①予習(教科書を読む⇒プリントの穴埋めをする)をする。
②授業の中で予習時の理解とのずれがあれば訂正する。新たな知識があれば何と関連しているのかを意識しながら整理をする。
※必ず比較や整理などをして体系的に理解をすること。
③復習(授業の再現や問題演習など)を行う。
④抽象と具体を意識しながら受けること(抽象度が高い概念も自分事に置き換えてみる)。
第1編「自己形成と自己の生き方」が終了しました。
「青年期」「パーソナリティ」「欲求」「認知(知覚、問題解決、推論、学習、記憶、感情)」について復習をしましょう。予習をした内容、授業で新たに理解した内容の定着を図るために①授業を思い出す学習、②問題演習を通じたアウトプットを行うことを推奨します。
さらに、本日(4月11日)の授業では「葛藤(コンフリクト)」や「防衛機制」について、抽象と具体をイメージできましたか?『4Stage』の演習を通じてより明確に理解をしてください。
教科書のページ数では短い内容に思われますが、出てきた概念や学者などの人物は結び付けて学習をしてほしいです。
次は古代ギリシア思想から入ります。高校の倫理の授業ではここからが本格的な哲学になっていきます。
ソクラテスについて著作がないことに気が付きましたか?
『ラケス』や『パイドン』などソクラテスが登場する著作はありますが、いずれも弟子が書いたものです。著作がある場合、マーク試験などでは、人物、著書、思想の内容、キーワードの一致を問われることが多いです。では自身の著作がないソクラテスはどのような問われ方をするのでしょうか?
それは、ソクラテスの考え方や生き方です。具体的には「問答法を通じてソクラテスが目指したもの」「魂への配慮とはどのような生き方か」などです。他の思想家とは異なり、キーワードなどから選択しを削ることが困難です。共通テストなどではそれぞれの選択肢の文が長くなります。それでもよく出題されます。
資料集を用いて彼の考え方や生き方を理解しておくことをお勧めします。
ちなみに、他の思想家もどうように考え方や生き方を理解しておくと背景知識として役に立ちますよ!
イタリア、代理出産の国外利用も禁止
BBC NEWS JAPAN 2024年10月17日
イタリアの議会は16日、カップルが国外で代理母を通じて子供を持つことを禁止する法案を可決した。
同国ではすでに、国内での代理出産が禁じられている。今回の議決により、アメリカやカナダなど、代理出産が認められている国でこの代理出産を利用することも違法となった。違反した場合、最長で禁錮2年の実刑判決と最高100万ユーロ(約1億6000万円)の罰金が科せられる可能性がある。
極右の与党「イタリアの同胞(FDI)」が提出したこの法案は、性的マイノリティー(LGBTQ)の人々を標的にしていると批判されていた。イタリアでは、同性カップルは養子縁組や体外受精で子供を持つことが認められていない。
代理出産では、女性が別のカップルや個人のために妊娠する。不妊症が理由の場合のほか、男性の同性カップルが利用することもある。
以前からLGBTカップルが関わる代理出産に反対
国外での代理出産利用を禁止する法案は16日、84対58の賛成多数でイタリア上院を通過した。
採決に先立って行われた抗議活動で反対派は、イタリアでは出生率が低下しているにもかかわらず、この法律は人々が親になることをより困難にすると主張した。
LGBT活動家のフランコ・グリッリーニ氏はロイター通信に、「誰かが赤ちゃんを授かったら、その人には勲章が与えられるべきだ」と語った。
「ここでは、伝統的な方法で子供を作らないと(中略)刑務所に入れられてしまう」
「これはとんでもない法律だ。こんな法律は世界中のどこにもない」
今回の立法は、イタリア初の女性首相であるジョルジャ・メローニ氏の保守的な政策の一環だ。
メローニ氏は、自らをキリスト教徒の母親だと表現しており、子供は男女カップルによってのみ育てられるべきだと考えている。
メローニ氏は以前も、LGBTカップルが関わる代理出産への反対を表明していた。反LGBT的発言は、同氏の選挙活動の特徴でもあった。
2022年の演説では、「自然な家族にはイエス、LGBTロビー活動にはノー」と発言した。
メローニ政権は2023年、ミラノ市議会に、同性カップルの子供の出生登録を停止するよう指示した。
メローニ氏は代理出産を「欲望を権利と混同し、神を金で置き換える忌まわしい社会の象徴」と表現している。
マッテオ・サルヴィーニ副首相も代理出産について、女性を「ATM」のように扱う「異常な行為」と呼んでいる。
今回の法案を起草したカロリーナ・ヴァルキ議員は以前、法案に性的少数者を傷つける意図はないと述べていた。
ヴァルキ議員は、「代理出産を利用する人のほとんどは異性愛者だ。この法律は女性とその尊厳を守るものだ」と話した。
専門家らはBBCに対し、イタリアで代理出産を利用するカップルの90%は異性愛者で、その多くは国外で出産した事実を隠していると語った。
しかし、子供を連れてイタリアに戻ってくる同性愛者の家族は、同じように隠すことはできない。
各国の代理出産に関する法律
・イタリア、スペイン、フランス、ドイツなどの欧州の国々は、あらゆる形の代理出産を違法としている
・イギリスでは、代理出産をめぐって妥当な費用を超える報酬を支払うことは違法。また、親権命令によって親権が移行されるまでは、代理母が出生証明書に登録される
・アイルランド、オランダ、ベルギー、チェコでは、裁判所が代理出産契約を執行することはできない。これはイギリスでも同様で、親権をめぐって意見の相違がある場合には、裁判所が子どもの最善の利益を決定する
