Reject decision letter & Accept decision letter
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― 9転び10起き ―
これまでは,いくつかの原著論文を国際学術誌に投稿し,多くとも数度の非受理(reject) を経て,最終的にはいずれかの国際学術誌に受理 (accept),公表 (publish) されてきた。
今回,小型サル コモンマーモセットの視聴覚刺激強化によるオペラント行動の学習形成に関する論文を,様々な国際学術誌に投稿した。しかし,この論文は,4 年にわたり 9 種類の学術誌に reject され続け,やっと 10 回目に,International Journal of Comparative Psychology (IJCP) 誌に受理された。まさに,「9 転び 10 起き」であった。
その経緯について,表1にまとめた。ここでは,論文を最初に投稿した Scientific Reports 誌から,10 番目に受理された IJCP誌に至る履歴を, 投稿順 (Submission Order) について降順で示した。それぞれの学術誌の出版元,著者の投稿日,編集者側からの非受理,受理の結果通知までの日数も記載した。また,受理された場合のオープンアクセス公開で,著者側が支払う費用(US $) なども示した。なお,オープンアクセス公開形式については,詳細に後述した。
表1 原著論文の国際学術誌 (IJCP) 公表までの道のり
― 9転び10起き ―
IJCP ( International Journal of Comaparative Psychology) 誌 受理掲載論文 url:
https://escholarship.org/uc/item/06k3f6x5
上記の学術誌の論文審査者 (reviewers) は,ほとんどが当該分野の一流の研究者であり,自身の貴重な研究時間の中から,審査のために,熟読した上で真剣な対応を無償でしてくれた。それだけに,極めて手厳しい,しかし適切なコメントを多くもらった。これにより,reject のたびに,論文内容は改善されることとなった。同時に,様々な学術誌の論文審査プロセスの現時点での特徴を知る機会もえた。
ところで,今回の実験内容についてであるが,iPad スクリーン画面上を9区画に分け,それぞれの区画に異なるサル類の小さな動画を無音で同時提示した。マーモセットがそのいずれかの動画をタッチすると,その動画が画面いっぱいに拡大され,さらにはサル類の鳴声が,iPad スピーカから,マーモセットに提示された。これにより,マーモセットが,サル類動画の拡大とその鳴き声を,iPad 区画タッチにより積極的に求めるかどうか,すなわち動画拡大とサル類の鳴き声の提示が,画面タッチ・オペラント行動の形成確立の強化刺激となりうるかについて検索した。
通常のオペラント学習行動では,レバー押しや iPad画面タッチにより,餌やジュースなどの強化刺激を用いて学習形成する。しかし,今回は,そうではなく,動画の拡大やサル類の鳴き声などの視聴覚刺激変化が強化刺激となりうることを,はじめて当該論文で報告した。
現代のわれわれの日常生活では,ひとびとが,スマホやタブレットに熱中している行動を普通に観察している。特に,電車などに乗れば,それを痛切に感じる。そして,そのような熱中が,時として過度になり,依存症のレベルにもなりうることが問題視されている。それゆえ,実験動物でも,このような行動モデルを確立することの意義は大きいと考えてきた。通常は,実験動物で,このような学習行動を形成確立することは困難とされている。特に,ラットやマウスなどでは,安定的にして,強固な学習行動は,餌や水などの強化刺激ではない視聴覚刺激では,ほとんど確立できないとされてきた。
今回のマーモセットを用いた視聴覚強化学習行動の確立についての内容は,国際学術誌の審査者,編集者にさえ,なかなか理解してもらえなかった。9 回の論文 reject により,論文の論点が明確に整理改善されたこともあり,10 回目に,International Journal of Comparative Psychology (IJCP) 誌に受理されるに至った。 IJCP 誌は,The University of California の eScholarship という出版の仕組みとのことである。これにより,論文が審査を経て受理された場合には,その全文テキストがネット上に公開される。一方,読者側は,その全文テキストを無料かつ自由に読むことができる。すなわち,IJCP誌では,オープンアクセス誌としての形式であるにもかかわらず,ありがたいことに著者側の費用負担がない。
