TOP>中学校>防災道徳>実践例3「高い所に引っ越す?引っ越さない?」
内容項目:Ⅾ(19)生命の尊さ/C(16)郷土の伝統と文化の尊重、郷土を愛する態度
ねらい : 自然災害から命を守るために高台に村を移転するかしないかについて話し合うことを通して、命を大切にする道徳的な態度を養う。自分たちが住んでいる地域で過去に起きた災害について知り、自分事として考えるとともに、地域社会への思いや理解を深める。
準備するもの:ワークシート、場面絵
○最近起きた自然災害について確認する。
○防災クイズを行い、防災についての基礎知識を確認する。
! クイズを行うことで、生徒の参加意識を高める。
○教材を読む。
! 場面絵を使用して、状況を想像しやすくする。
「あなたは村ごと高い所に引っ越ししますか? それとも引っ越ししませんか?」
今から300年以上も前のこと、海沿いの小さな宿場町が地震と津波で大きな被害を受けました。この村には500人を超える人たちが住んでいます。毎日みんな、これからどうしていくか考え込み、話し込んでいます。
村長「この村はおらのじいさんのじいさんのときにも大きな地震があった。そのことはあそこの石碑にも書いてある。みんなで今より高い場所に引っ越ししねえか。」
村長はより高い場所に村ごと引っ越すことを提案しました。自然の恐ろしさからみんなを守るためです。
漁師「そんなこと言ったって、おらたちは魚取ってこれまでやってきた。山の方に行って、どうやって暮らしていくんだ。」
村人「私は海が見えるこの村が好き。みんなで支え合って生きていけばいいのよ。村だってすぐに元に戻るはず。子供たちもこの村から離れたくないって言ってるわ。」
教材製作:静岡大学藤井基貴研究室
○高台移転に賛成か反対か、またその理由もワークシートに記入する。
○賛成グループ、反対グループに分かれて話し合う。グループの考えをまとめ、理由を発表する。
(グループワーク後)
村人たちは話し合って決断しました。立て札には次のように書かれています。
わが村は高い所に……
○対話を通して、さらに深く考える。
! 正解はないことを伝え、必要に応じて話し合いに入る。
! それぞれの意見にゆさぶりをかける。
○教師の説話を聞く。
○今日の授業を通じて考えたことをワークシートに書く。
! 実話であること、また現在も同じ問題が各地にあることを伝える(1707年の宝永地震により、静岡県湖西市の白須賀宿は地震と津波で壊滅的な被害を受け、内陸の高台に移転した。本教材はこの事実に着想を得て開発された)。
! 地震に備えて、自分や家族ができることを併せて考えさせてもよい。
高台移転に関する議論は各地で続いています。
静岡県沿岸部では江戸時代に人工の高台となる「命山(いのちやま)」と呼ばれる避難場所も作られました。日本の歴史は災害の歴史とともにあり、各地で編纂(へんさん)された県史・町史関連の文献には災害に関する記載が多くあります。
当時の人々はどのような心理的葛藤を抱えていたのでしょうか。地域の災害史をひも解きながら、新たな教材開発にもぜひ挑戦してみてください。
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