苦しい避難生活の中で、なぜ避難者は裁判所に通い続けるのか。多くの人々がこれを支え続けるのか、かながわ訴訟9年の歩みと、全国で展開されている集団訴訟の現状を通して「原発事故のもたらすものを考えるコーナーです。
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2013年の提訴、2019年の横浜地裁判決、東京高裁の控訴審に至るかながわ訴訟9年の歩みを、年表と写真でたどります。来春にも判決を迎える東京高裁の審理状況と、新たに始まる第2陣訴訟も含めた今後の展望とポイントを整理したパネルも併せて展示しています。
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全国では現在、40近い集団訴訟が地裁、高裁、最高裁で展開されています。その進行状況、これまで示された
判決の概要をパネルで一覧できます。また、これに対する国・東電の姿勢を象徴する発言録も併せて展示しています。
2 福島原発事故とパンデミック
日本の危機対応を検証する 右の∨をクリック ➡
福島原発事故から10年。この間、コロナパンデミックも含め、緊急事態宣言がそれぞれに発令された。原発事故への対応もチェルノブイリやスリーマイル島の事故に比較されうるが、地球全域を震揺させたコロナパンデミックヘの感染対策の各国比較は、否応無くその国の実力を顕にし、国家運営の実像を爽り出したといえる。
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1、現実の中から課題の構造をどう科学的・客観的に認識するか?
➡ 今、PCR検査や保健所体制の拡充が進まない。
2、それに対し誰がどのような権限と科学的根拠で政策を立案するのか?
➡ 今,、専門家の任命趣旨と討議プロセスが不明で、ほぼ結論のみが出てくる。
3、それをどのように国民に了解をとり、実施し、検証するのか?
➡今、政策のビジョンを訴える力に乏しく、その総括もない。
4、更に現場の問題群を解決する中で、政策をブラッシュアップするのか?
➡今、施行政策が現実と乖離しても、それを柔軟に変革する力量がない。
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わが国のパンデミック対応で露出した上記の論点を、そのまま福島原発事故に引き写してみても、私たち市民は多くのことに気付くことができる。
現場の現実や民意の現実を汲み上げを最優先し、より良い政策を柔軟に練り上げる。その政策決定のプロセスと意義を施策対象者に伝えるという科学的かつ合理的な姿勢の脆弱さが、この間の国の国家運営においては残念ながら蔑ろにされてきたようだ。
PCR検査体制拡充を蔑ろにしてきた姿勢は、市中感染率の把握を曖昧にし、またWithコロナを実現する上でも大きな障壁だ。それは、避難者の定義も曖昧なまま人数把握もその都度コロコロ変わり、放射能による土壌汚染値計測もなくホットスポットの所在すら曖昧にすることで「安全」ではなく「安心」を演出してきた帰還政策にも通じる。
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市民がこの10年、この国の現実をどうのような目線で見てきたのか?その断片のいくつかを展示・掲示することで、共にこの10年の想いを伝え合い、考え合い、次の世代に残すべき社会や国の姿を語り合う場を作ります。
3-1 神奈川の核施設など
ここでは、現在稼働している神奈川県の原子力施設を紹介します。
原子力発電所の燃料工場と、米国の原子力艦船です。ともに、神奈川県の横須賀市にあります。
東日本大震災と原発事故により、原子力災害の甚大さが広く報道され、初めてその存在を知った方も多いと思います。
このふたつの現在を、東日本大震災以降の変化を中心にまとめました。
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①横須賀の燃料工場は、1970年に竣工し、福島原発へも供給していました。
原発事故により神奈川にも放射性物質が到来しました。
神奈川への「里帰り」とういのでしょうか?
