枚方市立樟葉小学校 教諭 稲葉真希人
教材名:大きな絵はがき
内容項目:B-10 友情、信頼
ねらい:児童から出てきた「問い」について対話することを通して、「友情、信頼」について自分の経験を振り返りながら多面的・多角的に考え、「真の友情とは何か」を追求し、信頼し合える友達関係を育んでいくための道徳的判断力を養う。
展開例
(〇:学習活動 △:発問 ・:予想される児童の反応 ★:留意事項)
●導入(5分)
△友達って?
〇本時のテーマを知る。
『真の友情とは?』
★教材の概要を伝える。
板書しながら、登場人物の相関図をまとめていく。
●展開(35分)
〇教材の範読を行う。
〇感想を交流し、問いをつくる。
△どんなことが心に残った?感想や疑問を教えて。
・予想される問い
【教材からの問い】
・広子は、どうして正子に料金不足であることを伝えようと思ったのか。
・どうして、正子は料金を調べずにはがきを送ったのだろうか。
・広子は正子にどんな返事を書いたのだろうか。
・どうしてお母さんはお礼だけにした方がいいと言ったのだろうか。
【価値からの問い】
・真の友達とは何か?
・真の友達関係を築いていくには、何が大切か。
〇決まった問いについて「哲学対話」を進める。
★対話のルールを確認する。
★児童の発言に対して、切り返し発問を用意しておく。
△遊ぶときにいっしょに過ごすだけの関係が友達?
△好きでいてもらえるように、嫌われることはしないのが友達なのかな?
△はがきをもらって、広子はすごく喜んでいたのかな?
△みんなも友達に言った方がいいか迷って言わなかった経験ってある?
△言いづらいことでも、何でそのときは言えたの?
★子どもの考えを「交通整理」しながら、黒板にまとめていく。
〇導入時のテーマに戻る。
△「真の友情とは?」について、対話を通して、どんなことを考えましたか?
・相手が分かってくれると信じて、言いにくいこともしっかりと伝えることが大切。
・相手のためになるなら、言ったほうがよいのかもしれない。それで嫌われたら、それは真の友情ではないと思う。
・相手のことを信じることでさらに、よい友達関係が築けるかもしれない。
●終末(5分)
〇今日の授業で気がついたこと、考えたことをワークシートに書き、発表する。
(視点:なるほど、いいなあ、やってみたい)
上記のような指導案を作成しましたが、哲学対話(p4c)を取り入れた道徳科の授業では、指導案通りに授業が展開されないことがあります。なぜなら、授業の入り口である「問い」を子どもたちが作ることになるからです。しかし、教師はどんな「問い」が出されるのかを予想しておくことが大切です。そのため、指導案でも、児童の予想される反応を示しています。予想される児童の反応はなるべく多く考えておくことが大切で、その予想をもとに、教師は、授業を深めるための追発問や補助発問等を用意し、児童の対話の様子を見ながら、投げかけていきます。
ワンポイントアドバイス等
哲学対話(p4c)を用いての授業での教師の役割は、黒板に子どもたちの考えを整理して、分かりやすいように思考を視覚化するために板書したり、子どもたちの考えを、時には、切り返し発問や補助発問等で子どもたちの思考を揺さぶりながら「交通整理」したりすることです。
最初からいきなり、道徳科で、哲学対話(p4c)を取り入れても、話が活性化することは難しいと思いますので、特別活動の時間などを使って、「好きな給食は?」「旅行で行くなら北海道か沖縄のどっちがいいか?」などの軽めで明るい話題でサークルトークをしてみることをおすすめします。慣れてきたら、道徳科の授業で哲学対話(p4c)を取り入れてみましょう。
そして、何よりルールが大切だと思います。私は、以下のようなルールで取り組みます。
①コミュニティボールを持っている人だけが発言できる。
②コミュニティボールが回ってきても、意見を言いたくなければ、パスもOK。
③相手の顔を見て、名前を呼んでから、コミュニティボールをそっと渡す。
④挙手していなくても、この人の意見が聞きたいと思ったら、コミュニティボールを渡すのもOK。
⑤出された意見や考えを否定しない。
最後になりましたが、教師も子どもと同じ目線に立ち、時には、哲学対話(p4c)中に自分の考えを発言するなど、子どもたちの対話に入り、ともに授業を楽しんでください。想像を超えた考えに着地するかもしれません。みんなで、「よりよく生きる」答えを見つけていきましょう。