自分が優しくされてうれしかった経験を問うても表面的な意見しか出てこない
小学校1年
教材名:はしのうえのおおかみ
内容項目:B 親切、思いやり
ねらい:相手の事を考え、やさしく接しようとする心情を育てる。
授業の流れ
1)導入で、「親切・思いやり」について思うことを自由に話し合った後、妖精を登場させ教材の範読をする。
2)「おおかみに追い返された時のうさぎの気持ち」を考えさせる。「いやだなあ」「いじわるだ」「くやしい」などが出た。
3)うさぎのお面を付け、「おおかみに抱き上げられたうさぎ」になって役割演技をさせる。おおかみ役は教師がやった。
4)その時の気持ちを発表しあう。「びっくり」「うれしいなあ」「やさしいなあ」などが出た。
5)妖精を退場させ、「今度は自分の事だよ。自分が優しくされてうれしかった事はあるかな」と発問。
6)大変活発に自分の経験を語ったが、心情を振り返る事には至らなかった。
7)教師の説話
うまくいかなかった点
毎回「心の妖精」をチャイムの効果音とともに登場させ、教材の世界に浸らせるようにしている。
役割演技でおおかみに抱き上げられた時のうさぎの気持ちを考えさせ、「やさしいなあ」「うれしいなあ」などの思いが出たので、チャイムで妖精を消し、「さあここからは自分の事だよ」と、自分が優しくされてうれしかった経験を問うと、「落とした消しゴムを拾ってくれた」「教科書を忘れて一緒に見せてもらった」など、表面的な出来事の出し合いになって、深まりにかけてしまった。
アツコにお任せ!
小学校低学年、特に1年生を教材の世界から自分事に戻すのはなかなか難しいことです。先生がされているチャイムの効果音ともに妖精を登場させる方法、とても素敵だと思います。
今回は、自分が優しくされてうれしかった経験について「落とした消しゴムを拾ってくれた」など、表面的な出来事の出し合いになってしまったとのことですが、1年生は他の子どもの発言内容に影響を受けやすいものです。また、日頃から「優しさ」や「親切」を深く意識することが少なく、急に聞かれても少し考えづらかったのかもしれません。そのため、最初の発言に類似した意見が、羅列的に出されてしまったのかもしれませんね。
そこで考えられるのは、子どもたちの経験を問う際に、まず先生の方から事例を紹介する方法です。普段の生活や子どもの日記などから予め情報収集しておき、授業でいくつかを紹介し、その後「今の例のように、皆さんも自分が優しくされてうれしかったことはありますか」などと問いかけるのはいかがでしょうか。子どもたちに振り返ってほしいと思っているイメージが、より伝わりやすくなると思います。
他には、本授業までに子どもたちが優しさや親切のよさを実感できるような取り組みを行っておく方法もあります。例えば「やさしさみつけ週間」や「ありがとうみつけ週間」を設定し、日常で見つけた「やさしさ」や「ありがとう」などをカードにしてためておくと、授業でも振り返りやすくなるのではないでしょうか。少し手間はかかりますが、このような計画的な取り組みにより、展開後段以降の学びも充実していくように思います。
point ---------
低学年はまだ、「優しさ」「親切」を深く意識することがないので、まずは先生が事例を出す。
普段から、「優しさ」「親切」を実感できる取り組みをする。