イランとアメリカの協議、成果得られずと米副大統領 パキスタンで21時間
2026年4月12日 BBC
アメリカとイランの停戦協議は、仲介するパキスタンの首都イスラマバードで11日始まり、直接協議は12日早朝まで続いた。アメリカの代表団を率いたJ・D・ヴァンス副大統領は日本時間12日午前10時50分(現地時間午前6時50分)ごろに記者会見し、合意が得られないまま自分たちはパキスタンを離れると述べた。イランの代表団はモハンマド・バゲル・ガリバフ国会議長とアッバス・アラグチ外相が率いていた。
ヴァンス副大統領は、アメリカは「誠意をもって」柔軟に対応する姿勢で21時間にわたり交渉に臨んだものの、「合意にたどり着かなかったというのが、悪い知らせだ。それは、アメリカにとって悪い知らせというよりはるかに、イランにとって悪い知らせだと思う」と話した。交渉を仲介したパキスタンのシャバーズ・シャリフ首相とアシム・ムニール陸軍参謀長に感謝し、「交渉に何か問題があったとしても、それはパキスタンのせいではない。パキスタンの働きは素晴らしかった」と述べた。
ヴァンス氏は、「非常にシンプルな提案を残して私たちはここを離れる。これが我々の最後で最善の提案だと、理解する方法を提示した。イランがそれを受け入れるか、様子を見ることになる」とも話した。
「(イランが)核兵器を追求しない、核兵器を素早く実現できるようになる道具を追求しないという、前向きな約束を、我々は見る必要がある。それがシンプルな事実だ」と副大統領は述べ、これがドナルド・トランプ米大統領の「核心的な目標」だと話した。
副大統領は、イランの核開発計画は「破壊された」ものの、イランは今後決して核兵器を開発しないという「根本的な意志表示を伴う約束」が必要だとして、「それをまだ目にしていない。いずれ目にできることを願っている」と話した。
ヴァンス氏をはじめとするアメリカ代表団はこの会見から間もなく、政府専用機でイスラマバードをワシントンに向けて出発した。
イランの準国営メフル通信は、イランの代表団が現地時間午前9時過ぎに、イスラマバードを離れたと伝えた。
ヴァンス氏の記者会見に先立ち、イラン外務省のイスマイル・バガイ報道官は、アメリカとの和平協議について声明を発表した。ソーシャルメディアへの投稿で、協議は「徹底した」ものだと表現する一方、交渉の成否は「相手側がいかに真剣で誠実かにかかっている」と述べた。
報道官はアメリカに対し、「過度な要求や違法な要請」を控え、イランの「正当な権利と利益」を受け入れるよう求めた。
協議項目は、ホルムズ海峡、イランの核開発計画、そして「イランにおける戦争の完全な終結」だと報道官は説明した。
バガイ報道官はその後さらに半国営SNN通信に対し、「1回の協議で合意にたどり着けるなど、最初から期待するべきではなかった。誰もそのような期待はしていなかったと思う」と話した。
報道官は、今回の協議は「(イランに)押し付けられた戦争」が40日間続いた後のものだけに「不信と疑念にあふれた雰囲気」で行われたとした上で、「外交は決して終わらない」と述べた。
パキスタン外務省はソーシャルメディア「X」で、イスハーク・ダール副首相兼外相の声明を発表。「双方が引き続き前向きな精神で、地域全体とそれ以外における恒久的な平和と繁栄の実現に取り組むことを願う」として、アメリカとイランの「双方が引き続き、停戦の約束を堅持することが不可欠」だと強調した。さらに、「パキスタンはこれまでも今後も引き続き」イランとアメリカの「関わりあいと対話の便宜を図るために役割を果たしていく」と言明した。
これに先立ち、まだ交渉が続いていた時点で、ドナルド・トランプ米大統領はホワイトハウスで記者団に協議について質問されると、「何がどうなっても、我々は勝つ」、「こちらはあの国を完全に敗北させた」と述べた。
トランプ氏はさらに、イランとの合意がまとまるかどうかは「自分にはどうでもいい」ことだとして、アメリカはすでにイランの指導部と海軍と陸軍を滅ぼしたという持論を繰り返した。また、焦点となっている石油輸送の要衝ホルムズ海峡については、「怖がっているか弱いかけちな」国々に代わってアメリカが、海峡開放を実現しようと努力しているのだと主張した。
ホルムズ海峡については、アメリカ中央軍が11日、アメリカ海軍の誘導ミサイル駆逐艦2隻がホルムズ海峡を通過したと発表した。イランが敷設した機雷が航路上にないことを確認するためだとしている。
「X」に投稿した中央軍の発表の中で、中央軍司令官のブラッド・クーパー提督は、「新しい航路を確立するプロセスを本日開始した。自由な商業の流れを促すため、この安全な航路を近く海運業界と共有する」と述べた。
これについてイランは、アメリカ側の主張を否定した。イラン国営のファルス通信は、軍司令部報道官の話として、「アメリカ艦艇がホルムズ海峡に接近し、進入したとする米中央軍司令官の主張は、断固として否定する」と伝えている。
報道官は、「いかなる船舶の通航についても、その主導権はイラン・イスラム共和国の軍にある」と述べたという。
政府専用機を降りたスーツ姿のヴァンス氏が、スーツ姿のパキスタン高官たちに囲まれ、右手の人差し指を立てて話しながら前へ向かって歩いている画像提供,Reuters
画像説明,イランとの交渉のためパキスタンに到着したJ・D・ヴァンス米副大統領(中央)と、出迎えたパキスタンのムニール陸軍参謀総長(左)やダール外相(右)(11日、イスラマバード)
夜の空港に敷かれた赤いじゅうたんの上を、迷彩服姿のムニール元帥と、ダークスーツ姿の他の高官たちが横に並び、前に向かって歩いている画像提供,パキスタン外務省/EPA
画像説明,パキスタンに到着したイラン代表団と出迎えたパキスタン政府高官たち。左から、パキスタンのムニール陸軍参謀総長、イランのアラグチ外相、イランのガリバフ議長パキスタンのダール外相(10日夜、イスラマバード)
レバノンの死者2000人超える
他方、イスラエルがレバノン攻撃を続けていることが、停戦協議の不安材料となっている。アメリカとイランがパキスタンで協議を続ける間、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は11日、レバノンとの和平協議を「承認」したと発表した。
ネタニヤフ首相は、レバノン側が過去1カ月の間、直接協議の開始を何度も働きかけてきたと述べ、「私は(協議を)承認した。ただし条件が2つある。ヒズボラの武装解除と、世代を超えて続く真の和平合意だ」と強調したとAFP通信は伝えている。
レバノンとイスラエルの両政府は10日夜、ワシントンで14日から停戦について協議すると発表した。両国のアメリカ大使が電話で話し合い、停戦協議の手はずを整えたとされている。
レバノン保健省は11日、3月初めにイスラエルが攻撃を開始して以来、レバノン国内の死者数が2000人を超えたと発表した。
国営通信社ナショナル・ニュース・エージェンシーによると、保健省の保健緊急オペレーションセンターは、3月2日以降に2020人が死亡し、6436人が負傷したとしている。
この発表に先立ち保健省は、イスラエルがレバノン南部トゥファフタを攻撃し、8人が殺害され、9人が負傷したと発表していた。負傷者のうち5人は重体だという。
こうした状況でレバノンのタレク・ミトリ副首相はBBCに対し、協議を「意味のあるもの」にするためには、イスラエルがレバノン攻撃を停止するべきだと話した。
ミトリ副首相は、「私はそれが交渉の条件だと言っているわけではない。しかし、会合を有意義なものにするには、たとえ暫定的であっても、敵対行為の停止が何かしら必要だと思う」と述べた。
「何十人、何百人もの人が殺されたり負傷したりしている最中に、意味のある協議にどうやって取り組めるというのか。あらゆる問題について話し合うための、本当の交渉の準備ができるというのか」と副首相は強調。「建設的な対話ができるようにするには、(攻撃を)やめさせて、(攻撃を)いったん保留にしなくてはならない。それでも私たちは、国務省で火曜日に開かれる会合には出席する」と話した。
【解説】 オルバン首相の「実験」、国民がついに拒む ハンガリーで政権交代へ
2026年4月13日 BBC
ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相が政権を握っていた過去16年間でやってきたのは「実験」だった。ただ、それを何と呼べばいいのか、彼自身わかっていなかった。「非自由主義的民主主義」は、あまりに否定的に聞こえた。
彼のアメリカ人の友人らは「国家保守主義」と好んで呼んだ。こっちの方が響きはいいが、厳密には決して正しくなかった。保守派のほとんどとは違い、オルバン氏は反逆者だった。
オルバン氏は絶えず自らを過激化させた。そうした状態で、何を保守できたといえるのか。
彼は主流派や「ブリュッセルの官僚たち」をあざけるのが大好きだった。官僚らにとって、彼は目の上のたんこぶだった。反撃しても、そのたび彼は、それを自らの利益に変えたのだった。
オルバン氏は自らを「反グローバリスト」と呼んだ。それでいて、ドイツの自動車メーカーや、中国や韓国の電気自動車(EV)用バッテリーメーカーをハンガリーに誘致した。
国家主権の擁護者だとも自称した。だが、ロシアに対して主権を守ろうとするウクライナの味方をすることは拒んだ。
オルバン氏は移民政策を激しく非難しながらも、スリランカ、フィリピン、ウクライナ、トルコからの移民を密かに奨励し、新工場建設を進めた。
子どもの数を増やそうと、巨額の資金を投入した。だが、合計特殊出生率は昨年1.31まで低下した。これは、彼が社会党から政権を引き継いだ2010年と同じ数値だ。
12日夜に素早く選挙での敗北を認めたのは、オルバン氏が自らのイメージを強く意識していることの表れたった。彼は「多数決主義」の民主主義者として振る舞った。「勝者総取り」の考えを支持し、政権運営でもそれに合った行動をした。
2010年の総選挙で3分の2の議席を獲得すると、1年後には新憲法を制定した。自分がイメージする国へとハンガリーを再構築し、自らの政党の主張に合うよう変えてきた。
議会での圧倒的な勢力を背景に、彼は法案を次々と可決させた。司法制度も選挙制度も、経済も変えた。
だが12日、ハンガリー国民はついに断固とした意思を示した。「これ以上、実験台にされるのはごめんだ」と言ったのだった。
マジャル・ペーテル氏が勝利したのは、彼がすべての集会でハンガリー国旗を掲げ、排他的ではなく包摂的な国家メッセージを打ち出したからだった。そしておそらく何より、ハンガリー国民が絶え間ない対立に疲れ果てていたからだった。
国民は、富裕層がますます豊かになり、貧困層がますます貧しくなって、中間層が縮小していく状況を嫌っていた。
オルバン氏は闘いに勝つことも多かったが、国民が求めていたのは、平和と静けさだった。自らの意見をもつ普通の国だった。
マジャル氏が約束しているのはそれだ。彼はドナウ川の岸辺で踊る大群衆に向かい、「今夜は祝おう」と語りかけ、こう続けた。
「だが明日、私たちは仕事に取りかかる」
政府 「5類型」撤廃を決定 「武器」移転が原則可能に
2026年4月21日 NHK
防衛装備品の海外への移転をめぐり、政府は「防衛装備移転三原則」と運用指針を改正し、これまで「救難」や「輸送」などに限定してきた「5類型」を撤廃しました。これにより、殺傷能力のある「武器」の移転が原則可能となり、安全保障政策の転換となります。
政府は21日、閣議と持ち回りのNSC=国家安全保障会議の閣僚会合で、「防衛装備移転三原則」と運用指針を改正しました。
改正された運用指針では、装備品の移転を「救難」や「輸送」などに限定してきた5類型を撤廃し、殺傷能力のある「武器」の移転を原則可能とするとしています。
「武器」の移転の可否は案件ごとに国家安全保障会議で審査し、「歯止め策」として、移転先は装備品の輸出に関する協定を結んだ国に限定するとしています。
また、戦闘が行われている国への移転は原則不可とする一方、「安全保障上の必要性を考慮し、特段の事情がある場合」は例外的に認めるとしています。
さらに、移転後の「武器」の管理状況を確認するため、必要に応じて現地調査を行うなどモニタリング体制を強化するとしています。
また、「防衛装備移転三原則」には国会の関与のあり方について、政府が移転を認める決定をした際に、すべての国会議員に事後的に通知することを盛り込みました。
今回の改正によって、護衛艦やミサイルなど殺傷能力のある「武器」の移転が原則可能となり、安全保障政策の転換となります。
高市首相、大型連休中にベトナム・豪州訪問で調整…新たな「自由で開かれたインド太平洋」構想表明も検討
2026年4月5日 読売新聞
