洋大学
文系学部でも数学選択者の割合が年々増加(文系数学受験者は22.6%)。
年内の基礎学力テスト型入試は全体の8.7%。入学者の約40%がこの方式で手続き。
数学や英語の得点からも、一般入試と同等以上の学力を持つ受験者が多い傾向。
出題内容は教科書範囲の国語・英語・数学。
成績(評定平均)+基礎学力テスト+事前課題で合否を判定。
一部大学では、小論文や事前課題で大学での学びに向けた意欲や適性も評価。
多くの大学が「総合型選抜=事前課題+面接」、「推薦型=評定+調査書+面接」に加え、年内入試に「学力試験」を加えることで、選抜方法の差別化を図っている。
年内に基礎学力を評価することで、受験機会の増加だけでなく、入学後の中退防止や学力保障の狙いもある。
文部科学省も「各入試方式の趣旨の明確化」と「学力の担保」を求めている。
入試方式ごとの「求める人物像」「アドミッションポリシー」「選抜方法」の整合性が不可欠。
高校の先生方にも、「入試の理念・実態の整合性」を検証することが求められる。
年内入試の拡大は、大学・高校・受験生それぞれのニーズに応えた制度改革の一環。
ただし、単なる「青田買い」に陥らぬよう、大学側も「入学後の成績・継続率」を見据えた設計が求められる。
今後は「学力を見極める」+「多面的な選抜」へと、制度の成熟が期待される。
令和7年度入試において、都立高校を第一志望としていた中学3年生のうち、約3,000名が私立高校を第一志望に変更したことが判明。
特に、令和6年12月15日または16日に実施された私立高校の入試相談を契機として、私立単願推薦による進学を決定した生徒が約2,000名増加。
私立高校授業料無償化の所得制限撤廃が影響。
現時点では導入時期は未定であるが、「デジタル併願制」の導入により、都立高校の第1志望不合格者が別の都立高校への併願で再度合格を狙える仕組みが検討されている。
これにより、従来であれば都立高校不合格後に私立高校(併願優遇)へ進学していた層が都立内で完結する可能性が高まる。
私立高校側では歩留まりの悪化が想定され、推薦枠の拡大など、対応が迫られる見通し。
志望率の推移から、都立高校全日制を第一志望とする割合は、平成29年度の71.1%から、令和7年度には58.7%へと大幅に減少。
対照的に、私立全日制高校の第一志望率は29.0%まで上昇。
通信制私立高校を第一志望とする割合も5.0%に達し、1クラス(40名)あたり2名が通信制志望という計算となる。
複数の私立高校で、単願推薦の導入・復活、または一般併願優遇の中止など、入試制度の見直しが進行中。
例:
藤村女子高校:推薦・一般併願優遇ともに中止。共学化と校名変更を数年後に予定。
聖徳学園:英語によるデータサイエンス教育を提供する特別コースを新設(準2級以上が応募条件)。
東海大菅生高校:新たに「医学・難関大コース」を設置。
都立高校全体の志望者数は前年度比約3,700名減(令和6年49,431名 → 令和7年45,720名)。
「進学指導重点校」では志望者が増加し、倍率も堅調。
一方で「推進校」や「単位制普通科」では志望者数が減少。
新校舎建設による志望動機の上昇も顕著(例:豊島高校、竹台高校、城東高校、日野高校)。
令和8年度入試より「分割募集(3月募集)」を廃止。全日制高校は2月募集のみとなる。
都立推薦入試における調査書・面接・小論文の配点比率が一部変更(例:三田高校では調査書300(R5)→100点(6)へ縮小、小論文を250点(R6)へ拡大。推薦入試合格者の男女比が1:2となったことへの対応)。
集団討論の実施校数は減少傾向(11校のみ)。復活は限定的。
スピーキングテスト(ESAT-J)の評価では85.1%の生徒がA〜C評価に収まっている。
明治大学付属世田谷中高(旧・日本学園):令和8年度より共学化、7割が明治大学進学予定。
自由ヶ丘学園、東洋、昭和第一など:入学者が大幅に超過し、来年度以降は募集人員調整の可能性あり。
