地下構造


断層上の温度・圧力・流体・岩石などの違いが,地震活動や地震現象の多様性をもたらすと考えられます.地震現象の発生環境を推定することで,各環境因子の効果を評価することを目指します.


①沈み込み帯の温度構造 : Yabe et al. (2014, EPS)

沈み込み帯の走向方向に深部低周波微動の発生する深さが大きく変化するニュージーランドのHikurangi沈み込み帯において,地表面での熱流量データを参考に沈み込み帯の温度構造を推定し,深部低周波微動の深さと比較しました.温度構造推定の不確定性が大きいものの,深部低周波微動の深さと沈み込み帯の350Cº等温線が一致していると考えても矛盾のないことが分かりました.


②地震波減衰構造 : Yabe et al. (2014, BSSA), Yabe and Ide (2014, JGR), Yabe et al. (2019, JGR)

地震波は地球内部を伝搬する間に減衰を受けます.地震波の減衰具合を予め明らかにすることで,強震動予測などに役立てることができます.西南日本やアメリカ・カナダ西岸のCascade沈み込み帯では,プレート境界面上で普段普通の地震はほとんど発生しないことから,地震波減衰の推定が難しいという問題があります.そのような場において,深部低周波微動の地震波シグナルを代わりに用いて地震波減衰の推定を行いました.また,スラブ内地震のシグナルと比較することにより,深部低周波微動とスラブ内地震の間にある沈み込む海洋地殻の地震学的構造について推定できる可能性を示しました.