高市首相は大型連休中の4月末から5月にかけて、ベトナム、オーストラリア両国を訪問する方向で調整に入った。安全保障や経済などの分野で2国間関係を強化し、首相が外交方針に掲げる「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を巡る協力を推進したい考えだ。緊迫する中東情勢を見極めて最終判断する。
首相官邸に入る高市首相(2日午前)
複数の政府関係者が明らかにした。政府は両国を「インド太平洋地域の重要なパートナー国」(高官)と位置付けており、首相の新たなFOIP構想を今回の外遊中に表明する案もある。〈1〉経済基盤の強化〈2〉課題解決を通じた経済成長〈3〉安全保障面の連携――の3本柱を掲げる方向だ。
両国首脳との会談では、南シナ海などで軍事力を背景とした一方的な海洋進出を続ける中国を念頭に、安保協力の強化について議論する。レアアース(希土類)を含む重要鉱物のサプライチェーン(供給網)の 強靱きょうじん 化など、経済安保分野での協力拡大も確認する。
エネルギー資源の安定確保も議題となる見通しだ。日本にとってオーストラリアは、液化天然ガス(LNG)と石炭の最大の調達先で、首脳外交を通じ安定供給にもつなげたい考えだ。
《参考》Quad 日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国でつくる協力の枠組み。Quad(クアッド)は英語で「4つの」を意味する。2004年のスマトラ沖地震と津波被害で4カ国がチームを組んで国際社会の支援を主導して以来、連携体制が定着した。最近は部隊間の共同訓練も展開している。
首脳間では米バイデン政権が誕生した21年の3月に初めてオンラインで協議し、9月にワシントンで対面会議を開いた。今回は米東部デラウェア州ウィルミントン近郊にあるバイデン大統領の出身高校で開催する。
「自由で開かれたインド太平洋」の実現を目指し、民主主義、法の支配といった共通の価値観を持つ。インフラや海洋安全保障、テロ対策、サイバーセキュリティーなどの分野で協力している。日米は、台頭する新興・途上国の「グローバルサウス」の重要国のインドをひき付けておく体制として重視する。
新型AI「ミトス」のサイバー攻撃対策は喫緊の課題、金融機関や病院など重要インフラの被害は深刻に
2026年5月7日 ダイヤモンドオンライン
システムの「穴」を見抜く能力、格段に優れる
日本でも与党・金融庁が対応策を議論
アメリカの新興企業アンソロピック社が最近開発した生成AI「ミトス(Claude Mythos)」は、システムやソフトウエアの「穴」を見抜く能力が格段に優れ、これまで開発されたもっとも強力なAIだといわれる。
ミトスのような高性能AIが悪用されてサイバー攻撃に使われたら、脆弱(ぜいじゃく)性の発見や攻撃手順の組み立て、そして侵入後の展開が高速化し、防御の難度がこれまでより大幅に上がる恐れがある。
これに対処するための取り組みが、アメリカや日本でも始まった。
アメリカでは、金融機関のシステムが突破された場合のリスクなどについて、FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長と銀行のトップが非公開の場で議論し、日本でも4月20日、自民党がアンソロピック社を含むAI企業3社と金融庁などの政府関係省庁を招いた会議を開き、対策の議論を始めたことが報じられている。
実際、日本でもこれまで金融機関や病院、民間企業を対象に、インターネットなどを経由して、サーバー、パソコン、スマートフォンなどのIT機器に対して、データ窃取や破壊、システム利用の妨害や盗み出した情報の公開をほのめかして金銭を要求するなどの「サイバー攻撃」が行われてきた。
原理的には、どんな企業も個人も標的になり得る。社会的影響が特に大きいのは、電力、通信、交通、自治体、物流、金融、医療などの重要インフラだ。
中でも金融機関と病院は、決済・取引・診療という社会機能に直結するため、被害が深刻化しやすい。
「ミトス」対策は喫緊の課題だ。
データの窃取・破壊や乗っ取りのソフト
システムの妨害や「身代金」要求の攻撃も
サイバー攻撃ではどういうことが行われるのか。マルウエア(Malware)とは、利用者の端末やサーバー、ネットワーク上で不正に動作し、データ窃取・破壊・暗号化・乗っ取りなどを行う「悪意のあるソフトウエア」の総称だ。ここにはウイルス、ワーム、ランサムウエア、トロイの木馬などが含まれる。
ランサムウエア(Ransomware)とは、端末やサーバー上のデータを暗号化したり、システムの利用を妨害したり、盗み出した情報の公開をほのめかしたりして復旧や非公開の見返りに金銭を要求したりする、不正プログラム・攻撃手法のことだ。
これらの攻撃を受けると、ファイルが開けなくなってデータを使用することができなくなり、業務が停止してしまう。近年は暗号化だけでなく、事前にデータを盗み出し、「公開する」と脅す二重脅迫型も多い。
ランサムウエアは、不特定多数の対象を狙って電子メールを送信するといった手口が一般的だったが、最近では、企業などのVPN機器(注1)をはじめとするネットワーク機器の脆弱性を狙って侵入する手口が多くなっている。
これまでも攻撃者は、VPN機器やリモートデスクトップ、サーバー、業務システムなどの脆弱性や設定不備を突いて侵入してきた。ミトスのような高性能AIが悪用されれば、脆弱性の発見、攻撃手順の組み立て、攻撃の自動化などが、容易になる恐れがある。
社会の重要なインフラ、中でも金融機関と病院は、決済・取引・診療という社会機能に直結するため、被害が深刻化しやすい。
侵入後にデータを暗号化して業務を停止させたり、機密情報を窃取して公開をほのめかし、身代金を要求したりする事態が考えられる。金融機関の場合には、情報流出だけでなく、決済・取引・顧客対応などの業務継続に影響が及ぶ。
病院がランサムウエアに狙われた事例
電子カルテが読めず診療停止の被害も
日本では、病院を標的としたランサムウエア攻撃がこれまでも起きている。
病院がランサムウエアによる攻撃を受けると、電子カルテが読めなくなってしまうため、診療停止に追い込まれる。また、患者の個人情報が流出する場合もある。
2021年に生じた徳島県つるぎ町立半田病院や、22年の大阪急性期・総合医療センター、24年の岡山県精神科医療センターなどの事例は、深刻な被害を受けたものとして記憶に新しい。復旧に数カ月を要した事例もある。
つるぎ町立半田病院の場合、電子カルテシステムが完全に停止し、紙カルテ運用へ移行せざるを得なくなった。電子カルテを含む院内システムが約2カ月停止し、通常診療に大きな制約が生じた。
主な原因は、病院システム内のセキュリティーの脆弱性だ。具体的にはVPN機器の脆弱性や、パスワード管理の水準の低さだ。
医療機関の被害では、VPN機器など外部接続機器の脆弱性、認証情報の管理不備、バックアップ体制の弱さ、委託先を含むIT管理体制の不備などが問題となることが多い。
金融機関では個人情報の大規模流出や
取引、決済の停止などの事例
金融機関では、これまでのところ日本では社会全体を揺るがす規模のランサムウエア被害はまだ起きていない。しかし、それをもって安全と見るべきではない。
金融機関本体の防御が比較的厚いとしても、委託先、周辺システム、古いシステム、認証情報管理の弱点を経由して被害が及ぶ可能性は残るからだ。そしてミトスの突破力は、これまでよりもずっと強いからだ。
15年11月に、三菱東京UFJ銀行に不正アクセスがあり、会員制サイトのサービス運営者の預金口座入出金明細が流出した。これはランサムウエアによるものではないが、明細書に記載された振込依頼人の情報が、架空請求詐欺に悪用されていることもわかった。
同行へ口座振り込みをしている会員サイトなどの運営者に振込依頼人として自分の電話番号を入力した場合には、架空請求詐欺に悪用される恐れがあった。
アメリカではCapital One事件がある。これは個人情報の大規模流出事件だ。
Capital Oneはアメリカの大手金融機関で、個人向けの銀行、クレジットカード、自動車ローンなどを手掛けている。銀行ではあるが、ITに特化したことが競争力の源泉になっていた。
ところが、クラウドの設定不備を突かれた情報流出事件が19年に起き、1億人超の個人情報が流出した。
流出したのは、米国で1億人、カナダで600万人という非常に多くの個人情報で、この中には与信の情報も含まれていた。また、社会保障番号や銀行口座番号などの個人情報が盗まれた。
23年11月には、中国工商銀行の米国子会社ICBC Financial Services がランサムウエア攻撃を受け、米国債取引・決済に支障が生じた。これは、金融機関へのサイバー攻撃が市場インフラに波及し得ることを示した重要な事例だった。
25年には、米国の金融機関向けサービス企業Marquis Software Solutions が攻撃を受け、複数の銀行・信用組合の顧客情報に影響が及んだと報じられた。これは、銀行本体だけでなく、委託先・取引先を経由したサプライチェーン型のリスクが大きいことを示している。
KADOKAWAやJAXAも攻撃対象に
先端技術情報を狙った諜報型攻撃も
これらの事例のほかに、日本でもいくつかのランサムウエア被害や不正アクセス事件があった。
24年には、KADOKAWAグループとニコニコ関連サービスが大規模なサイバー攻撃を受けた。
この事件は出版や動画配信、決済、物流、社内業務などに広く影響し、デジタルサービス企業がランサムウエアで長期間の事業停止に追い込まれるリスクを示した。
また、JAXA(宇宙航空研究開発機構)への不正アクセス事件があった。これは23年に認知され、24年に公表された。JAXAは、外部機関からの通報を受けて内部サーバーへの不正アクセスを認識し、悪性通信の遮断などの初動対応を行った。
これは、金銭目的のランサムウエアとは異なり、宇宙・防衛・先端技術情報を狙う諜報型攻撃だった。
このように、サイバー攻撃はこれまでも深刻な被害をもたらしている。
ミトスは、デジタルシステムの欠陥を見いだす能力に優れているが、それが悪用されれば、攻撃用の強力な武器になってしまうことが懸念されている。
アンソロピック社はミトスの一般公開を中止し、グーグルやアップルなどごく一部の企業だけに公開して、この問題の対処法を探ろうとしている。しかし、それによって対処法が見いだされる保証はない。
世界はいま、新たなAIによる大きな危機の前に立たされている。
注1 VPN:Virtual Private Network:仮想専用線とは、インターネット上に暗号化された専用の「トンネル」。通信内容が暗号化されるため、盗聴や改ざんのリスクが軽減される。VPNに必要な装置は、VPNゲートウェーやゲートウェーの機能を搭載したルーターなど)。
(一橋大学名誉教授 野口悠紀雄)
2026年の夏はエルニーニョ現象で冷夏それとも猛暑?夏の暑さはどうなる?
2026年4月7日 防災ニッポン(読売)
今夏にかけてエルニーニョ現象が発生する可能性が高まっています。本来、エルニーニョの夏は冷夏になりやすいとされていますが、2月24日に発表された最新の暖候期予報(6〜8月の夏期の天候)では、全国的な高温が予想されました。なぜエルニーニョ現象が予想される中、猛暑が懸念されるのか、その理由と今から備えるべき対策について解説します。
2026年夏はエルニーニョ現象が発生する可能性がある
気象庁が2026年3月10日に発表したエルニーニョ監視速報(No.402)によると、2026年の夏はエルニーニョ現象が発生する可能性が60%と平常の状態が続く可能性(40%)に比べると高くなっています。現時点ではエルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態ですが、今年の夏にはエルニーニョ現象が発生する確率が高まっています。
エルニーニョ現象とは
そもそもエルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の東部で海面水温が平年より高い状態が続く現象です。通常、この海域では東よりの風によって暖かい海水が西側に吹き寄せられていますが、エルニーニョ現象が発生するとこの東風が弱まります。すると、西側に溜まっていた暖かい海水が東側へ広がり、同時に東部で深い海から冷たい水が湧き上がる動きも弱まるため、海面水温が高くなるのです。
なお、これとは逆に、東風が平常時よりも強く吹いて西側に暖かい海水がより厚く蓄積し、東部で海面水温が低くなる現象をラニーニャ現象と呼びます。
エルニーニョ現象が発生すると、積乱雲が盛んに発生する海域が平常時よりも東へ移ります。この変動が、地球全体の気圧配置や風の流れに変化を及ぼすことで、日本を含め世界各地に異常気象をもたらす要因の一つと考えられています。
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エルニーニョ現象が発生するとどうなる?