市民のウォッチをまとめました。
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②米国の原子力艦船
米国の原子力艦船が横須賀市に初めて入港したのは1966年。原子力潜水艦(原潜)です。原潜の入港は継続し、2008年
には、横須賀を母港する空母 が原子力型(原子力空母)となりました。
原子力艦船の管理者は米国であり、日本の管理が及ばないことの問題点をまとめました。
そして、いま横須賀を母港としている原子力空母「レーガン」が、東日本大震災の支援活動「トモダチ作戦」の主力艦
で、当時の乗員たちが福島事故により被ばくしたことについてレポートします。
3-2 子どもたちと被ばく
1月提訴の「小児甲状腺がん訴訟」原告は当時6~16歳の6名で、進学や就職、手術・治療など生涯にわたる被害を受けている小児甲状腺がんの当事者です。東電も国も健康被害と原発事故との関係を未だに認めず、「過剰診断」論から検査縮小をねらっています。当事者は被害の実情や不安を「風評被害を広めて復興を邪魔している」と誹膀中傷され声も存在も封じ込められてきました。 11年を経て小児甲状腺がん患者が公表数だけで300名近くに及ぶ中、被害者や子どもたちの為についに提訴に立ち上がったのです。
保養受け入れ事業は親子の救いとなってきましたが、国の援助もないなかコロナ禍で継続が難しい状況です。しかも子育ての不安を口にできない空気の中で、地元には内緒にして保養参加している親子も多くいるのです。
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学校教育では、「放射能は「安全」で東電や国には加害者性はなく、福島の被害は大したことはない』かのように、副読本などで子どもたちに教えようとしています。双葉町の「伝承館」でも、教職員研修や修学旅行生に対し同様のゆがんだ伝承が行われています。
放射能汚染で多くの県民や子どもたちを住めなくした跡地に、イノベーションコースト構想により原子力・核や軍事の国際産業開発拠点建設が押し進められています。
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子どもたちの未来の為、その健康被害の状況や放射線教育の内容、保養の現実などの視点から、子どもたちをとりまく状況を問い直します。
3-3 これからのエネルギー
(1)再生可能エネルギーを広げよう
東電福島第一原発の過酷事故を経て「原子力」はこれからのエネルギーの選択肢にはなりません。一方、地球温暖
化は気候危機というレベルです。昨年COP26では今世紀末の温度上昇を1.5℃以下に抑えようと世界中で合意しまし
た。二酸化炭素の排出削減、とりわけ石炭火力発電など「化石燃料から脱却」し、「再生可能エネルギーへのシフ
ト」を一刻も早く進めることが必要です。しかし第6次エネルギー基本計画に示された日本の計画は、原発も石炭
も温存でまだまだ不十分なものです。
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これからのエネルギーを選ぶことは、政治・経済・暮らし方など価値観の大転換を伴うことです。だれかに″お任
せ″ではなく、″私か‥私たちが″選び取っていきたいと思います。
市民による再生可能エネルギーを創り出す活動が、主に2011年以降各地でたくさん動き出しています。NPO法人
市民電力連絡会はこのような市民のネットワークで、情報交換・学習・調査・政策提言を行っています。調査結果
の一部を展示します。
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神奈川県内の一例として「一般社団法人あつぎ市民発電所」を紹介します。市民の共同出資で、畑の上で太陽光
発電をするソーラーシェアリングを始めています。再エネ普及と農業活性化、まちづくりまで目指しています。
(2)「水素」に未来はある?
福島第一原発事故の後、原子力による発電の危険性が明らかになりました。再生可能エネルギーへ大きく舵を切る
ことが求められるなか、政府は「水素エネルギー」を夢のエネルギーであるかのように持ち出してきました。
「2021年エネルギー基本計画」では「水素社会の実現」を掲げています。「技術面、コスト面、制度面、インフラ
面での多くの課題を解決し、「水素基本戦略等に基づきエネルギー安全保障と温暖化対策の切り札となるよう」進
めようとしています。
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カーボンニュートラルの救世主のように言われていますが、本当なのでしょうか。一番の問題は、水素をエネル
ギーとして取り出すには大量のエネルギーが必要な二次エネルギーだということです。
見落とせないのは「高温ガス炉」(小型原発)とセットで考えていることです。水素を軸に、新しい産業を興し
経済を活性化させ、原発産業を生き返らせようとしているのではないかと思われます。
「水素はクリーン」のイメージに惑わされないように、水素について調べました。
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--2021年11月27日茅ヶ崎図書館で行われた小澪祥司氏の講演資料より--
1,2021エネルギー基本計画
2,水素・燃料電池戦略ロードマップ
3,水素の製造方法は?CO2を出さないクリーンな燃料か?