現在の学術誌には,上記のようなオープンアクセス形式専用誌と,従来型の定期購読形式でありながら,電子版でオープンアクセス形式も選択できるものとが存在している。オープンアクセス専用誌ないしは定期購読誌において,オープンアクセス形式を選択した場合には,一般的には,論文審査受理決定後に高額なオープンアクセス掲載処理費用を,著者側が出版社側に支払わなければならない。ただし,従来型定期購読誌の場合には,著者がオープンアクセス形式を選択しなければ,その論文は,定期購読誌の紙面と電子板に掲載され,著者側には論文掲載に関する費用負担はない。一方,読者が,その論文全テキストを読みたいと思った場合には,その出版社に会員登録をした上で,1論文につき数千円を出版社に支払い,ネット上の電子版から PDF としてダウンロードする仕組みになっている。ただし,読者が所属する大学や研究機関の図書館などが,その論文を掲載してある学術誌を定期購読していれば,そこから,その論文を無料で読める。しかし,現在では図書館も高額な学術誌を何種類も定期購読する余裕はない。
従来型の紙媒体基本の定期購読誌の歴史のなかから,まず学術誌はネット上の電子版として発展してきた。そのような流れの中から,新しい方式としてのオープンアクセス形式のみの専用学術誌が出現してきた。著者側としては,世界中の読者に,abstract のみではなく,全文テキストを自由に読んでももらいたいという強い動機が存在する。そのためには,著者側は,論文受理後にオープンアクセス形式選択の条件として,ネット上での論文掲載処理費用として数十万円,場合によっては百万円近い費用を出版社に支払うこととなった。このことにより,読者側には,ネット上で自由に全文テキストを無料で読めるというメリットが生まれた。このような仕組みの中では,著者側としては,厳しい審査を経た自身の論文について,自費出版でもないのに,なんで高額費用を出版社に支払わなければならないのかという不満が残る。
出版社側としては,読者側と著者側の需要と供給関係に着目したすぐれたビジネスモデルとしてのオープンアクセス形式を作り上げたと考えているであろう。学術文化などの発展のためには,出版事業が経済的にも自立し,永年にわたり安定的であることが,極めて重要である。また,研究には,莫大なリソースが必要とされ,コストがかかることは誰でも理解している。出版社側としては,そのようなコストの中に論文処理掲載料をあらかじめ予算化しておけばよいではないかと考えているかもしれない。とはいえ,現在のような高額な論文掲載処理費用を出版社側が著者側に請求する状況が,いつまでも継続してゆくのであろうか。著者側,読者側,出版社側の3者にとっての費用負担に関する最適解はどこにあるかについて,今後は調整されてゆくと考えている。特に,今回の IJCP誌の無料オープンアクセス公開モデルを体験してみて,そう感じた。
今回の IJCP 誌では,上記大学の仕組みによる出版のため,論文掲載処理費用は,オープンアクセス形式であるにもかかわらず,前述のとおり無料であった。ただし,論文の受理から公表までの期間は,数ヶ月を要し,ビジネスで成り立っている大手の学術出版社と異なり,審査結果通知,論文受理後の編集処理プロセスは,スローではあった。多分,専任のプロ級の校正の専門家を雇う余裕はなく,大学職員などが編集処理を担当しているのではないかと推測した。また,IJCP誌のネット上での論文投稿システムの完成度は,今ひとつと感じた。一方,高額な論文掲載処理費用を請求できるオープンアクセス誌だと,投稿者側にとって,わかりやすく親切なシステムが構築されており,論文受理が決まってから公表までの期間を最短にする動機づけが存在していると感じた。なぜならば,出版社側には,高額な論文掲載処理費用入金という絶大な強化刺激が存在するからである。
今回の IJCP誌の歴史は,それほど長くはなく,そこに掲載されてきた論文の平均被引用数である impact factor も高いわけではない。また,これまでに掲載されてきた論文の内容も,それほど高度なものとは感じられなかった。しかし,個別の論文が,一旦オンラインでネット上に公表されると,世界中の誰からも,検索でき,論文全文テキストを読んでもらえる。当該論文の内容の価値については,最終的には,読者によって評価されると思っている。実際,オープンアクセス誌では,論文ごとに,どれだけの読者に閲覧されているか,どれだけ引用されたかなどの客観的指標が,リアルタイムで, Metrics などの指標で逐一表示されている。これは,Impact factor などの特定学術誌としての平均的な論文引用数の指標とは別に,個別の論文の成績が知れることになる。
