TOP道徳資料室山田貞二先生の学習会レポート第5回テーマ:ICT活用と道徳授業

山田貞二先生の学習会レポート

第5

テーマ:ICT活用と道徳授業

22日 土曜日に行われました第5回AtoZ道徳授業学習会の記録です。

今回は「ICT活用と道徳授業」というテーマで学びを深めました。

浅海に続き、今回文部科学省のアーカイブの動画を使って低学年の道徳の在り方について議論を深めました。

教材は中学校教材の定番一冊のノート」です。

1 道徳授業ABⅭ「ICT活用は何のため?」(代表 山田貞二) 

 まず、参加者のみなさんに、ICTをなぜ活用するのかを考えてもらいました。

 以下のような意味があることを確認しました。

(1)対話の起点として

ICTに打ち込んで終わりではなく、そこから対話がスタートし、価値が深まっていく。

「共有」ツールとして

GIGA以前にはできなかった学級の児童生徒全員の意見を共有することが可能となったので、積極的に活用したい。 

補助教材の提示と共有のため

授業の中で話し合いを活発にさせるための補助資料を提示する際に、教員用の端末から投影するのではなく、   児童生徒全員に配信し、個の学びに応じて活用させていく。

バロメーターとして

「心の数直線」(熊本市教育センター)やポジショニングなどの機能を活用して、児童生徒の心の状況を      可視化することができる。

(4)スタディ・ログ(学習履歴)としての活用

児童生徒が自分の学びを振り返って、自己調整する際のログとしての活用をすることができる。

2 文科省アーカイブ 動画授業「一冊のノート 

(1)教材 「一冊のノート」(文部科学省「私たちの道徳」中学校版)

(2)内容項目 Ⅽ 家族愛

(3)素材研究

動画視聴に前もって、いつものように素材研究を行いました。

この教材を一人の人間として接したときに感想を話し合っていただきました。

今回は、オンラインでしたので、ほぼ全ての方から意見をいただくことができました。 以下のような意見が出されました

○認知症への理解度がどれくらいあるのかが課題となる。

 ○中学生のこの時期の子であれば、同じような態度や行動をとることは容易に予想できる。共感できる生徒が多いと考えられる。

 ○祖母の「一冊のノート」をどうとらえるかが大事になると考えられる。

 ○祖父母と暮らしていない子は、イメージがわきにくいかもしれない。

 ○最後の草むしりの場面がすごく大事な場面だと思う。

 ○家庭環境により随分と捉え方が違うと考えられる。

 ○教材がとても長いと感じる。

 ○この主人公は、祖母に頼りすぎている。

主人公の態度への共感とともに大きく変化するきっかけとなったノートへの関心と、                    認知症に対する理解度の課題が多く意見として出された。

(4)動画視聴  https://doutoku.mext.go.jp/ 

3 動画視聴後の意見交流 ・・・ 「学び」や参考になった点を中心に

【導入について】

・教材が長く、授業時間内でかなりの割合を占めている。また、あらすじ確認まで丁寧に行っているが、かなりロスが多い。

 事前読みでよいのではないか。

【展開について】

 ① 自我関与が足りない

  ・もっと子どもたちに、主人公の気持ちを考えさせて共感させたい。

  ・自己中心的な意見や本音がほとんど見られなかった。

  ・人間臭い部分があまりなく、きれいにまとまってしまった感がある。

 ② 深める場面について

  ・主人公の気持ちが変化する場面(一冊のノート)を捉えたことはよかったが、

   多面的・多角的になっていたかは疑問が残る。

  ・祖母の立場からもアプローチする必要があったが、やや主人公の思いが中心となってしまった。

 ③ ICTの活用について

  ・生徒が自己を見つめて、考えを打ち込み、共有することはよいことであるが、

   あえて友達からのコメントまで入れる必要があるのか。生徒同士で話し合いを行った方がより効果がある。

  ・グループになって行っていたが、席を自由に立って気になる子のところへ行って話をしてもよい。

  ・振り返りもログを残すためにもクラウドを使った方が効果的ではないかと感じた。

 ④ 対話について

  ・学習活動ごとに机の並びを工夫していたことはよいが、本当に機能していたかどうかは疑問が残る。

   もっと、生徒同士の話し合いが増えてくるとよいと思う。

【終末について】

  ・ワークシートに書いて振り返りをしており、子どもたちはよく考えていた。

   しかし、きれいごとが多くて、実際の各家庭が抱えている悩みにまで踏み込めていない。実感が欲しい。

4 総括

教材について

 この教材は、主人公の祖母に対する考えが大きく変わるという、大変分かりやすいストーリーとなっています。

 きっかけが「一冊のノート」であることも象徴的です。

上記の道徳性曲線をご覧ください。

前半で主人公の人間的な弱さである人間理解をしっかりと考え、後半で「一冊のノート」を起点として、           何に気が付いたかを考えさせ価値理解につなげていくと、子どもたちにとって大変分かりやすい授業となります。

 特に、ノートを見る場面と祖母と一緒に草むしりをする場面は、大きなポイントとなります。

今回の授業でも効果的に話し合いが行われていました。

ICTの活用について

ICTの活用については、「なぜ、ICTを使うのか」という点が大きなポイントととなることを確認しました。            使うことが目的にならないようにすることが大切で、そこで使う目的が重要だといえます。

今回の授業動画では、あえてそこで使う必要があるのかという意見をたくさんいただきました。

1で述べた5つのねらいを意識することが重要だといえます。

結果ありきの道徳授業からの脱却

今回の動画では、かなり生徒が自分の考えをは発表していました。

小集団での活動も活発でしたが、価値理解が中心の話し合いで、人間理解の部分がやや弱かったという感があります。     したがって「きれいごと道徳」「うわべ道徳」的な流れとなってしまいました。

学校現場の授業では、往々にして目にする光景です。十分に気を付けていく必要があります。

(文責 山田貞二)