日本においてエルニーニョ現象が発生すると、一般的には冷夏になりやすい傾向があることが知られています。本来であれば、夏は太平洋高気圧が日本付近を覆い、厳しい暑さと晴天をもたらします。しかし、エルニーニョ現象が発生して積乱雲が発生する海域が東へずれると、日本付近への太平洋高気圧の張り出しが弱まってしまいます。その結果、梅雨前線が日本付近に停滞しやすくなって日照時間が減少したり、北からの冷たい空気が流れ込みやすくなったりするため、気温が低くなります。
気象庁:エルニーニョ現象が日本の天候へ影響を及ぼすメカニズム
2026年夏はエルニーニョ現象でも冷夏とは限らない
しかし、2月24日に発表された最新の暖候期予報では、エルニーニョ現象の発生が予測されているにもかかわらず、6月から8月にかけての気温は、全国的に平年より高いと予想されています。
気象庁「夏の天候の見通し全国 (6月~8月)」
全国的に平年より気温が高い確率が50%~60%、平年より気温が低い確率は10%となっており、冷夏になる確率はかなり低くなっています。暖候期予報で夏の気温が高くなると予想される根拠として以下が挙げられています。
・地球温暖化の影響により、地球全体で大気全体の温度が底上げされた状態にある
・偏西風が北寄りに通るため南からの暖かい空気が入りやすい
・太平洋高気圧の張り出しが強い
これらの要因が重なることで、日本付近は暖かい空気に覆われやすく、エルニーニョ現象の兆候がありながらも高温になると予想されています。
過去のエルニーニョ現象の事例
以下に、過去のエルニーニョ現象の事例と夏の天候との関係をまとめています。
エルニーニョ現象が発生した際の日本の夏の天候は、過去を振り返っても一様ではなく、地域によって傾向が大きく異なることがわかります。
そして、2026年はこれまでのパターンとは異なる全国的な高温が予想されています。これはエルニーニョ現象の影響以上に、地球温暖化等の要因が強く働いているためと考えられます。
今から夏に向けて対策すべきこと
2026年の夏は、エルニーニョ現象が発生する兆候がありながらも、地球温暖化や偏西風の蛇行などの影響によって全国的な高温となる可能性が高いと予想されています 。
「エルニーニョ現象=冷夏」というイメージで油断せず、記録的な猛暑にも対応できるよう、今から以下の準備を進めておくことが大切です。
・エアコンの早期試運転を済ませる
┗本格的な暑さが始まってからエアコンの故障に気づいても、修理や買い替えの工事が数週間待ちになる可能性があるため
・暑熱順化(しょねつじゅんか)で体を暑さに慣らす
┗急激な気温上昇に対応できるよう、今のうちから暑さに強い体作り(暑熱順化)を始めておく
異常気象が日常となりつつある現在、エルニーニョ現象という一つの指標だけで天候を判断することは難しくなっています。過去の経験則にとらわれすぎず、最新の気象情報を柔軟に取り入れながら、早め早めの備えを心がけましょう。
辺野古沖転覆、文科省が同志社国際高校の「教育基本法14条」違反認定…京都府は私学助成金の減額検討
2026年5月22日 読売新聞
文部科学省は22日、沖縄県名護市辺野古沖で今年3月、研修旅行中だった同志社国際高校(京都府)の生徒を乗せた船が転覆し、生徒ら2人が死亡した事故に関する同校の対応などについての調査結果を公表した。米軍普天間飛行場の辺野古への移設工事に関する同校の学習が、学校の政治的活動を禁じる教育基本法14条に反し、安全管理体制も「著しく不適切」と指摘。同校の運営法人などに是正を求めた。
© 読売新聞
文科省が同法14条違反を認定するのは初めて。文科省は「(辺野古移設工事の学習で)様々な見解があることを生徒に十分に提示したことが確認できず、特定の見方・考え方に偏った扱いだった」などとした。
調査結果によると、同校は船や現場一帯などを事前に一度も下見していなかった。引率教員は事故当日、波浪注意報が発令されていたことを知らず、船に同乗もしていなかった。ライフジャケットの着用方法など、生徒に対する事前の安全指導も未実施だった。
京都府の西脇隆俊知事は22日の定例記者会見で、同校への私学助成金の減額を検討する方針を示した。
事故は3月16日に発生。小型船2隻が転覆し、生徒18人を含む計21人が海に投げ出され、同校2年の女子生徒(17)と、男性船長(71)が死亡、14人が負傷した。
同校を運営する学校法人同志社(京都市)は22日、ホームページに「文部科学省の指導を踏まえ、改善措置を速やかに実施する」などとする文書を掲載した。
日銀元総裁 白川方明氏 “日銀もう少し早く利上げするべき”
2026年6月9日 NHK ONE
日銀の元総裁、白川方明氏がNHKのインタビューに応じ、国内の物価状況と今の日銀の政策金利について「現在の経済あるいは物価と、金利水準について見合っていないと思う」と述べ、日銀はもう少し早く利上げすべきだったという認識を示しました。
白川氏は2008年から2013年まで日銀の総裁を務め、リーマンショックや東日本大震災、ヨーロッパの信用不安による円高などに直面し、政策対応にあたりました。
先月下旬、NHKの単独インタビューに応じ、円安が加速していることについて短期的な動きではなく、「実質実効為替レート」という2国間のレートでは測ることができない通貨の実力を示すレートに着目すべきだと述べました。
そして白川氏は「現在の為替水準は実質実効為替レートでは1970年の水準にまで円安になっている。1995年が日本の実質の円高のピークで、その後はトレンド的に下がってきている。一国の経済が弱いということはその国の通貨も弱くなる。この30年間、ずっと実質実効為替レートが円安になってきていることを、非常に重く受け止める必要があると思う」と述べました。
また、国内の物価高について、団塊の世代の完全離職によって人手不足となり、賃金が上昇したこと、黒田前総裁のもとで金融緩和が続けられる中、2022年以降、日本と海外の金利差が拡大して円安となり、輸入物価が上昇したことが大きな要因だと指摘しました。
白川氏は現在の日銀の金融政策に対して、ダイレクトにコメントをすることは控えているとしつつ、「現在の経済あるいは物価と、金利水準が見合っているかというと、私は見合っていないと思う。どういうスピードで、どのタイミングで利上げしたらいいのかについては議論がありうるが、もう少し早く金利は引き上げるべきだと思っている」と述べ、日銀はもう少し早く利上げすべきだったという認識を示しました。
「大規模金融緩和で本質的な問題に取り組むの遅れた」
これまでの株価の上昇傾向について、白川氏は「まるでイランの紛争が起きているとは思えないあるいは長期金利が上昇しているとは思えない異常な株高だ」としたうえでその要因として、イラン情勢を相殺するようなAI関連企業の業績期待、何か混乱が起きた場合は中央銀行が金融緩和を行い、混乱を鎮めるという思惑が投資家にはあるのではないかと述べました。
そして、株価は将来の経済を映す鏡であるかのような論評は非常に不正確だとしたうえで「株価は企業収益がよくなるかもしれないという期待であっても、経済全体がよくなるかどうかというのは別物だ」と指摘し、長期金利の動向をより注意深く見るべきだという認識を示しました。
また、日本で物価高が続くなかでも、日銀の政策金利が低い状況であることについて「あまりに強力な金融緩和が長く続いたため、それを元に戻す場合の影響が大きいかもしれないといろいろな人が思っている。そのため、なかなか金利を上げられない。そのことで、また円安の要因になり、インフレにもなっている。物価だけにあまりに焦点を合わせた金融政策をやっていると副作用も大きくなるというのが私の総括だ」と述べました。
また、日本経済が低成長に陥った要因について「デフレにあったわけでもインフレにあったわけでもない」として、労働人口の減少や生産性の低下などの根源的な問題があると指摘しました。
そのうえで、日銀が大規模な金融緩和を行ったことで構造的な問題に取り組む社会のエネルギーがなくなってしまったと分析し、金融緩和の最大の副作用として「本質的な問題に取り組むのが遅れてしまった」と課題を指摘しました。
HOTパーソン
人と地域が出会う場所。「おてつたび」が提案する新しい旅のカタチ
おてつたび代表取締役CEO 永岡里菜さん
2025年6月24日 METI Journal Online
誰かにとっての「特別な地域」をつくる――― 。
そんなコンセプトを掲げ、新しい旅の形を提案しているのが「おてつたび」だ。見知らぬ土地に出かけ、素敵な人々に出会いたいという旅行者と人手不足で困っている地域の事業者を結ぶマッチングサービスを展開。働きながら日本各地を旅し、地域の人たちと交流するという新しい旅のカタチを創造した。
著名な観光地があるわけではない。でも、実際に滞在してみると、心安まる自然や温かい人たちがいる。「おてつたび」での体験を通して、様々な地域のファンが生まれつつある。創業者の永岡里菜さんに、地域のありのままの魅力、「おてつたび」が目指す世界など、たっぷりと語ってもらった。
旅人と地域をマッチング。知られざる地域の魅力を掘り起こす
――― 「おてつたび」はどのようは事業を展開しているのですか。
「おてつたび」は「お手伝い」と「旅」を掛け合わせた造語です。国内の様々な地域で、人手不足で困っている収穫期の農家、ハイシーズンの旅館・ホテルなどのお手伝いをしながら、旅行ができるマッチング・プラットフォームを運営しています。
特徴は二つあります。一つ目は、旅先でお手伝いをすることでアルバイト代が得られ、さらに宿泊場所(寮や空き部屋など)が無料で提供されます。そのため、旅費の負担を減らしながら旅ができるということです。
二つ目は、お手伝いという新しい旅の目的をつくることで、日本各地のまだまだ知られていない地域に人が訪れるきっかけをつくっていることです。働くという役割を持って地域に入り込むことで、人のつながりができ、その地域のディープな魅力を知り、その地域を好きになって帰っていくことで、関係人口を創出することができるのです。現在、登録ユーザーが7万9000人、受け入れ先が2000か所という状況です。
ふるさとへの思いが出発点。自ら日本各地を旅する中で着想
――― 創業のきっかけを教えてください。
動機の一番は、私が三重県尾鷲市出身だということです。東京から車でも、電車でも6時間程度かかる漁業と林業の街です。有名なランドマークや観光名所がないため、なかなか訪れるきっかけがなく、「どこですか、そこ?」と言われてしまいがちなところです。では魅力がないのかと言えば、そんなことはありません。来てもらえればわかる魅力がたくさんあります。
どうしたら出身地である尾鷲市のような地域にスポットライトを当てることができるか。自分なりに模索しようと、当時勤めていた会社を辞め、東京の家を解約して、国内の様々な地域を巡りました。その結果、こうした地域を訪れてもらえる仕組みがないだけではないか。まずは人に来てもらう仕掛けを、地域に役立つ形でつくれないか、という思いに至り、「おてつたび」を創業しました。
――― 創業から現在まで紆余曲折あったのでは。
新しいサービスなので、どれだけ言葉を尽くしても、なかなかイメージを伝えることができず、最初の事例をつくるまでは大変でした。「おてつたび」という社名は、「近しい方をお手伝いするように地域の方々と接して欲しい」という思いで付けたのですが、実績が何もない段階では「お手伝い感覚で来られたら困る」「私たちの仕事をなめているのか」と受けとられてしまいがちで、苦労しました。
「まずは人が来てもらう仕掛けを、地域の人たちにも役立つ形でつくれないかと思ったのが出発点です」
ただ、そこは足を使って地域をまわり、働きかけていくことで、活路を開いていきました。大変ではありましたが、成し遂げたいビジョンが明確だったことが、拠(よ)り所になってくれたと思います。
参加者が地域の魅力を発信。シニア層にも利用者広がる
――― 「おてつたび」のどんなところがユーザーから支持されているのでしょうか。
