ブリコラージュ憲法

本憲法に記す定義によりブリコラージュ作品であるとされる諸制作物は、ブリコラージュ共和国の正当な「会員(国民)」として、入国の権利と、自身がブリコラージュ作品であると称する権利を認める。本プロジェクトは、ブリコラージュ作品の定義とその外延を明らかにし、他国で流布している『ブリコラージュ』にまつわる一切の誤用と偽称を排除することを目的とする。ブリコラージュ共和国の国民は、国の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。


I.ブリコラージュの定義

 クロード・レヴィ=ストロースは、『野生の思考』(La Pensée sauvage )(1962)にて、「ブリコラージュ」とは、有限かつ偶然的に存する要素の組み合わせによって、一定の構造(=概念=意味内容)をもった要素の集合をつくること、またはそのような思考の様式だと定義した。
 同書の記号論を用いた説明によると、「ブリコラージュ」とは
<ある文化圏における意味体系(樹状の意味分類の体系)の中から個別の要素を取り出し、その組み合わせによって、要素間に元の体系とは別の意味体系を取り結ぶこと>だと解釈できる。この一連の思考は、「体系移行図」(右図)によって整理できる。(体系移行図は、「要素」ブリコラージュによって上の意味体系から下の意味体系へ越境していることを示している。)


 本邦においては、同書の解釈に則り、ブリコラージュ作品とは「体系移行図」によって説明が可能であることを原則とする。また、定義をより厳密にするために次条に示す「3つの義務」をブリコラージュの作品の条件として本邦独自に制定する。

「3つの義務」

 本邦では、ブリコラージュ作品の条件として、国民が満たすべき「3つの義務」を以下のように定める。

ありあわせの義務

  

組み合わせられる個別の要素(=資材)はありあわせでなければならない。

読み替えの義務

  

個別の要素の意味は、元の意味とは別の意味に読み替えられていなければならない。


構造をもつ義務


組み合わせられた要素の集合は、要素同士の関係により意味のある構造(意味の体系)をもたなければならない。




入国管理法

 本邦では、ブリコラージュ憲法に定めるブリコラージュの定義とブリコラージュ作品の「3つの義務」に則り、以下の「7つの禁止事項」を定める。これらの項目に一つでも該当する作品は、本邦の「会員(国民)」としての入国の権利と、自身がブリコラージュ作品であると称する権利を認めない。

I.7つの禁止事項」

「目的が先行した資材収集」禁止


目的に沿って資材を寄せ集められた制作物は、ブリコラージュ作品として認めない。


「過度な加工」禁止


加工を施され、資材の特徴や形質が捨象された制作物は、ブリコラージュ作品として認めない。


「ピクセル利用」禁止


同一の特徴や形質を持つ要素の反復によって構成され制作物は、ブリコラージュ作品として認めない。


「意味の変わらない転用」禁止


すべての要素において、前後(上下)の体系で意味内容が変化していない制作物は、ブリコラージュ作品として認めない。


「重ね合わせ」禁止


異なる体系同士で要素部分を重ね合わせること(=兼用)を主旨とする制作物は、ブリコラージュ作品として認めない。


「単体」禁止


資材が単一で複数の組み合わせでないモノは、ブリコラージュ作品として認めない。


脈絡のない構造」禁止


目的とする構造(=概念=意味内容)に脈絡が認められない制作物は、ブリコラージュ作品として認めない。




特殊ジャンルへの注意

以下の項目のいずれかの制作ジャンルに該当する制作物は、その制作過程にブリコラージュの性質を持つことがほとんどであるため、特殊ジャンルとして区分を設け、特に注意をして審査する必要がある。これらの場合、ジャンルに内在する範囲でのブリコラージュは無視し、その作品が独自にもっている特徴のみをもって、ブリコラージュが成立することを入国の条件とする。

「見立て」を行うことが手法の定石とされる制作ジャンル

日本庭園、茶室、生け花、短歌、その他これに類するもの


・「転用」を行うことが前提となる制作ジャンル

建築物の改修、増築、減築、その他これに類するもの