セキュアなデータ流通に向けたプライバシ強化技術

近年, IoT端末やスマートフォン, カーナビ, タブレット端末,スマートメータなどから大量のパーソナルデータを収集し,利活用することが期待されています.例えば,位置情報や会話情報を収集し, 人気のある観光地, 道路交通情報, 関心のある商品などを分析するクラウドセンシングが研究されています.また,年龄,結婚状況,収入,学歴,製品満足度などの属性データを収集し,元データの分布推定や相関分析などを行って,ターゲット顧客を明確にすることもできます.しかし,同時にプライバシの侵害が懸念されています。例えば, 公開位置情報を利用した空き巣事件やストーカー事件などが実際に起きていたり,会話情報から生活パターンが推測される恐れもあります。

こうした背景から,様々なプライバシ強化技術(PETs)が注目を集めています.代表的なPETsには,ユーザの端末上で自身のパーソナルデータに対してノイズを加えてサービス事業者に送信するローカル差分プライバシや,データを暗号化したまま計算が準同型暗号,ハードウェアによる支援を用いながら保護された隔離環境を作り,隔離環境でデータを処理するTrusted Execution Environment等があります.


本研究室では,これらのPETsを位置情報や音声,画像といった様々なデータに対して適用するための実践的研究を行っています.具体的には,ローカル差分プライバシを用いた位置情報の保護や,Trusted Execution Environmentの隔離環境にクエリ処理機構を実装することでデータ構造に最適化したクエリ処理の実現,異なる組織間で準同型暗号化データを提供し合って集約分析する方式の研究等を行っています.これらのテーマ以外にも,入学後は学生の興味があるデータとプライバシ強化技術に合わせて,研究の実施が可能です.


参考

Taisho Sasada, Yuzo Taenaka, and Youki Kadobayashi, “D$^2$-PSD: Dynamic Differentially-Private Spatial Decomposition in Collaboration with Edge Server”, IEEE Access, Oct 2024. (Accepted)


Taisho Sasada, Yuzo Taenaka, Youki Kadobayashi, “Oblivious Statistic Collection With Local Differential Privacy in Mutual Distrust”, IEEE Access, March 2023. DOI: 10.1109/ACCESS.2023.3251560


Tomoya Suzuki, Taisho Sasada, Yuzo Taenaka, Youki Kadobayashi, “MosaicDB: An Efficient Trusted / Untrusted Memory Management for Location Data in Database”, In The Sixteenth International Conference on Advances in Databases, Knowledge, and Data Applications (DBKDA 2024), February 2024.


Taisho Sasada, Nesrine Kaaniche, Maryline Laurent, Yuzo Taenaka, Youki Kadobayashi, “Differentially-Private Data Aggregation over Encrypted Location Data for Range Counting Query”, In 38th International Conference on Information Networking (ICOIN 2024), January 2024.