TOP道徳資料室山田貞二先生の学習会レポート第5回テーマ:低学年道徳

山田貞二先生の学習会レポート

第5

テーマ:低学年道徳

18日 土曜日に行われました第5回AtoZ道徳授業学習会の記録です。

今回は「低学年道徳」というテーマで学びを深めました。

今回は文部科学省のアーカイブの動画を使って低学年の道徳の在り方について議論を深めました。

教材は小学校低学年「きいろいベンチ」です。

1 低学年道徳の難しさはどこからくるのか(代表 山田貞二) 

 まず、参加者のみなさんに、低学年道徳のどこに困難さを感じるかを自由に出していただきました。

 以下のような発言がされました。

 ・自分の考えが書けない            ・ワークシートが使えない

 ・語彙が足りないのでうまく表現できない    ・予測していない意見に困る

 ・生活経験が少ない ⇒ 考えを広げるのが難しい

 ・国語のように読解になってしまう       ・考えを言葉にできない

 ・抽象的な問いかけが難しく、具体的に問いかけが必要

 そしてこれらの困難さを低学年の発達段階から探ることとしました。

上記の図は、宮城県総合教育センターの「発達一覧表」をもとに低学年の発達段階をまとめたものになります。

これから、低学年児童の道徳授業における困難さが目に見える形でまとめることができます。

左図が、低学年の道徳授業における困難さの招待となります。この4点を念頭に置きながら授業を構築することが必要となります。 

参加者からは、以下に示すような授業をすればよいのではないかという意見が積極的に出されました。そして、これらを、動画の模擬授業ではどのように克服しているかを中心に学びを進めることにしました。

・教師が子どもたちと違う視点で揺さぶったり、新しい視点を出す。

・教師が悪役になる・・・あえてよくない提案をして揺さぶる。

・紙芝居やペープサートを使って内容を理解させる。

・役割演技を活用して、体験で内容に引き込む。

・挿絵を使う、教科書を閉じて読む。

・皆と違う意見を取り出して聞く

・イラストを使って、内容理解を図る。

2 文科省アーカイブ 動画授業「きいろいベンチ」 

)教材 「きいろいベンチ」

内容項目 Ⅽ きそくの尊重

(3)素材研究

動画視聴に前もって、いつものように素材研究を行いました。

この教材を一人の人間として接したときに感想を話し合っていただきました。以下のような意見が出されました

・最後自分の生活に繋げる。

・子どもに共感させるのが難しい。

・文章を子どもが理解するのが難しい。

・一般化が難しい ⇒ 楽しい遊びとルールを守ることを共存させるのが難しい。

・テーマ発問した後、教材に入ると一般化しやすいのではないか。

・最後だけを取り出すと男の子が悪いで終わってしまう。 → 夢中に遊んでしまう心情も理解させることが重要。

・女の子とおばあさんの心情から考えて、身近な場面に繋げる。 

3 動画視聴後の意見交流 ・・・ 「学び」や参考になった点を中心に

【導入について】

  ・身近なもので考えさせることができ、分かりやすい。

  ・子どもたちがめあてを考えていた。→ 自分事となるので参考になった。

  ・範読の際にスライドを使って分かりやすくするとともに、文章を読んだ後に今日考えることについて焦点化していた。

【展開について】

  ・テーマに沿って進めるのが上手く、子どもから出た意見をよく拾っていた。

  ・準備(ベンチ、アンケートなど)がすばらしく、子どもが教材の中に入りやすい環境をつくっていた。

  ・コの字の隊形で話しやすい環境が構成されていた。

【終末について】

  ・ワークシートに書いてふり返りをしており、子どもたちはよく考えていた。

4 課題と改善に向けて

(1)教師主導の一方向の授業

この授業の最大の課題である「一面的な授業」について、以下のような意見が多く出されました。


 ・教師の言う通りに進んでいる。

 ・きれいにまとまりすぎている。 → 子どもがきれいなことしか言わない。

 ・少人数での対話が少ない。 → 全体に流されている児童もいるのでは。

 ・子ども達の本音を聞きたかった。「皆だったらこうするんじゃない?」 → 人間理解をもっと。


 このように、やや教師の思い描く展開に子どもたちが合わせるような展開になってしまっていた。

したがって、一部の子どもの意見だけで授業が進んでしまったということが課題であることが鮮明となりました。

(2)子ども同士の対話の重要性

・少人数での対話が少ない。 → 全体に流されている児童もいるのでは。

・子ども達の本音を聞きたかった。「皆だったらこうするんじゃない?」というように、人間理解をもっと増やしたい。


 この授業では、先生と子どもとの対話が中心であったが、子どもたちの本音を聞く場面が少なかったため、

 人間理解にやや欠ける授業になってしまっていました。

(3)役割演技について

低学年の授業において、大きな役割を果たす役割演技にも多くの意見が出されました。

・ペアではなく、代表が前で役割演技を行うことで、全体で共有することができ効果が上がる。

・紙飛行機を子どもに飛ばさせることで、男の子の気持ちを理解でき、役割演技が活きてくるのではないか。

・2人だけで終わらせず、全体を巻き込んでやるとよい。

・役割演技でどこまで本音が出るか、どうやったら本音を引き出せるのかがポイントだと思う

5 総括

)授業について

 この教材は、主人公の二人が、おばあちゃんの言葉から「はっ」と気が付くところが大きな転換点となっています。

  前半で人間理解をしっかりと考え、後半で何に気が付いたかを考えさせていくと、子どもたちにとって大変分かりやすい授業となります。

  特に、紙飛行機を飛ばす場面では、動画の授業で授業者が実践していたように、役割演技を使うことが有効です。学習会で意見が出ていたように、本音をださせることが大切です。

低学年授業のあり方について

 今回の学習会のなかで7つの技としてまとめさせていただきました。特にこの中で、低学年児童の一面性と「いい子ちゃん志向」にいかに対応するかが大きなポイントとなります。詳しくは、図をご覧いただければと思います。

(文責 山田貞二)