・ギリシャは外国人のカップルを受け入れ、両親となる2人に法的保護を提供している。一方、代理母には子供に対する法的権利はない。ただしギリシャは、代理出産の関係には女性が関わるべきだと主張している(そのため、男性の同性愛カップルや独身男性は除外される)
・アメリカとカナダでは、同性カップルが代理出産で子供を持つことが認められており、出生時から法的な親と認定される
(英語記事 Italy bans couples from travelling abroad for surrogacy)
ともに代理出産王国のロシアとウクライナ 「女性搾取ビジネス」も侵攻2年で変化の波
東京新聞 2024年2月7日
外国人向けの代理出産ビジネスが、ウクライナやロシアなど旧ソ連圏に定着している。不妊に悩む欧州や日本、中国のカップルにとっては子を得る貴重な手段だが「貧しい女性を搾取している」との批判も根強い。24日で2年となるロシア軍のウクライナ侵攻によって変化も生じている。(小柳悠志)
◆手続き簡単、安価なウクライナ 侵攻前は年2000人誕生
ウクライナは各国人からの代理出産の依頼を多く引き受けてきた。英BBC放送によると、侵攻前は約50の専門病院があり、代理出産で年2千人以上が生まれた。ウクライナでは、依頼主が出生証明書で両親と記載され、養子縁組などの手続きは不要だ。
「欧州諸国より数倍安い」「ウクライナ女性は責任感が強い」。代理出産を扱う首都キーウの産婦人科病院のホームページには外国人向けの宣伝文句が並ぶ。
ウクライナ侵攻直前の2022年1月末、南部オデッサで散歩を楽しむ親子連れ。開戦後は自国の通貨安など経済的な混乱が加速した=小柳悠志撮影
ウクライナ侵攻直前の2022年1月末、南部オデッサで散歩を楽しむ親子連れ。開戦後は自国の通貨安など経済的な混乱が加速した=小柳悠志撮影
地元女性を代理母に勧誘するページもある。出産経験があり、非喫煙者で過度に酒を飲まず、遺伝性疾患がないことなどが条件だ。報酬は2万~2万7千ユーロ(約320万~432万円)。ウクライナの平均年収の5~6年分に相当する。食費や住居が支給されるケースも多く、代理出産で収入を得ようとする女性は少なくない。卵子を提供すればさらに報酬がある。依頼主が選べるよう顔写真や学歴、民族的出自を事前に登録するという。
◆「女性の奴隷化」批判も 侵攻後はジョージアへシフト
ウクライナで代理出産は合法だが、批判もある。2020年に大統領全権・児童の権利委員ムイコラ・クレバ氏は「女性の搾取、奴隷化だ。障害児は捨てられ、外国の同性愛カップルや(幼児性愛などの志向がある)性犯罪者が親になる可能性もある」と主張した。
侵攻の影響もある。米メディアによると、外国人の依頼主が減り、代理出産の中心地はジョージア(グルジア)に移りつつある。
新型出生前診断(NIPT)とは何か(NIPT JAPAN HPより)
新型出生前診断(NIPT)は、Non-Invasive Prenatal genetic Testingの略称であり、妊娠10週以降の任意の時点で行われる非侵襲的なスクリーニング検査です。この検査は、一般的な染色体疾患(ダウン症候群、18トリソミー、13トリソミー)やその他の染色体疾患、性染色体(XXおよびXY)の異常、または微小欠失症などを調べることができます。
NIPTは妊娠10週以降ならいつでも実施可能な検査であり、性染色体の検査によって赤ちゃんの性別も知ることができます。
NIPTは他にも非侵襲的出生前スクリーニング(NIPS)、非侵襲的出生前検査(NIPT)、無細胞DNA(cfDNA)検査などとも呼ばれています。
NIPTは染色体異常の確定診断を行うものではなく、染色体疾患を有する可能性が高い(陽性)か低い(陰性)かを判定する非確定的な検査です。
NIPTの範囲は検査会社によって異なりますが、NIPT Japanの検査では、以下の疾患を調べることができます。
新型出生前診断(NIPT)の特長
①流産や死産のリスクがない
母体から採血した血液のみを使って検査をするため、母子ともに安全な検査です。
一方、確定的検査の羊水検査では、お母さんのお腹に細い針を刺さなくてはいけないので、流産や早産、死産、出血などのリスクがあります。
②妊娠10週の早期に検査ができる
妊娠早期の10週から検査ができるので、赤ちゃんの状態を早く知ることが出来ます。
早く知ることのメリットは大きく、その後の選択肢の幅が広がります。
③検査精度が高い
検査精度が高いので、妊婦の方の検査後の安心感が違います。
検査機関によっても精度が異なりますが、母体血清マーカーやコンバインド検査といった非確定的な検査と比べて検査精度が高いのが特長です。
人工知能「生成AI」について、日本では規制する法律はありませんがインターネット上で偽の動画や画像が問題になるケースが増えています。これについてNHKの憲法に関する世論調査でどう対応すべきか聞いたところ「規制を強化すべき」が61%、「今のままでよい」が8%でした。
《調査概要》
NHKは4月5日から7日にかけて、全国の18歳以上を対象にコンピューターで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかけるRDDという方法で世論調査を行いました。
調査の対象になったのは3129人で、49%にあたる1534人から回答を得ました。
《生成AIと偽情報》
このなかでは、「生成AI」による偽の動画や画像が問題になるケースが増えていますが、日本では規制する法律がないことについてどう対応すべきか聞きました。
その結果
▽「規制を強化すべき」が61%
▽「今のままでよい」が8%
▽「どちらともいえない」が25%でした。
《“規制を強化すべき”と思う理由》
「規制を強化すべき」と答えた人に理由を聞いたところ
