セミナーシリーズ
「物理学・応用数学の数値計算最前線」
コンピューターの急速な発展と機械学習やテンソル・ネットワークに代表される新しい計算概念の登場に伴って、計算物理学の分野ではさまざまな数値計算手法が提案されています。また、数値計算法を専門とする応用数学の分野でもモデルが持つ対称性を壊さない計算手法など、洗練された計算手法が開発されています。しかし、他分野での数値計算法の発展にはなかなか追いつけないのも事実で、研究者が悩んでいる問題でも実は既に優れた計算手法が提案されているかもしれません。そこでサイバーメディアセンター大規模計算科学研究部門(計算物理学)とコンピューター実験科学研究部門(応用数学)が共同で、最前線の数値計算手法を専門家に易しく解説していただく連続セミナーを企画しました。このセミナーが分野横断的な知識の共有に役立つことを期待しています。
セミナーは原則として月一回、水曜日の夕方を予定しています。案内をご希望の方はメーリングリストにご登録ください。
Zoomによるオンラインで行います。場合によってはハイブリッドになります。
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6/19(水) 17:00-
弾性体の摩擦の有限要素解析
固体摩擦の古典法則であるアモントン則は、最大静摩擦係数が圧力や、物体のサイズ、形状によらないことを意味する。しかし近年の研究で、弾性変形をする物体では、この法則が必ずしも成立しないことがわかってきた。このアモントン則の破れの原因を調べるために、我々は剛体基板上の弾性体の摩擦の有限要素シミュレーションを実施した[1,2]。その結果、弾性体全体が滑る前に摩擦界面において局所的な前駆滑りが発生し、それがアモントン則の破れを引き起こすことを発見した。また、この現象の有効1次元モデルの解析によって、アモントン則の破れを記述する理論式を導出することに成功した。講演では、これらの成果に加えて、接触条件や並列化を含む我々の有限要素シミュレーションの詳細についても紹介する。
[1] W. Iwashita, H. Matsukawa, and M. Otsuki, Sci. Rep. 13, 2511 (2023)
[2] W. Iwashita, H. Matsukawa, and M. Otsuki, Tribol. Lett. 72, 25 (2024)
世話人 降籏 大介、吉野 元、宮武 勇登
これまでのセミナー
3/13(水) 17:00- 藤堂眞治氏 (東大院理) TensorMC: テンソルネットワーク表現に基づくマルコフ連鎖モンテカルロ法
1/17(水) 17:00- 佐藤峻氏 (東京大学大学院情報理工学系研究科 数理情報学専攻) 「連続最適化問題に対する常微分方程式によるアプローチ」
11/22(水) Qian-Yuan Tang氏 " Exploring protein evolution and dynamics through the lens of AlphaFold "
10/25(水) 曽我部知広氏、稲垣 賢亮氏、菅谷 遼氏 「量子計算アルゴリズムの基礎と最近の研究紹介 ーゲート型とアニーリング型ー」
7/26(水) 永井 佑紀氏 「精度が保証された機械学習分子動力学シミュレーション:自己学習ハイブリッドモンテカルロ法」
6/21(水)宮武勇登氏「データサイエンスにおける常微分方程式の数値解析」
5/24(水) 大久保 毅氏 「テンソルネットワークによる情報圧縮と物理への応用」