それゆえ,Impact factor の高い雑誌にこだわらなくても,ネット上で,誰にでも自由に検索され,全文テキストが,誰からも閲覧される仕組みの中での論文全テキスト公表は,今後もある程度は進化してゆくと考えている。今回の論文の投稿と受理の経験を通して,テレビ放送と youtube との関係についても思いを馳せた。すなわち,従来型の“権威ある”テレビ局の放送に代わって,玉石混交ではあっても, Youtube の社会的インパクトについての注目が集まっている。Youtube は,誰もが自由に無料で公開可能である。歴史と伝統と権威に守られ,巨大ビジネスとして確立している出版社に対して,今後 IJCP誌のような学術誌スタイルが対抗勢力となって進化してゆくのか極めて興味深いところである。すなわち,大手出版社が,論文受理後に著者側に請求する高額のオープンアクセス掲載処理費用に対する一つのブレークスルーが,IJCP 誌のような,大学主導の無料オープンアセス形式などにもたらされるのか注視していきたい。ただし,IJCP誌は,現在のままでは十分ではなく,もっとスピーディーな論文受理後から公表までの処理などが望まれる。
ところで,論文を9回も,reject されると,自信を無くしたり,諦めようとする気持ちが当然起こってくる。しかし,この研究に従事してもらった共同研究者に対しても,また研究をサポートしてくれた研究所に対しても,論文公表というかたちで,研究者としての最終責任を果たさなければならないという想いが強く存在した。
今回の個別的論文公表体験から,より一般的視点にたって,論文公表のプロセスや意義などについて,以下に述べてみたいと考えた。
研究者が,実験により結果を出した場合には,必ず論文に仕上げねばならないと思うに至った。学会発表については,たとえ,それが国際学会の発表であったとしても,最終的には,論文にまとめ上げるためのひとつのステップにすぎないと思っている。実験的研究には,施設,人手,実験材料などの膨大なリソースがコストとして費やされている。それゆえ。そのような背景によって成し遂げられた研究には,それに見合った論文のかたちでの報告義務が,研究を主導した研究者には存在すると考えている。
企業などの研究は,段階によっては,公表できない事情はいくらでも存在するが,当然,研究内容は,企業内の研究報告書にはまとめられていると思う。また,研究所には,研究者とともに,研究を支える優秀な技術者の存在が欠かせない。技術者には論文作成とは別に,研究に必要な技術とそれを駆使した実験の適正な実施技量などが欠かせない。この立場は,研究者と同様の論文作成よりは,よりよい技術の向上の達成が求められる。しかし,出来ることならば,技術者にも技術報告書などにまとめ上げる修練は必要と思う。なお,著者が所属してきた研究所では,優れた技術者による研究のサポートや,医学的に有用な実験動物の開発業務などに,多くの技術系職員の絶大な貢献が存在していた。
国家などから研究費を支給されている場合には,その研究成果をスポンサーに対して報告することとは別に,原著論文のかたちにまとめ上げ,公表することが研究者にとって重要であると思う。ここでは,せっかくコストを掛けて実施した研究は,サイエンス世界への貢献という意味でも,国際学術誌での公表が前提となろう。なぜなら,その公表は,PubMed などに登録され,その内容は,少なくとも abstract を通して,世界中で検索されうる。オープンアクセ誌なら,そこから全文テキストが,誰にもネット上で読め,そうでない場合でも,読者側が経費を支払って,その論文の全文テキストPDF を購入し,読むことができる。このような個別の研究情報は,広大なサイエンス世界の蓄積物の一片に過ぎない場合もあるが,これらが蓄積され,検索されることにより,更なる研究発展のために役立つサイエンスの全体基盤を構築することになる。著者は,これを「知のピラミッドの構築」と呼んでいる。
研究には,他の業務などに比べて自由度が多い場合がある。そうでなければ新しい発見や発展は望めない。このような自由度のある世界では,せめて研究は必ず論文にまとめなければならないという縛りを,研究者に果たしても当然ではなかろうか。大学などでの学位取得,そこでの就職,昇進などの評価のひとつに,どれだけ意義ある研究成果をあげてきたかは,公表論文の内容によると思われる。公的研究費などを獲得するためにも,これまでの論文公表が,評価の重要な材料となっている。過度な論文至上主義や,Impact factor への極度なこだわりは的外れと思っている。しかし,研究実績を客観的に示すひとつとして,国際学術誌での原著論文公表の重要性を否定することはできないであろう。
研究の内容を公表するには,それ以前の前提条件として,明確な研究目的を達成するための実験計画とその研究の実施が前提となる。これについては,これ以上触れないが,この前提があってこそ,論文内容の目的の明確性と論理的実施整合性に関する記述が可能となる。
まずは,論文の構成をしっかりと考えて,得られた成果をどうわかりやすく伝えてゆくかが重要である。実験データについては,生データと解析データの正確性に関する検証が重要であり,その前提には,研究データ類の記録が正確に,秩序だって整理されていることが必要である。また,生データと解析データに誤りがないことを証明するチェック実施記録の存在も必要となる。
