摩擦不均質断層モデルに基づいて,確率的地震予測可能性について検討します.スロー地震の潮汐応答性の性質から,プレート境界面の少なくとも一部は潮汐などによる応力擾乱に応答して,滑り速度が絶えず加減速している可能性があります.摩擦不均質断層モデルに基づけば,滑り速度が加減速を受ける速度強化域はプレート境界面上の様々な場所に存在しており,そこでの加減速が地震発生に影響する可能性があります.
①潮汐応力による地震成長確率への擾乱 : Ide et al. (2016, Nature Geoscience)
普通の地震のサイズ分布はべき乗則(GR則)に従い,b値がその分布を特徴づけます.b値は大きい地震の発生する確率,もしくは地震がさらに拡大成長する確率,と解釈することもできます.このb値が潮汐の大潮・小潮に応じて変動することを示しました.これは,潮汐応力に応じて地震の拡大成長する確率が変動する可能性を示しています.
②非潮汐応力擾乱の効果 : Tanaka et al. (2016, EPS), Tanaka & Yabe (2017, EPS)
プレート境界面上に応力擾乱を与える主な要因は海洋潮汐と固体潮汐を合わせた潮汐応力ですが,海洋には非潮汐の長期変動も存在します.その効果を初めて定量化し,長期間を考える際には無視できない効果があることを示しました.