集中治療室(ICU:Intensive Care Unit)という言葉は聞いたことがあるでしょうか? そもそも集中治療とは、「生命の危機に瀕した重症患者を、24時間を通じた濃密な観察のもとに、先進医療技術を駆使して集中的に治療する」こととされており、その治療を行うための場所がICUです。そのためICUではモニタリングや輸液ポンプなどの医療機器をはじめ、生命維持管理装置の稼働が非常に高い病棟となるのです。そのため生命維持管理装置を熟知した臨床工学技士がICUにおいて必要とされるのです。
当院は救命救急センターICU(特定集中治療加算2を算定)、小児心臓病センターICU、心臓病センターICU(共に特定集中治療加算3を算定)が存在し2対1看護を常時行っています。ICU以外にはHCUが4室存在します。
臨床工学技士は3~4名配属(救命救急センターICU、心臓病センターICU専従・専任)され、下記の業務が行われています。
平日(月から土)は日勤(8:00~17:00):3~4名(うち1名はCICU常駐業務7:30~16:30)、CICU常駐業務遅番(12:00~21:00):1名が勤務し、夜間・休日は1名が当直し24時間365日対応にあたっています。主な業務は血液浄化療法や呼吸療法の治療準備から終了までの患者管理を行っています。
当院はオープンICUであり、救命救急ICUには集中治療医が常駐しております。我々MEサービス部は2007年に開院してから急性血液浄化療法(CRRT、IRRT、アフェレーシス)の患者管理、人工呼吸器安全確認巡回、ICUにおける医療機器トラブル対応を主に行っていました。2017年からは心臓病センターICUにおける常駐業務を開始。また、小児心臓病センターICUにおける人工呼吸器やハイフローセラピー、一酸化窒素吸入装置の回路組み立て、救命救急センターICUにおけるTTM(体温管理療法)の準備や人工膵臓療法など業務を年々拡大しています。
ICUではそれぞれの職種の専門性を生かしつつ、共有できる部分に関しては柔軟な姿勢や円滑なコミュニケーションが重要となります。ICUにおける臨床工学技士は単に医療機器の専門家としてだけでなく、多職種の様々な視点の情報を集約し方向性を整える環境を作る役割も担っています。
急性血液浄化とは患者の急激な病態変化に伴い体内に蓄積した病因関連物質を除去することにより、病態改善・治癒を図る治療法のことを指します。当院では主にCRRT、IRRT、アフェレーシスを施行しています。臨床工学技士が血液浄化部の医師に対して、治療条件を提案・相談することで、医師が決定した指示を受けています。治療条件が決定してから、回路のプライミング、患者へ装着、治療中の経過観察、回路交換、離脱の検討を行い、一連の血液浄化療法の患者管理を行います。24時間の治療を達成させるため、当院の臨床工学技士は回路寿命の検討や、患者状態に合わせた治療条件の調整を促しています。自ら考案した治療条件が反映されるのでやりがいを感じます。
各ICUで人工呼吸器が安全に稼働しているか、巡回をすることで毎日使用中点検を行っています。電源や配管、回路が間違えて接続されてないか、人工呼吸器の設定、アラームは適切かなど確認をしています。また、設定に関する相談なども受けており、必要に応じてRSTで回診を行います。
心臓病センターICUは心臓血管外科術後の患者へ集中治療を行うICUです(以下CICU)。CICU(心臓血管外科ICU)常駐業務では2人体制で7:30から21:00まで業務を行っています。人工呼吸器をはじめとした呼吸療法関連装置の準備や使用中点検、経過観察、離脱支援を行っています。手術が終わり帰室した際に手術中の呼吸状態を麻酔科医師に確認します。人工呼吸器を装着した後は同調性や動脈血液ガスに問題がないか確認し、設定を調整します。人工呼吸器管理では患者の変化に合わせて病棟スタッフと連携し、迅速に設定調整を行っています。離脱する場合は病棟スタッフと協力しSAT・SBTを行い、患者が安全に離脱できるか評価を行っています。離脱後、再挿管のリスクが高い場合には必要に応じてHFTやNPPVへの移行や離脱までの管理も行っています。
当院のCRRT施行件数の中で最も多い割合を占めているのが心臓血管外科の患者です。血液浄化療法の依頼があった際の迅速な導入はもちろんのこと、CRRT施行中のアラーム対応、回路交換、離脱を行っています。特にアラーム発生時に迅速な対応ができることは、治療を成功させる上で重要になります。また手術後のCRRTは大腿静脈に透析用カテーテルが挿入されていることが多く、安全を考慮していたためリハビリ介入が困難でした。しかし、CICU常駐後はCRRT装着患者のリハビリ介助を行うことで、安全性を担保し早期リハビリ介入にも寄与しています。
小児心臓病センターICUは小児心臓外科術後の患者へ集中治療を行うICUです(以下小児ICU)。小児ICUでは人工呼吸器の回路組み立て、一酸化窒素ブレンダーの人工呼吸器回路への組み込み、ハイフローセラピーの準備やカテ室、手術室への搬送介助などを行っています。小さな体に人工呼吸器をはじめ、一酸化窒素ブレンダーなど沢山の医療機器が装着されており、搬送の際は人手と細心の注意が必要になります。臨床工学技士として搬送時の安全性担保や治療のダウンタイム軽減に寄与しています。
救命救急センターICUは重症・重篤なショック・外傷などの重症な患者へ集中治療を行うためのOPEN ICUです(以下救命ICU) 。救命ICU常駐業務では1人体制で業務を行っています。救命科の患者だけでなく補助循環装置を付けた心臓内科、心臓手術後の心臓血管外科の患者も入室するため各科の治療方針を確認するために朝の回診に帯同します。CICUと違い、緊急入院しかないため院内急変や緊急入院時の呼吸器組み立て、ICU内での補助循環の導入や搬送など必要に応じて臨床工学技士がかかわるすべての機器に対応します。
入院患者の中でも敗血症による血液浄化療法の導入が多く、依頼に応じて速やかなCRRTの導入を心掛け、その他アラーム対応や回路交換を行っています。また高K血症や維持患者の入院などがあれば、出張透析も行っています。
専従することで、重症患者へのCRRTや補助循環装置などの生命維持管理装置の迅速で安全な導入に寄与しています。