国連人権理事会 ジャニー氏性加害問題など日本調査の結果報告
2024年6月27日 NHK
国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会は、26日、理事会に日本で初めて行った調査結果を報告しました。ジャニー喜多川氏の性加害問題などさまざまな問題をあげた上で、「日本には人権に関する構造的な課題がある」と指摘しました。
各国の企業活動における人権問題などを調べて対応を促す「ビジネスと人権」作業部会は、スイスのジュネーブで開かれている国連人権理事会の会合で、去年の夏に日本で初めて行った調査結果を報告しました。
作業部会の報告書では、旧ジャニーズ事務所の元社長、ジャニー喜多川氏による性加害問題に対し、「引き続き深い憂慮を抱いている」とした上で、被害を申告した人への補償について「救済を求めている被害者のニーズを満たすにはまだ遠い」と指摘しています。
このほか、賃金や管理職登用などにおける男女格差や、東京電力福島第一原子力発電所で廃炉や除染作業などを行う作業員の賃金や健康の問題、アニメーション業界の長時間労働の問題などの課題を指摘しています。
その上で、日本に政府から独立した人権機関がないことに深い懸念を示し、救済を求める上で障害が生じる可能性があるなどとして、人権機関の設立を勧告しています。
作業部会の議長は「日本には人権問題に関する構造的な課題がある」とした上で、「旧ジャニーズ事務所に所属し、性的虐待と搾取の犠牲となった数百人のタレントたちや、福島第一原発事故の除染作業に関わった作業員について、救済へのアクセスが引き続き欠如していることに早急に対処するため、政府と民間の努力を強化する機会だと捉えた」などとする声明を出しました。
理事会の会合では、ジャニー喜多川氏からの性被害を告発した二本樹顕理さんがビデオメッセージで、子どもたちを守る取り組みの必要性とともに「被害者が中傷されたり、沈黙させられたりすることは許されない」と訴えました。
作業部会の専門家は、7月上旬に日本で調査結果を報告することにしています。
二本樹顕理さん 子どもたちを守る取り組みの必要性を訴える
国連人権理事会では、ジャニー喜多川氏からの性被害を告発した元所属タレントの二本樹顕理さんが、ビデオメッセージで子どもたちを守る取り組みの必要性を訴えました。
この中で二本樹さんは、日本のメディアに対して性加害問題を埋もれさせずに正確に伝えることを求めるとともに、旧ジャニーズ事務所から社名を変更した「SMILE-UP.」に対して被害者の全面的な救済や性加害を繰り返さないための対策を求めると話しました。
そして、性被害を告発した人たちがひぼう中傷にさらされていて、自身は家族を守るためにアイルランドに移住したことや、インターネット上での嫌がらせを苦に自殺した被害者もいることを伝えました。
その上で「日本政府と企業に対して、子どもたちが守られる社会を実現するための取り組みを求めます。性加害の被害者は、もはや無視されたり、中傷されたり、沈黙させられたりすることは許されません」と訴えました。
「国内人権機関」の設立を勧告
今回、国連人権理事会に提出された調査報告書で、日本政府に対し、救済に障害を生じさせないよう設立を勧告されたのが「国内人権機関」です。
人権機関をめぐっては、1993年に国連総会で全会一致で採択された「国家人権機関の地位に関する原則」、通称「パリ原則」に基づき、各国に対して政府から独立した人権機関の設立が求められています。
この原則では、人権機関はNGOや弁護士、有識者など政府以外のメンバーで構成し、人権問題を調査し、その結果を踏まえて国会や政府に勧告したり政策提言を行ったりするほか、被害者の救済や人権教育などを行うとされています。
実際には、子どものいじめやマイノリティーへの差別、外国人の労働問題や職場でのハラスメントなどに対応しています。
各国に設立された人権機関で作る「国家人権機関世界連盟」=GANHRIには、6月時点で118か国が加盟していますが、日本やアメリカ、中国は加盟していません。
日本政府に対しては、人種差別撤廃委員会や女性差別撤廃委員会など日本が加入している国際条約の監督機関がこれまでに国内人権機関の設置を勧告しているほか、2008年には国連人権理事会も同様の勧告を行っています。