受け入れ側にとっては三つポイントがあると思います。一つ目は、中山間地や離島など、どんなエリアであっても、募集を出してもらえれば、平均1日前後で申し込みが入ってくるというところです。二つ目は労務関係の手続きや管理などをシステム化しており、募集を出してもらえれば労働条件通知書が自動生成され、そのまま労務管理に関する記録をとることができます。受け入れ先にとっては、手間を省くことができます。三つ目は、私たちのオリジナル性が表れているところだと思いますが、「おてつたび」を終えた人が受け入れ先やその地域を宣伝してくれるマイクロインフルエンサーや、実際に地元産品を購入し観光客として泊まってくれる顧客になってくれることです。受け入れ先の事業者などにとってはファンを増やすことに、その地域にとっては関係人口を創出することにつながります。
参加する側にとっては、アルバイトをしながら日本各地に行けるので、若年層など時間はあっても金銭的に余裕のない人たちでも、行ってみたかった地域に費用面を気にせず行けることが一つあります。二つ目は、長期滞在して地域のことを深く知ることができる点。三つ目は2000か所という多種多様な受け入れ先があるので、様々な地域で様々な仕事に触れることができる点だと思います。
当初は大学生を中心ターゲットに据えていましたが、最近は50歳以上の方の活用が増えています。会社を定年退職あるいは早期退職された方、ボランティア休暇といった会社の制度を利用して参加される方など様々で、「おてつたび」を通してセカンドキャリアを模索される方も増えています。今後、人口に占める50歳以上の方の割合は増えていきます。アクティブシニア、プレシニアが地域に貢献できる形をつくることは、大切だと感じています。
旅をきっかけに移住や起業も。関係人口の増加にも貢献
――― 利用者の体験談やエピソードで印象に残っているものはありますか。
「おてつたび」は一人ひとり、1回の受け入れごとに全く違うストーリーがあり、そこが面白いところです。
沖縄出身・在住の女性が奈良県川上村という人口約1300人の村の宿泊施設で「おてつたび」に参加したことで施設の若旦那と意気投合し結婚されたり、受け入れ先にそのまま就職して定住されたりといった事例があります。ある50代の男性は、徳島県鳴門市のラッキョウ農家で「おてつたび」したことで「鳴門らっきょ」に魅せられ、そのまま移住した上で、自ら起業して鳴門ラッキョウの6次産業化※に取り組んでいます。
「おてつたび」をきっかけに2拠点居住を始めた方もいます。居住とまではいかなくても、何かプロジェクトをスタートさせる人もとても多く、福島県大熊町では「おてつたび」に参加することで知り合った学生が、「大熊町の魅力をもっと発信したい」と学生団体を設立して一緒に行動しているという話もあります。
様々な形で「おてつたび」参加者が、地域の関係人口になっているのです。
※6次産業化…農林漁業者(1次産業)の従事者が、主体的に加工(2次産業)、流通・販売(3次産業)に取り組むこと。6次産業の6は、1次産業の1、2次産業の2、3次産業の3を掛けた数字。
参加者は働き、地元の人たちと交流しながら旅を続ける
コロナ禍に地域とのネットワークづくり。ピンチをチャンスに
――― 事業を大きくし会社を成長させるという点で、重要だと感じるポイントはどのような点でしょう。
会社が成長したポイントは実はコロナ禍にあると思います。人の移動が制限されるという点では、もちろん逆風だったのですが、その間に色々と試行錯誤した結果、会社が成長することができた。ピンチをチャンスに変えることができたと言えると思います。
例えば、コロナ禍で休業を余儀なくされている宿泊業の方々と人手の確保で苦労している農家をつなぐモデルをつくったり、ロックダウンで困難に直面している宿泊業のみなさんをつないで「お宿会議」という場を設け、同業者同士が率直に意見を交換したり、励まし合えるようにしました。これによって、当時何か特別なことが起きたわけではありませんが、コロナ禍が明けた後、「おてつたび」の受け入れ先になっていただくことにつながりました。
当時は地域や受け入れ先のためにできることは何でもやろうというスタンスでした。苦しい時期でしたが歩みを止めなかったことが今につながったと思います。
旅を通してヒト・モノ・カネが循環する。エコシステムの構築目指す
――― これからのビジョンや目標を教えてください。
受け入れ先は、まだまだ足りません。まずはそこを拡大していきます。アクセスできていない地域はたくさんあります。いろいろな地域・集落とつながることができるプラットフォームになることで、旅したい人が行きたい時に行きたい場所に行くことができるようになることを目指しています。
ただ、私たちは人材サービスをやりたくてスタートした会社ではなく、新しいエコシステムをつくりたいと思っています。人口が減少していく中で、一人1役では足りない時代がやって来るのではないかという問いを私たちは立てています。ではどうすればいいのか。一人が1役ではなく、2役、3役、4役、5役を担っていく必要があります。誰もが居住地と出身地以外に大好きな地域を持っていれば、そこで時々働き、買い物をし、お金を落とすという循環がつくれます。日本各地でヒト・モノ・カネが巡るエコシステムをつくりたいと思っています。そのために採用にも力を入れています。
仕事で大切なのは「ビジョンへの共感」。休日はインプットの時間
――― 仕事をする上で、どのようなことに気をつけていますか。
自らの仕事の仕方という点では、ボールを持ちすぎないように気をつけています。たくさんの業務、たくさんの役割を自分だけでこなそうとすると、自分がボトルネックになってしまう恐れがあります。どんどん意思決定して、他のメンバーに渡していくよう心がけています。
会社のマネジメントでいうと、社員から提案があった時、地域と参加者にとって「ウィンウィン」になるモデルなのかということは大事にしています。私たちの会社はビジョンを実現したくてスタートした会社ですから、特に人を採用する際には、ビジョンに共感してもらえるかどうかを重視しています。
共感の仕方はいろいろあっていい。受け入れ先の目線での共感でも参加者目線の共感でもいい。ただ、共感がないことにはどこかで綻びが出てしまうと思うのです。私たちの掲げるビジョンに違和感がないかどうかは、丁寧にお伝えしています。
――― プライベートはどのように過ごされていますか。
私自身はあまりプライベートと仕事を分けるタイプではありません。休日はゆっくりと時間を掛けて考える時間に充てています。もう少しインプットした上で意思決定したいことがある時は、本を読んだり人に会ったりといったことに時間を使うよう意識しています。
私は、精神的に疲れていたり悩んだりしていても、寝ることでリセットできる性格です。この性格のおかげで毎日過ごせているのかもしれません。
「人を採用する際には、ビジョンに共感してもらえるかどうかを重視しています」
「答えは現場にしかない」。1次情報を取り、自らの言葉で語ろう
――― これから起業を考えている人にアドバイスをお願いします。
まずは1次情報を取りに行くことが重要です。答えは現場にしかないと私たちは考えています。地域関係での起業に関心のある方は、「おてつたび」を使って、地域の現状を見て、感じて欲しい。少子高齢化、過疎化といった課題については知ってはいても、現状を体感した人は少ないと感じます。私の元にも「地域関係で起業をしたい」という相談が増えていますが、実は1度も現地に足を運んだことがないという方も多くいます。それは、すごくもったいない。やはり、きちんと1次情報を取りに行って、自分の言葉でしっかり語れるようになることが大事だと感じます。
二つ目は、自分自身、何か起業家にしか見えていないものがあると思っており、そこを大事にしてほしいということです。「おてつたび」をスタートさせる時、会う人ごとに「やめておけ」と言われました。「前例がない」「難易度が高い」と、みんな心配してアドバイスしてくれるのですから、それ自体はありがたいと思いながらも、当時、自分だけにしか見えていない世界があったなと思っています。「ピュアな狂気」とでも言うものです。
優しさも込めて、いろいろアドバイスをもらうことも多いと思いますが、自分が譲れるものと譲れないものの軸はしっかりと持って欲しい。「ピュアな狂気」は大事にしてほしいと思います。
【プロフィール】
永岡 里菜(ながおか・りな)
おてつたび代表取締役CEO
1990年、三重県尾鷲市生まれ。2013年に千葉大学教育学部を卒業し、イベント企画・制作会社にディレクターとして入社。2016年に転職し、農林水産省との和食推進事業の創設などを経験する。「一見何もなさそうに見えてしまう地域に人がくる仕組みをつくりたい」という思いから、2018年に「おてつたび」を創業。お手伝いと旅を掛け合わせた人材マッチングサイトを運営している。
旧統一教会の解散命令、最高裁で確定 教団側の特別抗告を棄却 清算手続きが継続
2026年6月23日 産経ニュース
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する文部科学省の解散命令請求で、最高裁第3小法廷(渡辺恵理子裁判長)は、解散命令を認めた東京高裁決定を不服とした教団側の特別抗告を棄却する決定をした。22日付。解散命令を巡る一連の司法判断が確定し、すでに開始した教団の清算手続きは継続する。
審理に参加した裁判官4人全員一致の決定。最高裁が、信者による献金勧誘行為など、民法上の不法行為を理由に解散命令を認めたのは初めて。教団側は解散命令は信教の自由を保障する憲法20条などに反すると主張し、最高裁に特別抗告していた。
最高裁は決定で、信者による献金勧誘について、「(教団の)組織的な関与の下に行われた」と指摘。解散命令事由に該当する「不法行為」があったことは「明らか」とした。
その上で解散命令については、「法人格を失わせる効力にとどまる」と言及。解散命令で信者の宗教上の行為に支障が生じるとしつつも、「宗教団体として存続することは妨げられない」とし、憲法が保障する信教や宗教的結社の自由に及ぼす影響を考慮しても、解散命令は「必要でやむを得ない」と結論づけた。
教団への解散命令は、文部科学省が宗教法人法に基づき東京地裁に請求。地裁は7年3月に教団に解散を命じる決定を出し、東京高裁が8年3月に教団側の即時抗告を棄却していた。高裁決定で解散命令の効力が生じ、教団の清算手続きはすでに開始している。
解散命令は、地下鉄サリン事件などを起こしたオウム真理教、供養料などを詐取した明覚寺に続いて3例目。
皇族数確保に向けた改正皇室典範 参議院本会議で可決・成立
2026年7月17日 NHK ONE東京
皇族数の確保に向けて、女性皇族が結婚後も皇室に残ることや、旧皇族の男系男子を養子に迎えられるようにすることを盛り込んだ改正皇室典範は、参議院本会議で採決が行われ、自民・維新両党と国民民主党、公明党、参政党などの賛成多数で可決・成立しました。
改正皇室典範には、女性皇族が結婚後も皇室に残ることや、旧皇族の男系男子を養子に迎えられるようにすることが盛り込まれています。
また、養子となった男系男子は皇位継承資格を有しない一方、養子に男の子が生まれた場合は、皇位継承資格を有するとした規定も設けられました。
改正皇室典範は、17日に参議院本会議で採決が行われ、自民・維新両党と国民民主党、公明党、参政党などの賛成多数で可決・成立しました。
チームみらいは、党議拘束をかけず、安野党首は賛成しました。
立憲民主党、共産党、れいわ新選組、社民党などは反対しました。
日本保守党は、採決前に退席しました。
改正皇室典範をめぐっては、安定的な皇位継承を確保するための方策は皇族数の確保の状況などを踏まえて引き続き検討するなどとした付帯決議が、衆議院議院運営委員会と参議院の特別委員会でいずれも賛成多数で可決されています。
皇室典範の改正は上皇さまの天皇退位に向けた特例法を審議した2017年に付則が改正されて以来で、本則の改正は1949年以来となります。
高市首相「改正の実現 感慨深い」
高市総理大臣は、17日夜、総理大臣官邸で記者団に対し「皇室典範の改正は、皇族数が減少しているという現状に鑑み、総理大臣就任以来、一刻の猶予もならない喫緊の課題であると認識してきた。長年の検討に結論を出し、改正の実現に至ったことは感慨深い。各党・各会派から幅広い賛同をいただき、圧倒的多数の賛成で速やかに成立させていただいたことに感謝を申し上げる」と述べました。
その上で、「政府としては、今後、公布から3か月後の施行に向けて万全の準備を進めていく。安定的な皇位継承に関する今後の議論については、立法府の意思を尊重し対応していく」と述べました。