▽「偽の情報によって人権が侵害される恐れがあると思うから」が48%
▽「偽の動画や画像を作ったり広めたりすることで著作権や知的財産を侵害すると思うから」が26%
▽「海外では規制を強化している国もあり、日本でもそうすべきだと思うから」が13%
▽「学校教育などでの啓発活動では歯止めがかからないと思うから」が8%でした。
《“今のままでよい”と思う理由》
一方、「今のままでよい」と答えた人に理由を聞いたところ
▽「AIを活用した活動がうまく進まなくなると思うから」が29%
▽「表現の自由が憲法で保障されているから」が23%
▽「規制ではなく、学校教育などで啓発を図るべきだと思うから」が22%
▽「自分の身の回りで問題になっていないから」が18%でした。
偽情報で被害企業増加 法規制求める声も
SNSなどに投稿された偽の情報や誤った情報をめぐっては、企業や商品のイメージを低下させるケースもあり、問題となっています。
企業からの依頼を受けてネットの炎上対策などを手がけるIT企業では、依頼する企業が増加傾向にあり、現在は100社以上の対策を請け負っています。
会社では依頼を受けた企業について「異物混入」や「情報漏洩」など問題になる可能性がある情報が投稿されていないかを監視し、該当する投稿があると企業側に報告して確認したうえで偽情報や誤った情報だった場合には投稿の削除をプラットフォームに要請したり、投稿された内容は誤りであるとするリリースを出したりするなどの対応を行っています。
ただ、現在行える対応には限界があり、家電量販店の店舗に対する投稿で特定の店員からクレジットカードの情報を盗み見られたという匿名の書き込みが見つかったケースでは、店舗や本人に確認したうえで偽の情報と判断し、プラットフォーム側に削除の要請をしたものの、まだ認められておらず、投稿は数か月ほどたったいまも残ったままになっているということです。
さらに最近では、生成AIを使って企業の代表者になりすまして投資を呼びかける広告に画像や名前を使われるケースも増えてきているということで、企業のイメージや株価などにも影響することが懸念されています。
IT企業「シエンプレ」の桑江令さんは「ぱっとみて画像や映像が生成AIかどうかを見抜くのは難しくなってきており、企業としてそれが本当なのかを確認をする作業やリソースが発生することになる。デマや偽情報を流された企業は自分たちは悪くないのに被害が出てしまうということに非常に苦慮しており、法的な規制求める声が増えている」と話しています。
教育で「表現の自由」と合わせて対策を議論するべき
インターネット上に拡散された偽の情報による被害が問題となるなか、憲法が保障する「表現の自由」と合わせて対策を議論していくべきだという意見もあります。
インターネットやSNSの活用に関する教育を行っている都内の会社では、2年前に会社を立ち上げて以降、全国から依頼を受け、子どもからお年寄りまで幅広い年代の人たちに対して講義を行っています。
生成AIの技術の発展に伴って偽情報に関する講義の依頼も寄せられているということで4月、京都市内の中学校で行われた講義では
▽ことし1月の能登半島地震のあとにSNSで拡散された偽情報や
▽「ディープフェイク」と呼ばれるAIによって作られたウクライナのゼレンスキー大統領の偽画像などの事例を題材に講義を行いました。
この中では
▽真偽がわからない情報はすぐに拡散しないことや
▽なぜ投稿したのか理由を考え、内容を調べること
▽万一自分が拡散してしまった場合のすぐに訂正することが重要だと説明しました。
また、世界各国で偽情報を規制する動きが進んでいることを紹介しました。
このうちロシアでは国が偽情報かどうかを判断し罰金や禁錮刑を科していることについて触れ、「偽情報の判断を誰がするのかが非常に大切なポイントだ。政府が法律で規制するようになると、『検閲』につながるおそれもあり、『表現の自由』がなくなる可能性がある」と述べました。
授業を受けた生徒からは「相手に制限されるのではなく、最終的に自分自身で制限できると思うので、気をつけていきたい」や「国が勝手に情報を削除してくれた方が、信じることもないからいいかなと思った」など、さまざまな意見が聞かれました。
授業を行った「インフォハント」の代表の安藤未希さんは「テクノロジーの進化に伴って真偽を見極めることが難しくなっていきますが、できるだけ情報を制限するのではなく、自身で確認して気付ける人を増やしていく教育を行うことが大切だと思います」と話していました。
情報発信に関わるプラットフォーム事業者も対策進む
インターネット上の情報発信に関わるプラットフォーム事業者も偽情報や誤情報への投稿を削除する基準を設けるなどの対策を進めています。
このうちYouTubeでは、虚偽が含まれ深刻な危害を及ぼす恐れがあるものなど、独自のガイドラインに違反している動画をAIによるシステムで検知し、このうちの77%を早期の段階で削除しています。
また、生成AIを使った動画の投稿が増えていることを受けて、実在の人物や場所だと見ている人が誤解する可能性がある動画には生成AIによって編集や生成が行われたことを示すラベルの表示を義務づける仕組みを導入しています。
グーグルは「ユーザーが安心して利用できる環境を提供することが最重要課題だ」としています。
また、LINEヤフーはそれぞれのサービスにおいて、明らかな偽情報の投稿を禁止することを規約やガイドラインに定め、政府機関やファクトチェック機関などによる確認を踏まえて削除するなどの対応をとっています。
ことし1月に能登半島地震が発生した際には、「今回の地震は人工地震である」といった趣旨の偽情報などを含んだ投稿をあわせて1800件以上削除しました。