しかし、法務省は「個別の法律によって人権救済に対応している」などとする見解を示し、人権機関の設立は見送られてきました。
今回の報告書を踏まえ、法務省は「人権機関の設立については従前から検討を続けており、引き続き検討を進めたい」としています。
「SMILE-UP.」調査結果の指摘に関する見解をHPで公表
26日国連人権理事会の会合で、ジャニー喜多川氏による性加害問題を含む調査結果が報告されたことを受け、旧ジャニーズ事務所から社名を変更した「SMILE-UP.」が、指摘に対する見解をホームページで公表しました。
この中では、心のケアの相談窓口が利用しにくいという指摘に対し、今月改めて利用方法などを周知して運用体制を見直しているとしたほか、補償に向けた被害者救済委員会の聞き取りに臨床心理士などの同席を認めることの案内がないという指摘には、以前から日程調整の中で案内をしているとしたうえで、今後も徹底するとしています。
また、被害者の自己負担になっていると指摘された補償をめぐる弁護士費用については、それも考慮して補償額を算定していると認識しているとしています。
「SMILE-UP.」は、「引き続き、被害者救済に向けて、金銭補償のみならず、心のケアやひぼう中傷対策への取り組みも含めて、全力で取り組んでまいります。各ご指摘事項を真摯に受け止め、改善や徹底に誠心誠意努めてまいります」としています。
マスクの原材料価格高騰 日本のメーカーは苦しい立場に コロナ
2020年4月23日 NHK
世界的なマスク争奪戦の影響で不織布などの原材料価格が高騰していて、供給量を増やそうとしている日本のマスクメーカーは苦しい立場に置かれています。
名古屋市に本社がある大手マスクメーカーの白鳩は、今月20日から、市内の工場を2交代制にし、生産量をおよそ2倍に増やしています。
国内ではこれ以上の増産は難しいため、生産を委託している中国の工場から、輸入を増やそうとしています。しかし、現地からの輸入を思うように増やせない状況になっています。
中国では、欧米の政府やメーカーがマスクを大量に確保しようと高値で買い付けを進めた影響で、マスクそのものだけでなく、不織布やゴムのひもなど原材料の価格がおよそ10倍に値上がりしています。
採算をとるためには、国内での販売価格を大幅に引き上げる必要がありますが、納入先のスーパーなどは消費者からの反発を受けかねないとして小売価格の値上げには慎重な立場です。
このメーカーでは、マスク不足の解消に向けては中国からの輸入を増やすしかなく、そのためには国内の小売価格にコスト上昇分を適正に反映させる必要があると考えています。
白鳩の津田武常務は「短期間で抜本的な解決を図るならば、他国と同じように政府がお金を持って中国の工場をおさえ、マスクを引っ張ってくるくらいしかない。一方、今の相場のもとでの適正な価格について、消費者に理解してもらえる仕組みがあれば、恐れることなく中国から買うことができる」と述べ、マスクの値上げには消費者の理解が得られるかが重要だと指摘しました。
トイレットペーパー“品薄はデマ” も不安に歯止めかからず
2020年3月2日 NHK
新型コロナウイルスの感染が広がる中、品不足になるという不安から買いだめの動きが出ているトイレットペーパーをめぐり、業界団体などが誤った情報だとして注意喚起を行って以降も、ツイッター上では品薄を訴える投稿が急増していて、人々の不安に歯止めがかかっていない状況がみてとれます。
新型コロナウイルスの感染が世界各地で広がる中、香港やシンガポールなどでは先月上旬からトイレットペーパーが品薄になっているという報道があり、日本国内でも「原材料が中国から輸入できなくなる」といった内容の投稿がSNSに寄せられていました。
これについては、熊本市の市長が先月27日にデマに注意してほしいと呼びかけたのをはじめ、翌28日には業界団体や経済産業省などが「供給に不足はない」などと冷静な行動を呼びかけています。
これに関連して「トイレットペーパー」ということばを含むツイッターの投稿を調べたところ、先月26日までは1日当たり2000件程度でしたが、翌27日には前日の10倍程度、28日にはさらにその10倍に急増しています。