4、燃料電池車FCV
5,水素と高温ガス炉
3-4 放射能と人類
◆ 核反応の放射能とがん死亡率
放射能と人類は共存出来ません。1945年7月16日にアメリカ合衆国ニューメキシコ州で人類最初の核実験(プルトニウ
ム弾)が開始されて以来、それまで一定だった人類のがん死亡率が突然増加し始めました。ここではUSA,日本、スウェ
ーデンについて表示していますが、世界中で同様です。人類が核反応を行うようになって新たに生み出された放射能は明
らかに人類を蝕んでいます。
◆ トリチウムと健康被害
政府は福島原発のトリチウム汚染水を海洋投棄することを決定しましたが、トリチウム放出量の多いカナダ・ピッカリ
ング重水原子炉周辺では小児白血病や新生児死亡率が増加し、ダウン症候群が80%も増加しています。ほかにも原子力施
設の周辺では各種がん発生率が上昇しています。
◆ 放射性廃棄物管理を数万年も子孫に押し付け
原発を運転すれば広島長崎の原爆とは桁違いに多量の放射能が出ます。この放射性核廃棄物を確実に処理する方法がな
く、何万年も管理しなくてはなりません。今私たちが使う電気のために数万年先の子孫にまでその管理を委ねなければな
りません。たとえ事故を完全に抑えることができたとしても上記のように人類と放射能は共存できないのですO
◆ ひとたび事故が起これば生活そのものが奪われます
この度南相馬市小高地区と浪江町津島地区を訪ね、現地の方たちのお話を伺ってきました。放射能によって家や土地ばか
りか、文化やコミュニティまでも奪われた現状を見聞きし、放射能=原発が人類と共存出来ないということを実感しまし
た。
ひとたび事故が起きればふるさと全てが奪われるのです。
【座談会、講演会】○被災者の声と裁判について講演座談会開催
5日の渡辺一枝さんの講演と、6日の樋口英明さんの講演はZoom配信を行いました。
3月4日(金) 13:30~16:00 座談 ゲスト 田口卓臣さん
中央大学教授で「脱原発の哲学」(共著)などを著している田口卓臣さんをかこんで
の 座談。
3月5日(土) 13:00~16:00 渡辺一枝さん 講演と座談会 「福島の声を聴く」
メルマガ「一枝通信」や、被災者の声を東京で直に聞く"トークの会"福島の声を聞こ
う"を主催されてきた作家の渡辺さんを迎え、各地の集団訴訟の原告たちの声と想いを聞
き合う場を設けます。マスメディアでは聴こえない被災者の声に直接向き合う市民集会
です。
※ 詳細は下記をご覧下さい
当日のお話と座談の内容内容はいずれYoutubeでアップしますが、
要旨はこちらをご覧下さい
3月6日(日) 13:00~16:00 樋口英明さん 講演会 「司法の正義とは!?」
2014年5月、大飯原発3・4号機の運転差し止めの判決を下す。「国富」の本質は経済
的な富ではなく「豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していること」と説いた
判決は、原発関係で日本の司法の良心を体現した数少ない名判決の一つとして有名。
※ 詳細は下記をご覧下さい
当日の講演内容はいずれYoutubeでアップしますが、要旨はこちらをご覧下さい。
3月7日(月)13:00~16:00 座談 ゲスト 前田 朗さん
法学者で平和力フォーラム主宰、原発民衆法廷判事の前田朗さんを囲んでの座談
座談会 渡辺一枝さん 【「福島の声を聴く」】
渡辺さんは、1945年ハルビン生まれの作家、ルポライター。チベット文化圏へ通い、多くの著名を発表。3.11以降は福島県内の被害者・避難者を訪問、詳細な聞き書きを綴ると共に、東京で「福島の声を聞こう」というトークの会を主宰。「子どもの脱被ばく裁判」など各地の原発訴訟の傍聴も続け、リポート。『聞き書き 南相馬』(2020年、新日本出版社)ほか。
<座談会>渡辺一枝さんの司会で、京都(母子避難)、東京(避難指示区域外)、福島県内(帰還困難区域)、かながわ(避難指示区域内)の避難者に体験と現状を語り合ってもらいます。
開 場 12:30(会場参加はウイルス対策の関係で先着60名限定)
お話し 13:10~14:00
(休憩)
座談会 14:10~15:30
質 疑 15:30~16:00
講演会 樋口英明さん
【「司法の正義とは !?」】
元福井地方裁判所の裁判長として2014年5月、大飯原発3・4号機の運転差し止め判決を下す。「豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることこそ国富」との名文が多くの人々の心を打った。原発事故と正面から向き合い、人権を守ることを第一に原発の安全性を判断した姿勢は高く評価されている。
<講演>大飯差止判決はどのような判断に基づいて出されたのか。原発裁判に対する裁判官、弁護団の対応の特徴と問題点などを語ってもらいます。
<意見交換>水地啓子かながわ訴訟弁護団長、村田弘原告団長、会場参加者との意見交換の時間を持ちます。
開 場 12:30(会場参加はウイルス対策の関係で先着60名限定)
お話し 13:10~14:10
(休憩)
座談会 14:20~15:30
質 疑 15:30~16:00