【コウノトリ(コウノトリ目・コウノトリ科)】
立った状態で高さ100~110cmほど、翼を開いた長さは200cmにおよぶ大きな鳥です。全身白色で、羽の一部(風切羽)が黒色です。くちばしは黒く・まっすぐ・長く、目のまわりと脚が赤っぽい色をしています。
高い木の上(近年は人工巣塔など)に、小枝や草などを運んで直径2mほどの巣をつくります。3~4月ごろに卵を生み、子育てはオスとメスが共同で行います。産卵から1カ月ほどで孵化し、ヒナはおよそ2カ月程度で巣立ちます。
水田・河川・湿地などの水辺やその周辺の草地などで、魚類やカエル類、爬虫類、昆虫類などの動物を食べます。
日本から中国・台湾・韓国・ロシアの一部に分布しており、各国を行き来することもあります。世界的にみても数が少なく、絶滅が危惧されている希少な鳥です。
国の特別天然記念物などに指定されています。許可なく、捕ったり・飼ったりすることは法律で禁止されています。
江戸時代の絵画に描かれたり、地名に受け継がれる(鴻巣市の由来との説もある)など、関東地方でも古くから人びとに親しまれてきたと考えられます。
明治以降、乱獲や生息環境の変化などによって激減し、昭和46年(1971年)の記録を最後に日本国内のコウノトリ野生個体は姿を消しました。
最後の生息地となった兵庫県豊岡市では、人工的な飼育・繁殖の研究が進められ、コウノトリ野生復帰に向けた放鳥が行われています、現在、国内の野生個体は200羽以上となっており、野外での自然繁殖もみられるようになりました。
近年、野生復帰の取り組みは、埼玉県鴻巣市や千葉県野田市などでも行われており、関東地方の空にもコウノトリがみられるようになりました。令和2年(2020年)には、栃木県小山市(渡良瀬遊水地)で、野外繁殖が確認されています。
コウノトリは動物食で、おもに水田・湿地・河川などの水深の浅い場所(およそ30cm以下)で魚類やカエル類・昆虫類などを、草丈の低い草地でバッタ類や爬虫類などを食べています。成鳥1羽で1日あたり500グラムほど(飼育下)を食べるため、親鳥とヒナたちがいっしょに過ごす繁殖期には、多くのエサが必要になります。田んぼに水が入っていない時期には川や湿地に移動したり、バッタなどがたくさんいる時期には草地に移動したりと、エサを確保するためさまざまな環境を利用しています。また、ねぐらや営巣場所として、樹林地も利用しており、コウノトリが暮らしていくためには、周辺にさまざまな環境が整っている必要があります。
コウノトリも暮らしていける生きもの豊かな水辺環境を保つためには、魚類が繁殖したり、カエル類が成長できるよう、川や湿地や田んぼなどの水域が空間的かつ時間的につながっていることが重要です。コウノトリがすむ場所を守ることは、生きものの豊かな場所とそのつながりや広がりを守ること(エコロジカル・ネットワークの形成)といえます。