2026年5月18日 大学教育におけるAI対策について
私が担当する春学期の『科学・技術・社会A』という講義では、位置情報や再生医療、軍事科学などのさまざまな科学技術をとりあげ、その倫理的・法的・社会的課題を紹介し、学生たちにグループワークで議論してもらっています。そのなかで先日AIをとりあげ、大学でのAI対策についてどう考えるのか、グループワークをしてもらいました。
このグループワークでは「桜美林大学 学生の生成AI利活用に関する基本方針」について考えてもらったり、本来身に着けるべきレポート作成力をどう教育すべきかといったことを聞きました。学生たちの回答は教員である私にとって参考になったので、ほかの先生などにとっても参考になるかもしれないと思い、一部を掲載したいと思います。(学生からも掲載する許可を得ました)
ここでは、以下の質問に対する学生たちの意見について、紹介したいと思います。いずれも完璧な対策ではありませんが、講義の内容や目的に合わせて組み合わせていくことで、AIを安易に使うことの抑止につながる可能性があります。学生のアイデアとそれに対する私のコメントは以下の通りです。
問 「AIの出力をそのままレポートやテストの回答にする」というトラブルは、どのようにしたら防げると思いますか。
① 技術的に対策する方法
• インターネットがつながらない空間でテスト等をする
現地テスト形式ならば強力な方法です。ただし、現実的には難しいかもしれません。
• AIチェッカーの導入・重視
チェッカーの精度の問題があるため、教員側が結果を信じすぎてはいけませんが、あくまで参考としてなら良いと思います。
• コピペ禁止フォームを使う
多少の抑止力にはなる可能性があります。ただし、入力する内容案をAI任せで作ることは可能です。現状、教育ツールではあまり見ない印象です。
② 評価を工夫する方法
• 口頭試問・プレゼンで評価する
口頭試問・プレゼンは、小~中人数の講義では実施可能で、実際に抑止力になる可能性があります。ただし、プレゼン内容や資料をAI任せにすることは可能です。
• 小テストを実施する
カンペ禁止や手書きの方策と組み合わせれば、抑止力になります。
• リアクションペーパーを併用する
毎回のリアクションペーパーではAIを使う学生が(相対的に)少ないため、評価に組み込めばAIの影響が小さくなる可能性があります。ただし、リアクションペーパーでもAIを使うことは可能です。
• 手書きで提出してもらう
抑止力になる可能性があります。ただし、持ち込みありの場合、元案をAI任せで作ることは可能です。
• レジュメやパワポに書いていない言葉をテストに出題する
資料読み込み系AIへの対策として効果がある可能性があります。例えば、レジュメ等を穴埋め式にして提供する方法がありえます。ただし、内容によってはAIが回答できてしまう可能性があります。
• 途中経過や下がきアウトラインを提出してもらう
抑止力になる可能性があります。ただし、AIに完成版を作らせた後、もう一度AIに資料を読み込ませてアウトラインを作らせることは可能です。
• 人間味のある課題や、主観、個人の意見を問う
抑止力になる可能性はあります。ただし、 AIでも主観のような文章を作ることは可能です。また、講義や評価の視点によっては、この方法は難しいかもしれません。
• 参考文献を記載してもらう
抑止力になる可能性があります。ただし、AIに文献を挙げさせることは可能です(AIが存在しない・不適切な文献を挙げる可能性はあります)。
③ AIを利用することを前提に評価や対策を行う方法
• AIを使用した箇所を明記してもらう
自覚を促すことや、教員が状況を把握して教育に活かすことにはつながります。ただし、正直に書かない学生が出る可能性はあります。
• AIを使って学生自身がレポートを添削し、その過程で力を着けるようにする
AIを適切に利用する力や思考力が身につく可能性があります。ただし、AI任せになってしまうリスクはあるので、AIをどう添削に利用するかも伝える必要があります。
④ AIの適切な利用を進めるために教師がやるべきこと
• 各教員がAIルールを明確に提示する
学生側の混乱を避けるために今後必要になる対応です。教員の意識やAIスキルにばらつきがあるため、教員側の知識のアップデートも必須です。
• AIの使い方を教える授業をつくる
必要性は高いと考えられます。ただし、世界的にまだAIが変化の途中にあり、その対応も変化し続けていますので、教えた内容がすぐに古くなってしまう可能性はあります。単なる使い方だけでなく、倫理的な視点なども教える必要があります。また、どの教員がどういうかたちで(必修なのか等)担当するのかはすぐには決められないため、簡単ではありません。
思った以上に多くのアイデアが出たことに驚きました。学生たちがAIをどう捉えており、何に悩んでいるのかも聞くことができ、私自身、大変参考になりました。
学生の意見を参考に、この講義では、レポートに「AIは使っても使わなくても良い」としたうえで、AIの適切な使い方と避けるべき使い方、AI任せにした際のデメリットを説明したうえで、①レポート内容は学生同士でプレゼンもしてもらうこと、②参考文献リストを書いてもらうこと、③AIを使った場合にはどのように使ったのか明記すること、をAI任せ対策にすることを決めました。でも、このようなグループワークをしたこと自体が、AI任せのリスクを下げることにもつながるように思います。教育は教育者だけで行われるものではないので、学生たちの声をも聴くべきだと痛感しています。
2026年5月4日 毎日新聞にとりあげていただきました!
昨年度出版した著作「申請書・論文で役立つグラフィカルアブストラクト作成の基本とコツ」(羊土社, 2026)に関連して、研究概要図(グラフィカルアブストラクト)について毎日新聞で以下の記事としてとりあげていただきました。研究概要図に関する取材対応のほか、イラストも提供しました。いろんなかたに注目していただけるのが嬉しいです。
新聞掲載「ニーズ高まる研究概要図 分かりやすさとインパクト求め」
毎日新聞社 毎日新聞 朝刊 11頁 科学面 (全1,754字) 2026年5月4日
記事URL:https://mainichi.jp/articles/20260504/ddm/016/040/017000c(有料版)
2026年4月15日 新年度が始まりました
新年度が始まりました。今年度も多くの新入生を迎えています。
今年度は研究者としていろいろとチャレンジを進めていく予定なので、不安もありますが、楽しんでいきたいと思います。
教育面でも、外部とのコラボレーションを増やす予定です。外部の方からの依頼で冊子を評価したり、イベントを評価したり、あとは外部の方へのゲスト講演もお願いしてみようかと思っています。学生にとっても私にとっても学びの実りが増えるよう、今年度も努めていきたいと思います。