フォーラム2
「世界」という空間から世界市民的教育を考える
報告者:広瀬 悠三(京都大学)
司会者:生澤 繁樹(名古屋大学)
「世界」という空間から世界市民的教育を考える
報告者:広瀬 悠三(京都大学)
司会者:生澤 繁樹(名古屋大学)
飛躍した構造をはじめから内包する世界市民性は、現実の人間の生からかけ離れているように見えながら、古代ギリシアより様々な位相において絶え間なく問われ続けてきた。現代においてもさらに、現実の社会が直面する法外な問題、例えば地球環境問題や、国家間、また国家間を超えた対立・戦争に対峙し、応答することを可能にするものとしての世界市民性とそれに基づく世界市民的教育が耳目を集めている。
世界市民的教育は、しかしながら、その出自だけでなく内容から見ても西洋中心主義的な普遍的価値を重視する教育や、新自由主義的なグローバリゼーションに加担する教育として批判的に捉えられることもある。しかし世界市民的教育は、特定の視座を放棄しないとしても、「世界」に関わり、教育と人間形成、そしてさらには存在形成を問題にしているがゆえに、それらの限定的な教育に収斂されるものではない。むしろ、それらの特定性から自らを絶え間なく引き離す行為を包摂するのが、「世界」での人間・存在の営みの端緒である。本フォーラムでは、世界市民的教育の問題を踏まえた上で、カントの動的な世界市民的教育についての議論を手がかりにして、世界市民的教育がわれわれに問いかけているのは、「世界」という稀有な空間を生きることを促す豊潤でありながら切実かつ苦しい教育であることを考察する。
※ 対面+オンライン同時双方向型