一般的に野生酵母は市販のドライイーストで使用される酵母と比較して発酵力が弱いため長時間の発酵を必要とするため、直接的に野生酵母と市販の酵母を比較するのは難しい。そこでまず、実際に家庭でパン作りに使用されている出芽酵母Saccharomyce cerevisiaeを市販のドライイーストから分離し、野生酵母と同様の培養方法で増殖させ、条件検討に使用した。
ドライイーストの懸濁液を寒天培地に塗布して、野生酵母と同様にコロニーを液体培養しました。
それぞれの酵母の培養液を遠心分離によって回収し、蒸留水で洗浄し、菌量を揃えて製パンに使用しました。
ここまでの実験で取得した自然界に生息している酵母や、自家製酵母レシピから取得した酵母を実際に製パンに利用する前に、製パン時の比較が可能になるように、添加する酵母の菌量を検討しました。
一般的に天然酵母を使用した食パンを作る際の発酵時間を基に、ドライイースト由来のSaccharomyce cerevisiaeを使用して製パンを試みた。すると酵母の使用量が過剰になってしまい生地が膨らみ過ぎて破裂し、食感や味に大きくマイナスの印象を与えてしまいました...
生地の破裂はパンの評価に大きく影響を及ぼすために、適切な使用量を検証する必要があります。
※使用量が適切であれば、しっかりと生地の膨らんだパン作りが可能になり、市販の酵母と野生酵母の比較がしやすいです。
市販の酵母を使用しても生地が破裂しないが、生地の発酵も十分行える酵母の使用量を検討ししました。
※条件検討の過程で一斤分から0.5斤分の材料での製パンに変更しました。
酵母S. cerevisae懸濁液の濁度(OD)を0、10,40に調整した後、原材料に添加し、ホームベーカリーSD-BT103(National)に、表4の材料を投入した後、「天然酵母メニュー」の「食パン」プログラム を実行して製パンしました。
自家製酵母同士を比較した結果では、Hanseniaspora uvarum を使用した生地が最もよく膨らんでいた。また自然界から取得した酵母の中で最も発酵力が優れていると思われるLachancea meyersii をそれぞれ最終的な製パン試験に用いて実験を行いました。
ここまでは報告書では記述しきれなかった製パン試験の条件検討の過程を説明しました。最終的な製パン試験では残念ながらS. cerevisiaeを用いたパン生地が破裂してしまい、これが官能評価の結果に大きく影響を及ぼしてしまいました・・・パン作りって難しい。。。
L. meyersiiはH. uvarumよりもパン生地内の気泡が大きく、生地内に多くの空気が含まれたことから柔らかいと判断されました。
S. cerevisaeは、野生酵母、天然酵母ともに比べた中でも特に発酵力が強かったため生地が破裂してしまった。発酵力が強すぎるために食感に悪い影響を及ぼし総合的な味の評価が低い結果になったのだと思います。
H. uvarumはこの中で唯一麦芽糖やショ糖を利用できない酵母であった。そのためか、生地にショ糖や麦芽糖が比較的多く残留し、甘みが強く感じられたのではないかと考えました。
H. uvarumが発酵可能なのはブドウ糖と果糖のみであるため、原材料のはちみつに含まれるブドウ糖と果糖を発酵に利用したのではないでしょうか。
実際の官能評価の際に使用した評価項目および基準
官能評価の結果まとめ
官能評価試験は私たちが設けた基準にのっとって6人がそれぞれに、官能評価項目に点数をつけたものをグラフ化しました。
また官能評価試験の方法や気を付けるべき点については応用生物科学科の石川匡子先生(https://www.akita-pu.ac.jp/bioresource/DBT/lecture_ishikawa.html)にご指導いただきました。
ここまでで学生自主研究の全ての工程が完了し、このあと成果報告書やこのHPを作っていきました。最後のページにメンバーそれぞれの感想など書きました。