さらに一部のサービスで生成AIを使って作成したテキストの投稿については
▽生成AIを用いたことを明記することや
▽内容が利用のルールに違反していないか事前に確認することなどの指針を定めています。
LINEヤフーは「行き過ぎた措置や恣意的な運用によってユーザーの表現の自由が損なわれることがないよう対応しているが、プラットフォーム事業者に規制を行うことついては偽情報・誤情報の定義は明確ではないことから慎重な検討が必要だと考える」としています。
専門家 “どこまで規制が必要か慎重に議論を”
憲法学が専門で、生成AIにも詳しい慶應義塾大学の山本龍彦教授は、今回の世論調査の結果について「生成AIで作られたディープフェイクと呼ばれるなりすましの偽動画は、積み上げてきた自分のイメージが一気に崩されるという非常に強い人格権の侵害にあたるものだ。こうした偽動画の脅威が一般的に認知されてきた結果だとみられる」と指摘しています。
また、規制のあり方については、「生成AIは適切に使えば人間にとって有用な道具になっていくかもしれないが、全く規制がないまま使っていくとリスクや不安が増大していく可能性があり、規制は適切に行われるべきだ。人権や民主主義を踏まえた憲法レベルでの議論を加速させる必要がある」と述べました。
そのうえで、「若い世代はほかの世代に比べて生成AIの利活用に寛容で柔軟に使っていこうという考え方もあり、どこまで規制が必要なのかは慎重に考えなければいけない。まずは生成AIが作成したものだと表示していくことで透明性を確保していくことを機軸に、選挙や教育のような重要な領域から規制を考えていく必要がある」と話していました。
生成AIにも性偏見?男性は医師や教師 女性は料理人…ユネスコ調査
2024年3月8日 朝日新聞デジタル(一部抜粋)
ユネスコ(国連教育科学文化機関)は7日、米国のオープンAIとメタが開発した生成AI(人工知能)に関する調査結果を公表した。AIが作成した文章には女性への明白な偏見があるとして、AIが持つ強いジェンダーバイアスを警告した。各国政府に対して、AIの開発に携わる女性の割合を増やすなどの対策を求めている。
報告書によると、ユネスコは昨年から今年にかけてオープンAIの2種類の生成AIと、同社と競合関係にあるメタの生成AIを使って、AIが作成する文章が示す性別や性的指向、人種に対する偏見を調べた。
性別や人種など異なる属性の人物を主人公にした物語の作成を指示すると、いずれのAIも「エンジニア」「教師」「医師」など社会的地位が高いとされる仕事を男性に与える傾向を示した。一方、「使用人」や「料理人」「売春婦」など社会の中で伝統的に低い地位に見られてきた職業を女性に与える傾向が強かった。メタのAIでは、女性は男性の4倍の頻度で家事労働者として描かれたという。
総務省白書(令和6年度 生成AIが抱える課題より一部抜粋)より ※傍線は片山が引いたものである
(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/nd141100.html、最終取得:2024年12月9日)
1 生成AIが抱える課題
2024年4月に総務省・経済産業省が策定した「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」では、(従来から存在する)AIによるリスクに加えて、生成AIによって顕在化したリスクについて例示している(図表Ⅰ-4-1-1)。例えば、従来から存在するAIによるリスクとして、バイアスのある結果及び差別的な結果が出力されてしまう、フィルターバブル及びエコーチェンバー現象1が生じてしまう、データ汚染攻撃のリスク(AIの学習実施時の性能劣化及び誤分類につながるような学習データの混入等)、AIの利用拡大に伴う計算リソースの拡大によるエネルギー使用量及び環境負荷2等が挙げられている。また、生成AIによって顕在化したリスクとしては、ハルシネーション等が挙げられる。生成AIは事実に基づかない誤った情報をもっともらしく生成することがあり、これをハルシネーション(幻覚)と呼ぶ。技術的な対策が検討されているものの完全に抑制できるものではないため、生成AIを活用する際には、ハルシネーションが起こる可能性を念頭に置き、検索を併用するなど、ユーザーは生成AIの出力した答えが正しいかどうかを確認することが望ましい。また、生成AIの利用において、個人情報や機密情報がプロンプトとして入力され、そのAIからの出力等を通じて流出してしまうリスクや、ディープフェイクによる偽画像及び偽動画といった偽・誤情報を鵜呑みにしてしまい、情報操作や世論工作に使われるといったリスク、既存の情報に基づいてAIにより生成された回答を鵜呑みにする状況が続くと、既存の情報に含まれる偏見を増幅し、不公平あるいは差別的な出力が継続/拡大する(バイアスを再生成する)リスクがあること等も指摘されている。
同ガイドラインでは、このような「リスクの存在を理由として直ちにAIの開発・提供・利用を妨げるものではない」としたうえで、「リスクを認識し、リスクの許容性及び便益とのバランスを検討したうえで、積極的にAIの開発・提供・利用を行うことを通じて、競争力の強化、価値の創出、ひいてはイノベーションに繋げることが期待される」としている。
生成AI 著作権など保護のあり方 考え方まとめる 政府の検討会
2024年6月3日 NHK
生成AIをめぐって、政府の検討会は、著作権などの保護のあり方に関する考え方をまとめました。AIに原作のデータを学習させるだけでは、原則、権利の侵害にあたらず、社会に公開された段階で判断するとしています。
