研究テーマ

1. 高速・高精度な行列計算アルゴリズムの研究

疎行列を係数とする連立一次方程式の求解や固有値 計算などの行列計算は,科学技術計算において最も基本的な部品の一つです。大規模 な行列計算を最新のアーキテクチャを持つ計算機上で効率的に実行するために,新し いアルゴリズムの開発を行っています。また,開発したアルゴリズムの性能を保証し たり,信頼性を高めるために,理論的な収束性解析,誤差解析などの研究も行ってい ます。基礎知識として,線形代数,解析学,複素関数論など,様々な分野の数学の知 識を使います。

2. 高性能計算技術の研究

近年では,並列計算機が普及するとともに,GPU(グラフィックスプロセッサ)やメニーコアなど,新しいアーキテクチャの 計算機も続々と登場しています。これらの計算機の性能を引き出すプログラムを作る には,様々な実装上の工夫が必要となります。たとえば並列計算機では,プロセッサ 間の負荷を均等化すると同時に,プロセッサ間の同期や通信によるオーバーヘッドを できるだけ削減することが必要です。また,メニーコアでは,複数のコア間でのメモ リアクセスの競合が性能低下の原因となり,これを防ぐため,キャッシュメモリの有 効利用が重要となります。本研究では,様々な科学技術計算プログラムを対象として, これらの問題を解決するような高性能実装法の研究を行っています。計算機としては, 東大情報基盤センターのスーパーコンピュータやメニーコアプロセッサなど,様々な 最新マシンが利用可能です。

3. 大規模シミュレーションへの応用

応用分野の研究者と連携して,開発したアルゴリズ ムや高性能計算技術を実際の問題に応用し,大規模なシミュレーションを行っていま す。最近では,量子力学に基づいて原子の動きをシミュレーションする第一原理分子 動力学法,ガラスが衝撃を受けたときの割れ方を調べる亀裂シミュレーションなどに ついて,他大学の専門家と協力し,数値計算・高性能計算の立場から,計算の高速化・ 大規模化を進めています。