第7回 ドジョウを驚かせないために

半世紀以上前、生活排水路が十分に整備されていなかった時代、台所の排水はそのまま近くの小川に流されていました。家の壁に沿うように小さなコンクリートのU字溝があり、その先に幅2メートルにも満たない小川が流れ、さらにその先の川に通じています。
お盆のころ、大きな鍋でうどんを茹で、ざるで受けます。大量の熱湯がU字溝を伝って流れていく、この時、冷水を一緒に流しこむのです。それは「小川に遊ぶドジョウを驚かせないため」と母に教えられました。「本当に驚いていないかどうか見てくる」と走って行ってみました。流れが小川に合流する真下、たくさんのドジョウが集まり大騒ぎしていた様子を見て、十分に冷めたゆで汁を集まっておいしく食べているのだ、と考えて安心した記憶があります。

 
 環境問題やSDGsも語られることのなかった時代、しかし、自然と共に生きる暮らしの中で息づいてきたSDGsだったのかもしれません。

 
 今年も暑い夏、お見舞い申し上げます。皆さん、お元気でお過ごしください。

\この記事を書いた人/

学長 矢口悦子

公開日:2022年8月1日