官房長官 “実務的な課題は 宮内庁など関係省庁が適切に検討”
木原官房長官は、記者会見で「今後、養子縁組の具体的な手続きなど実務的な課題は宮内庁など関係省庁が適切に検討することになる。また、付帯決議の趣旨を尊重していく。国会審議で丁寧な説明に努めてきたが、今後も内容を丁寧に説明し、多くの方に理解いただけるよう努めていく」と述べました。
そして、「衆参両院での採決の結果、およそ9割という大多数の議員から賛成いただいた。国会の付帯決議からおよそ9年を経て、皇室典範の改正に携わることができたことは感慨深い」と述べました。
宮内庁長官 “適宜適切に できる限り対処”
宮内庁の黒田武一郎長官は、改正皇室典範が17日の参議院本会議で可決・成立したことを受けて、「皇室の方々の円滑な活動をお支えするために、お気持ちを十分に踏まえながら、適宜適切に、できる限りの対処をしてまいります」というコメントを文書で発表しました。
改正皇室典範には、女性皇族が結婚後も皇室に残ることや旧皇族の男系男子を養子に迎えられるようにすることが盛り込まれています。
黒田長官は、これまでの記者会見で、改正皇室典範が成立後できるだけ速やかに宮家の方々に制度の仕組みを直接説明したいという考えを示しています。
現在の女性皇族は、結婚後皇室に残るかどうか選択できることになっていて、黒田長官は、直ちに意思を確認することは考えていないものの婚姻までの適切なタイミングで確認することは当然必要だとしています。
養子の対象となる人たちについては現在把握しておらず、まずはどういう人がいるのか確認することが必要だとした上で、個人のプライバシーに関わることなので極めて慎重な対応が必要だとしています。
また、養子となった人には、皇室に関することを学んでもらう機会を設けたいとしています。
宮内庁は、検討内容は多岐にわたるとして、詳細は今後詰めていくとしています。
国旗損壊処罰法 参議院本会議で可決・成立
2026年7月17日 NHK
罰則の対象は? 国会提出された具体的な例
日本の国旗を損壊する行為を罰する法律をめぐって、「罰則の対象があいまいだ」といった指摘が相次いだことを踏まえ、法案を提出した4党は具体的な例を示した資料を作成し、国会に提示しました。
まず、罰則の対象となるとしたケースです。
▽駅前広場など人通りの多い場所で、持参した国旗を引き裂いたり、燃やしたり、切り刻んだりする。
▽国や自治体の庁舎前に掲揚されている国旗を引きずりおろして投げ捨てる。
▽公園や公道などで、国旗を勢いよく踏みつけて泥だらけにすることや、国旗にふん尿などを擦り付けて汚す。
▽自室でみずから国旗を切り刻んで燃やしている状況をスマホで撮影し、その動画をライブ配信する。
▽あえて、悪天候の日に公道上に国旗を置き、泥や雨でひどく汚す。
▽あえて、車両の往来が激しい公道上に国旗を置き、 タイヤの痕などでひどく汚す。
▽式典で旗の代わりに国旗を映しているモニターをハンマーなどで物理的に壊す。
▽インターネット空間でアバター化した者がこうした行為をする状況をライブ配信する。
罰則の対象とならないとしたケースは、要件ごとに列挙されました。
<「国旗」に該当しない例>
▽国旗以外の国章。
▽日の丸の大きさ、位置、彩色から、およそ日章旗とは認識できない旗。
▽旭日旗。
▽「お子様ランチ」についている旗。
▽Tシャツに描かれた日の丸。
▽国旗を模した鉄製のピンバッジ。
▽日の丸が描かれているゴルフボールをわざと池ポチャさせる。
▽フェイスペイントした日の丸を消す。
<「有体物」に該当しない例>
▽アニメ・漫画・ゲームの作中で 国旗が損壊されるイメージを描写する。
▽生成AIにより国旗が損壊される状況を描写した架空の動画を作成する。
▽国旗をすべてアバター化して、それが損壊される状況を配信する。
<「損壊・除去・汚損」に該当しない例>
▽国旗を素手で殴りつけ、物質的な破壊を伴わない。
▽国旗をくしゃくしゃにし、物質的な破壊を伴わない。
▽掲揚されている国旗を瞬間的に覆う。
▽国旗を新品の靴で踏み、何ら不潔にすることがない。
<「公然と」に該当しない例>
▽密室の中で配偶者を前にして国旗を損壊する。
▽自室でみずから国旗を損壊している状況を撮影し、その動画をあとで配信する。
▽非公然空間で撮影された国旗損壊シーンを実写映画の一部として放映する。
一方、すでに損壊された国旗を公然と陳列する場合も該当しないとした上で、法律の付則では、施行後3年をめどに行う検討で、このような行為も勘案すべき事項と明記したとしています。
<「著しく不快で嫌悪感を催させる方法」に該当しない例>
▽古くなったか、汚れてしまった国旗を廃棄するために屋外の人目につく場所で焼却する。
▽イベントで配布した小旗をイベント終了後に回収して廃棄する。
▽イベント会場に掲揚されていた 国旗が照明設備に絡まり、感電や落下の危険があるため国旗を切って除去する。
▽スポーツ大会などで日本の代表チームを応援するために国旗に寄せ書きをする。
▽日の丸に文字を墨汁で書く。
▽雨の日に国旗を掲揚し、結果的に雨などで汚れてしまった。
また、構成要件には該当するものの、違法性を問われない可能性があるケースも示されました。
▽政治デモで、国旗を損壊する以外の手段では主義や主張を伝えることができない状況で行われた行為である場合。
▽舞台演劇の中で、国旗を損壊する情景が欠かせない場面でその情景にふさわしい態様で行われた行為である場合。
▽映画の公開ロケなどで、撮影現場であることが明らかな状況で、国旗を損壊するシーンを撮影する場合。
一方、政治的表現や芸術的表現に名を借りて社会的に相当でない態様で行われた行為である場合は、違法性を問われる可能性があるとされました。
警察庁は具体的指針などについて通達出す方針
処罰の対象となる行為の定義があいまいだという指摘や批判も上がる中、警察は法律の成立をどう受け止めているのか。
警察庁は、これまでの国会での審議の内容も踏まえ、どんなケースで取締りを行うのか、具体的な指針などについて今後全国の警察に通達を出す方針です。
警察庁のある幹部
「同じような行為でも個々のケースで法的な解釈は異なってくるので、検察庁と協議しながら慎重に運用していく。法律が施行されれば、注目を集めるために国旗を損壊する様子をSNSに投稿するような行為も想定されるが、落ち着いて対応する」
警視庁の警備部門で現場対応にあたっている警察官
「大前提として、現行犯での検挙は難しい。表現の自由や保護されるべき個人の権利の観点から慎重な検討が求められ、行為の意図を本人から十分聞き取る必要もある。今のままでは適用基準があいまいで、現場判断では動けない」
国旗製造販売会社「法規制より 意識持つことで十分では」
90年近く国旗などの製造や販売を行う会社で、受け止めを聞きました。
1937年に創業した東京・墨田区の「東京製旗」は、日本を含め世界各国の国旗などの製造や販売を手がけています。
会社によりますと、旗の使われ方は時代によって変化していて、戦時中は家族が出征する時に使われることがあったほか、戦後は1959年に行われた当時の皇太子夫妻(上皇ご夫妻)のご成婚記念パレードや1964年の東京オリンピックの際に受注が急増したということです。現在は、主に官公庁や企業、各地の学校に販売しています。
個人客ではサッカーのワールドカップなどスポーツの応援のために通信販売で購入する人が多いほか、店頭で買い求める人の中には海外からの観光客もいるということです。
また、集合住宅が増えたためか、住宅などの玄関先で掲げる人は減っているとしています。
食品の消費税減税を元に戻す際の負担軽減、所得連動給付を29年4月にも…税制改正大綱の原案判明
2026年9月8日 読売新聞
食料品の消費減税に関する政府の税制改正大綱の原案が8日、わかった。2029年4月に消費税率を1%から8%に戻す際の負担を軽減するため、29年度は所得に連動した給付を4月にも実施する。原案は8日午後に開かれる与党の税制調査会に示され、政府は15日に閣議決定することを目指す。
財務省
原案には、減税を行う27~28年度は、食料品の消費税率1%相当分の財源(約6000億円)で中低所得者を対象に「簡易版」の所得連動給付を先行実施する方針を盛り込んだ。29年度は28年度の対象者に2回の給付を行う方針。支給額の半年分相当を4月に先行給付し、残りは秋に給付する。執行を担う地方の事務負担にも配慮する。
国と地方との費用負担は、3分の2以上を国が負担し、残りの2分の1ずつを都道府県と市町村がそれぞれ負担する方針を示した。普通交付税の交付を受けない市町村には、国が特別交付金で手当てする方向だ。
一方、消費税の税込み価格の表示を義務づける「総額表示」を巡っては、税率変更の前後2か月の猶予期間を設ける特例を設ける。2年間の減税による地方消費税の減収額については、「全額を地方特例交付金で補填する」と明記した。
消費税減税によって経営への悪影響が懸念される農林漁業者に対しては、売上高を踏まえた金額を給付する仕組みを導入する。スーパーの総菜などとの税率差が拡大する外食産業には、テイクアウトなどの多角化支援を講じる。
消費税減税は年4・3兆円の減収につながる。原案では、「市場の信認を得られるよう、特例公債(赤字国債)に頼らない」ことを明記する。補助金や租税特別措置の適正化など歳出や歳入の見直しで、代替財源を確保する方針を示した。
再審制度見直し 改正刑事訴訟法が参議院本会議で可決・成立
2026年7月17日 NHK ONE東京
再審=裁判のやり直しの制度の見直しをめぐり、再審開始の決定に対する検察による不服申し立てを原則禁止することなどを盛り込んだ改正刑事訴訟法は、参議院本会議で採決が行われ、自民・維新両党と参政党などの賛成多数で可決・成立しました。
改正刑事訴訟法では、再審=裁判のやり直しの開始の決定に対する検察による不服申し立てを原則禁止し、十分な根拠がある場合に限って例外的に認めるとしています。
また、証拠開示のあり方をめぐっては、再審請求理由に関連する証拠について裁判所が必要性などを認めた場合に検察に提出を命じる規定を新設した上で、検察が開示する証拠の範囲が不当に狭くならないよう留意すると明記しています。
改正法は、17日に参議院本会議で採決が行われ、自民・維新両党と参政党、日本保守党などの賛成多数で可決・成立しました。
立憲民主党、国民民主党、公明党、共産党、れいわ新選組、社民党、チームみらいなどは反対しました。
改正法をめぐっては、検察が不服申し立てを例外的に行う場合は十分な根拠があることを慎重かつ十二分に検討することなどを求める付帯決議が衆参両院の法務委員会で可決されています。
改正刑事訴訟法の詳細
検察の不服申し立て
改正刑事訴訟法では、再審開始の決定に対する検察による不服申し立てを原則として禁止し、十分な根拠がある場合に限って例外的に認めています。
国会では、この規定について「どのような場合に例外的に認めるのか」とか「原則禁止の運用が実際に担保されるのか」といった質問が相次ぎました。
これに対し、政府は、不服申し立てを例外的に認めるのは、再審開始の決定が取り消される蓋然性が高いことを裏付ける合理的な根拠がある場合だとした上で、十分な根拠があるかどうかの判断は検察によって組織的に検討され、慎重で抑制的な運用が確保されると説明しました。
検察の不服申し立ての扱いをめぐっては、政府は当初、法制審議会の答申をもとに作成した案に禁止に関する規定を盛り込んでいませんでした。
自民党から強い反発が出たため、法案の提出前に3回の修正を行う異例の対応をとり、法改正が実現しました。
証拠開示
改正法では、証拠開示をめぐり、再審請求理由に関連する証拠について裁判所が必要性などを認めた場合に検察に提出を命じる規定が新設されました。
検察が開示する証拠の範囲が不当に狭くならないよう留意することも明記しています。
これについて、国会では「開示される証拠の範囲が狭まるのではないか」という懸念や「再審請求理由に関連すると認められる証拠に限定せず幅広く開示すべきだ」といった指摘が出されました。
これに対し、政府の担当者は法改正によって開示される範囲は広がると答弁し、制度の趣旨や内容を十分に周知して適正な運用の確保に努める考えを示しました。
証拠の目的外使用
改正法には、開示された証拠について、再審請求の手続き以外の目的での使用を禁止する規定も盛り込まれています。