このうち、「品切れ」や「不足」といった内容を含む投稿も先月27日から急増していて、28日と29日にも数万件もの投稿が寄せられています。
デマを訂正する投稿がある一方、「みんなトイレットペーパー買っててだめだなぁとか思っていても、品薄になって逆に自分が困るから買わなくちゃいけなくなる」とか、「トイレットペーパー不足は誤りっていう情報が出てるけどその前の情報のせいで買い占めが起きてるから結果的に不足している」など誤った情報と理解しながらも、購入したという投稿も多くみられ、冷静な行動が呼びかけられる中でも人々の不安に歯止めがかかっていない状況が見て取れます。
-業界団体「在庫は十分にある」-
誤った情報をもとにトイレットペーパーの買いだめが相次いでいることから、メーカー各社でつくる業界団体は、「在庫は十分にある」として、2日、改めて消費者に冷静な行動を呼びかけました。
SNSで「マスクとトイレットペーパーが同じ原料で作られていて品切れになる」などの誤った情報をきっかけに、トイレットペーパーの買いだめが相次ぎ、業界団体や政府が「品切れになることはない」として、消費者に冷静な行動を呼びかける異常な事態となっています。
こうした中、トイレットペーパーのメーカー39社でつくる業界団体「日本家庭紙工業会」は2日、改めて消費者に向けて買いだめを行わないよう文書で呼びかけました。
業界団体によりますと、現在、トイレットペーパーのおよそ98%が国内生産で、いずれの会社とも在庫はあり、供給量には「全く問題がない」ということです。
さらに、トイレットペーパーの一般的な家庭における利用状況についても触れ、1人当たり1か月で4ロール程度、4人家族の場合は、1か月で16ロール程度であることなどを紹介し、買いだめや転売を行わないよう呼びかけています。
一方、品薄となる店舗も一部で出ていることから日本家庭紙工業会では、これまでに加盟している会社に対して供給と配送を最大限努力するよう呼びかける通知を出したということです。
円相場 荒い展開に 東京外国為替市場
2025年4月7日 NHK
7日の東京外国為替市場は、トランプ政権の関税政策による日本経済への影響やそれを受けた日銀の追加利上げに対するさまざまな見方が交錯したことで、日中、円相場はドルに対して値動きの幅がおよそ2円と大きく、荒い展開となりました。
7日の東京外国為替市場は、朝方は1ドル=144円後半から145円前半で推移していましたが、午前中、トランプ政権の関税政策に対する懸念から株価が急落すると、投資家の間で日銀の追加利上げは遠のいたという見方が広がって円が売られ、1ドル=146円台後半まで円安ドル高が進みました。
その後は、関税政策によってアメリカの経済が後退局面に入るのではないかという懸念から一転、ドルを売る動きが強くなって円高ドル安が進み、結局、午後5時時点の円相場は、先週末と比べて48銭円高ドル安の1ドル=145円79銭~80銭でした。
また、ユーロに対しては、57銭円高ユーロ安の1ユーロ=160円39銭~43銭でした。
ユーロはドルに対して1ユーロ=1.1001~03ドルでした。
市場関係者は「今後もトランプ大統領の発言やそれに対する各国の反応で相場が動く可能性があり、神経質な値動きが続くのではないか」と話しています。
ドル高の転換、要求か【経済コラム】
2025年4月20日 NHK
年間1兆2000億ドルを超える貿易赤字の削減を目指すトランプ大統領。
自国の輸出産業に有利になるドル安を志向しているとみられています。
しかし為替を思い通りに動かすことは難しいというのが市場の常識。
アメリカの大統領といえども例外ではありません。
それでも何かしら秘策があるのではないか…。
市場では「プラザ合意2.0」とも呼ばれる案に注目が集まっています。
この案、はたして動き出すのでしょうか。
(経済部記者 榎嶋愛理)
日本の金融業界が恐れるのは
「まさかないとは思っているが」
「いきなりそうなったら不安」
このところ日本の金融機関の幹部と話すとアメリカの今後の為替政策に対する関心が急速に高まっているのを感じます。
特に聞くことが増えたのが「プラザ合意2.0」、あるいは「第2プラザ合意」ということばです。
プラザ合意2.0というのは何なのか。
