TOP中学校ソーシャルスキルアンコンシャスバイアスとは何か

アンコンシャスバイアスとは何か

教員にも、生徒にも。

誰にでもあるアンコンシャスバイアス

 例えば、次のように思うことはあるでしょうか?

 これらは、ほんの一例です。私たちは、何かを見たり、聞いたり、感じたりしたときに、「無意識に“こうだ”と思うこと」があります。これがアンコンシャスバイアスです。アンコンシャスバイアスは、過去の経験や見聞きしたことに影響を受けて自然に培われます。

アンコンシャスバイアスによる影響とは?

 ここで、事例を基に考えてみましょう。

 「親が単身赴任中です。」と聞くと、父親を思い浮かべる。というアンコンシャスバイアスに気づかずにいると、どのような影響があると思いますか?

 無意識のうちに、「とっさに父親のことを思い浮かべる。」ということは誰にでもあり、思い浮かべた瞬間に、何か大きな問題があるか? というと、そうではありません。問題や影響は、アンコンシャスバイアスに気づかずにいたときの判断や言動に表れます。

 例えば、「単身赴任という働き方を選択するのは、普通は父親だ。」というアンコンシャスバイアスに気づかずにいると、単身赴任中の母親に対して「え? 母親なのに単身赴任? お子さん、かわいそうですね……。」といった言動につながり、母親や、家族を傷つけることがあるかもしれません。また、性別で任せる仕事を決めつけてしまうなど、成長やキャリアに影響を及ぼすこともあるかもしれません。

 私たちの脳は、「これまでの経験ではこうだった。」「そう考えるのがあたりまえだ。」といったように、これまでに経験したことや、見聞きしたことに照らし合わせて、あらゆるものを「自分なりに解釈する。」という機能を持っています。しかし、人により解釈はさまざまなので、無意識のうちに相手を傷つけていることがあるかもしれません。また、自分自身に対するアンコンシャスバイアスに気づかずにいると、知らず知らずのうちに、自分の可能性を狭めてしまうこともありえます。

「私」のアンコンシャスバイアスに

気づくことが大切

 アンコンシャスバイアスは、本能により生まれるものなので、なくすことはできません。だからこそ、気づこうとすることが大切です。

 アンコンシャスバイアスは、誰にでもあります。子どもたちにも、保護者にも、教員にもあるわけです。だからこそ、アンコンシャスバイアス授業を届けるにあたっては、まず「私にはどんなアンコンシャスバイアスがあるのだろうか?」と、ぜひ1週間、メモを付けてみることをおすすめします。

 生徒に対して、保護者に対して、他の教員に対して、学級経営において、自分自身に対して等、さまざまな視点で、「私」のアンコンシャスバイアスに気づこうとしてみてください。そのうえで、ぜひ、「気づいての変化」や「気づいてよかったこと」に光を当てて振り返ってみてください。

 アンコンシャスバイアスに気づこうとすることは、子どもたちの可能性を広げ、一人一人がいきいきとすることにつながります。

アンコンシャスバイアス授業において大切なこと

 アンコンシャスバイアス授業を実施するにあたって大切なことをお伝えします。

「私」(=教員)にもアンコンシャスバイアスがあることを自覚したうえで、生徒とともに「気づき合うこと」をぜひ大切にしてください。例えば、先生自身が自らのアンコンシャスバイアスを伝えることは、「アンコンシャスバイアスは、先生にもあるんだ。本当に誰にでもあるんだ。」ということが伝わり、生徒たちの自己認知を支援することにつながります。

「友達の発言にアンコンシャスバイアスがあった。」など、誰かの言動を指摘するのではなく、“私”を主語に、「私にはどんなアンコンシャスバイアスがあるのか?」に生徒の視点が向くことを大切にしてください。

「それは、あなたのアンコンシャスバイアスでは?」といったように、生徒のアンコンシャスバイアスを指摘することは避けてください。生徒への指摘は、「気づこう。」とする意欲を奪ってしまうため注意が必要です。アンコンシャスバイアスは相手を責める道具ではなく、自ら気づいて自らを変えるものです。指摘は、ときに責める道具となり、生徒の心の後味を濁し、アンコンシャスバイアスに向き合いたくなくなる心理を生む可能性があるため、避けていただければと思います。

アンコンシャスバイアスは「相手」だけでなく、「自分自身」に対するものもあるという二つの側面を伝えてください。(中学生に授業をお届けしていると、自分自身に対するアンコンシャスバイアスに気づいてよかった可能性が広がったという声が非常に多いです。)

アンコンシャスバイアスに気づいて「よかった」に光を当てることで、向き合い続けていきたいという気持ちが醸成されます。そのため、授業から2~3週間後に、「気づいてよかったこと」や「気づいての変化」を振り返るフォローアップの時間もぜひ大切にしてください。

自分の考えや思いをこの場に出していいんだ、という「心理的に安全な状態をつくること」を大切にしてください。お互いの「違い」は、自分のものの見方を浮き彫りにします。自分は正しいと思っても相手は違うことがある、ということを対話により知ることで、自分のアンコンシャスバイアスに気づきやすくなります。違いを受け止め合うためにも、自分の考えや意見をこの場に出していいんだ、という心理的に安全な状態をつくることが大切です。