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山田貞二先生の学習会レポート
第52回
テーマ:挙手とICT
3月9日 土曜日に行われました第52回AtoZ道徳授業学習会の記録です。
今回は「挙手とICT」というテーマで学びを深めました。
教育実習に行き、挙手の在り方に疑問を抱いた学生が、模擬授業を通して挙手の意義や在り方について提案授業を行いました。
教材は「二人の弟子」。文部科学省資料です。
かなり長く、内容も僧侶の世界を扱っているため、苦手意識をもっていらっしゃる先生も多いかと思います。
卒業直前の4年生の学生が果敢に模擬授業に挑戦しました。
1 挙手の現状(代表 山田貞二)
(1)挙手は何のためにしているのか
この「問い」について、参加者とともに考えました。参加者からは次のようない意見が出されました。
・挙手はどちらかというと自分(教員)のために行っているという感じがする
・意思表示をする際に活用している
・子どもたちの意欲や、やる気を確認することができる
(2)教師はなぜ挙手を好むのか
上図は、京都教育大学の榊原教授の論文から作成したものです。
教師が「王様」「司祭」という立場になり、子どもたちは正解にたどり着くために挙手をしているという現状が見えてきます。
自由に発言できる挙手という状況は少ないことが分かる資料です。挙手は必要ないのでしょうか。
(3)「全員挙手」という文化
(4)挙手のメリット
挙手が効果的であるのは「先生のための挙手」ではなく、「子どもたちが自由に活用する挙手」になったときです。
子どもたちが、自らたてた「問い」を解決するために、対話や議論を行う際に子どもたち同士で挙手をしながら自由に話し合える状況であれば、挙手は大きな意味を持つが、管理されていると効果はなくなってしまいます。
2 模擬授業の記録
(1)授業者 山田ゼミ4年生
(2)教材 「二人の弟子」
(3)内容項目 Ⅾ-22 よりよく生きる喜び
(4)授業展開
導入
●「自分の弱さ」についてのアンケート結果を見る
・事前アンケートからテキストマイニングにしたものを全員で確認をする
●本時めあてを知る
↓
展開 本時は教材について事前読みを設定しています
●あらすじの確認
・生徒と対話をしながらあらすじの確認をします
・3人の人柄に触れながらのあらすじ確認を行う
道信
苦労を乗り越え成長した
気持ちに正直な人
智行
厳しい人
まじめな人
聖人のよう
突き進むタイプ
上人
心が広い
強い人
人を受け入れる優しい人
↓
●自分が上人だったら道信を許しますか(中心発問)
<許す>
・道信の勇気を考えて許す
・今度はちゃんとできると思うから
→自分と向き合える
・1回はだれにでもあること
・かっこよく思われたい
・許さなきゃダメ
・機会を活かしてあげるべき
・覚悟をしているからきっと頑張れる
・勇気があり、彼は失敗から学んでいる
<許さない>
・簡単に人を許してはいけない ・智行がかわいそうだから
↓
(「許さない」の考えが少なく、意見に偏りが出てしまった)
↓
●上人は智行のことは、どう思っているか(深化発問)
・成長させたいと思っている
・様々な生き方に触れさせたいと考えている
・足りないところを修行させたいと考えている
↓
●足りないところって何だろう?(深化発問)
・自分を正しいと思っている ・自分がすべてと考えている
・受け入れる心が足りない
●では、道信にはどんな力をつけてほしいと願っているか?(深化発問)
・じっくり行動する力 ・責任をもって行動する力
・まじめさ ・先のことを考える力
●智行はどういう思いを持ったら上人様の願いをかなえることができるだろうか?
