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山田貞二先生の学習会レポート
第48回
テーマ:初任者の模擬授業から学ぶ
令和5年10月21日(土)に行われました第47回AtoZ道徳授業学習会の記録です。
今回は「初任者の模擬授業から学ぶ」というテーマで学びを深めました。
1 チーム青森の発表・・・弘前大学附属中学校の実践発表
今回、青森県より参加いただいた3名の先生に実践発表をしていただきました。
(1)道徳科の授業と対話
日常的に行っている授業の様子を発表されました。
特に「対話」を重視した活動が行われていることや、3人組を基本とした対話活動が紹介されました。
また、役割演技も積極的に行われており、大きな成果をあげていることが分かりました。
(2)ローテーション道徳の取り組み
・一つの教材で4学級授業を行っている。
・T1とT2のティームティーチングを行っている。
・T2は、授業の中でT1が見落としたような発言をひろって、価値を深める対話につなげていく役割をもつ。
・他の学級で行うことができるので生徒理解が進む。
・教材研究を深く行うことができる。
・他の先生の授業を学ぶことができる。
(3)ICT活用について
・クラスルームにて教材の共有を行っている。
・教材のあらすじをGoogle Formを活用して行っている。
・Google Meetを活用し意見交流をしている。画面共有を行ったり、コメントで意見を提出できるメリットがある。
また、スタンプも活用している。
・ジャムボードで意見共有や意見交流を行っている。
・OPPシートをスプレッドシートで作成し活用している。
・時間の効率化、管理の容易化、指導と評価の一体化を目指している。
(4)道徳授業を創るために
①見方・考え方を通した深い学び
・道徳的諸価値についての理解
・自己との関わりで
・多面的・多角的
・自己(人間)の生き方を考える
②模擬授業…手品師
③指導と評価の一体化について
2 模擬授業(愛知県・松本竜弥先生)
★教材 「ちょっと待ってよ」
★対象 小学校中学年
★ねらいとする内容項目 C 公正、公平
★授業記録
導入
登場人物の確認
↓
範読…途中までで分断(エピソードの1のみ)
展開
〇誰の気持ちに共感できましたか … ワークシートに記入
<京一>
・失敗されるのが嫌なんだと思う
<女子>
・なぜ、女子だけに文句を言うか ・自分も言いたいけど言えない
・京一に言ったらこわい → なぜ女子に厳しいか分からない
・自分たちもたくさん引っかかっているから京一には言えない
<正広>
・自分には温かい言葉をかけるのに、なぜ女子には厳しいんだろう
・もやもやした気持ち
↓
範読…エピソード2
↓
◎今度は、この4人の中で誰に共感できましたか…ワークシートに記入
<京一>
・無理せずやれば ・心配や思いやり
<静花>
・グループですることを考えている
<正広>
・せっかく手伝おうとしているのに何でそんな強い言い方をするのか
<友治>
・できることだけでもやりたかったのに
・友治君のことを考えないグループはよくない
↓
〇本当に京一と静花は考えていない?…ペア対話
・友治君の心には寄り添っていないので、深いところまで考えていない
・友治の「やる気」が伝わらないから、二人は考えている
・グループとして友治君にはやらせない方がいいという雰囲気があった
↓
〇なんでグループでやることを優先すると友治にやらしてはいけない?
・考えた結果なのだと思う
↓
〇自分の思いを伝えるためにはどうしたらいいだろうか?…ワークシートへ
・相手の意見を聞くことを考えないといけない
・相手の気持ちを認め合うことが大切、相手に聞かなくてはならない
・一回やってみたらと提案すればよい
終末
振り返り
3 意見交流とまとめ
(1)発問の精選
・発問が多く、共感する人物も多いため精選する必要がある。
・中心となる人物をもとに考えた方がよい。
(2)二つの話のつながり
・一つ目の話が軽く扱われていたが、二つの話をつなげることが大切。
・二つの話の関連性を考えるとよい。
・それぞれの話の特性をつかむ必要がある。
(3)内容項目
・「公正、公平」がねらいであるが、「集団生活の向上」や「友情、信頼」とのかかわりが強い。
(4)問題解決的な教材
・この教材は結論がはっきりしないしない教材であるので、問題解決的な展開が望ましい。
・今回の授業では、どこに問題があるのかがはっきりしないまま問題解決に入ってしまった。
「どこに問題があるか」をしっかりと把握する必要がある。
4 総括
今回の学習会では初任者が緊張しながらも問題解決的な教材にチャレンジをしました。
問題解決的な学習の典型的なモデルは上記の図に示した通りですが、今回の授業では、問題の所在がどこにあり、なぜそうなったかという分析がされないまま授業が展開されたことにより、道徳的価値の話し合いが十分に深まっていかなかったと考えられます。共感的な問いからの授業でしたが、この方法でも十分に問題解決にまで高めていくことはできます。
今回の模擬授業でも「自分のため」「グループのため」というようなキーワードが出ていたので、そこから深化発問につなげていくことも十分可能です。
今回は青森チームの発表もあり、かなり内容の濃い学習会となりました。参加いただいたみなさん、ありがとうございました。
(文責:山田貞二)