結局,これらのことが確保されていることを,第三者にも証明できるためには,医薬品の安全性データ取得に求められている Good Laboratory Practice (GLP) 基準を参考にするのがよいと思っている。GLP 実施の3大コンセプトは,得られたデータに関する「正確性」,データや記録類がきちんと整理保存されている「保管性」,以上に基づいて実験を論理的仮想的に再現できる「再構成性」が重要とされている。これは,基礎的サイエンス実験においても求められる基本的なコンセプトと確信している。論文の改竄や不正の問題が起こるたびに,研究施設内での精神訓話のような講習会を幾度開催してみても,ほとんど効果はないと思っている。これでは,いつまでたっても,論文データの改竄や不正は跡をたたない。
医薬品安全性評価試験研究では,当たり前のように実施されている GLP 基準の習得と実践が,基礎研究施設に,もっと導入されるべきであると日頃思ってきた。面倒臭い手順をきらっていても,あとでデータの誤り,不正,改竄が見つかって,研究者人生を棒にふることを考えれば,少しくらいの手間や時間は惜しむべきではない。というか,GLP的な研究実施習慣を身につければ,これに則らないと,実験を安心して実施できない感覚が身に付いてくると思っている。
研究を論文にまとめ上げた場合に,どのような学術誌に投稿するかという課題がある。出来ることなら,研究生活のスタートから,英文で仕上げて,国際学術誌に投稿するようにした方がよい。なぜならば,研究をベースにしたサイエンス世界の共通言語は,英語だからである。
英文の国際学術誌は,無数にある。初めから,評判の高い上位の学術誌への投稿を狙うのもよいが,まずは自分の研究テーマにあった学術誌を選ぶべきであろう。それは,必然的に自分の論文で引用した journals のいずれかとなる。学術誌のレベルは,Impact factor などにより,その雑誌に掲載された論文が,平均的にどれだけ他から引用されているかの指標などで,ランクができている。最初は,あまりそれにとらわれる必要はないと考えてきた。自分の研究課題に近いテーマを扱っている学術誌をまずは選んで,そこの投稿規定に従って論文を作成し,それに投稿してきた。
出来ることなら,論文が受理された場合に,Abstract だけではなく,テキスト全文が,ネット上で,誰にでも無料で読んでもらえるオープンアクセス形式の選択がよい。ただし,この場合には,論文が受理された場合に,前述のとおり,著者側が論文掲載処理費用として,数十万円を出版社側に支払う必要がある。これは,あらかじめ研究予算の中に組み込んでおくしかない。なお,高額な掲載処理費用徴収を悪用したハゲタカ journals は,避けるべきである。
作成した論文をどのような学術誌 (journals) に投稿するのが最適であるかについては,悩む場合もあると思う。論文の素案が出来上がった段階で,それをどのような学術誌に投稿するかについて,検索するシステムがネット上にいくつか存在する。
そのひとつに, Elsevier Journal Finder というのがある。下記の url をクリックされたい。
https://journalfinder.elsevier.com/
すると下図が現れてくる。
次に,その枠の中に論文の abstract 内容をコピーペーストする。今回は,例として上記の論文 “Tablet screen-touch behavior with audiovisual stimulus consequences in the common marmoset (Callithrix Jacchus)” の abstract を入れて,「Find journals」 をクリックしてみた。その結果,下図のような候補 journals が出てきた。ここには,各 journal の Impact Factor, Cite Score, Time to First Decision, Time to Acceptance, Acceptance Rate, Open Access の論文掲載処理費用などが記載されている。
Impact factor: その雑誌の1件あたりの論文(下記 Cite Score とは異なり,論文以外のニュース記事などは含まず)について,2年間で他の論文に引用される平均数。当該Elsevier社とは異なる第三者機関である Clarivate Analytics による指標である。
Cite score: Elsevier社が定めた指標である。その雑誌の1件あたりの論文ならびに記事について,4年間で他の論文に引用される平均数。この指標によると当社出版の超名門 journal “Cell" のスコアは,上記の impact factor から大幅に低下した。
