ごくごくありふれた昆虫や植物を対象に、行動や繁殖に注目した研究を進めてきました。
私たちが目にする生物の世界はとても複雑ですが、その複雑さには一定のルールが存在していると私は考えています。そのルールの中身(メカニズムとそこから生まれるパターン)を理解することができれば、より深く自然や私たち自身を理解できるに違いありません。また、生物や人間にまつわる様々な問題をよりスマートに解決するためのカギも、そこにあるのではないでしょうか。
その理解のためには、“自然をありのままに見る”という姿勢では不十分です。自然の中に潜むメカニズムやパターンを見つけ出してやろう、複雑なものを複雑なままにせずにより普遍的なルールをほじくり出そう、そう考えてありふれた生き物たちを見つめています。
これまでに研究を行った生物の一部です。ほとんどの生物はどこにでもいる、ごく普通の生き物です。
昆虫:マメゾウムシ、ミバエ、セミ
植物:タンポポ、オナモミ、ホトケノザ
鳥類:ヒヨドリ、カルガモ
そのほか:スジシマドジョウ、オオサンショウウオ
などなど
生物学者は珍しい生物を研究していると考えている人が多いのですが、それは間違いです。科学の目指すところは、秩序の理解です(と私は思っています)。秩序は世界のあらゆる部分に宿るので、研究しやすい生物を研究すればよいのです。それは、多くの場合、珍しさとは無縁のありふれた生き物になります。
統計解析・プログラミング
実験的をするための器用さ・知識
野外生物学研究では様々なワザが必要とされます。意外なワザが役立つことも珍しくありません。生物に対する広い知識とか、野外活動にめげないタフさとかが重要なことは、容易に想像できることですが、実は統計と実験がかなり重要です。
野外での研究活動では、様々な“ノイズ”がつきものです。Xという要因について知りたくても、それ以外のAとかBとかの影響が避けがたく降りかかってくるので、それらを無視するわけにはいきません。実験室での研究であれば、AやBを予め排除しておいて実験を開始すればいいのですが、野外ではこちらの思うように仕事をさせてもらえない事が多いのです。そういう場合には、統計の助けを借りる必要があります。統計といえば数学の一派で、野外生物学研究とは縁遠いように思われることも多いのですが、実は野外生物学研究と統計とは大の仲良しです。統計のためにはプログラミングも出来たほうがいいです。そして、それらのワザは自然を見る目も変えます。
野外生物学研究では、実験も必要です。野外調査だけで研究を成立させることができるのは、大天才だけでしょう。実験も併用して、初めて説得力のある研究を、現代に求められるスピードで、進めることが出来ます。野外や実験室内で生物を直接使った実験はもちろん、DNAなど分子情報を用いた実験も必要です。野外で生物学をする人はラボでピペットを握る必要はない、そういう考えがまかり通った時代もありました。しかし、DNA実験などがますます容易になっている現在、DNAでも何でも、できる実験はやったほうが仕事がはかどります。
また、この国では幸せなことに、大量生産された様々な道具が安価に入手できます。それらを流用したり、少しだけ改造して、研究に使うのが大好きです。安上がりな研究には欠かせないワザです。
害虫管理学
動物生態学
ほか
仕事と趣味がほとんど融合してしまっています。色々ありますが、例えば下記のようなことをやっています。
生物観察・採集・飼育
カメラ・写真
パソコン・プログラミング
発酵
刃物
1. 生物観察・採集・飼育は、仕事そのままですね。
物心ついた時から、やってる気がします。趣味としては、植物・昆虫・キノコを観察し、山菜・キノコをとって食べています。釣りは昔はよくやりましたが、現在は封印中。Polypterus ornatipinnisを飼育していました(が、17年目にしてお亡くなりになりました)。ラン科を中心に植物も数十鉢育てています。採集・飼育経験が研究に役立ち、研究が採集・飼育意欲を掻き立てます。
2. カメラ・写真も生物がらみです。
高校生の頃に植物・キノコの写真を撮っていたのが始まりです。初めて使った一眼レフは、高校生の時に先生から譲っていただいたPentax SP + 50mm標準レンズ(今でも大事に持っています)。大学生時代はNikon F3とFE2に、AF Micro-Nikkor 60mm and (Ai Nikkor 35 mm or Tamron SP 90 mm macro) がメイン機材でした。就職してからは色々浮気をしたものの、Four-thirdsボディをメインにしていました。Olympus E-PL6に改造したレンズ・ストロボを使って、昆虫などの超マクロ写真を撮影しています。見慣れた生物の意外な姿に感動することが多く、楽しいです。最近は、OM-D EM-5をメイン機材にしています。他には、Olympus OM-D EM-10mark2, SP-100EE, TG-3, XZ-2, SH-2, Fujifilm XQ2, Sony α33+Tamron AF SP 60mm, Pentax K-S1, Panasonic GX7mark2, TX1など。
3. パソコン・プログラミングも仕事と無縁ではないですね。
機械は好きなので、カメラと同様、パソコンもよくいじっています。AMD派です。統計計算に象徴されるように、研究者はパソコンと無縁ではいられません。いわば、大工さんにとってのカンナみたいなものだと思います。私の父は職人でしたが、カンナやノコの手入れを怠る大工によく苦言を呈していました。今になって、その気持ちが少し分かるような気がします。
使うソフトウェアはほとんどがフリーソフト・オープンソースソフト(FLOSS)です。いい時代になりました。FLOSS紹介のこんな文章も書きましたので、良かったらどうぞ。最近はシミュレーションプログラムを組むときは専らLazarusを使っています。さらに最近は、シンプルなシミュレーションが多いので、R言語で済むことが多いです。BUGS言語もしばしば使います。一時期はJAVAなんかも齧りましたが、Pascalが骨の髄まで染み込んでしまったようです。(最近使ってないです。)近頃はArduino用の言語(Cに似ている)もよく使います。
4. 発酵は生物飼育の一部かもしれませんが。
乳酸菌と酵母が好きです。納豆菌は嫌いです(納豆は好きですが、納豆菌の芽胞が厄介)。乳酸菌は主に漬物作りのためにご活躍いただいています。私なりに古今東西のお漬物と、発酵学を勉強し、独自レシピ(その時の気分も大きいのですが)で漬けています。伝統的な製法は大いに参考にしますが、その再現には全く興味がありません。清潔な水や冷蔵庫が無く、地域によっては食塩が貴重だった時代の知恵は貴重ですが、それらを使える現代において過去の製法を愚直にトレースする意味は無いかもしれません。
5. 刃物も生き物と無関係ではないですね。
野外活動ではしばしば刃物が役に立ちます。調査では仁作の根堀を愛用し、室内作業ではピンセットを自分で研いで使っています。自宅では料理担当なので、もちろん包丁も頻繁に研ぎます。
物置への入り口
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連絡先
疑問・質問などあれば、気軽に研究室にお越しください。
研究室は、滋賀県立大学B5棟202です。在室中はいつでも声をかけて貰えればいいですが、事前にメールを貰えれば確実です。
E-mail takakura.k@ses.usp.ac.jp