・他人から学ぼうとする意志
・人には弱さがあることを知ること
・上人の思いを知ること
導入
●「自分の弱さ」についてのアンケート結果を見る
・事前アンケートからテキストマイニングにしたものを全員で確認をする
●本時めあてを知る
↓
展開 本時は教材について事前読みを設定しています
●あらすじの確認
・生徒と対話をしながらあらすじの確認をします
・3人の人柄に触れながらのあらすじ確認を行う
道信
苦労を乗り越え成長した
気持ちに正直な人
智行
厳しい人
まじめな人
聖人のよう
突き進むタイプ
上人
心が広い
強い人
人を受け入れる優しい人
↓
●自分が上人だったら道信を許しますか(中心発問)
<許す>
・道信の勇気を考えて許す
・今度はちゃんとできると思うから
→自分と向き合える
・1回はだれにでもあること
・かっこよく思われたい
・許さなきゃダメ
・機会を活かしてあげるべき
・覚悟をしているからきっと頑張れる
・勇気があり、彼は失敗から学んでいる
<許さない>
・簡単に人を許してはいけない ・智行がかわいそうだから
↓
(「許さない」の考えが少なく、意見に偏りが出てしまった)
↓
●上人は智行のことは、どう思っているか(深化発問)
・成長させたいと思っている
・様々な生き方に触れさせたいと考えている
・足りないところを修行させたいと考えている
↓
●足りないところって何だろう?(深化発問)
・自分を正しいと思っている ・自分がすべてと考えている
・受け入れる心が足りない
●では、道信にはどんな力をつけてほしいと願っているか?(深化発問)
・じっくり行動する力 ・責任をもって行動する力
・まじめさ ・先のことを考える力
●智行はどういう思いを持ったら上人様の願いをかなえることができるだろうか?
・他人から学ぼうとする意志
・人には弱さがあることを知ること
・上人の思いを知ること
道信
苦労を乗り越え成長した
気持ちに正直な人
智行
厳しい人
まじめな人
聖人のよう
突き進むタイプ
上人
心が広い
強い人
人を受け入れる優しい人
↓
●自分が上人だったら道信を許しますか(中心発問)
<許す>
・道信の勇気を考えて許す
・今度はちゃんとできると思うから
→自分と向き合える
・1回はだれにでもあること
・かっこよく思われたい
・許さなきゃダメ
・機会を活かしてあげるべき
・覚悟をしているからきっと頑張れる
・勇気があり、彼は失敗から学んでいる
<許さない>
・簡単に人を許してはいけない ・智行がかわいそうだから
↓
(「許さない」の考えが少なく、意見に偏りが出てしまった)
↓
●上人は智行のことは、どう思っているか(深化発問)
・成長させたいと思っている
・様々な生き方に触れさせたいと考えている
・足りないところを修行させたいと考えている
↓
●足りないところって何だろう?(深化発問)
・自分を正しいと思っている ・自分がすべてと考えている
・受け入れる心が足りない
●では、道信にはどんな力をつけてほしいと願っているか?(深化発問)
・じっくり行動する力 ・責任をもって行動する力
・まじめさ ・先のことを考える力
●智行はどういう思いを持ったら上人様の願いをかなえることができるだろうか?
