短波長構造を考慮した地殻内地震の広帯域地震動シミュレーション
地震時の震度を正確に予測するには、地殻内の短波長不均質構造を正確に模擬し、地震動シミュレーションを行う必要がある。我々のグループでは、最大振幅の空間分布、距離減衰、波形エンベロープなどの周波数依存性を詳細に調べ、統計的に合成した短波長不均質構造を重畳したモデルによる地震動シミュレーションと比較することで、観測を説明する短波長構造や内部減衰モデルを推定してきた(Takemura and Furumura, 2013; Takemura et al., 2009, 2015a, 2015d, 2017)。左図に示すのは、推定したモデルを用いた中国地方の地殻内地震のシミュレーション結果と観測の比較である。シミュレーション結果は、概ね再現している。シミュレーション波形を利用することで、長波長構造、表層地形、短波長速度不均質が観測波形にどのように影響しているか、定量的に比較することもできた(Takemura et al., 2017b)。他地域での検討、地震の震源域の不均質構造の推定、シミュレーション波形をベースにした様々な研究への応用など、引き続き重要な分野である。 地殻内を伝播する高周波数地震動の伝播特性の把握〜最大振幅分布の周波数・距離変化〜
図の下段に示すように。地震時に観測される地震動の最大振幅は、0.5-1 Hzの低周波数では横ずれ型のメカニズム解から予測される四象限型のパターンを示すが、高周波数(4-8 Hz)では震源近傍以外でほぼ等方的な振幅分布となる。高感度地震観測網Hi-netの地震波形記録の解析と地殻内の短波長構造を地震動シミュレーションにより、震源から観測点までの間の短波長不均質構造による地震波散乱で振幅分布が等方化したことを明らかにした(Takemura et al., 2009, 2016c)。また、観測記録の解析から明らかにした最大振幅分布の周波数・震源距離依存性を利用することで、振幅分布を予測する手法(左図上段)を開発した(Takemura et al., 2016c)。微小地震や低周波数地震のような微弱な震動現象の精緻な地震波エネルギーの推定や強震動予測への応用が期待される。