TOP>道徳資料室>山田貞二先生の学習会レポート>第59回テーマ:ゲスト道徳のあり方
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12月21日(土)に行われました第59回AtoZ道徳授業学習会の記録です。
今回は「ゲスト道徳のあり方」をテーマとして、岐阜県の先生の模擬授業を中心に学びを深めました。
模擬授業に先立って、今回のテーマである「ゲスト道徳」とは何かを確認しました。
一般的にゲストティーチャーを招いた授業は、授業の最後だけ語ってもらったり、最初から最後まですべてお任せしてしまう「丸投げ型」だったりします。
しかし、これでは、一方的な授業となってしまい、本当に道徳的価値を深めたとは言えません。
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ゲスト道徳では、ゲストティーチャー(GT)を最初から最後まで活用します。教材と子どもたちをつなぐ貴重な存在だからです。
左図を見ていただければ分かるように、子どもたちの日常から遠く離れた世界の実話教材を扱う際に、子どもたちに実感をもたせ、うわべではない話し合いを実現させるために、GTはなくてはならない存在です。
特に、教材にはない苦悩や葛藤等をリアルに聞くことができ、子どもたちの価値観を大いに揺さぶることができます。遠い世界の出来事を自分事にすることができます。
そして、ゲスト道徳を行う上で、次のことが大切になります。
①とにかく「打ち合わせ」を丁寧に行う
授業者がGTの生き方に共感していることが重要です
どこで話をしてもらうかを含めて、綿密な取材を行う
②LIVE感が大切
授業の中でGTにも一緒に考えてもらう
子供たちの問いや疑問を中心に授業を構成する
★授業者:岐阜県内の中学校の先生、田中重勝さん(GT)
(1)骨髄移植についての確認
(2)あらすじの確認…教材は事前読みをしています
(3)GTの印象について
・校長先生っぽい ・すごいことしてきた人っぽい
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(自己紹介)
(4)教材を読んだ感想
・名前もわからない人に提供されたのがすごいな
・前例がないことを行ったのがかっこいいと感じた
・私には勇気がない
・どうしたらそのような気持ちを持てるのか
・私なら無理だな
(5)田中さんの生き方について考える
□発問:なんで登録をしたのかな?
・軽い気もち ・当時はメジャーではなかったから ・ぼんやり
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T:必ず助けたい気持ちはなかったか
G:日本には必要ないと言っていた。高1の時の献血した経験での達成感
骨髄って違う献血なのかと思った。献血と一緒だと思った。
名大に電話して確認した。「痛くない」と確認した。
T:登録は何となく何ですか?
G:何となくではない。痛くないと確認したから。
T:バンクから電話がかかってきたのはいつ?
G:翌年の9月。当たらないと思っていた。
□発問:電話がかかってきたときの気持ちはどうだっただろう?
・驚き ・やってやるぞというやる気
G:喜びと不安
T:(「1リットルの涙」の紹介)
□発問:自分だったらどうするか…心の数直線の活用
<提供する>
・やらなきゃいけないと考える
<提供しない>
・はじめてで前例がない
・提供後のことも考える
・こわくて不安
→ T:何が怖い
→ 自分にも家族がいる
・自分の体に針を入れることが怖い
GT:採取の器具を見て不安になった
私の命を待っている人がいるという思いもあった
親を説得した
□発問:やろうとした決め手は何だろうか?
・他人の命は大切なものだという気持ち
・自分の子供の命を握りつぶしているような気持ちになる
・子供の命と同じように他の人の命も大切だと感じた
□発問:もし子供がいなかったらどうだろうか
・できなかったと思う
・自分の子に置き換えられないならできなかったと思う
(挙手…できたと思う人が多い)
G:考えたことがなかったが、もう少し時間が必要だったと思う
□発問:まず先に、患者さんのことを心配したのはなぜ?
・救おうとして覚悟していたから
・他人の命のほうが大切だったから → 自分の命のほうが大切じゃないの
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G:比べたわけではない。自分は意識があるから。患者さんを気にした。
T:手術のあとは痛くなかったか?
G:動くと皮膚がつっぱるから痛かった。あとはそんなに痛くなかった
T:傷はどう思いますか
G:これは傷ですか?「星」
□発問:なんで「星」って言ったんだろう?
・誇らしい ・勲章…人助けをした ・人を助けたから ・満足感
・証…人を助けた
G:命をつないだのだから、傷ではない。星だと思う。気持ちの中では「命」 がつながっているのだと思う。どこに行くのも「勇気」は必要である。
□発問:なんで橋本さんは会場で呼びかけたか?
・どうしてもお礼を言いたかったから ・生で伝えたかったのだと思う
G:感謝の気持ちを伝えたい
(6)GTの振り返り
・新しい考えや思いを聞けた
・少しでも助け合いの輪が広がればと思う
・ドナーがいないと助からない
・幹細胞を点滴で提供するだけなのでたいしたことない
・つながる命を体験してほしい
・オペ室ツアーの紹介
(7)振り返り…省略
(1)GTについて
・GTを取り入れることにより、かなりの実感を得ることができる
・子どもに考えさせた後に、GTが話すことにより、意外な考えに触れることができ、子どもたちの考えに「ズレ」が起きる。
・インパクトが大きく効果的である
・事実確認のためにGTを活用することにならないようにすることが大切である。
今回は二人のGTが登場することにより、かなり多角的な話し合いができた。
(2)授業について
・教科書の当事者がGTとして参加することで、授業にかなり現実性が生まれてきた。
・GTと子どもたちをつないでいくタイミングと、ファシリテーションがかなり難しいので、事前の打ち合わせがとにかく大切である。
・「傷」を「星」と置き換えた場面についての深化発問は見事であった。かなり、話し合いが深まった。
・子供自身はどうするかという視点がかなり効果的に作用していた。視点を変えることにより、道徳的価値がかなり深まった。
(1)事前の取材と打ち合わせの素晴らしさ
上の図は授業者が行った教材分析です。GTへの取材をうまく入れ込んで、分かりやすい授業の流れを作り出しています。「電話ボックス」の場面を中心場面として見事な分析がなされています。
この分析があるからこそ、GTと子どもをつないでいく見事な授業展開が生まれてきました。改めて教材分析の大切さを実感しました。
(2)コミュニケーションの素晴らしさ
GTと子どもをつなぐ深化発問がアドリブとして数多く出されたのが、この授業の特色の一つでもあります。授業者の授業力の高さを感じるとともに、問い返しの重要性も強く感じました。動じても、先生と生徒、先生とGTの一対一の関係性が前面に出てしまっていました。新しく生まれてきた「問い」を学級全体に問い返すということも必要でした。
(3)ゲスト道徳の魅力
「実感」を教室に持ち込むゲスト道徳のよさが多方面にわたって感じられた授業でした。遠い世界が身近に感じられ、自我関与することが容易になるのがゲスト道徳の魅力です。今回の授業がそれを証明してくれたように思います。一個人ではなかなか実現しにくいからこそ、管理職や研究主任がこうした授業形態を積極的に学ぶ必要があります。そんな、提案性のある授業をしてくださった授業者に心より感謝申し上げます。