英明フロンティア高校:令和7年度に共学化したが、志願者数は想定を下回る。
今後8年間で中学3年生人口は約1,800名減少の見込み。
都立高校では、約150〜180名程度の募集人員削減が予想される。
新たな設置校として「新国際高校(仮称)」が予定されており、柔軟な教育内容と評価体制を特徴とするモデル校となる見通し(開校時期未定)。
第1章:2025年入試全体概観と傾向
• 受験者数・率は依然として高水準
• 過去3番目に多い受験者数。
• 過去2番目の高受験率。
• 受験者の傾向:情報収集型保護者の増加
• 保護者が学校研究を重視。昔の「飛び込み受験」は減少。
• 学年別人口減少の兆し
• 小2以下は顕著に減少。中長期的には受験市場縮小の懸念。
第2章:1月入試の変化と埼玉県の急伸
• 試し受験から本気受験へ
• 特に開智所沢中等教育学校の影響が大。
• 開智岩槻との併願制度、複数回加点方式で受験者増。
• 埼玉県の市立中学受験者数が2年間で2万人以上増加。
• 東京都からの流入が多く、通学圏が拡大
• 開智所沢受験者の約70%が東京都出身。
• 八王子・多摩・川崎方面からの受験増加。
第3章:千葉県の安定と女子校動向
• 中堅女子校に人気集中
• 和洋国府台女子、十文字、文教大女子など。
• 偏差値60以上の伝統校は確年で増減。
• 常磐線沿線の中堅校が狙い目に
• 東京都の足立学園などが難化 → 千葉の中堅校にシフト。
第4章:東京都内のトレンド
• 共学校の伸長
• 日本学園(明大付属化予定)、日本大学高大駒場、芝国際など。
• ダブルディプロマ校(文化学園大杉並・三田国際など)の台頭。
• 男子校の苦戦
• 政学院・啓明学園など人気低下。
• 石神井・経過・成蹊など、男子校は厳しい年。
• 女子校は依然として合格しやすい枠あり
• 昭和女子・山脇・実践女子など人気安定。
• 北区・足立区の共学校も注目。
第5章:2月1日午前入試の受験者層変化
• 最上位校(偏差値71〜)の受験者数減少
• ボリュームゾーン(41〜50)での増加が目立つ
• 農大一高(新設)の影響で中堅層が増加
第6章:日程別の合格率と傾向
• 2月1日午前・午後が最も合格率高い(40%以上)
• 2月4日以降は合格率25%以下、激戦に
• 埼玉入試も合格率が55.3%→49.3%に低下
• 試し受験ではなく、本気受験化が進行。
第7章:神奈川県の減少傾向と構造変化
• 女子校の受験者数減少が顕著(前年比−800人)
• カトリック系の人気低下。
• 共学人気の戻り傾向(大学附属校中心)
• 女子校→共学校への志向シフト。
第8章:2月4日以降でも人気の高い学校
• 明星中(府中)29倍!高倍率校が話題に
• 熱望校(強く行きたい学校)としての存在感。
• 偏差値40代〜50代の中堅校が増加。
第9章:2025年 英語・新タイプ入試の特徴
• 英語資格入試の実施数は横ばい、受験者は過去最多
• 特に英検準2級以上保有者が増加。
• 帰国子女・ハーフ生にとって有利。
• その他新タイプ入試
• ダンス入試(藤村女子)、英語表現(聖セシリア)、プログラミング、グループワーク型も増加中。
第10章:公立中高一貫校の大幅減少
• 受験者数の減少は“衝撃的”
• 高倍率ゆえの敬遠、安全志向が強まった結果。
• 適性検査型の私立入試も減少傾向。
第11章:2026年入試に向けた変化と予告
• 新設校多数(例:浦和学院、羽田国際、鎌倉国際など)
• サンデーショックあり(2月1日が日曜)
• 女子校日程の再編が予想される。
• 定員増加による“受かりやすさ”のチャンスも
• 高校入試から中学入試への定員シフトが各校で進行中。
第12章:2025年 算数入試で話題の「2025」という数字
• 2025 = 45×45 = 平方数
• さらに1〜9段までの九九の総和が2025
• 出題例
• 約数・逆算・奇数和・分数列の規則など
• 会話文型・応用記述・一般化問題も
• 来年2026は…?