これについて、国会では、過去には弁護側が支援者などに証拠を共有し世論を喚起することで再審開始につながった事例もあるとして、問題視する意見が出されました。
政府は、規定は被害者や関係者のプライバシーが侵害されないようにするためのものだとした上で、証拠の複製などを再審の手続きや準備に使うことなどは目的外使用にはあたらないと説明しました。
5年ごとに見直し
改正法は、施行後、5年ごとに必要に応じて見直しが行われます。
最高検察庁「非常救済手続きとして適切な運用に努める」
再審制度を見直す改正刑事訴訟法が成立したことについて、最高検察庁は、「改正法の成立に至る過程では、これまでの検察の運用に対する厳しい指摘もなされたものと承知しています。検察としては、このような指摘を真摯に受け止め、改正法の趣旨や国会での議論も十分に踏まえ、再審請求手続きにおける証拠の提出・開示や再審開始決定に対する不服申し立てのあり方を含め、改正法の下で再審制度が非常救済手続きとして適切に機能するようにするため、適切な運用に努めてまいります」というコメントを出しました。
日弁連「えん罪被害者の救済困難にするおそれ運用を注視」
再審制度を見直す改正刑事訴訟法が成立したことについて、日本弁護士連合会は会長声明を出しました。
声明では、「1948年に刑事訴訟法が制定されて以来、初めての再審手続きに関する改正で、その点では大きな意義があり、検察官の不服申し立てを原則として禁止するなど、肯定的に評価できる点もある」とした一方で、「今まで以上にえん罪被害者の救済を困難にするおそれがあり、多くの問題点を内包している」としています。
具体的な問題点として、「従来の運用では、裁判所の要請に応じて検察官が証拠を開示することはあったが、改正法ではそのことが明記されていない。検察官が証拠提出命令を受けないかぎり、無罪につながる証拠の提出や開示の要請に応じないことが懸念される」としました。
また、証拠の一覧表の作成や提出を検察官に命じる制度が設けられなかったことについて、「過去のえん罪事件では検察官が『不存在』と回答した証拠について、後日、存在することが判明した事例が複数ある。再審請求の審理に必要な証拠の提出や開示に漏れが生じることが懸念される」としました。
その上で、「今回の改正に基づく運用が適切に行われるよう注視するとともに、より良い制度のあり方を探求し、必要な再改正を含む制度のさらなる充実を目指していきたい」としています。
日本新聞協会 強い遺憾の意を表明
再審制度を見直す改正刑事訴訟法が成立したことについて、日本新聞協会は強い遺憾の意を談話で表明しました。
検察が開示した証拠の目的外使用を禁止する規定が盛り込まれたことについて、談話では、「非公開で行われる再審請求の審理で、開示証拠の分析や報道を通じた検証は、えん罪救済と司法の適正な運用に重要な役割を果たしてきた。新たな規定によって報道機関への情報提供に萎縮が生じ、再審請求の審理がさらに不透明なものになることを深く危惧する」としています。
その上で、「国会では、報道機関を通じた国民の知る権利にも適切に配慮するよう求める付帯決議が可決された。その趣旨を重く受け止め、適切に実行することを求める」として、今後見直しを求めていく考えを示しました。
防災庁設置法、来週成立へ 事前防災徹底、地方に防災局 参院特別委で可決
2026年7月10日 産経ニュース
参院災害対策・震災復興特別委員会は10日、災害対策で国の司令塔となる防災庁の設置関連法案を可決した。来週の参院本会議で可決、成立する見通しだ。政府は11月の発足を目指している。
防災庁は首相をトップとし、防災相が業務を統括。平時から被害抑制策を検討する「事前防災」の徹底を掲げ、自治体や民間企業、NPOとの連携体制構築に取り組む。
南海トラフ、日本海溝・千島海溝の両巨大地震への備えを強化するため、地方機関の「防災局」を置く。自治体職員らの研修拠点となる防災大学校(仮称)も設置できるとした。
法案の審議は6月26日の委員会で終わったが、与野党対立の影響で採決が見送られていた。
選挙期間中のSNS偽情報対策法 参院本会議で可決・成立
2026年7月13日 NHK ONE東京
選挙期間中のSNSによる偽情報拡散などへの対策をめぐり、運営事業者に選挙の公正を害する情報による悪影響を軽減する措置を義務づけることなどを盛り込んだ法律が、参議院本会議で可決・成立しました。来年3月に施行され、統一地方選挙でも適用されることになります。
法律は、選挙期間中にSNSによる偽情報やひぼう中傷が拡散するなどの問題への対策を強化するもので、与野党9党の協議会での検討を経て国会に提出されました。
この中では、SNSの運営事業者に対し、選挙の公正を害するおそれのある情報の流通による悪影響を軽減するための措置を講じることや、年に1回、実施状況を公表することを義務づけています。
また、公職選挙法を改正し、インターネットの利用にあたっては偽情報の発信などで公正を害してはならないとする訓示規定を設けることや、AIを使って作成した選挙運動用の画像にその旨を表示するよう義務づけることなども盛り込んでいます。
法律は13日の参議院本会議で採決が行われ、賛成多数で可決・成立しました。
来年3月から施行され、統一地方選挙でも適用されることになります。
法律の詳細は
法律は、選挙運動のあり方を議論する与野党9党の協議会で、SNSの運営事業者にヒアリングするなどして検討を重ね、まとめられました。
そして先月、9党のうち自民・維新両党と中道改革連合、国民民主党、参政党、チームみらいの6党が衆議院に提出しました。
法律では、SNSの運営事業者に対し、選挙の公正を害するおそれのある情報の流通による悪影響を軽減するための措置を講じ、毎年1回公表することを義務づけています。
ただ、具体的な措置については、総務大臣が指針で定めるとされ、法律に明記はされていません。
委員会の質疑では、SNSの利用規約に違反した場合に収益化の仕組みを停止することや、公式サイトなど信頼できる情報を優先的に表示すること、それに、ファクトチェックを行う機関などと連携することなどが例として挙げられました。
また、公職選挙法にインターネットの利用にあたっては偽情報の発信などで公正を害してはならないとする訓示規定を設けることや、AIを使って作成または改変した選挙運動用の画像などにその旨を表示するよう義務づけることなども盛り込まれています。
法律の施行日は、来年春の統一地方選挙での実施を念頭に、来年3月1日としています。
自民 鈴木幹事長「大きな意義がある 今後も議論を継続していく」
自民党の鈴木幹事長は記者会見で「インターネットで流通する情報の悪影響を防ぐための具体的な対策を講じるもので大きな意義がある。今回の規定は罰則を設けず、具体的にどのような内容の措置を講じるかは事業者の判断に委ねるもので、表現の自由に対する配慮もなされている」と述べました。
そのうえで「今後も新たな問題が出てくる可能性が否定ができないので、法改正後の状況も見定めながら、各党協議会の場で議論を継続していく」と述べました。
政府 「副首都」構想で10月下旬めどに指定要件など決める方針
2026年8月26日 NHK ONE東京
大規模災害の際に首都の代替機能を担う「副首都」構想の関連法が公布されたのを受けて、政府の会議が開かれ、ことし10月下旬をめどに「副首都」の具体的な指定要件を定めた政令を決める方針など、今後の対応の進め方を確認しました。
先の国会で成立した「副首都」構想の関連法は先月末に公布され、政府は26日、関係府省の担当者が出席する初めての連絡会議を開きました。
この中で遠藤総理大臣補佐官は「この法律には災害対策と、多極分散型経済圏の形成による経済成長という、2つの大きな目的がある。関係府省も多岐にわたるので、しっかり連携してもらいたい」と述べました。
会議では、関連法の付帯決議で「副首都」の指定に際しては客観的な基準を明確にすることが明記されていることを踏まえ、ことし10月下旬をめどに具体的な指定要件を定めた政令を決める方針を確認しました。
また、ことし11月をめどに「副首都」が担うべき機能などを定める基本方針の考え方をとりまとめ、広く周知を図ったうえで、来年10月をめどに正式に基本方針を閣議決定することなど、今後の対応の進め方を確認しました。
国民投票法改正案 参議院憲法審査会で賛成多数で可決
2026年7月22日 NHK
憲法改正の手続きを定めた国民投票法について投票環境を整備するための改正案は、参議院憲法審査会で採決され、自民・維新両党と立憲民主党などの賛成多数で可決されました。
自民・維新両党と国民民主党、参政党の4党が提出した国民投票法の改正案は、22日の参議院憲法審査会で質疑と採決が行われました。
改正案は、現在の公職選挙法にあわせて、投票の立会人の要件を緩和するなど投票環境を整備するためのもので、採決の結果、自民・維新両党と立憲民主党、国民民主党、公明党、参政党の賛成多数で可決されました。共産党とれいわ新選組は反対しました。
また、これにあわせて、インターネットやAIの普及など劇的な情勢の変化を踏まえ、国民投票の結果が正当性を欠くことにならないよう、必要な措置を講じることなどを盛り込んだ付帯決議が賛成多数で可決されました。
改正案は24日にも参議院本会議で採決が行われ、可決・成立する見通しです。
国民投票法改正案 これまでの経緯
国民投票法の改正案は、現在の公職選挙法にあわせて投票環境の整備などを行うためのものです。
改正案では、▽投票の立会人のなり手不足が指摘される中、立会人の居住地などの要件を緩和するほか、▽悪天候で離島から投票箱を運べない場合などに、現地で開票所を設けられるようにすることが盛り込まれています。
また、▽ラジオのAMだけでなく、FMでも憲法改正案を広報する放送をできるようにするとしています。
国民投票法をめぐっては、4年前に自民党、公明党、日本維新の会などが今回と同じ内容の改正案を国会に提出しましたが、立憲民主党が国民投票を行う際の広告のあり方などの検討が不十分だと指摘して採決に至らず、おととしの衆議院の解散に伴って廃案となりました。
こうした中、先月5日、自民・維新両党と国民民主党、参政党の4党が改めて改正案を共同で提出しました。
先月18日の衆議院憲法審査会では、国民投票を行う際の広告や資金の規制、インターネット利用のあり方を速やかに検討し、必要な法制上の措置を講じるなどとした付帯決議が改正案の採決とあわせて可決されました。
そして改正案は翌19日、衆議院本会議で可決され、参議院に送られました。
〈社説〉国民投票法改正 課題が残されたままだ
2026年8月3日 東京新聞
憲法改正の是非を問うための手続きを定めた改正国民投票法が成立した。しかし、ネット広告の制限や資金規制、偽情報対策などの課題は放置されたまま。公平で公正な投票環境を整えずに改憲を発議し、国民投票を行うようなことが許されてはならない。
改正法は、なり手不足の投票立会人の選任要件を緩和するなど、投票環境整備に関する3項目を公職選挙法の規定にそろえる内容で形式的な手直しにとどまる。
2021年改正時の付則で3年をめどに講じるとされたネット広告や資金の規制など「必要な法制上の措置」は手つかずのまま。
今回の改正でも、3年をめどに対策を講じることがあらためて付則に盛り込まれたが、これ以上の放置は許されない。国会は速やかに対応しなければならない。
ネットやSNSの虚偽情報や誹謗(ひぼう)中傷が選挙に与える悪影響は年々深刻になっている。
今年2月の衆院選では、自民党が高市早苗総裁(首相)出演のネット動画広告を大量に出稿し、ネット利用者らの投票行動に影響を与えたと指摘されるなど、資金力の多寡が有権者の投票行動を左右する状況も生まれている。
国民投票の運動期間は60~180日。公職を選ぶ選挙運動期間の5~17日よりも長く、偽情報による弊害や資金力の多寡に伴う影響がより深刻になることが予想される。公平で公正な国民投票の環境を整えることは喫緊の課題だ。
先の特別国会で改正された公職選挙法は、選挙運動に関するSNS対策を強化。ネット利用者が虚偽情報を公にして選挙の公正を害すことを禁じ、人工知能(AI)で作成、改変した画像や動画を投稿した場合は、その旨を表示する義務を課した。
同様の対策を国民投票法でも講じる必要性は参院憲法審査会の質疑で野党側が指摘したが、与党側は「検討項目になり得ると考えている」と述べるにとどめた。