生成AIをめぐっては原作に似た文書や画像が生み出され、著作権などが侵害されるケースが生じることが懸念されていて、政府の有識者検討会は、保護のあり方に関する考え方をまとめました。
この中では、AIに原作のデータを学習させるだけでは、原則、権利の侵害にはあたらず、使用許可をとる必要はないとしています。
一方で、作品が商品化されるなど、社会に公開された段階では、原作との類似性に加え、創作過程で実際に原作が学習データとして使われているかといった観点から、侵害の有無を判断するとしています。
そして、権利を守る方策として、AIの開発者と原作の制作者らとの間で、データの有償提供に関する契約を締結するほか、AIを使って作られたものであることを表示する「電子透かし」など、最新技術を活用していく必要性などを示しています。
政府は今後、関連する計画に反映させ、対策に生かしていく方針です。
生成AI 著作権など保護のあり方 考え方まとめる 政府の検討会
2024年6月3日 NHK
生成AIをめぐって、政府の検討会は、著作権などの保護のあり方に関する考え方をまとめました。AIに原作のデータを学習させるだけでは、原則、権利の侵害にあたらず、社会に公開された段階で判断するとしています。
生成AIをめぐっては原作に似た文書や画像が生み出され、著作権などが侵害されるケースが生じることが懸念されていて、政府の有識者検討会は、保護のあり方に関する考え方をまとめました。
この中では、AIに原作のデータを学習させるだけでは、原則、権利の侵害にはあたらず、使用許可をとる必要はないとしています。
一方で、作品が商品化されるなど、社会に公開された段階では、原作との類似性に加え、創作過程で実際に原作が学習データとして使われているかといった観点から、侵害の有無を判断するとしています。
そして、権利を守る方策として、AIの開発者と原作の制作者らとの間で、データの有償提供に関する契約を締結するほか、AIを使って作られたものであることを表示する「電子透かし」など、最新技術を活用していく必要性などを示しています。
政府は今後、関連する計画に反映させ、対策に生かしていく方針です。
“生成AIは無責任な第三者”か。リスクを理解してチャンスにつなげる生成AI時代の知的財産戦略
2024年10月15日 ダイヤモンド オンライン
生成AIの急速な進歩とともに、生成AIをビジネスに活用するケースが増え、その発明の特許出願も増加している。注意すべきは、「著作権侵害」と「発明を見過ごしてしまうリスク」があること。生成AI時代の知財戦略について、専門家の弁理士2人に聞いた。
元ネタを知らなくても
著作権を侵害するリスクがある
生成AIの周囲では、生成AIそのものの開発に携わる研究者や事業者だけでなく、生成AIを利用してサービスやソフトウエアを提供する事業者や、生成AIで創作活動を行うクリエーターが増えている。そこで問題となるのが、著作権侵害のリスクだ。
日本弁理士会の高橋雅和・著作権委員会元委員長(令和5年度)は、「今、メディアでは、“生成AIは上司であり、部下であり、同僚である”といった表現が見られますが、この表現をそのまま受け取って利用してしまうと見過ごされやすいリスクがあります。生成AIの進化は加速していて、まるで人間と対話をしているように錯覚してしまいますが、生成AIはあくまでもプログラム。何かあったときに責任を取ってくれるわけではありません。また、企業の秘密情報や個人のプライバシーも守ってくれる保証はありません。非常に有能ではあるけれど、むしろ“無責任な第三者”としてイメージすべきです。まずそのことに留意した上で、どこでどのように使うと有効かを考えるべきです」と話す。
生成AIと著作権の関係で注意が必要なのは、従来と違って、利用者が認識していないものに対して「著作権の侵害である」と指摘されるリスクがあることだ。
「例えばキャラクタービジネスを展開するとき、創作したキャラクターが依拠のない完全にオリジナルなものであれば、たとえ他人が創ったものと似ていても、まねではないと説明することができます。ところが生成AIを利用してキャラクターを創った場合、生成AIがすでに学習している可能性があり、利用者が元ネタを知らなくても、著作権を侵害するリスクがあるのです」(高橋元委員長)
基本的に著作権侵害の案件は、侵害された本人からの訴えがベースになるが、SNS時代には別のリスクも潜んでいる。SNS上で“まねではないのか”という指摘があって批判が集中し、炎上してしまうケースだ。こうなると著作権の権利者との紛争にとどまらず、場合によってはそれ以上の大きな損害がもたらされる恐れがある。
生成AIと著作権の問題に関しては、文化審議会著作権分科会法制度小委員会が、「AIと著作権に関する考え方について」という文書を発表している。著作権侵害に関する判断は、最終的に司法の手に委ねられるが、生成AIの利用段階では当事者の判断が重要だ。
「文化審議会の文書は、生成AIと著作権に関する考え方がとてもよく整理されています。ただし内容が専門的なため、一般の方が読んでも理解しにくい部分があると思います。生成AIを利用するときは、自分の創作と生成AIの領域の“線引き”を行い、著作権侵害のリスクを判断しなければなりません。そのためにはやはり、専門家である弁理士の意見が必要になる。相談できる環境があれば、生成AIをもっと積極的に活用できるようになるはずです」(高橋元委員長)
次ページからは、そこにあるビジネスチャンスを見過ごさないため、生成AIと“特許”との関係について解説する。
中小企業も無縁ではない
生成AIを利用したサービスの開発
