お勧めする図書

ここでは、私が影響を受けた本、特に勉強になったと感じた本を紹介します。主に関連分野の学生の皆さんに読んでほしいと思う本をあげています(ですので基本的にどれも「読みやすい」本です)。なお、私の執筆した図書は外しております。気になる方は研究内容のページにて。

内容は徐々に充実させていきます。

「科学」を理解し、「論文」を書くために

この書籍でも強調されているように、科学の手順について体系的に大学で学べる機会は少ないように思います。現在の科学の作法に繋がる演繹法や帰納法を理解し、論文を執筆する上で必須とされている(研究者であれば普通は意識せずに使っている)仮説演繹法について体系的に学ぶことができます。

私の研究の出発点は霊長類学です。1960~70年代の関連論文は、サルの「観察」が重要視され、帰納法的なアプローチもかなり多くあったように思います。観察された事実を繋ぎ合わせれば、「何か世界的な発見ができるのではないか」と私も考えたものです(実際それでただひたすらサルを観察し続けました)。こうした努力は重要ですし、この経験は今の私の研究に生きているのは間違いありません。ただし、ひたすら観察された事実を積み上げていくだけでは「科学」にならないのですよね。

「なぜ」と感じた方は、ご一読されたほうが良いかと思います。

私が大学で教えるいくつかの講義の1回目に、科学哲学の話をするようにしています。それは、なぜ私たちが「科学」を学ぶ必要があるのか、その「目的」は何なのか、を理解することが重要だと思うからです。私はどちらかと応用的な分野を教える教員ですので、これ(科学と社会とのかかわり方)を話ことは責任だと思っています。「科学と疑似科学」や、「科学と価値」との線引きは、応用分野の研究を志す若手の皆さんにまずはじっくり目を向けていただきたいと強く思います。

科学哲学はやや難解な書籍が多い中で、本書は非常にわかりやすい入門書となっています。

ちょっと古い書籍になりますので、中古しか手に入らないかもしれません。「科学のための科学(モード1)」という従来の知識生産の手続きから、「社会のための科学(モード2)」という新たな形の知識生産の形を提唱する書籍です。

私が大学院生時代に、実学的研究のあり方を模索する機会を与えていただいたコウノトリ野生復帰を中核的に推進されていた兵庫県立大学の故・池田啓先生にご紹介いただいたことでも、記憶に残る本です。

関連書籍を読まれていない方にはちょっと難しいと感じるかもしれませんが、個人的にはお勧めです。

森や動物について学ぶために

東京大学出版会から、日本の各哺乳類を対象にした書籍が刊行されています。左の写真はニホンザルですが、これ以外にも、シカクマツキノワグマカモシカ食肉目など様々な書籍があります。

個人的にはどれも非常に勉強になりました。

鳥獣対策関連の書籍は近年増えてきましたが、「その中でどれか一冊を」といわれれば、こちらを紹介しますかね。非常にわかりやすい書籍だと思います。

タイトルの通り、現在は森林が極めて飽和する時代になっています。しかし一時は森林が欠乏するはげ山だらけの時代を経験してきたのも日本。このなかで、いわゆる日本の原風景とされる「里山」のイメージも実際はかなり違っていた事実も理解できます。

なぜ国土がこのように変貌をしてきたのかを非常にわかりやすく理解する一助となる良書です。

私も大学では森林系(林学)を担当する教員です。そうしますと、「いかに森林が素晴らしいのか」という森林生態系がもたらす恵み(生態系サービスともよばれます)の部分を強調したくなるわけなのですが、実際その「恵み」は感覚的に語られ、科学的な根拠については十分に提示されていないことが多々あるのも事実です。このあたりの慎重な見解を分かりやすく整理している良書だと思います。


そのほかお勧めの本

「歴史哲学」という新たな分野を知ることになったきっかけの書籍です。この書籍をたまたま読んで感銘した大学院生時代、哲学者の内山さんの話を直接お聞きしたいという一心で、(今考えるとかなり大胆かつ大変失礼な行動でしたが)面識も伝手もないのに直接ご本人に懇願して、講演会を開いていただきました。その話の素晴らしさも今でもよく覚えています。

これ以外の内山さんの書籍についてもほぼすべて読みましたが、どれも勉強になります(根底に流れる内山さんの主張は一貫しています)。

この書籍の一節に以下のような記述があります。社会とのかかわりをもつ(=社会的な合意形成にも踏み込むこともある)応用分野の科学を学ぶ研究者にとって重要な教訓だと思います。

「科学的な認識はひとつの真理を発見させるが、それは科学的な方法によって発見された心理にすぎない。すなわち、科学的な方法以外の方法を用いれば、私たちには別の「真理」がみえてくる。「真理」は認識方法ごとに多元的である。にもかかわらず、科学に普遍性を付与したとき、私たちは科学の手法では到達できない世界が見えなくなった (p20より引用)」

科学という行為とその作法、さらにはその危うさについて体系的に学ぶことができます。やや古い書籍にはなりますが、科学者を目指す学生にはぜひ一度は読んでほしいと思う本です。


人口減少関連の書籍:

これからの日本の野生動物管理を議論していくためには、人口減少という劇的な社会変化は見過ごせません。

これに関連する書籍は近年爆発的に増えているようですが、個人的に特に勉強になった書籍をあげておきます。