ひと言で表すとしたらトランプ政権がドル高を是正し、ドル安方向に相場を動かすために、為替政策で各国と何かしらの協調策を求めてくるのではないかという観測です。
トランプ大統領はアメリカの貿易赤字の削減を目指しています。
そのために鉄鋼やアルミを対象にした関税を課したほか、一律関税も課すなど、まずは関税措置によってアメリカに製造拠点を置くよう企業に促すことを狙っています。
ただ、貿易赤字を解消するのは簡単ではありません。
トランプ政権が壁の1つとみているのがドル高です。
自国通貨のドルが高いと輸出産業には不利となる一方、アメリカに製品を輸出する外国企業にとっては有利な環境となります。貿易赤字は膨らむ方向に働きます。
このためトランプ大統領がドル高を是正するために何か秘策を持っているのではないか、それがプラザ合意2.0なのではないかという観測が広がっているのです。
ベッセント財務長官
トランプ大統領も、為替を所管するベッセント財務長官も、いずれもドル高是正・ドル安志向を示唆する発言を繰り返しています。
為替に関する発言一覧
▽トランプ大統領
2024年6月(就任前)
「強いドルと弱い円、弱い人民元、これはとんでもないことだ。アメリカは非常に悪い立場にある」
2025年3月(就任後)
「日本の円であれ中国の通貨であれドルに対して通貨を下落させるとアメリカにとって非常に不公平で不利な状況をもたらす」
▽ベッセント財務長官
2025年4月
「円高になっているが、日本経済の成長が強く、日銀が利上げを進めているからで、自然なことだ」
そもそもプラザ合意とは
そもそも本家のプラザ合意も「ドル高是正」がテーマでした。
合意はいまからちょうど40年前、1985年の9月に行われました。
当時、貿易赤字と財政赤字という「双子の赤字」を抱えて経済的な苦境にあったアメリカを支えることでアメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ、日本という当時のG5・主要5か国が合意。
「ドル高是正」に向けて為替政策で協調することで一致したのです。
合意に基づいて5か国は協調でドル売りの市場介入を実施します。
プラザ合意直前、1ドル=240円台だった円相場は急速に円高ドル安が進みました。
86年1月には1ドル=200円を突破し、合意から1年後には150円台で取り引きされるようになりました。
日本政府は当初、10%以上の円の切り上げ、1ドル=215円程度までの円高は容認していたとされますが、動き出した市場は止まることがなく円高は加速。
長期的な円高傾向はリーマンショック後まで続き、2011年には1ドル=75円台という史上最高値をつけるまでになりました。
日本経済は為替に翻弄されることになり、プラザ合意は日本経済が低迷し、輸出企業を中心に生産体制の構造転換を迫るきっかけになったと指摘されています。
原型?ある論文に注目が
また、プラザ合意は『為替相場を人為的に持続的にコントロールするのは不可能だ』という教訓を残したとも言われています。
にもかかわらず、ドル安を志向するトランプ政権が再び持ち出すのではといった観測が広がるのは、政権の重要人物がかつて発表したある論文がきっかけになっています。
「マールアラーゴ合意」
これは、トランプ大統領の指名を受け、アメリカ経済の現状分析と政策の立案を担うCEA=大統領経済諮問委員会の委員長に就任したスティーブン・ミラン氏が去年11月に発表した論文の中で示されました。
フロリダ州にあるトランプ大統領の別荘の名になぞらえてマールアラーゴと名付けられました。
関税政策などトランプ大統領の政策はミラン氏のアイデアが基礎になっているとも指摘され、今後の政権の具体的な政策を占う上でも注目されているのです。
この論文の中でミラン氏は関税の引き上げなどがアメリカ経済、安全保障面でプラスに働くと指摘。さらに関税の導入で各国に対する交渉力も高まり、長期的にはドル高を是正できると主張しています。
さらに論文には「通貨当局が保有するドルの外貨準備を売却することでドル安を調整」とか、100年ものの国債という案も書かれていて、市場関係者の間では「プラザ合意2.0」の原型になるのではないかと受け止められています。
日本は許容できる?
