講演者:松林志保さん(大阪大学オープンイノベーション教育研究センター)
日時:2018年11月26日(月)15:00から16:30まで
場所:筑波大学 第3エリアF棟1020セミナー室
アクセス:つくば駅前から「筑波大学循環」もしくは「筑波大学中央」行きのバスに乗って、「第3エリア前」で下車してください。
講演タイトル:『ロボットの耳で追う野鳥の歌行動』
概要:
鳥類は環境変化に敏感であるため、自然環境の状態を間接的に測る重要な生物指標である。また鳥類のうち特に鳴禽類は縄張り争いや外敵への威嚇、求愛など複雑な音声コミュニケーションを持ち、その歌は機械学習における自動分類性能の性能評価基準として利用されるなどAI技術とも関連が深い。つまり鳥類の音声理解は、自然環境とAIという異なる領域をつなぐ貴重な研究題材である。
一方で、鳥類調査の現場では、鳥類の数、種類や行動の把握は人間の観測員が行う手法が主流であり、調査結果は観測者の技量や気象条件に左右されうる。加えて長時間に渡る大規模な観測の人的コストの高さや再現検証性の低さといった限界がある。ICレコーダーなどによる録音観測も行われるが、分析コストは依然高く位置情報も欠如している。
発表者の専門は景観生態学であり、博士課程ではリモートセンシング技術を活用した3次元植生地図の作成や、鳥類の多様性を実現させるような森林管理に関する研究を続けてきた。2015年に「聞き分けるロボット」の技術に出会い、自身のフィールド経験で痛感してきた人的調査の技術限界を克服しうる新規鳥類調査手法の可能性に気づいた。ここ数年は鳥類の自動観測とAIを活用した自動分類、歌行動の生態理解というテーマで研究をすすめている。
本講演では、これまでロボットの耳でとらえてきた野鳥の歌行動のうち、特に、視覚での観測が難しい鳥種を音で追う観測実例をもとに、個体間・種間の歌を介した相互作用などに関する予備的解析結果を紹介する。