Time to 1st decision:投稿された論文の受理/非受理のいずれかが,投稿者に最初に知らされる期間(日数)。
Time to acceptance: 最終的に論文が受理される期間(日数)。
Acceptance rate: 投稿された論文のうち最終的に受理される論文の割合(%)。
Open Access: WEB上に論文が掲載され,誰もが,全文を無料で閲覧できる オープンアクセス形式を著者が選択した場合,著者側が負担する論文掲載処理費用(US $)。
Subscription: 著者が当該論文について,定期購読型での出版を選択した場合には,著者側の論文公表の費用負担はゼロとなる。一方,読者は,その論文の abstract のみを PubMed 上で,自由かつ無料で読める。しかし,テキスト全文を読むためには,その学術誌を少なくとも年間購読するか,大学図書館などに,あればそこで閲覧するか,ネット上での論文全キストPDFを数千円かけてダウンロードするかの中から,選択する。
今回の Journal Finder については,巨大私企業である Elsevier社 1社が出版している 2,000種類以上の journals の中から,40 journals が,今回の論文の投稿用候補として現れた。上記記画面では,4番目以降の journals については省略してある。しかし,今回の検索では,あくまでも Elsevier社の学術誌に限られており,検索結果についても,journal の名前からして,明らかに今回の論文内容にそぐわないと考えられるものもあった。したがって,このような検索は,あくまでも参考程度のものとなろう。
また,Elsevier 社以外には,下記出版社による検索サイトが存在する。
Springer Nature社 の場合
Springer Nature Journal Suggester
https://journalsuggester.springer.com/
ここでは,今回の論文に適合する可能性のある journals が,20件リストさた。
John Wiley社 の場合
Wiley Journal Finder (beta版)
https://journalfinder.wiley.com/search?type=match
ここでは,今回の論文の分野では,検索がヒットされず,"Sorry, we were unable to generate any results.” と出てきた。
その他にもいくつかの journal 検索法がある。上記に挙げた3社の検索法は,いずれもそれぞれの出版社が自分のところで出版している journals の中から,どれがあなたの論文の投稿先 journal としてよいのかを教えてくれるものであった。本来は,中立的な視点から候補 journals を探したいと思うであろう。そのような場合には,下記のものがある。
JournalGuide
https://www.journalguide.com/
提供元:AMERICAN JOURNAL EXPERTS
利用料:無料
結果:即時
対象:出版社を超えた横断的
わかること:「ジャーナルとの相性」「出版元」「インパクト(SNIP)」「採択から出版までの期間」「オープンアクセスへの取り組み」など多数
Journal Recommendation
https://www.cambridge.org/academic/author-services/services/journal-recommendation/
提供元:AMERICAN JOURNAL EXPERTS
利用料:US $150
結果:4営業日
対象:横断的
EndNote: EndNote Match - Manuscript Matcher
https://endnote.com/product-details/manuscript-matcher/
提供元:Clarivate Analytics (文献引用ソフト EndNote の制作元,日本ではユサコが代理店)
利用料:無料(ただし,EndNote 購入済みが前提,また,EndNote version 9 からの機能のようである。)
対象:横断的
さらに,WEB 上には,この手の検索手段や情報は下記の通り多数ある。
"Top 7 online tools that provide journal recommendation to researchers”
また,北海道大学図書館の WEBサイトに「投稿先としてのジャーナルの調べ方」というのがあり,上記を含めた内容があり,これも参考になると思う。
https://www.lib.hokudai.ac.jp/support/journals_for_submitting_your_paper/
