2026年2月10日 「科学をデザインする」——大正製薬×科学技術コミュニケーション論Bの取り組み
2026年2月10日 「科学をデザインする」——大正製薬×科学技術コミュニケーション論Bの取り組み
受講生の作品
受講生の作品
教員(有賀)の作品
「科学をどう伝えれば、人の心に届くのか?」
秋学期に開講された「科学技術コミュニケーション論B」では、この問いに対し、学生たちが「Adobe Illustratorによる図解制作」という実践的なアプローチで挑みました。2025年度は、特別講師として株式会社大正製薬の皆様をお招きし、お題を提供していただきました。この記事ではその取り組みを紹介します。
デザインの基礎を学んだ後、タウリンの機能を学ぶ
第1~3回は科学を伝える方法やデザインについて座学講義をおこない、第4回の講義でこれから制作する図のテーマを提示しました。今回のテーマは「タウリンの科学」。大正製薬の方に来てもらい、お話をしていただきました。
タウリンと聞くと「疲労回復」のイメージが強いかもしれませんが、実は筋肉や肌にも良い働きがあります。また、猫は体内でタウリンを合成できないため、キャットフードにはタウリンが含まれています。大正製薬の方からは、このような意外性のある話題が次々と紹介されました。
講義後には、学生と大正製薬の皆さんでグループディスカッションを行い、タウリンに対するイメージや疑問点について意見を交わしました。
図を考え、仕上げていく
学生たちは講義内容の中から特に興味をもったトピックを選び、講義を聞いていない他の学生でも関心を持って理解できるような図案(鉛筆ラフ)を考えました。そしてAdobe Illustratorの基本操作を4回分の講義で学んだあと、残り6回の講義で、図を作品として仕上げる作業を行いました。
受講生のほとんどはAdobe Illustrator初心者です。操作にクセがあるため多くの学生は悪戦苦闘しますが、慣れてくると作業に没頭します。
印象的だったのは、制作の進め方に個性がみられたことです。黙々と作業を進める学生もいれば、教員に積極的に質問する学生、AIを使ってアイデアやアドバイスを得る学生、授業では扱っていない操作方法を自分で調べて取り入れる学生もいました。それぞれの工夫や個性が、制作プロセスに表れていました。
作品を完成させて
第14回(最終回)には完成した作品に大正製薬や指導教員である私が講評をしました。このページには2つの学生による作品を許可を取って掲載させてもらっています。いずれも個性的で、タウリンに関心をもってもらえる図解ができたのではないかなと思います。
学生からは企業の方からコメントをもらえて刺激的だったという意見や、難しかったけど楽しくて学びが多かったといった意見をもらっています。大正製薬の方からは発想力や表現の豊かさやイラストのスキルに驚いたというご意見をもらっており、双方に気づきがあったのではないかと思います。
ちなみに3つめの図(「タウリン美肌?」)は私(有賀)の作品です。例年は学生に指導するのみなのですが、今年度は私も作画に参加してみました。普段描かない画風に挑戦し、楽しく取り組むことができました。
AIが瞬時に図解を生成できる時代だからこそ、私は判断力と粘り強く試行錯誤する力がより重要になっていると考えています。
AIが作る図やデザインには、違和感や不完全さ、誤りが含まれることも少なくありません。誤りを見つけつつ、デザインの良し悪しを判断してより良い表現に修正するためには、基礎的なデザインスキルや論理的思考力が欠かせません。
さらには、自分の手で考え、悩みながら図解を完成させる過程で得られる気づきや、自分の力でひとつの図を完成させたという体験は、学生たちの生きる力につながると思っています。
2026年2月2日 2025年度の研究者としてのふりかえりと抱負
出版された書籍
新年になり、秋学期も終わりに近づきました。ここでの記事発信がまったくこまめにできていませんが、2025年も多くの学生と出会い、学生と一緒に考えたり、議論したりすることができました。
2025年は、研究者と実践者としての私にとっては、大きな節目の年となりました。
まず、いくつもの研究を始めました。今年度から2つのプロジェクトに共同研究者としてに参加し、来年度に向けて学内でも共同研究を申請します。また、日本の図鑑を中心とした生物系イラストレーターの研究を本格的に進めました。歴史的な方法論での研究にチャレンジしつつ、博物館の研究者とも連携して資料保存にも取り組み始めました。来年度はこのテーマで科研費の共同研究を申請中です。
さらに、この10年間分の研究と実践を踏まえた書籍を出版しました(「申請書・論文で役立つグラフィカルアブストラクト作成の基本とコツ」羊土社2026年1月発行)。現代の論文の図の研究は、大方まとまりました(論文は査読中)。
一方、2025年はいろんなことに区切りをつけ、整理する年でもありました。
科学イラストレーター・デザイナーとしての仕事は、個別にクライアントから依頼を受け、対価をもらって制作するというタイプの仕事は、2025年までで区切りをつけました。今後は科学コミュニケーションの専門家として、研究・プロジェクトや教育指導、普及活動のなかで図制作やアドバイジングを行い、プロとしてのスキルを高めていこうと考えています。
さらに、2014年に作ったサイエンスイラストについて紹介するウェブサイト「雅楽堂」を改修しました。出産後なかなか更新できない状況になったあと、SNSやAIなどの情報の在り方の変化のなかで、静的なウェブサイトを維持するべきか数年間悩んでいました。自分のアイデンティティを研究者であると定義し直し、その立場から「サイエンスイラストの世界」(https://science-illustration.jp)というサイトを2月頭に再オープンしました。
