1. 語順と文型
タコ語の文は全て「句 a 句 a 句 ...」という形をとる。
例 Pai a eke a kite「私は肉を食べる」
pai : 代名詞
eke : 食べる
kite : 肉、力
それぞれの句の役割はその順番によって決まり、大きく四つの文型がある。
① 主語(S)
② 主語 動詞(SV)
③ 主語 動詞 目的語(SVO)
④ 主語 動詞 直接目的語 間接目的語(SVOO)
1.1. 名詞文(S)
主語だけで成り立つ文で、主に主語が存在することを示す。主語は必ず名詞の意味で読む。
例 tapipai「水だ」
tapipai : 水
主文の前に置いて、主文を補足する用法(副詞的用法)もある。
例 Kepe. Pai a kuti a tatepai.「家に帰った」
Tupe. Pai a kuti a tatepai.「家に帰っている」
kepe : 過去
tupe : 今
pai : 代名詞
kuti : ~に進む
tatepai : 住むもの=家
タコ語には時制がないので、apa「未来」、tupe「今」、kepe「過去」で補足する。
1.2. 自動詞文(SV)
一つの中に句が二つあるときは、「主語 自動詞」として読む。
例 Apapai a kipu.「あなたは歩く」
apapai : 目の前の人=あなた
kipu : 歩く、立つ
日本語の形容詞や名詞の中にはタコ語で自動詞となるものがある。
例 Pai a ae.「それは良い」
Pai a tapi.「それは水だ」
pai : 代名詞
ae : 良い
tapi : 液体/気体の、流れる
1.3. 他動詞文(SVO/SVOO)
一つの文に句が3つあるときは、「主語 他動詞 目的語」として読む。
例 Pai a aetepa a apapai.「私はあなたが好きだ」
pai : 代名詞
aetepa : 良く思う=好きだ(ポジティブな感情全般)
apapai : あなた
一つの文に句が4つあるときは「主語 他動詞 直接目的語 間接目的語」として読む。
例1 Kau a pete a ati a ekepai.「彼は野菜を料理する」
kau : 男
pete : ~にする
ati : 毛、糸、草
ekepai : 食べ物
例2 Kaki a teti a peku a titapai.「彼女は木の棒を子供に渡した」
kaki : 女
teti : ~に与える
peku : 骨、木
titapai : 産んだもの=子供
目的語を二つ持つ動詞はpete「~を~にする」teti「~を~に与える」の二つしかない。
1.4. 副詞句
上で説明したもの以外に、文に余分な句が付くことがある。その場合、その句は文を補足する名詞句として読まれる(副詞句)。
例1 Pai a eke a tepapai tapipai a pete「私は魚を手で食べる」
pai : 代名詞
eke : 食べる
tepapai tapipai : 水の生き物=魚
pete : 手、道具
この例では、副詞句は動作の手段として解釈されている。
例2 Pai a ia a tepapai tapipai a ae a pai.「私は魚を頭と体に切る」
pai : 代名詞
ia : 切る、削る
tepapai tapipai : 魚
ae : 頭
pai : 体
この例では、副詞句は動作の結果となっている。
SVOOの形の文の間接目的語を副詞句として解釈することもでき、その場合、文型はS,SV,SVOの3つになる。
混乱の元となるため、名詞文にはふつう副詞句をつけない。
1.5. 句の省略
タコ語では、名詞句や動詞句が省略されることがある。そのとき、a はそのまま残すことでどの位置が省略されたかを示す。
例1 Pai a ipe a.「私は話す」
pai : 代名詞
ipe : 話す
例2 Apapai a a kau.「あなたは彼を」
apapai : あなた
kau : 男
上の例では目的語が省略されており、下の例では動詞句が省略されている。
句の省略は、句の内容が文脈から明らかなとき、句が示す情報が足りていないときに用いられる。