大学院生や若手研究者の学舎として
私たちの研究室は、新潟大学大学院医歯学総合研究科に所属する修士課程、博士課程学生を受け入れています。また、不定期ながらポスドク・特任助教の応募もありますので、もしご興味があればご連絡ください。学生だけでなく、若手研究者も教育を受ける権利があると考え、個人のキャリアプランにそった研究計画をたて、主体的な研究ができるように指導、環境整備を行うことで、ラボメンバーには確実なスキルアップが実現できるようサポートします。私たちはまだ小さいグループですが、かえって手厚い教育が受けられる場だと思います。ぜひ楽しく刺激的な研究生活を味わい、その後の人生の糧にしてもらいたいと思います。
私たちの研究室からのキャリアプランとして、アカデミックや医師だけでなくバイオテックや医療系企業も選択肢になります。昔からのイメージとは違い、現在は博士取得者が企業に積極的に獲得されるようになっており、その生涯年収も高いことが示されています。とくに私たちの研究を通して学ぶことができるバイオインフォマティクスを身につければ、企業で重要な人材となることでしょう。
研究を通して身につけること
1.自分で考え、データに学ぶことで、豊かな世界が見えてくる
ここ30年の情報革命により、膨大な量の情報が世の中に溢れている一方で、我々の人生がそこまで豊かになった実感はあるでしょうか。確かに、スマフォやオンラインミーティングのような便利なツールは今やなくてはならない存在ですが、一方で情報に翻弄されて、何が正しくて何が間違っているのか、判断がつけづらく、自信を持って物事を決めることが難しくなるような側面があることは確かです。この情報化社会に生まれたことを活かすために、受動的に情報にさらされるのではなく、能動的に情報を摂取し、それを自分の考えで解釈し、世界を見つめ直す力をつけることで、私たちの人生は大きく豊かになると考えられます。私たちが行なっている研究は、まさにそのような力を実践する場であり、その力が鍛えられる場です。それについて以下、詳しく、説明しましょう。そこで得られたものは、単に経歴や知識として役に立つだけでなく、あなたの血肉となり、人生を変えていく力となるでしょう。さらに、その力は研究だけでなく、経営や人生設計などあらゆる場面で具体的に必要となることでしょう。
研究は、一般的事象の中から、未知で、かつ、重要な問題を見つけ出すことからはじまります。これはビジネスと同じで、最初にユニークな目的設定をおくことが重要です。しかしながら、必ずしも多くの文献を読んだところで、自動的に問題が浮き出てくるわけではありません。実際には、ユニークな着眼点をもつことやユニークなシステムやデータから自ら問題を見つけ出すことが、ユニークな研究の端緒となります。このようなユニークさは、背景となる物事を十分調べ上げ、それを自分自身で精査することで、「何がわかっていて、何がわかっていないのか」「何が一般的で、何が特殊なのか」「何が常識として知られていて、何が常識に反しているのか」を理解することでおのずと生まれてきます。次のステップは、その問題を解くための、解析や調査や実験です。まず、単純な仮説をおくことにより、現象が説明できるのか、その仮説によりどのような挙動が予測されるのかを計算するのは、数理的解析の範疇になります。その仮説を実際に証明するためには、調査あるいは実験により、データを作り出し、それと向き合う必要があります。まず、それには統計的解析が必要になります。現代の生物学的手法はたびたびハイスループットアッセイと呼ばれ、大量にデータが生じるのは通常のことなので、プログラミングなどを駆使するデータ解析をする必要も出てきます。その次のステップとして、解析の結果を解釈するというところが、非常に難しいところです。生半可な知識で解析を行うと、見たいものとは全く異なるものを見ている可能性があります。特に大きな失敗が、実験や解析によって生まれた人為的なバイアス(アーキファクト)を事象の性質と見誤り、信じ込んでしまうことです。研究者は自分の実験手法や解析手法に常に批判的にならなければなりません。自分たちの研究の限界を知れば、そこで得られた結論は、「もし〜であれば」などのカッコ付きの結論かもしれませんが、答えには着実に近づいているものだと考えられます。さらには、その研究成果のインパクトを理解し、それをコミュニティに正しい形で共有することも重要なことです。このような研究活動の一連の流れを見れば、研究者がいかに情報の潮流から重要な情報を引き出し、それをもとに、独自の新しい情報を創造し、そこからさらに重要で有益な情報を生み出し、発信しているかということがわかると思います。