世界では、生成AIに関連する特許の出願件数が増加している。国連機関のWIPO(世界知的所有権機関)の発表したデータによると、生成AIの特許が世界のAI関連特許に占める割合はまだ6%程度だが、出願件数は急速に増加しており、現状の生成AIの特許の4分の1以上が2023年に公開されたものだという。日本でも同様にAI関連特許の出願件数が増えている。
日本弁理士会の飯塚健執行理事は、生成AIの特許には二つの種類があると説明する。
「生成AIアルゴリズム自体の発明と、その生成AIアルゴリズムを利用したサービス等に関する発明です。後者で分かりやすい例を挙げると、企業のカスタマーサポート。問い合わせに対して人間の代わりに生成AIが応答するチャットボットなどのシステムに関する発明です。高度なアルゴリズムに関する発明だけでなく、そうした生成AIを活用したサービスに関する発明も増えているという印象です」
生成AIアルゴリズム自体を開発するプレーヤーは、高度なアルゴリズムを開発できる人材と膨大な学習データ、潤沢な計算資源等を必要とするため、資金のある大企業や一部のスタートアップなどに限られる。だが生成AIアルゴリズムを利用したサービスの開発は、中小企業も無縁ではない。学習済みの生成AIをAPI等を介して利用することで、さまざまな新しいサービスを開発することができるからだ。
「そうした生成AIを利用したサービスについて開発を行う場合の注意点は、発明を見過ごしてしまうリスクがあることです。既存の生成AIを利用する場合、どうしても“既存の生成AIをある分野に適用しただけ”という意識が働くため、そこに隠れた発明を見過ごしてしまうことがあります。せっかくの発明を特許化できないと、ビジネスを有利に展開できなくなってしまいます。そうしたサービスを開発したときはぜひ知財の専門家である弁理士に相談してほしいと思います。 “発明の発掘”も弁理士の一つのスキルなのです」(飯塚執行理事)
発明への生成AIの利用には
チャンスと脅威の両方がある
これからは「発明」という行為にも生成AIの利用が進んでいくことが予想される。すでに、AIを発明者として記載して各国の特許庁に特許出願がされた事例もある。こうした状況を受け、現在、各国の特許庁は、AIによる発明やAIによる支援を受けて行われた発明の取り扱いについて議論を行っている。
「生成AIを利用して発明を行うことは今後増えていくかもしれませんが、そうした場面での生成AIの利用には注意が必要です。例えば、米国特許商標庁は24年2月に、AIによる支援を受けた発明の発明者認定ガイダンスを公表しました。ガイダンスでは、発明創作過程でAIを利用したことを以て発明者となることが否定されないことが示されましたが、一方で、AIがそのほとんどの創作を行ったような発明、すなわち、自然人による顕著な貢献がない発明についてはその自然人が発明者となることが否定されることが示されました。企業としては、自社が思わぬ不利益を被らないよう、最新の情報に基づいて、社内における生成AIの利用方法について適切な対応を行う必要があるでしょう」(飯塚執行理事)
“生成AIは無責任な第三者”か。リスクを理解してチャンスにつなげる生成AI時代の知的財産戦略
「生成AIを活用して発明等が行われるようになると、企業にはチャンスと脅威の両方が訪れる」と飯塚執行理事は言う。「生成AIを上手に活用してこれまでよりも効率的に発明等を生み出す企業が出てくるでしょう。そうした企業にとっては、積極的な知的財産権の取得を通じて、有利にビジネスを展開することができるという意味で、チャンスが増えるでしょう。しかしそれは、同時に、他社にとってもチャンスが増えるということです。他社の知的財産権という脅威にも十分な注意が必要となるでしょう」
「弁理士は知財の専門家であり、生成AIの特許出願に関しても詳しい情報を持っています。知的財産を有効に活用するためにも、ぜひわれわれ弁理士に相談していただきたいと思います」(高橋元委員長)
生成AIに関するルールメーキングは日々進化している。最新情報を取得することを含め、生成AIを活用してビジネスを展開するならば、知的財産の専門家と一緒に戦略を練ることが得策ではないだろうか。
AI作品に著作権ある?大阪のコンテストで物議…「創作性」の線引きが曖昧
2024年8月14日 読売新聞
大阪の専門学校が開催した画像生成AI(人工知能)を使った作品のコンテストが、SNSで物議を醸した。AI作品の著作権について、学校側が「認められる」と発信したことに、批判が広がったためだ。AIと著作権を巡っては文化庁の有識者会議が3月に初めて「考え方」を示したが、騒動の背景にはその線引きがなお曖昧なことがある。(上万俊弥、桑原卓志)
■SNSで疑問の声
コンテストは、大阪市のIT専門学校「清風情報工科学院」が主催。今年5月、「全国AIアート甲子園」と題し、高校生や高専生を対象に、画像生成AIで作成した「擬人化キャラ」の作品を募集した。ホームページ(HP)では、その目的を「高校生に生成AIについての知識と関心を広め、アート制作を通じて創造性を育む」と記していた。
HPには当初、「入賞作品の著作権は主催者に帰属する」と記しており、この点に「成果物を奪うつもりか」「AIがつくった作品に著作権が認められるのか」などとSNSで疑問の声が上がった。学院はその後この記載を削除し、「著作権は作者本人に帰属する」と記したが、AI作品に著作権があるとの考えを維持し、批判はくすぶり続けた。
■文化庁が「考え方」
批判の根底にあるのは、作品を作ったのは人間なのかAIなのかという疑問だ。
画像生成AIは、ネット上で収集した膨大な学習データを基に、精巧な画像やイラストを生成する。人間は、指示(プロンプト)を入力するだけでいい。
著作権法は、著作権が認められる著作物を「思想または感情を創作的に表現したもの」と定めている。生成AIが登場して以降、プロンプトの入力が「創作的」な行為だと言えるかどうかが議論となってきた。