このため、同審査会は改正国民投票法を可決した後、選挙運動に関するSNS対策を国民投票法でも同様に講じるよう求める付帯決議を採択した。
決議に法的拘束力はないが、憲法は国の最高法規だ。SNSの虚偽情報や誹謗中傷、大量のネット広告が改憲に影響を与える状況を放置してはならない。速やかに対応するよう国会に強く求める。
一律6000円の「在留」手数料を1万~7・5万円に…入管庁案、「永住許可」は1万円が20万円に
2026年6月24日 読売新聞
出入国在留管理庁は24日午前、外国人の在留手続きに関する手数料について、引き上げ後の金額案を自民党法務部会などの合同会議に示した。在留資格の変更・更新は現行の一律6000円から期間に応じて1万~7万5000円、永住許可は現行の1万円から20万円にそれぞれ引き上げる。10月にも適用する方針だ。
引き上げは、5月に成立した改正出入国管理・難民認定法に盛り込まれた。
関係者によると、新たな金額案は、更新を希望する在留期間が3か月以下では1万円、1年は3万3000円、3年以上5年未満は6万4000円、5年以上は7万5000円などとなっている。
オンライン申請の場合は「3か月以下」の申請を除き、最大1万円を割り引く。永住許可申請は従来通り、窓口対応のみとなる。
改正法は手数料の上限額を資格の変更・更新が10万円、永住許可が30万円と規定するが、具体額は入管庁が政令で定める。入管庁は近くパブリックコメント(意見公募)を実施した上で具体額を決め、早ければ10月から引き上げを実施する。政府は、手数料収入を日本語教育の充実などに充てる考えだ。
日銀 金融政策決定会合 政策金利1.25%程度へ引き上げの見通し
2026年9月18日 NHK ONE 東京
日銀はきょう2日目の金融政策決定会合を開き、政策金利の1.25%程度への引き上げを決める見通しです。
物価が大幅に上昇するリスクへの警戒が必要だとして、利上げのペースを速めて対応する形になります。
日銀は17日から金融政策決定会合を開いていて、初日は経済、物価の情勢などについて意見を交わしたとみられ、2日目の18日は、当面の政策について議論します。
日銀は、食料品などを中心に値上げが続く中、「基調的な物価上昇率」が目標とする2%に近づいているという見方を強めています。
そして、中東情勢に伴う原油価格の高騰や為替相場の動向、それにAI関連需要の拡大によって企業間の取引価格の上昇は続いていて、この先、消費者向けのモノやサービスへの価格に広く反映されていくと見込んでいます。
18日の会合では、物価上昇率が2%を大きく超えていくリスクにより警戒が必要だとして、今は1%程度としている政策金利を1.25%程度に引き上げることを決める見通しです。
利上げを決めれば、ことし6月以来、3か月ぶりとなり、おおむね半年に1回だった利上げのペースを速めて対応する形になります。
また、1.25%程度という政策金利は1995年以来、31年ぶりの高い水準となります。
18日の会合の終了後、植田総裁は記者会見を行う予定で今回の判断の理由や今後の利上げのペースについてどのように説明するのか、それに、金融市場がどう反応するのかが焦点となります。
政府・日銀による為替介入、年間総額27兆1342億円で過去最大を更新…大規模介入を数字上も裏付け
2026年8月28日 読売新聞
財務省は28日、7月30日~8月26日の政府・日本銀行による為替介入の総額が15兆3993億円だったと発表した。4~5月の介入額も含めると27兆1342億円となり、2003年の年間介入額(20兆4250億円)を上回って過去最大を更新した。歴史的な円安を抑える狙いの大規模介入だったことが数字上も裏付けられた。
財務省
政府関係者によると、政府・日銀は7月30日に約3か月ぶりの円買い・ドル売り介入を実施。同31日には円買い介入として28年ぶりとなる日米協調介入に踏み切った。8月3日の外国為替市場でも円が急騰する場面があった。
一連の介入により、1ドル=163円前後で推移していた円相場は一時、155円台まで急騰。4~5月に実施された日本単独の円買い・ドル売り介入では効果が約1か月で消滅したが、日米両政府が追加の協調介入を示唆していることもあり、円相場は8月に入っても1ドル=159円前後で推移している。
SMBC日興証券の牧野潤一氏は「円安が進むとの見方が弱まり、投機筋が円売りを手じまいしつつある。日米協調介入は一定の効果があった」と指摘する。
米国時間8月31日~9月1日には、米ノースカロライナ州で主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開催される。片山財務相はベッセント米財務長官と会談を行う方向で調整を進めており、為替政策などを巡る両者の発言に注目が集まる。
7月の実質賃金 前年同月比2.4%増 7か月連続プラス
2026年9月8日 NHK ONE 東京
ことし7月の働く人1人あたりの現金給与の総額は、基本給やボーナスなどが大きく伸びたため、前の年の同じ月と比べて4.7%増加し、4年7か月連続のプラスとなりました。また、物価を反映した実質賃金も2.4%増えて、7か月連続のプラスとなりました。
厚生労働省は全国の従業員5人以上の事業所3万あまりを対象に「毎月勤労統計調査」を行っていて、ことし7月分の速報値を公表しました。
それによりますと、働く人の基本給や残業代、それにボーナスなどをあわせた現金給与の総額は、1人あたりの平均で43万6401円と、前の年の同じ月と比べて4.7%増え、4年7か月連続のプラスとなりました。
このうち、基本給などにあたる所定内給与は、28万797円と前の年の同じ月と比べて4.1%増えて、ボーナスなど特別に支払われた給与も13万4819円と前の年の同じ月と比べて6.3%増え、いずれも大きな伸びとなりました。
こうした中で、物価の変動分を反映した実質賃金は、前の年の同じ月と比べて2.4%増加し、7か月連続のプラスとなりました。
厚生労働省は「春闘などの影響で所定内給与が堅調に増加し、ボーナスの額を増やす事業所も多かったことから実質賃金の増加につながっているとみられる。一方で、物価の上昇の伸びは見通せず、動向を注視したい」とコメントしています。
木原官房長官「物価動向を注視 賃上げ定着へ支援策講じる」
木原官房長官は、閣議のあとの記者会見で「物価の動向や雇用・所得環境全体を注視し、総合的に判断していく必要がある。政府としては、賃上げの力強い動きを定着させていくため、中小企業や小規模事業者の賃上げの環境整備をはじめ、支援策を講じていく」と述べました。
国民 玉木代表「新たな局面 インフレ抑え住民負担軽減を」
国民民主党の玉木代表は、記者会見で「実質賃金が連続してプラスとなる中、経済政策はインフレを抑制しながらどうやって国民の所得を増やすかという新たな局面に入っている。需要をつくって景気を喚起するような政策ではなく、住民税の控除額を引き上げ、負担を軽減するというのが政策的には正しく、主張していきたい」と述べました。
大手銀行 普通預金の金利 8月から0.4%へ 日銀の追加利上げで
2026年6月16日 NHK ONE 東京
日銀が追加の利上げを決めたことを受けて、大手銀行が普通預金の金利をことし8月から年0.4%に引き上げると相次いで発表しました。各行とも、普通預金の金利の引き上げは、ことし2月以来のことです。
このうち三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行のメガバンク3行は、ことし2月から普通預金の金利は年0.3%としています。
今回の日銀の利上げを受けて、各行ともことし8月から年0.4%に引き上げると発表しました。
三菱UFJ銀行と三井住友銀行は1992年8月以降で、みずほ銀行は2002年4月以降で、最も高い金利水準になるということです。
今後、ほかの金融機関でも預金金利のほか、資金を借り入れる際の金利も引き上げる動きが広がりそうです。
みずほ銀行が「貯蓄預金」復活 3メガで初、預金額に応じ金利上乗せ
2026年9月7日 日本経済新聞
みずほ銀行は7日、預入額によって金利を階段状に上乗せしていく貯蓄預金を復活させたと発表した。3メガバンクで初めてとなる。日常的に使えるお金を出し入れする預金口座の利便性を高め、顧客の預かり資産を拡大させる。カードサービスの拡充と合わせて、決済や預金、ポイント付与を通じた顧客との接点を広げる。
みずほの加藤勝彦頭取は「個人預金をしっかり取り、信用創造に生かしていく」と強調した。低金利時代に大手行は貯蓄預金の新規受け付けを停止するなどしてきた。みずほは09年12月に預金額に応じた金利の上乗せをやめ、普通預金と同等の金利水準にしていた。階段金利の復活は約16年半ぶりとなる。
貯蓄預金口座の金利は6段階設ける。10万円以上から金利水準を段階的に引き上げ、300万円以上では0.45%とする。普通預金口座(0.4%)より上乗せする。今年12月までそれぞれ2倍の水準に引き上げて新規開設を促す。
貯蓄預金は毎月金利が受け取れるほか、普通預金と同様に出し入れができるのが特徴だ。同日の記者会見でみずほの猪股尚志副頭取は「金利ある世界が定着するなか、金利時代を象徴するような金融商品だ」と述べた。生活資金をやりくりする口座として普通預金口座と合わせて日常的に使ってもらうことを目指す。
楽天グループとの連携で発行するクレジットカード「みずほ楽天カード」でのポイント還元も拡充する。給与受け取りなど銀行取引でためられる自社独自の「みずほポイント」と楽天ポイントの還元率をそれぞれ1%ずつとし、合計で2%還元する。これまでは発行後1年に限っていた2%還元を恒久化し、ポイント付与の上限も撤廃する。
ポイント上乗せの対象となる店舗やサービスなどを限定しないのが特徴だ。みずほポイントは楽天ポイントのほか、PayPayポイントや、NTTドコモの「dポイント」に等価交換できる。
著名人ら「声」の権利保護、収益目的で判断 AI生成巡り報告書了承
2026年7月27日 日本経済新聞
法務省は27日、生成AI(人工知能)によって肖像や声を無断で利用した場合の民事上の責任を整理する検討会を開いた。著名人ら個人を識別できる「声」も法的な保護対象に含むとの見解を示した報告書を了承した。
現在、声を対象とした明確な法律上の権利規定はない。報告書は俳優や声優らの声も財産的な価値を守る「パブリシティー権」などの保護対象となり得ると明記した。保護対象となるかは収益目的かどうかを判断基準とする。
報告書は「人の声についても、商品の販売を促進する顧客吸引力を有する場合がある」と結論づけた。著名人の顔や知名度に加え、声を使って集客や販売の促進を図る場合にも権利の侵害となり得る。
具体例としては、有名人の声を使用したボイスメッセージ、ボイススタンプなどを挙げた。
ものまねや声まねは原則として権利侵害にあたらないと区別した。まねされた人を示すものと誤解されるような場合でない限り、パブリシティー権を侵害するものではないと整理した。AIを使って無断で生成する場合とわけた。
報告書は8月にも公開する。法的な拘束力はもたない。生成AIの利用者や動画クリエーターに参考として使ってもらう。裁判の判例を待たずに権利侵害を抑制する狙いがある。
AIで声優の音声を断りなく模倣した動画を巡っては、SNSなどで公開し収益化するケースが相次いでいる。法務省の検討会は4月から議論を重ねてきた。5月には人気声優らも出席し、権利の被害状況や必要な対策を訴えた。
現在は声そのものを対象とした明確な法律上の権利規定はなく、判例も限られていた。
損害賠償や差し止め請求についても記した。パブリシティー権の侵害により本来得られた財産的な利益への賠償と、肖像や声をみだりに利用されない権利による慰謝料が同時に認められる可能性もあると記した。
報告書は後半部分で、具体的に想定事例を挙げてパブリシティー権の侵害などに該当する可能性があるかどうかを記載した。損害賠償や差し止め請求について検討した。
18歳未満の選挙運動禁止規定は憲法違反の初判断 東京地裁
2026年9月25日 NHK ONE東京
18歳未満の選挙運動が公職選挙法の規定で禁止されているのは憲法違反だとして、17歳から20歳までの4人が国を訴えた裁判で、東京地方裁判所は「精神的自由に対する重大な制約だ」として、表現の自由を保障した憲法に違反するという初めての判断を示しました。