そのほかに,Google 上で,「論文投稿 学術誌選択」と入力すると,下記のような WEB サイトが検出され,その url も付記した。
ジャーナル選択 (enago 研究支援サービス)
適切な論文支援先を選ぶ:ジャーナル選択のフローチャートとヒント(Think Science)
https://thinkscience.co.jp/ja/articles/choosing-the-right-journal
以上,論文をどのような journal に投稿するかについての検索法について記載してみた。しかし,実際にはこのようなものとは別に,自身の専門分野内で日頃読んでいる論文の掲載学術誌などに直感的にトライしてゆくものだと思っている。一応,周辺の状況を知っておくことは無意味ではないと考え,journal 選択に関する検索方について,参考程度に記載してみた。
論文を投稿する場合には,それぞれの出版社により,個別の ネット上の論文原稿投稿方式がある。それぞれの方式に違いはあるが,流れの基本は同じである。投稿時に必要な項目を満たしていないと,論文は,Editor にまで行かずに,投稿前段階作業が完了しない。
投稿前段階作業では,編集側から個別の問題について,指摘がある。例えば,実験動物使用に関して,あるいはヒトが被験者の場合に関して,それらの倫理規定の記載が不十分であるとか,図表のフォーマットが不十分であるとかの指摘がある。これらを通過すると初めて,論文内容に関する審査が開始されるために,論文原稿が,Editor in chief に送られる。そこから,2ないし3人の reviewers に論文が回されて,その審査結果を踏まえて,Editor が,論文を非受理ないしは論文の補足,修正などを著者に求めてくる。その後,最終的な論文受理に関する可否の知らせが,Editor からくる。論文投稿から,最終的な論文受理の可否決定までの期間は,学術誌により異なる。処理スピードを売り物にしている学術誌もあるが,最長では数ヶ月となることもある。
論文受理が決定すると,あとは編集作業となり,編集作業部門とのやり取りとなる。オープンアクセス専用誌の場合には,ネット上に論文テキスト全文が掲載され,著者側の費用負担のおかげで,だれもが,無料でそれを読むことができる。しかし,定期購読型の学術誌の場合には,オープンアクセスでの論文掲載を希望するか,あるいは紙媒体を含む定期購読型電子版の公表を希望するかの選択が求められる。著者が,オープンアクセス形式の電子版を選択した場合には,著者側に,数十万円の ネット公表処理掲載費用負担を求められる。しかし,著者が,オープンアクセスを選択しなければ,論文掲載料を支払う必要はなく,無料となる。一方,読者側が,その論文を読みたいと思った時には,紙媒体の雑誌として購読するか,ネット上の電子版で,それを読むために一定額の費用負担をする必要がある。ただし,読者の所属大学などの図書館で定期購読していて,それを利用できる場合には,その論文全テキストを自由に読める。今回,前述した IJCP誌は,オープンアクセス専用形式であるにもかかわらず,大学運営で無料であった。
論文が公表された後は,その論文のWEBページに行くと,Metrics などの指標をみることができる。これにより,個別の論文がどれだけ他人から閲覧され,ダウンロードされたかが分かる。また,この論文の引用された件数も示されている。例として,オープンアクセス誌のパイオニアである PLOS ONE 誌に,著者らが 2012年に掲載した下記論文の metrics を示した(下図参照)。著者側に高額な論文処理費用を負担させる PLOS ONE などについて,当時の権威ある学術出版社は,学術誌のゴミ箱と,くそみそに述べていた。現在は,それらの出版社も,掌を返したように,率先して,オープンアクセス形式を採用している。
実施した研究を論文にまとめて,それを国際学術誌に公表するまでには,長い道のりがある。日常業務に忙殺されて,論文執筆の時間などとれないと思う理由は山ほどある。途中で,諦めかける瞬間はいくらでも存在する。しかし,研究を実施したからには,必ず論文のかたちで公表するのが,いわば研究を主導した研究者の務めであると考えている。多くの人手,材料,施設,時間などのリソースが費やされたものが,陽の目を見ることなく埋もれてしまうのは,個人,所属機関,社会にとって,大きな損失といえる。企業秘密などに関連する報告書などは別として,純粋な学術研究を実施した場合には,論文により公表することがなければ,研究者の個人的経験としてしか残らない。そのような貴重な経験も,いずれ忘却のかなたへと旅立ってゆくであろう。これでは,そこで費やされたリソースを公的には無にしてしまうことと同様と考えている。著者は,研究者としてのスタートから,そのように深く考えていたわけではなく,いわば自戒の念をこめて,そう思うに至ったということである。