次世代環境調和型トライボシステムの実現
RESEARCH OUTLINE
DLC成膜と生分解性潤滑油を組み合わせた環境調和型トライボシステムの開発を進めている。DLCは高硬度・低摩擦・耐摩耗性を有し、潤滑油との相互作用を最適化することで摩擦低減と耐久性向上を実現する。一方、生分解性潤滑油は環境負荷を低減し、持続可能なトライボロジー技術の確立に貢献する。本研究では、DLC膜の表面特性を制御しつつ、生分解性潤滑油との相乗効果を最大化することで、高効率かつ環境負荷の低い摩擦・摩耗制御技術の確立を目指します。
POINT
SDGs(持続可能な開発目標)は、2015年に国連で採択された2030年までの国際目標です。貧困、飢餓、健康、教育、ジェンダー平等、環境保護など17の目標と169のターゲットで構成されています。「誰一人取り残さない」を理念とし、先進国を含む全ての国が取り組むべき普遍的な課題を示しています。政府、企業、市民社会が協力して、持続可能な社会の実現を目指す行動指針となっています。
コロナ禍は生活に深刻な影響を与え、将来の細菌・ウイルスへの対策が求められています。多くの機械部品は不特定多数が触れるため、高衛生と機械的特性を兼ね備えた「ポストコロナ時代のメカニカルコーティング」への転換が必要です。機械的特性と高衛生を両立する表面を設計することにより、工学の立場からウィズコロナ社会への未来設計図を打ち出していきます。
2050 年カーボンニュートラル社会の実現を掲げる我が国のグリーン成長戦略にとって、エネルギーの高効率化と機械部品の長寿命化は不可欠な技術課題です。また、環境汚染問題に対する観点から、摺動部品や切削時に使用されるオイルやグリースに含まれる極圧添加剤、およびそれらを洗浄するために用いる溶剤等の使用を削減する検討が進められています。私たちは、環境調和型の生分解性潤滑油を用いたグリーントライボロジー技術の開発により、未来の持続性可能な社会の実現に貢献していきます。
産業界では、持続可能な社会の実現に向けてCO2排出量削減に寄与する低トルク部品の開発に注目が集まっています。例えば、近年の自動車の燃費向上の大きな部分が、低摩擦化技術の向上に依っており、過去20年間で15%もの燃費向上が実現し、また、産業機械分野では、摩擦係数が従来と比較して50%低減した低発塵軸受を開発しサーボモータの小型化と高出力化につなげています。こうした機械部品に超硬質3次元DLC膜を成膜することで、さらなる高効率化、小型・軽量化へとつながり、産業界全体の省エネルギー化に大きく貢献できると考えられます。本研究は、東京科学大学新産業創成研究院コマツ革新技術共創研究所と共同で実施する研究テーマです。