運営方針

Think different, make wonder!! : seeking for the art of hydrology


水循環研究でも学生教育でも「普遍性」を追求します

本研究室は,降水が地表に到達し,河川や海洋に到達するまでの過程(降雨流出過程)の仕組みを正しく理解し,洪水・渇水などの災害による被害軽減や水資源の有効利用に貢献できる学術的叡智を発信することを目標として研究しています.研究活動を通じて,本当の意味で社会に役立つ情報を発信するだけでなく,後世まで永く利用される<普遍的な>科学的知識を発信していきたいと考えています.また,このような研究に取り組む中で,降水量や河川流量に代表される時系列データや空間分布データに潜んでいる実現象を独力で見出す<普遍的な>技術や洞察力やを身につけ,データに内在する実現象を適切に把握ができる人材の輩出を目指しています.

研究は仮説と検証で「真実」を探究します

研究を行う上では,現地観測とモデリングを主要な手法としています.現地観測から研究を始める場合にも,仮説を立ててその仮説を検証する道筋を立ててから現地観測を行います.具体的には,観測データを解析することで,データに潜む実現象の仕組みに関する仮説を立てます.その仮説は,現象を説明する理論やそれを表現するモデリングの種になります.そしてその理論から導かれる仮説を現地観測によって検証します.この一連のサイクルを繰り返すことで,本研究室が目指す命題である「流域内の降雨流出過程の仕組み」についての正しい理解を深めていきたいと考えています.本研究室は,研究テーマには「流行ってはいないが将来面白くなりそうなテーマ」を選び,それらにじっくりと腰を据えて取り組むことにしています.

基礎科目・専門基礎科目では「普遍的能力」を涵養します

本研究室に配属される学生には,3年生までに国語・英語・数学・物理学・化学・地球科学の基本的内容に加えて「流域水文学」ならびにその周辺科目の基本的な内容をしっかりと学習してきてもらいたいと思います.いつまでも基礎科目が続いて私も学生の頃はウンザリしましたが,これら基礎科目で培った知識や能力こそが新しい物事にチャレンジするときに必要となる強力な能力基盤になると今は思います.

卒業研究では研究の「型」を体得しましょう!

4年生の卒業論文では,教員が提案する複数の研究テーマの中から学生が選択し,自分で選んだテーマについてとことん取り組んでもらうことにしています.この方針は,本当に価値のある研究テーマの発見にかかる膨大な時間を省略することを狙ったものです.より本質的には,与えられた卒業研究テーマにまずは取り組んでみて「研究の進め方」を一通り理解し,その中で自分の内部から自然に湧き出た知的好奇心と既往研究のレビューの積み重ねを通じて本当に面白く,価値のある研究テーマを自らの知的好奇心から見出して欲しいと考えているためです.自分にとって何が面白いかは,とことんやってみないと分からないものだと思いますので,まずは研究の「型」を卒業論文において身に付けて欲しいと思います.本研究室における卒業研究では,「①既往研究を調べて研究の位置づけを理解し,②研究に取り組んだ結果として新しい発見・考え方の提示・開発などを行い,③既往研究を踏まえて自身の研究成果の新規性を論証し,④一連の研究成果を卒業論文にまとめた上で,⑤卒業論文の内容を学会で発表できること」を単位認定の最低基準としています.

修士課程では新しい「知」を生み出す当事者になりましょう!

本研究室における博士前期(修士)課程の研究では,「学術雑誌に投稿できるレベルの研究成果を取りまとめること」を単位認定の最低要件としています.卒業研究では何かしらの小さな新発見を行うことが必要となりますが,その原因や理由に詳しく迫る時間がない場合が多いです.卒業研究で研究の「型」を体得している修士課程の研究では,研究課題をさらに追求し,学術的に価値のある成果を得ることができます.その成果を学術雑誌に投稿する過程で,計画的に実行する力,文章表現力,論理構成力,批判的意見を踏まえて深く思考する力など,不確実な社会を生き抜く高度な教養が身につきます.このため,学士と修士の力量の差は明確かつ圧倒的になります.

博士課程では「審美眼」と「遂行能力」がある研究者を目指しましょう!

博士後期(博士)課程では,「既往文献のレビューを通じて同じ分野の研究者が関心を寄せるような価値のあるテーマを自分で発見し,それに独力で取り組んだ成果を国際学術雑誌に筆頭著者として2報以上の論文を掲載すること」を最低要件としています.諸外国では,博士後期(博士)過程の学生は研究プロジェクトに雇用される形で大学から給料をもらいながらプロの研究者として研究に全力で取り組んでいます.仕事として本気で研究に向き合う中で,自分の尺度で研究を評価する「審美眼」,困難を乗り越えて研究成果に結びつける「遂行能力」が身につきます.この「審美眼」と「遂行能力」がプロの研究者として,研究者人生を心底楽しみながら過ごす原動力になります.