これはあくまで私が掲げた理想の研究像ですが、私はこの理想に近づくためにも、自分で「理論解析」から「データ解析」そして「実験」を行なって、研究を行ってきました。いわば、「オールラウンダー」な研究者として研究し、その中で、いかに自分で考えて、データと自分自身で向き合い、その先に見える答えを自分で見定める力を培ってきました。私はそこで培った方法論を上記のように一つ一つ分解して、ともに一歩一歩、歩むことで、学生や若手研究者らに伝えることが可能だと思っています。
2. コミュニケーションは最大の武器
自分で考えるということと一見、相反するように思えますが、実はコミュニケーションはこのような研究を進める上で重要な武器になります。まず、当然のことながら、人一人でできることは限られており、チームでやることで物事のスピードも確度も上げられることは確かです。ただそこでは、十分なコミュニケーションが重要になります。コミュニケーションなしでチームワークを行えば、足の引っ張り合いをするだけで、一人でやるよりも劣ったものは生まれるのは明らかです。次に、新しい疑問や着眼点や解決法はコミュニケーションにより、生まれることが多いのも明らかです。ユニークな着眼点をもつ二人が深く話しあえば、さらにユニークなものが生じるのは明らかでしょう。また自分がこれまで当然と思っていたことを相手がそうではないと気づかせてくれることもよくあります。着眼点だけでなく、そこから答えをどう導くかという方針まで、二人以上の知識と経験を使えば、簡単に導き出されてしまうこともあります。さらに、もう一つのコミュニケーションの研究における重要性は、他人の目を通して、自分に批判的になることです。どんなに完璧主義的な人間だとしても他人には厳しく自分にはやさしくなってしまうものです。自分のやっていることを他人に説明することを通して、批判的な意見を得たり、あるいは、自分でそれを予測したりすることは、自分のやっていることの確からしさを担保するためにも重要なことです。最後に、人間は多くの場合、コミュニーションが生理的に必要な動物である、ということです。研究はたびたび孤独な活動であり、その面白さを完全に他人と共有することは難しいかもしれません。しかし、だからこそ、自分の研究を理解してくれる仲間たちは重要であり、日々のコミュニケーションを通して自分の存在意義を確かめられることは重要なのです。一般に孤独は現代社会の大きな問題の一つであり、人と相対するコミュニケーションの必要性がなくなってきた現代だからこそ、コミュニケーションをとることを気をつけなければなりません。もちろん、コミュニケーションの生理的な重要性やその方法の良し悪しも、個人差があるため、一概には言えませんが、適度なコミュニケーションを仲間たちととることで、精神的な健康を維持していくことが何をやるにも重要なことです。
共同研究というのはこのコミュニケーションの強みを活かすことで、最大限の成果を出すことができます。しかしながら、世にいう「共同研究」はお互いが丸投げで、まるで違う研究のブロックをただ積み重ねているものになりがちです。理想的な共同研究は、大樹のようであり、その幹に大きな問いがあり、そこから枝葉として共同研究者が密に手をつないでいるものであるべきです。大樹の幹から枝葉をそれぞれ結びつける中心人物として、オールラウンダーな研究者はハブ(中核)としての役割を担うことができると考えられます。
このようなコミュニケーションの重要性を考え、私は学生や若手研究者らとできるだけフラットな関係を構築することで、コミュニケーションを密にとることが重要だと思っています(もちろんコンプライアンス的には自身の立場をわきまえる必要がありますが)。海外のラボでは学生とボスが名前で呼び合うのは普通なので、そこまでではないにしろ、日本でもよりフラットな形を作ることは可能だと思っています。またラボでメンバーたちが気軽に話しあう機会をもうけることも重要であり、そのための環境づくりにも尽力していきます。
私はアメリカとドイツに留学した経験をもち、英語でのコミュニケーションの重要性も身に染みて感じてきました。グローバル化や日本の少子化により、外国人と話す必要性は格段にあがっています。相手が自分に興味がある状況であれば、自動翻訳などを使うことは可能ですが、そうでない相手に自分の意見を届けたいと思っているときには、相手に直接伝わる言語をもつことは大変重要です。そうでなくても、科学の公用語に対しての苦手意識は全ての研究者が払拭しなければならない壁です。ラボ内では英語でのコミュニケーションを活発にする予定で、そこに身をおくことで自身の壁を打ち破って欲しいと思います。
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