イネを用いた有用タンパク質の

超低コスト生産手法の開発

 抗生物質の大量使用により多剤耐性菌が蔓延し、人の公衆衛生や畜産業の脅威となっています。抗生物質の代替薬として抗菌タンパク質の利用が期待されていますが、生産コストの高さがそれを拒んでいます。そこでイネを用いて抗菌タンパク質などの有用タンパク質を超低コストで生産する手法の開発を行っています。抗菌タンパク質を生産するイネは植物工場で生育させる必要がありますが、照明とそれに伴うエアコンの電気コストがかかってしまいます。私たちは電気コストを大幅に削減できる暗所でイネを発芽させ、有用タンパク質を生産する手法の開発に取り組んでいます。また、イネ振盪培養細胞を用いた生産手法の開発も行っています。

 抗生物質の大量使用により多剤耐性菌が蔓延し、人の公衆衛生や畜産業の脅威となっています。抗生物質の代替薬として抗菌タンパク質の利用が期待されていますが、生産コストの高さがそれを拒んでいます。そこでイネを用いて抗菌タンパク質などの有用タンパク質を超低コストで生産する手法の開発を行っています。抗菌タンパク質を生産するイネは植物工場で生育させる必要がありますが、照明とそれに伴うエアコンの電気コストがかかってしまいます。私たちは電気コストを大幅に削減できる暗所でイネを発芽させ、有用タンパク質を生産する手法の開発に取り組んでいます。また、イネ培養細胞を用いた生産手法の開発も行っています。

 私たちは、以下の2つの方法の開発に取り組んでいます。

(1)暗所でのタンパク質生産

 「もやし」は非常に安い値段で売られています。そこで、「もやし」と同じように、暗いところでイネを発芽させ、「イネもやし」からタンパク質を抽出すれば、超低コストで有用タンパク質を生産できるのではないかと考えました(図1)。しかし、光合成を行うことができず、植物の生育に適していない暗所で、イネがどれくらいタンパク質を作ってくれるのかわかりませんでした。そこで、暗所でイネが作る総可溶性タンパク質量を調べました。その結果、明所でも暗所でもイネが作る個体当たりの総可溶性タンパク質量は同じであることがわかりました。また、総可溶性タンパク質量が増加する条件を探索したところ、ミネラルと糖を与え、28oCで発芽後10日から12日が最も多くなることがわかりました。さらに、密植すると個体あたりの総可溶性タンパク質量は減少しますが、面積当たりでは増加すること、種子の大きさが大きいと総可溶性タンパク質量も多くなることがわかりました。

 現在、個々の抗菌タンパク質量が増える条件の探索をしています。

(2)振盪培養細胞を用いた生産

 振盪培養細胞(図2)を用いて、抗菌タンパク質を培地中に分泌させれば、容易に抗菌タンパク質を回収することができます。特に細胞を粉砕する必要がないので、細胞内のさまざまな物質から抗菌タンパク質を精製する過程も大幅に簡素化できると考えられます。

 現在、振盪培養細胞で抗菌タンパク質の生産量を増加させる手法の開発と培地での安定性を高める手法の開発を進めています。

図1、イネを用いた暗所での有用タンパク質生産

図2、イネ振盪培養細胞

Watanabe et al (2022) Sci Rep 12, 7759