当院では2018年5月、国内初となる手術支援ロボットSenhance(ASENSUS社製)が導入されました。主に消化器外科、婦人科腫瘍科、泌尿器腫瘍科で使用されています。2018年5月~2022年3月までに184症例実施しました。臨床工学技士の業務としては、コックピット、アームの搬入、立ち上げ、機器の使用前点検、術中は手術に立ち会い、アームのドッキングやトラブル対応を行います。装置の定期点検は年2回、メーカーの点検表に従い臨床工学技士が行っています。また新たに使用を開始する医師へのトレーニングに立ち会います。
さらにdaVinciが導入され、症例数も増加しており、臨床工学技士の活躍の場が広がっています。
当院では2014年よりTAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)を行っています。高齢や、リスクが高く開心術の適応にならない患者さんに対し行われる治療で、大腿動脈や心尖部からカテーテルによって弁を留置します。臨床工学技士は、清潔野1名、外回りおよび急変時の対応1名の2名体制で行っています。清潔野では弁をカテーテル内に挿入するために、各メーカーのトレーニングを修了した臨床工学技士が弁をクリンプ(圧縮)する作業を行っています。外回り業務では大動脈圧と左室圧の同時圧測定や、急変時のPCPSプライミングなどを担当します。毎週火曜日、年間60-70症例行っています。
自己血回収装置とは、吸引した手術野の出血を遠心分離し、赤血球の濃縮・洗浄することにより作成された洗浄濃厚赤血球を患者さんに返血する装置です。当院では主に心臓血管外科、救命救急科で使用しています。心臓血管外科ではoff pump CABGや腹部大動脈人工血管置換術などで使用されており、臨床工学技士が操作等を行っています。
中枢神経には機能局在という特徴があり部位ごとに特定の機能を有します。神経学的後遺症を避けるためには手術侵襲によりその機能が低下していないかを術中に確認し、場合によっては特定の機能を担う部位を同定する必要があります。手術の大半は全身麻酔下で行うため、術野にあたる中枢神経が持つ機能に応じて光や音、電流で神経を刺激しその反応となる誘発電位を記録、モニタリングします。
当院では事前にモニタリング項目を明確にした申込書を診療科医師に作成・提出してもらい、当日はそれに基づいた機器の設定や装置側への電極接続といった事前準備。医師の指示のもと術中の刺激装置の操作を行っています。
症例数は年間約300例と、週に5~6例程度行っています。
ナビゲーションシステムとは、術前に撮影したMRIやCT等の診断画像を装置に取り込み、患者と同期させることにより、手術部位や腫瘍の位置等の確認をモニタ上でリアルタイムで行うことができる装置です。主に脳脊髄腫瘍科、頭頚部腫瘍科で使用されています。年間約120~130症例行っています。腫瘍摘出や生検等で使用されます。臨床工学技士は、ナビゲーションシステムの機器支援を行っています。年間約120~130症例行っています。
これまでに言及された機器以外にも、手術室では多数の医療機器が使用されています。
そうした機器の保守管理(一部機器の日常点検、院内での定期点検、メーカへの定期点検依頼等のスケジューリング)や術中のトラブル対応についても臨床工学技士が行っています。
また、各手術室で医療機器が適正に使用されているかを確認する安全巡回も毎日実施しています。