自己肯定感とリフレーミング
リフレーミングは、さまざまな心理教育的活動の中でもかなり人気のある活動です。なぜ、リフレーミングは人気があるのでしょうか。それは、リフレーミングに「自己肯定感を高める効果」があるからです。
現代人は「自己肯定感」が持てず、悩んでいる人が多い時代です。筆者はカウンセラーですが、カウンセリングに訪れる多くの人が「自分にはよいところが全くない。」と言います。「自分には、価値がない。」「それゆえ、前向きに生きていく気持ちになれない。」と言う人もいます。
国際的にみても日本の子どもたちの自己肯定感が低い、ということがしばしば指摘されます。
道徳授業に熱心なかたの中には「日本の子どもたちの自己肯定感の低さは、謙遜の美徳の表れだ。」というかたもいます。もちろん、そうした面が日本文化の特徴にあるのは否めませんが、そればかりではないと思います。
多くの子どもたちが、自己肯定感が低いために自信を持てず、学習意欲を低下させてしまっています。
「どうせ僕はだめだ。」
「私なんて、たいした人間になれるはずがない。」
こうした思いを抱えたまま、前向きに学習に取り組むことができるはずはありません。
道徳科の授業は、「他者や社会とのつながりの学習」がメインです。しかし、「自分自身との関わり」も大きな目的の一つです。その中で「より肯定的に、自分自身と関わる姿勢を学ぶ」ことで自己肯定感を高めていくことは、大きな意味を持つでしょう。リフレーミングのエクササイズを道徳科の授業に取り入れることで、「自己肯定感」を高めていく有力な手法になります。
そればかりではありません。他の人が「自分のだめなところだ」と思っている点を肯定的にリフレームすることで、他者との肯定的な関わり方を学ぶこともできます。
リフレーミング辞書に頼りすぎないのがだいじ
大人がリフレーミングを行うときは自分で言葉を見つけます。しかし児童生徒がリフレーミングを行うときは、語彙力を補うため「リフレーミング辞書」を用います。
注意しなくてはならないのは、あまり辞書に頼りすぎないようにすることです。リフレーミング辞書に頼りすぎると、ぴったりな用例を見つけるための、国語の学習のようになってしまいます。これでは意味がありません。
大切なのは、自分自身で「否定的なものを肯定的な角度から見直してみる」ことです。リフレーミング辞書でぴったりなものを一生懸命探すことではありません。
そのため、例えば5人一組でエクササイズを行っているときに、① 1回目は、リフレーミング辞書を使って、それぞれの短所を長所に変える、② 2回目は、リフレーミング辞書は使わずに、友達の短所を長所に変えてみる、といった工夫が必要です。
適切な言葉が見つからなくてもかまいません。国語科の授業ではなくて、道徳科の授業なのです。自分や他者の短所を「より肯定的な角度から捉え直してみる」ことが重要なのです。教師の側も、リフレーミング辞書の充実にあまり力を注ぎすぎないことです。そこに記されている言葉は、あくまでも「例」にすぎないのですから。