一方で、賠償を求めた訴えなどは退けました。
18歳未満の未成年者は公職選挙法で選挙運動が禁止され、違反した場合に刑罰を科す規定もあります。
17歳から20歳までの男女4人は、いずれも過去の選挙で法律の規定によって選挙運動を断念した経験があり、「表現の自由を保障する憲法に違反する」として、国に対し、未成年者の選挙運動を認めることや、賠償を求めました。
国は「法律の規定は、未成年者が不当な選挙運動に巻き込まれないよう保護する目的がある」などと争いました。
25日の判決で、東京地方裁判所の衣斐瑞穂裁判長は「未成年者の選挙運動を一律に禁止しなければならない理由は判然としない。選挙の公正を確保する目的で規制する必要性が高いとはいえない」と指摘しました。
そのうえで「法律の規定は精神的自由に対する重大な制約で、未成年者は一切の選挙運動を禁止される。選挙運動の規制として必要かつ合理的とは認められない」として、公職選挙法のうち未成年者の選挙運動を禁止する規定と、違反した場合に刑罰を科す規定は、表現の自由を保障した憲法21条1項に違反するという初めての判断を示しました。
一方で、賠償を求めた訴えなどは退けました。
18歳未満の選挙運動禁止規定の背景
若者の政治参加を促そうと、2015年に公職選挙法が改正された際に選挙権の年齢が引き下げられ、18歳以上が投票できるようになりました。
一方で、なぜ18歳未満の未成年者について選挙運動を禁止しているのでしょうか。
【公職選挙法の規定】
公職選挙法の選挙運動に関する規定では、18歳未満の人について、「選挙運動をすることができない」と定め、また、大人が18歳未満の人に選挙運動をさせることも禁止しています。
公職選挙法の解説書では、この規定について「心身が未成熟な人を保護するために設けられた」としています。
さらに、禁止されている行為として、具体的に
▽候補者の名前の連呼、
▽街頭演説、
▽個人演説会での演説
などを挙げています。
この規定に違反して選挙運動を行った場合、「1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」が科せられるほか、最長で5年間公民権も停止されると罰則が定められています。
【若者の政治参加の促進】
一方で、若者の政治参加を促すことを大きなねらいとして、2015年の法改正で選挙権年齢が18歳以上に引き下げられました。
これに伴い、学校現場では新たに有権者となる高校生の政治や選挙への意識を高める「主権者教育」が行われ、政治の仕組みなど必要な知識を学ぶ機会が増えています。
文部科学省の調査では、高校生のうちに90%を超える生徒が主権者教育を受けるほど、取り組みが広がっています。
18歳になるまでは、政治について学ぶものの、選挙や選挙運動には参加できない状況になっています。
【広がるSNS選挙】
2013年にインターネットを使った選挙運動が解禁されたことや、SNSの普及にともなって、近年の選挙では支援者が投票を呼びかけることが容易になっています。
最近の選挙ではSNSの活用が広がり、結果にも影響を与えたと指摘されることが増えてきました。
中学生や高校生がSNSで政治的な内容を発信すれば、選挙運動の意思がなくても罰せられるおそれがあり、SNSの普及によって公職選挙法による規制自体が難しくなってきています。
原告「本当にうれしい」
判決のあと、原告と弁護団が都内で会見を開きました。
原告の宮田香乃さん(20)は「未成年の声も社会に届くようになってほしいと思っていたので、この判決を聞けて本当にうれしいです」と話していました。
原告の竹島一心さん(19)は「今までずっと悔しかった気持ちが、この裁判という場で少しでも認められ、本当にうれしく思います。法律が変わらないと意味がないので、今後の若い世代のためにも声を上げていきたい」と話していました。
原告の角谷樹環さん(20)は「この裁判によって日本の民主主義をもっとよいものにできると感じていて、すごくうれしいです」と話していました。
会見では原告で17歳の男子高校生のコメントも紹介され、「表現の自由が認められるまでに時間がかかりすぎました。僕は来月18歳になります。僕のような未成年も選挙運動ができる社会になることを願います」としています。
今回の判決は憲法違反と判断した一方で、賠償など原告の訴えは退けていて、国側は控訴することができません。
原告の弁護団は、控訴するかどうか、今後検討したいとしています。
総務省「今後内容を精査したい」
総務省選挙部管理課は「判決の詳細については今後内容を精査したい」とコメントしています。
専門家「風穴を開ける画期的な判決」
公職選挙法に詳しい日本大学法学部の岩崎正洋教授は「18歳選挙権が導入され、主権者教育が重視されるなど時代が変化しているにもかかわらず、未来の主権者である未成年者が政治になかなか関与できなかった。こうした状況に風穴を開けるような画期的な判決だ」と評価しました。
そのうえで国会に対して、「未成年者がより政治に参加する、政治への意識を持つといった土壌づくりに積極的に取り組む必要がある」として、公職選挙法の見直しについて議論を進めていくべきだと述べました。
【詳報】日銀が利上げ決定、31年ぶり1.25% 暮らしの影響は
2026年9月18日 朝日新聞
日本銀行は18日昼まで金融政策決定会合を開き、政策金利を1.0%程度から1.25%程度に引き上げると決めた。日銀が重視する「基調的な物価上昇率」が物価安定目標の2%を超えて高まっていくリスクに対応する。利上げは今年6月以来3カ月ぶりで、2024年3月の大規模金融緩和策の転換後では、最短の利上げ間隔となる。決定後、東京外国為替市場では約1円の円安ドル高が進み、一時1ドル=157円台をつけた。10日には欧州中央銀行(ECB)が、16日には米国の連邦準備制度理事会(FRB)がそれぞれ利上げを決めており、日米欧が同時に利上げするのは2006年以来、20年ぶりだ。
この記事で分かること
(1)何が決まった? 生活への影響は?
(2)為替、金利、株価はどうなる?
(3)利上げペース、どうなる?
(4)物価や経済の現状は
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(1)何が決まった? 生活への影響は?
【日銀の決定内容は】
日銀は18日の金融政策決定会合で、政策金利を1.0%程度から1.25%程度に引き上げると決めた。原油高や世界的なAI・半導体関連の需要、円安を背景に、物価上昇が想定を超えるリスクが大きくなっていると判断したようだ。今後も利上げを進める方針も維持した。金融政策を決める政策委員9人のうち、審議委員の浅田統一郎氏と佐藤綾野氏は利上げに反対した。
日銀、政策金利1.25%に 約31年ぶり水準、3カ月で追加利上げ
【生活への影響は】
日銀の利上げが私たちの暮らしに与える影響は大きい。住宅ローンで大半の人が選ぶ変動金利や預金金利が上がるほか、高騰する住宅市況や株価も動かす可能性がある。
「金利のある世界」が再来し、資産形成の方法も広がっている。ただ、若い世代ほど負担が大きくなりそうだ。貸出金利の上昇も中小・零細企業にのしかかる。四つのポイントから解説する。
住宅ローン、億ション、預金金利…「最速」利上げで家計はどうなる?
auじぶん銀、住宅ローン金利を0.6%幅上げ 日銀利上げ2回反映
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利上げで住宅ローンの変動金利が上昇し、返済額は増える
【高市政権の思惑は】
「責任ある積極財政」を掲げる高市早苗政権は、経済成長の逆風になりかねないとして、利上げに消極的な姿勢を貫いてきた。だが、今回の利上げを牽制(けんせい)するような動きはみられなかった。
利上げを「容認」した理由は何なのか。取材で浮かび上がるのは、米国の存在だ。7月に実施した28年ぶりの協調為替介入、ベッセント米財務長官の「圧力」。政府内では年内もう1回の利上げ容認もささやかれ始めた。
利上げ「せざるを得ない」容認の高市政権 転換させた「圧力」とは
【政策金利とは?】
【そもそも解説】政策金利1.25%に 仕組みは?どこまで上がる?
(2)為替、金利、株価はどうなる?
【アナリストの見方は?】
日銀が利上げを決めた理由は何か。利上げをいつまで、どの程度のペースで進めるのか。三井住友DCアセットマネジメントの市川雅浩・チーフマーケットストラテジストと三菱UFJ銀行の井野鉄兵・チーフストラテジストに見通しを聞いた。
日銀の今後の利上げ「12月会合の可能性も」 専門家2人に聞く
【金融市場の反応は】
日銀の利上げ決定を受け、金融市場は「円安・株高」で反応した。18日の東京外国為替市場では利上げ公表後、円を売ってドルを買う動きが進み、短時間で1円近く円安となり、一時1ドル=157円台をつけた。東京株式市場では、日経平均株価が一時、前日比1千円以上値上がりした。
円安進み一時157円 利上げに委員2人が反対、「ハト」受け止めも
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日銀の植田総裁の会見を受け、さらに円安ドル高が進んだ=2026年9月18日午後5時2分、東京都中央区、高橋豪撮影
(3)利上げペース、どうなる?
【植田総裁、何を語った】
日銀の植田和男総裁は18日夕に記者会見し、引き続き利上げを進める方針を示した。これまでは物価を上昇させることが「短期的な政策の狙い」だったが、現在は物価上昇が想定を上回り、経済に悪影響を与えないように、物価を安定させる観点が重要になっていると指摘。「(金融)政策の局面が変化したと考えている」と述べた。
「政策の局面が変化した」 日銀・植田総裁が語った利上げ理由と今後
【江渕崇編集委員の「解説人語」】
江渕崇編集委員は、日銀の利上げペースが加速しており、最終的に到達する金利が高くなる可能性を指摘。それに伴う、預金や住宅ローンといった私たちの暮らしや、景気に与える影響についても解説した。注意点もあるという。
【解説人語】日銀、金利を1.25%に 住宅ローンへの影響は
【「3カ月に1回」今後も維持?】
大規模金融緩和から転換をした2024年3月以降、「最速ペース」となる3カ月ぶりの利上げを決めた日銀。金融市場の関心は、今後も同様のペースで利上げを続けるかどうかに集中した。だが、会見で植田和男総裁は、今後の利上げペースについて、ゼロ回答に終始。市場は「肩すかし」をされる形となり、円安ドル高が進んだ。
最速利上げ、市場の注目は「次」 政府関係者「米国の圧力も制約」
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日本銀行本店=東京都中央区、朝日新聞社ヘリから、相場郁朗撮影
(4)物価や経済の現状は
日銀は金融政策を決める上で、一時的な要因を除いた基調的な物価上昇率(物価の基調的な動き)を重視している。この物価の基調が「かなり2%に近くなってきている」(植田和男総裁)ことで、2%を超えてしまうリスクへの対処が必要な段階に来ている。
経済の底堅さも利上げ判断を後押しする。日銀は人工知能(AI)関連需要や政府の家計支援策、緩和的な金融環境などが経済を下支えし、「緩やかな成長を続ける」とみる。利上げは経済を冷やす効果を伴うが、景気を悪化させる可能性は低いとの見方だ。
これまでの利上げで政策金利は1.0%程度まで高まっている。だが銀行の貸出残高は伸び続け、金融環境は「緩和的」だ。経済成長が続くなか、この金融緩和の度合いを減じていかなければ、物価上昇を加速させかねない。それが今回の利上げの大きな理由だ。
また、中東情勢を受けた原油高やAI関連需要による半導体価格の上昇、円安など物価を押し上げかねないリスクもくすぶり続けている。7月末に円買いの協調為替介入に協力した米国も、日銀による利上げを求め続けていた。
原油高などを受け、企業間の取引価格を示す指数の上昇率は、前年同月と比べて6月から3カ月連続で7%を超えている。こうした企業間の取引価格の高騰が、消費者に身近な商品やサービスの価格に波及し始めていると日銀は警戒する。日銀が公表する、生鮮食品や特殊要因を除いた消費者物価の上昇率は7月まで5カ月連続で物価安定目標の2%を超えている。