• 特徴は少なく、2025ほどの“華”はないが、地味な対策が重要。
第13章:入試問題に見る「思考力型問題」の進化
• 記述型・資料読み取り型が増加傾向
• 単なる知識問題では差がつかない。
• 「正答率が低い=悪問」ではない
• ヒントが本文中に埋め込まれており、論理的思考が問われる。
• 「捻り」や「引っかけ」問題も意図的に設計
第14章:社会・時事問題の難化と早期対策の必要性
• 時事問題の比重は小さいが、質が高く、難化傾向
• 自民党裏金、広島・長崎の出席問題など、ニュース理解がカギ。
• 11月からの時事対策では間に合わない
• 日常的に家庭でニュースを話題にし「自分ごと化」する習慣を。
• 政治・国際問題も忌避されず出題対象に
第15章:大学入試改革の影響が中学入試にも
• 資料読み取り・記述式問題の導入
• 「脱・偏差値マッチング入試」へ
• 偏差値に縛られず、“我が子に合った学校選び”がトレンドに。
第1章:共通テスト全体の動向と平均点分析
1-1. 受験者数と全体傾向
• 受験者数は50万人を下回るが、7年ぶりに微増。
• 文系・理系ともに平均得点率は前年より上昇。
• 新課程初年度は得点調整がなく、全体に易化傾向。
• 翌年度(2年目)は難化傾向が予想される。
1-2. 各教科の平均点・得点分布分析
• 国語:過去最高の平均点(126点)。高得点者が多く、来年は「揺り戻し」の可能性。
• 数学:数学I・AとII・BCで成績逆転。II・BCでは40点台に集中し、難化。
• 英語:リーディングは上昇、リスニングは下降。平均点は横ばい。
• 理科:理科専門4科目中すべてが難化。特に化学・地学が大幅に平均点低下。
• 社会:世界史・地理は平均点下降。地理は正規分布に近い形。
• 情報1:初年度。平均点69.2点で易しめ。2年目以降の難化が予想される。
第2章:教科別問題分析と指導への示唆
2-1. 国語
• 第一~第三問は単一テキスト中心で読みやすい。
• 第三問(新設)は表現修正・資料読み取り型。
• 古文・漢文は得点差が大きく、B・C層で課題。
2-2. 数学(I・A、II・BC)
• 誘導に従う力だけでなく「振り返り・発展的思考力(D)」の比重が高い。
• 情報の読み取りや設定意図の把握が重要。
• C層にとっては処理計算問題の減少が厳しい。
• 差がついたのは設定把握や誘導意図の読み取り。
2-3. 英語
• リーディングでは複数資料整理力が問われた。
• リスニングは「音声+資料の同時処理」が重視。
• 上位層と中・下位層で差がついた設問が多数。
• 第五問は情報処理力と聞き取りの複合スキルが求められた。
2-4. 理科(化学)
• 平均点過去最低の45.3点。
• 実験+原理の理解・図表と結びついた出題多し。
• 数値マーク形式復活で記述式対応力も必要。
• 特にC層は「計算力」「思考力」両方不足。
2-5. 社会(地理)
• 高得点者減少、平均点は前年より8点ダウン。
• 高度な思考力・資料読解・背景理解が必要。
• 地理的思考力を鍛える指導が今後必須。
第3章:情報1の初実施とその分析
3-1. 得点状況と分布
• 初年度は易化傾向。高得点者多く差がつきにくい。
• A層は90%以上の得点率、B・C層は差が顕著。
• 特にプログラミング領域で差がついた。
3-2. 問題傾向と求められる力
• 思考力中心だが知識問題(IPアドレスなど)も一部出題。
• プログラミングは「添え字1始まり」「変数の自力理解」が鍵。
• 問題文読解+情報統合の力が問われる。
第4章:情報教育の変化と国の戦略
4-1. DXハイスクールと情報教育の国家戦略
• 国は「情報系人材」を重視し、SSHの5倍の予算(100億円)を投入。
• DXハイスクールでは情報1Iの必修化、ICT活用が進行。
4-2. 大学入試の変化と情報1の位置付け
• 国公立で情報1の配点を5~10%以上に設定する大学が増加。
• 例:筑波大学では25点→50点→100点へと増加予定。
• 私立大学では情報1選択可の学部が急増。
4-3. 情報1による進路選択の幅拡大
• 情報1の得点で不利な教科(例:化学)をカバーし、判定が変化する事例も紹介。
• 特に偏差値60前後の層に影響大。
第5章:情報教育の波及効果と今後の指導戦略
5-1. プログラミングの教科横断的効果
• 小学生でのプログラミング経験者は国数理社の成績が高い傾向。
• データ処理・情報の要約・モデル化のスキルが他教科に活きる。
5-2. 共通テストと類似の問題構成
• 共通テストでは「グラフや図表+論理思考」の出題が多数。
• 情報教育を通じた基礎学力・思考力の底上げが今後の肝。
第6章:今後の共通テストに向けた対策
1. 難易度対応
• 初年度ボーナスから来年度は確実に難化。早期対策が必須。
2. 出題形式対応
• 探究型・長文化・複雑化する出題に向け、定着と応用の両立が求められる。
3. 科目数増への対応
• 六教科対応・情報1の戦略的活用・情報教育の横断的効果を意識した指導がカギ。