この点について、文化庁文化審議会の小委員会は3月、「考え方」を示した。
プロンプトが簡単で、AIが「自律的に生成した」ような場合には、著作物性が認められないと明記。AIが、創作的に表現するための「道具」に過ぎないならば認められるとした。
だが、どのようなプロンプトなら「創作的」なのかについては示さず、「個別具体的な事情に応じて判断される」と記すにとどめた。
清風情報工科学院のコンテストには全国から36点の応募があり、6月22日に入賞作品5点が公表された。
同学院の平岡憲人校長は読売新聞の取材に「AIの技術進歩はめざましく、若いうちに触れておく教育的な意義は大きい」と説明。著作権は文化庁の考え方に準拠したとした上で「応募作品のプロンプトを学院側で確認した。十分創作と認められるもので、著作物であると言える」と強調した。
■創作者に危機感
生成AIの普及にともない、すでにネット上では多数のAI作品が売買され、商用利用も広がっている。線引きが曖昧な中、今後、著作権を巡るトラブルが増える可能性がある。
日本美術著作権協会理事で山口大の小川明子教授(著作権法)は「文化庁の考え方を補完する裁判例の積み重ねがない現状では、どのようなAI生成物に著作権が生じるかを明確にすることはできない。今回の騒動の背景には、AI生成物に広く著作権が認められれば、手描きの価値が低くなるかもしれないという創作者の危機感もある。手描き側も生成AIを利用する側も双方が納得できるルールが必要だ」としている。
無断学習問題、反発強く
生成AIと著作権を巡っては、著作物の「無断学習」の問題もある。生成AIは精巧な画像を生成するために、膨大な画像を学習する必要があり、その中に著作物も含まれているためだ。
著作権法は、生成AIによる無断学習は原則認めている。文化審議会小委員会の「考え方」も、この原則を踏襲した上で、既存の著作物と似たものを意図的に出力させる目的で、特定作品を集中的に学習させた場合などは、著作権侵害にあたると示した。しかし、クリエイターらの反発は強く、法改正を求めている。
介護は家族で行うべき?中学2年生の17人に1人が当てはまる「ヤングケアラー」。その実態や課題を解説
(https://www.toyo.ac.jp/link-toyo/social/youngcarer、最終取得:2024年12月11日)
“子どもである権利”を奪われる、ヤングケアラーの現実。
本来大人が担う家事や家族の介護などを日常的に行っている、18歳未満の子どもを「ヤングケアラー」と呼びます。厚生労働省と文部科学省が連携して2021年に実施した調査では、中学2年生の約17人に1人にあたる5.7%がヤングケアラーであるものの本人に自覚がない傾向にあることが分かりました。近年ではニュースやドラマに取り上げられるなど、社会的関心が高まっています。
今回は、介護者支援や家族支援について研究されている渡辺道代准教授を取材。ヤングケアラーの現状や地域・社会で取り組むべき支援策について解説していただきました。
家族介護に対する支援策がない日本の現状
――まずは、日本の家族介護の実情を教えてください。
日本では2000年から介護保険制度が始まり、65歳以上の介護が必要な高齢者に対してさまざまなサービスが提供されるようになりました。ところが、同居する家族がいる場合は利用できるサービスに制約があり、ヘルパーの代わりに家族が介護を一部担わなければなりません。核家族化や少子高齢化により家族の人数が減少している現代社会では、介護需要に対して人手が足りない状況にあります。そのため、祖父母の介護のために両親や子どもが仕事や学業などを諦めざるを得ない現実が生じています。現在の日本の制度では、被介護者に対する支援は充実していますが、その家族に対する支援策はなく、これが家族介護の課題と言えるでしょう。
――その中でもヤングケアラーにはどのような課題があるのでしょうか。
ヤングケアラーとは、本来大人が行う家事や家族の世話などを日常的に担っている子どものことを指します。「お手伝い」との違いは、その負担が過重であるかどうか。責任や負荷の重さにより学業や友人関係に影響が出る場合、ヤングケアラーと言えるでしょう。例えば、障がいのある家族の入浴やトイレの介助をしたり、病気の親の代わりに料理や幼いきょうだいの世話をしたり、日本語が第一言語ではない家族のために通訳をしたりと、ケアの種類はさまざまです。また、家計管理や交渉事など、大人の仕事を代替している場合、長時間の負担ではなくてもヤングケアラーに該当します。
ヤングケアラーの課題は、本人に自覚のない場合が多いこと。幼い頃から日常的にケアをしているため、負担自体を認識できていないことが多くあります。家族が大変な時に自分も力になりたいと介護や家事をするのは立派なことですが、大人はその状況を当たり前にして子どもの権利を侵害し続けてはいけません。子どもの権利を守れるような支援策を考えていく必要があります。
なお、周囲の人々にはヤングケアラーの親を安易に批判しないように気を付けてもらいたいと考えます。ヤングケアラーの認知度が高まるにつれ、インターネット上などでその親を批判する声も多くなっています。しかし、病気などどうしようもない理由で子どもに一時的に家事などを任せざるを得ない場合もありますし、子どもたちは家族から頼られていることにプライドを持っていることもあります。親が批判の対象になると分かると子どもは自分の状況を隠すようになり、実態が分からなくなることにもつながるのです。
お手本にしたい、外国のヤングケアラーに対する施策
――外国でも家族介護は行われているのでしょうか?