・他人から学ぼうとする意志
・人には弱さがあることを知ること
・上人の思いを知ること
(2)「死」の定義
「死」には二通りあり、ひとつは「心停止」もう一つは「脳死」です。
日本では「死」というのは「心停止」しか認められていませんが、
臓器移植が前提となるのはこの2種類となります。
(3)移植可能な臓器
・肺 ・肝臓 ・心臓 ・腎臓 ・膵臓 ・小腸 この6種類で個数で言うと11個となります。
日本では1997年に「臓器移植法」が施行され、臓器移植が可能になりました。
(4)臓器移植の現状
日本での提供数(1997年~現在)は1,035件、移植数は4,512件です。
現在、登録待機患者は約16,000人ですが、移植可能な病院は500弱しかありません。
日本には病院数が175,000あるのに対し、かなり少ない状況にあります。
海外に渡航する患者もいますが、費用が約5億3千万円かかるということです。
年間の脳死者率は、年間死亡者数の1%と言われています。一日に約43人です。
「移植」を自分事として、今から考えておくことが大切になります。
「移植」を考えることは自分と周りの“いのち”を考えることになります。
3 模擬授業・・・佐藤毅先生
第2部では、「匿名の原則」と「募金」という二つのテーマで模擬授業を行っていただきました。
オンラインでの授業でしたので、実際に参加者の意見を聞いてという形ではなく、実際の流れを中心にお話しいただきました。
二つの質問はジレンマを起こす話題であり、そこから授業がスタートしました。
佐藤先生から示されたのは、左の二つの質問です。
Q1は「匿名の原則」の授業につながる問いで、Q2は「募金」につながる問いです。
皆さんは「YES」か「NO」かどちらをこたえられるでしょうか。
参加された方もかなり悩んでいらっしゃいました。
(1)「匿名の原則」の授業
● 皆さんはこの問いにどう答えますか? 「YES」か「NO」で考えます。
⇓
● では、次の4つの立場の人の気持ちを考えましょう
・ドナーの気持ちを考える
・ドナー家族の気持ちを考える
・レシピエントの気持ちを考える
・レシピエント家族の気持ちを考える
↓
● 会うとどんなリスクがあるのか
①価値観の相違から逆恨みを受ける可能性がある
②体の一部に大切な人の臓器が生きていることから、追いかけまわされる可能性がある
③命を救われたことから、金銭を要求されることがある
↓
● 生命倫理は気軽に話せない
・倫理的なジレンマが生まれてくる
↓
●レシピエントに会いたいですか?(最終結論)
(2)募金
● あなたは募金をしますか?
↓
● 海外渡航での移植の問題点
①慣れない環境での移植には負担が大きい
②渡航の際の上空の環境は決して好ましいものとは言えない
③相手の国にもレシピエントはいるが、横から入り込むことになる
↓
● あなたは募金をしますか?(最終結論)
このように2つのジレンマ授業から「移植」の在り方、
「いのち」「家族」等について深く考えることができた授業でした。
4 意見交流
(1)初めて知る内容
数字やエピソードを盛り込んだ講演は非常に説得力があり、大変勉強になった。
これは参加者全員の共通した感想です。「自分だったら」と考えることで、ジレンマが起き、「いのち」や「家族」について考えるよい機会になった。
(2)立場になり切れない
臓器移植は非日常的な内容であるだけに、なかなか自我関与させることが難しい。
ドナーやレシピエントの気持ちを考える際に、その気持ちになり切れないことが多くあった。
しかし外国では、ドナーやレシピエントの気持ちを考えることが当たり前のことになっている。
日本の移植に対する話題が乏しいことが大きな課題である。
(3)小さいころから考えさせる必要がある
日本では中学校の教材から「移植」について考える教材が扱われるが、
諸外国のように低年齢からこの教材を扱う必要があるのではないかという意見が多く出されました。
小学校では全く「移植」について扱う教材はなく、小学校の先生にとっては遠い存在の教材になっています。
また、予備知識がないと授業ができないという抵抗感もあります。しかし知識がなくても道徳であれば、基礎的な事項さえ押さえていれば
十分に授業が可能であるとの意見も出されました。
実際に小学校で授業が成立している例も多く出されました。また日本臓器移植ネットワークに依頼すれば資料を無料で提供していただけることを
教えて頂きました。
(4)結論を出さないといけないのか
結論を出すことが授業の目的では決してないので、考えるきっかけとすることが大切であると議論が行われました。
会場からも「余計にモヤモヤした」という意見が出されましたが、それはとても大切なことであると講師からもお声がけを頂きました。
移植「を」考えるのではなく、移植「で」考えるという考え方がとても重要です。
何か答えを出す必要はなく、「考え、議論する」ことが大切であることを確認しました。
〈文責 山田貞二〉