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山田貞二先生の学習会レポート
第47回
テーマ:Cの視点後半、Dの視点を偉人教材から考える
令和5年9月9日(土)に行われました第47回AtoZ道徳授業学習会の記録です。
今回は「Cの視点後半、Dの視点を偉人教材から考える」というテーマで学びを深めました。
1 道徳授業ABC(山田)…授業づくりの基礎基本を学ぶミニ講座
(1)偉人教材の扱い方道徳授業学習会とは?
今回は、偉人教材を扱うということで、学習指導要領に記載されている「先人やアスリートを扱った教材」について確認をしました。
右の資料にあるように、その高い道徳性と苦悩や葛藤する姿を捉えることの重要性が示されています。
これを理解しておくことが、偉人教材を扱う際の基本的な姿勢となります。
(2)偉人教材の特徴
偉人教材は、右の図に示すような3つの特徴を持っていることを確認しました。
この3つが授業づくりのポイントにもなります。
したがって、
①高い道徳性を分析すること
②葛藤や苦悩から実感をもたせること
③自我関与させること
の3つを意識した授業づくりが求められます。
2 模擬授業(大阪市・篠塚大輝先生)
★教材 「ペルーは泣いている」(私たちの道徳・小学校高学年版 文部科学省)
★対象 小学校高学年
★ねらいとする内容項目 C 国際理解、国際親善
★カリキュラムマネジメントとの関わり(次ページ参照)
この授業は、この1時間だけで完結する授業ではなく、他教科や領域との関連性をもたせた授業になっています。カリマネの教科横断的な視点があります。
★展開
導入
〇日本にいる外国人と関わる中で、どんなことが困りそうですか?
・どんな言葉を使ったらよいか ・文化がちがうこと
・体格が大きくてこわいこと ・宗教の違い ・その他
範読…心が動かされた部分に線を引きながら聞く
〇どんなところに心が動かされましたか?
・「上を向いて歩こう」を歌ったところです
・金メダルをかけてもらった場面です
・加藤明さんは一体何人なんだろう
・悔しい思い ・「監督がやめさせた」という部分です
◎世界大会で4位だった時に、自国の歌ではなく日本の『上を向いて歩こう』を歌ったのはなぜか? (中心発問)
・恩に報いたいから
・練習でも歌っていたから、これからも頑張りたいという気持ちから
・悔しすぎるから ・チームワークに目覚めたから
・嬉しかったから ・国の代表としての意識と4位のアピール
・感謝の気持ちを伝えたかったから ・一体感を持つため
終末
○これからを生きる皆さんは、どんな心をもつことが大切だと思いますか?
・同じ人間として接する
・思いやりをもって接する
・自分らしく生きていけるように
・熱意や思いやりは必ず分かってもらえる
3 意見交流とまとめ
(1)構造的な板書
・構造的な板書が勉強になった。
・挿絵や資料も効果的に配置されている。
(2)子供とのやり取りの素晴らしさ
・子供たちの意見を一つ一つ大切にしている姿勢が見事であった。
・話しやすい雰囲気をつくり、発言によっては効果的な切り返しや問い返しをすることができていた。
(3)総合単元的な取組の見事さ
・道徳の授業を単発で行うのではなく、総合単元的な取組の中で行われていることで、かなり効果的であると感じた。
(4)導入について
・子供から感じたことを出させて、そこから授業を展開する授業形態がかなり新鮮であった。視点をもって取り組ませることができる。
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・子どもたちの思考にバイアスがかかってしまう可能性が高い。
・国語的な読み取りになりがち。
・幅広い考えが出しにくくなるのではないか。
(5)中心発問について
・対立していたところから、歌の内容に入っていったが、その間の葛藤や苦悩があまり描かれておらず、そこが一番重要な部分ではないのか。
・一緒に生活をする中の苦悩や日本式の練習を取り入れたことでの苦労や苦悩、葛藤をもっと扱っておくとよいのではないか。
・この歌に行くまでの経緯が大切ではないか。
・なぜ、この歌だったのか。「さくらさくら」にしなかったのはなぜだろうか。
・相互理解的な内容に陥りがちであったので、国際理解にまで高めていくような発問があるとよかったのではないか。
・相手の国に飛ぶこむことと、安全性のある自国で交流するのとは少し内容や状況が違うのではないか。
(6)深化発問
・国際理解に迫るための発問がもっとあるとよいのではないか。
・「加藤は何人なのか」「なぜ骨まで…」という子どもの発言を取り上げていくと、かなり深まっていくのではないか。
(7)振り返り
・「どんな心」という発問に躓いてしまった。
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・普段から「心」という言葉を使っていればよいのではないか。
・一方向に誘導されていくような感じを受ける。
・導入とのかかわりがあるとよいのではないか。
・価値理解的な内容は多く出てくるだろうが、人間理解的な部分が出にくいかもしれない。
4 総括
今回の学習会では偉人教材を扱った模擬授業を行いました。
普段の授業の中で、こうした教材に苦手意識を持つ先生が多く、今回参加された先生方もほとんどが扱いにくいという思いをもっておいででした。
そんな中で、この教材に挑戦され、授業の進め方などに多くの示唆をいただいた篠塚先生には心より敬意を示したいと思います。
授業も土台がしっかりできているので安心してみていられる授業でした。
指導案のち密さと授業準備の素晴らしさも大きな学びでした。
偉人教材での「人間理解」「苦悩や葛藤」から自我関与につなげていくという大きなポイントも確認できた3時間でした。
参加者の皆さんからも素敵な意見を数多くいただきました。ありがとうございました。
まだ、この学習会に参加されていない皆さんは、ぜひ次回、この興奮を味わってください。
お待ちしております。
(文責:山田貞二)