ヨーロッパを例に挙げると、どこの国も少なからず日本と同様に家族で介護をしています。日本と異なる点は、家族に対する支援策が整備されているところ。それは、ケアラーへの支援を労働政策として考えているからです。もし介護により仕事を辞めなければいけない人が増えれば、貴重な労働力がどんどん減っていきます。ヨーロッパでは子育て支援を充実させて将来の労働力を確保するのと同じくらい、ケアラーへの支援も重要だと考えられています。日本ではこの視点が欠けてしまいがちです。労働力確保の観点からケアラーへの支援整備を急ぐべきだと私は考えます。
――ヨーロッパの国々の、具体的な支援策を教えてください。
ヨーロッパの中で福祉といえば北欧諸国の充実ぶりが目を引きます。高い税負担の代わりに、とてもきめ細やかなサービスが提供されます。必要であれば1日に何度も看護師が派遣されますので、家族への負担は最小限に抑えられているでしょう。ヤングケアラー支援に関しては、イギリスが1990年ごろから先駆けて取り組んでいます。もともと王室が積極的にヤングケアラーを支援していたという歴史的な経緯があり、ボランティア団体やNPO法人が多数設立されています。ヤングケアラーだけでなくケアラー全体をサポートする法律も制定されており、例えば「コミュニティケア法」では介護の中でケアラーが担っている部分を労働換算し、金銭的支援を行っています。これは、国が提供する介護サービスのみでは賄えない部分があることを前提に、その穴を埋める家族の負担を介護サービスの一環として捉えて補償を行うという考え方です。北欧のような充実した福祉制度の実現が難しい日本では、イギリスの制度を見本に支援策の整備を進めていくことが現実的ではないでしょうか。
負の連鎖を断ち切るためのヤングケアラー支援のかたち
――日本のヤングケアラーにはどのような支援が必要だと考えますか?
一番は教育や就労に対する支援です。ヤングケアラーになることで、子どもの将来は大きく変わってしまいます。程度はさまざまですが、状況により不登校になったり、進学や就職を諦めたりすることもあり得えます。子どものうちは自分の想いの言語化や自身の客観視は難しく、人生設計にまでなかなか目を向けられません。そうした子どもがいざ社会に出ていく時に、若年期の経験や学びの差という高いハードルに阻まれるのです。ケアラーとして家族のために頑張っていた期間は、履歴書上では空白になることから、就職において不利となる状況が代表的な例です。就職できないことで金銭的に苦しくなり、家族の年金を不正受給するという事件も発生しています。こういった負の連鎖を断ち切るためにも、せめてケアラーが自身の人生を歩み出すための一時的なサポートがあっても良いのではないでしょうか。
――渡辺先生はNPO法人を通じてヤングケアラーの支援に取り組まれているのですね。
介護者サポートネットワークセンター・アラジンというNPO法人を運営し、介護で人生や仕事を諦めない社会の実現を目指しています。活動の中で意識しているのは、「つながりづくり」。一つは、ケアラー同士のつながりです。介護をしている仲間と想いを語ることで、不安や悩みを解消できるサロンを対面やオンラインで実施しています。もう一つは、ケアラーと地域のつながりです。アラジンでは、ヤングケアラーがいるお宅にメンターを派遣し、無料のお弁当をお届けしながらコミュニケーションを図ることで長期的なつながりを作っています。今すぐに支援を必要としていなくても、子どもたちが相談したいと思った時に話を聞いてあげられる存在になりたいと考えています。ヤングケアラーの支援には、長い目で見守ることがとても大切です。私は教育関係者や医療関係者の研修を担当することも多いのですが、NPO法人だけでなく、学校や医療機関、自治体の職員、近所の人々など、地域ぐるみで見守りを行い、必要な時にサポートに結び付けられる体制を整えていきたいと思います。