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初めに
昨年の末くらいから、ノイズキャンセリング機能付きの高性能ワイヤレスイヤホンであるApple のAirpods Pro2を補聴器代わりとして使えるよというYouTube動画をときどき見るようになりました。補聴器は管理医療機器ですので、現状では高性能のものであれば片耳だけで20万円ほどしますが、それに比べてAirpods Pro2は両耳(当然ですが)で4万円弱ですので、最近耳が遠くなってきたので補聴器の購入を考えておられる方にとっては魅力的に聞こえると思いますが、ただ本当に信用できるのか考えておられる方も少なくないと思います。
そこで元メディカルエレクトロニクスエンジニアでもあり、医療機器許認可申請にも携わってきたため、その視点で私から現在の状況をQ&A形式で説明したいと思います。
Q1 実際に補聴器としての機能を持っているのですか?
結論としてはAirpods Pro2 単体では補聴器のための設定、つまりユーザーの聴力に合わせて音量を補正することはできません。設定のためには、iOS18以上のOSがインストールされたiPhoneが必要です。それがあれば補聴器としてつかうことができます。とはいえ残念ながら Android スマホで設定することはできません。
ただし、iPhoneで一度設定すれば、設定値そのものはAirpods Pro2の中に保存されていますので、そのiPhoneを忘れて外出しても補聴器としても機能は継続しています。
Q2 どうやってAirpods Pro2の感度をユーザーそれぞれの聴力にあわせるのですか?
耳鼻科医で聴力検査をしてもらうときに、オーディオメータという医療装置を使って測定しますが、その装置では、患者に、可聴域の範囲で、いくつかの周波数の試験音を聞かせ、ごく小さい音から少しずつ音量を上げていき聞こえたところでボタンを押してもらうという方法で聴力を測定し、聴力グラフを出力します。
それと全く同じで、iPhoneを聴力測定モードにしてスタートすると、同じようにAirpods Pro2から試験音を発生させ、聞こえてきたところでボタンをタップするというやり方で聴力を測定します。その結果をもとにして、そのユーザーの場合は外部音のどの周波数の音を大きくすれば通常の聴力と同等になるのかという補正値をAirpods Pro2に保存します。
通常の補聴器においては、耳鼻科医が聴力グラフを出力し、補聴器販売店で、聴力グラフに基づいて補聴器を設定するわけですが、Airpods Pro2 とiPhone だけでその二つをやってしまえるわけです。もちろん聴力の低下が進行するならば何回でも同じことを繰り返すことができます。
Q3 医療機器なら、耳鼻科医の診断書が必要だったり薬局で買うとか、なにか制限があるのではないですか?
医療機器として承認されたのはAirpods Pro2そのものではなく、Airpods Pro2とiPhoneを使った以下の二つのプログラムで、家庭用の血圧計と同様に管理医療機器に分類されたうえで医療機器承認番号をそれぞれ取得しています。この管理医療機器を販売するためには販売許可を取得する必要があるのですが、家電量販店など同じ管理医療機器に分類されている家庭用血圧計を販売しているところはすでに管理医療機器の販売認可をとっているでしょうから、問題ないと思われます。
そもそもAirpods Pro2は2年ほど前に発売されたときすでにこれら二つのプログラムを提供していました。それと同時に米国のFDAや日本の厚生労働省に臨床データを提出しており、これまでは医療機器として販売することはできなかったのですが、それが日本では2024年の暮れに承認をうけ、医療機器としてたということだけになります。
結論
このように、法的にはすでに管理医療機器として承認されています。個人的には外部ノイズキャンセリング機能や会話の声だけを強調する機能を持っていることを考えれば買いだと思います。ただし、以下の赤字の【警告】は守る必要があります。
管理医療機器 家庭用聴力検査プログラム
(管理医療機器承認番号は以下を参照。オーディオメータ機能を提供)
家庭用補聴フィッティングプログラム
(管理医療機器承認番号は以下を参照。補聴器としての機能を提供)