一方で、現在の日本の思惑はどうでしょうか。
ここ数年、円安ドル高は進んでいます。
去年7月11日にはまさにプラザ合意後の1986年以来となる1ドル=161円台後半まで円は下落。
政府・日銀が円安阻止に向けてドル売り円買いの市場介入を行うまでになりました。
円安が進行するなかで、輸入品を通じた物価の上昇圧力も強まっています。
物価高が人々の暮らしの大きな重しとなるなか、このところ政治家からは減税や給付を行うべきだという議論があがるほどです。
となると輸入物価の押し上げにつながるドル高円安を是正したいとアメリカが主張した場合、日本側も許容できるのでは?思惑は一致するのではと?市場関係者は見ています。
現実的な方策はある?
しかし、具体的なドル高是正の手段となると、とたんに現実的な手段は見当たらないというのが市場のおおかたの意見です。
みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは仮にドル高是正を行うとすれば、次の3つの手段が考えられると指摘します。
1.協調の市場介入 2.資本規制 3.中央銀行の金融政策
その上で1.協調の市場介入と2.資本規制の導入には大きなハードルがあるとします。
みずほ銀行 唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミスト
<1.協調介入の難しさ>
市場介入については唐鎌さんは、「円安を修正して円高ドル安に誘導するようほのめかされたとしても為替介入をする訳にはいかない。国際社会も1985年のプラザ合意でやったような協調の為替介入を実行するような体制になっていない」とします。
まずは外国為替の取引量が大幅に増え、相場のコントロールがそもそも難しくなっていると言います。
唐鎌さんは、プラザ合意直後の1986年と比べると、直近2022年の1日あたりの取引量は10倍以上になっており、仮に協調で各国が介入したとしても相場に持続的な影響を与えることは難しくなっているとします。
また、プラザ合意の当時は対ソ連で主要5か国は一致していましたが、いまは大きく国際情勢が異なります。
いまのG7の思惑はそれぞれで、同じドル高是正で一致できる可能性は低いとみられること、さらに中国がいないままで協調介入したとしても、相場への影響がどれほどになるかは見通せないと言います。
<2.資本規制の難しさ>
次の資本規制についても、いまの主要国は資本規制を撤廃し、お金の流れを自由にする方向に動いているなかで新たな規制を一致して導入することは難しいと指摘します。
<3.金融政策は??>
このため、可能性は低いながらありえるなら3の中央銀行の金融政策ではないかと言います。
日銀は経済物価が見通し通りに推移すれば、引き続き金利を引き上げていくというスタンスを示しています。
ベッセント財務長官と議論した上で、その利上げを進める方向性を確認する程度ではないかという見方です。
簡単ではない事情も
加えて唐鎌さんはアメリカ自身も簡単にドル高是正に踏み切れない背景もあると見ています。
特に関税政策をきっかけにトリプル安となったいまの局面は地合いが悪いという指摘です。
みずほ銀行 唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミスト
「緩やかなドル安になったほうが、アメリカの製造業にとっては望ましいと思っていると思うが、実際にアメリカが意図してドル安にするという政策は米国債が売られて米金利が急騰するというのも起きる可能性がある。さらに米国債が他国にたくさん持たれている状況でドルは基軸通貨性がある。基軸通貨ではありたいが、緩やかなドル安にしたいというのはかなわない願いなのではないか。アメリカの復活を唱えるトランプ政権がみずからドル基軸通貨制を捨てるというのはありえないと思う」
トランプ政権の関税措置を巡って今週初めて行われた日米交渉の場では、為替は議論にならなかったことを赤澤経済再生担当大臣は明らかにしました。
「為替が議論され、トランプ政権がドル高是正(ドル安志向)を求めてくるかも」と身構えていた市場では、17日の早朝の時間帯に1ドル=141円台半ばまで円高が進んでいましたが、直後に円売りで反応。金融市場がトランプ政権による為替への圧力を大きなリスクとして捉えていることを浮き彫りにしました。
しかし来週はG20の財務相・中央銀行総裁会議、さらにはこれにあわせて加藤財務大臣とベッセント財務長官のバイ会談も調整が進められています。
市場の関心は、早くも為替を担当する2人の財務部門トップの会談内容に移っています。
予測が不可能ともいわれるトランプ政権からどんな要求が飛び出すのか。
市場関係者だけでなく、政府、日銀も気が気でない1週間になりそうです。