ほかにも、始めたこと、終わらせたこと、断ったことなどがたくさんあり、人生をふりかえる年となりました。40代に入りましたが、まだまだ新しいことにチャレンジできることは嬉しいことだと思います。不安なこともたくさんありますが、研究や実践というかたちで、社会に新しい知識と価値を提案していきたいです。
2025年12月17日 有賀ゼミがLA研究発表月間に参加し、3ゼミ合同で発表を行いました。
制作したゲーム体験の様子
ポスター発表の様子
毎年有賀ゼミでは、科学コミュニケーションや科学と社会をテーマに、分析か実践(イベント企画)か制作という3つの選択肢から学生自身がやりたいことを選び、チームごとに取り組んでいます。今年は2チームにわかれ、どちらも科学知識が学べるアナログゲーム制作に取り組みました。
ひとつめのチームはスキンケアの正しい情報を楽しみながら学ぶゲームとして、「美容知識王」というカードゲームを作りました。様々な肌タイプと肌トラブルに対して、どんなスキンケアがよいのか考える力を身に着けるための対戦形式のゲームです。
もうひとつのチームは、健康知識を学べる百人一首「ARIZAP」をつくりました。健康知識を面白く表現した上の句と下の句をつくり、その対応を予想しながら札を取り行くゲームです。
制作したゲームはゼミ生全体で体験し、評価をしあいました。
最終回となる12月17日には、環境学の藤倉まなみ先生、データサイエンスの山本絢子先生と3ゼミ合同で、ポスター形式のゼミ・卒論発表会を行いました。他のゼミ生とも交流できて楽しい締めくくりになりました。
リベラルアーツ学群研究発表月間については、大学ニュースにも記事や写真が出ています。
https://www.obirin.ac.jp/info/year_2025/lo4e4n00000chfsl.html
2025年8月5日 有賀ゼミで「未来×デザイン:ひみつ道具から未来を想像しよう」というワークショップを開催しました
ディスカバ!の様子
有賀ゼミでディスカバのプログラムとしてワークショップを開催しました!
ディスカバ!とは桜美林大学が開催する高校生のためのキャリア支援プロジェクトで、中高生向けにさまざまなプログラムを提供しています。その中のひとつとして、今年もゼミとして「未来×デザイン:ひみつ道具から未来を想像しよう」というワークショップを実施しました。ゼミ生12人、高校生37名が参加しました。
このワークショップでは参加型テクノロジーアセスメントという、先端科学技術の影響や対策を考える活動の疑似体験をします。午前中はスモールライトが実現したらどのような影響が起こりうるのか、それに対してどんな対策が必要なのかを話し合いました。
午後は午前の話あいを踏まえ、実際の科学技術をテーマに、その影響と対策を考えました。選択肢は、①生成AI、②宇宙開発、③再生可能エネルギー。高校生に関心のあるテーマを選んでもらった結果、①生成AIが4グループ、②宇宙開発と③再生可能エネルギーがそれぞれ1グループになり、グループごとに影響や対策を議論してもらいました。最後は高校生が中心となって、紙芝居方式で議論の成果を発表しました。
ゼミ生はこの日のためにファシリテーションを練習してきましたが、どのグループもよく話せていたと思います。参加してくれた高校生も積極的な人が多く、良い雰囲気で進めることができました。
初めて会った人同士でも活発にアイデアを出し、議論できていたのがとても良かったです。参加者もゼミ生も、入学部ディスカバ!の皆さんもお疲れさまでした!!
2025年7月10日 日本科学未来館のポッドキャストに出演しました
日本科学未来館のポッドキャスト番組に出演しました。前半の「#30 科学の目で見て描いてみた!:ワークショップの振り返り編」(2025年7月8日配信、24分)は科学コミュニケーター澤田さんらが企画した日本科学未来館のワークショップ「科学の目で見て描いてみよう」 について、澤田さんに私がいろいろ聞いています。後半の「#31 科学の目で見て描いてみた!:科学イラストの研究編」(2025年7月10日配信、36分)は私の科学イラストの研究について、澤田さんが私に聞く形でお話ししています。
観察をベースにした科学イラストとはどういうもなのか、科学論入門での学びともリンクする内容をお話ししています。インターネットにつながるならばいつでもどこでも聞けますので、ご興味がある方は是非聞いてみてください。
ポッドキャスト番組「ミュージアムの片隅で未来を雑談するラジオ」
https://www.miraikan.jst.go.jp/resources/podcast/
2025年5月20日 新年度が始まっています
新学期が始まりました。様々な授業が走り始めています。
専攻演習Ⅰでは、今年度は14名のゼミ生を迎えていました。アイスブレイクを重ねて交流しながら、議論や論文報告などを行っています。今年度もどんなゼミになるのか楽しみです。
2025年5月20日 4月と5月
4月~5月以降は風邪を断続的に引いていて体力的にへとへとですが、新年度らしく、私の中で新しいこともいくつも始まりました。
新しいプロジェクトでの新しい研究のはじまり。自分が価値があると思う図の原画の保存と調査のはじまり。新しいメディアへに出演し、自分の研究や取り組みを発信するとりくみ。
長く活動を継続することも、経験のない新しいことに挑戦することも、どちらも大事なことです。今年度はその両方のバランスを取りながら、自分にやれること、楽しいと思えること、意義があると思えることに取り組んでいきたいです。