考察

(1)コミュニティカフェの役割とは

様々なコミュニティカフェへの訪問・インタビューにより、場所によってカフェを始めるきっかけも、目的もさまざまであることがわかった。どのコミュニティカフェもその地域に合った目的や役割を掲げ、経営している様子がうかがえた。

元気スタンド・ぷリズムで掲げている7つの項目は店を利用する高齢者の生活全体を支えるものになっていると思った。実際に店の様子を観察していると、一人で来店する高齢者がほとんどであるが、全員が楽しそうに会話している姿をみて、コミュニケーションの場としての役割を果たしていると感じた。また、店の様々な所に介護予防のための工夫がされており、自然と店の掲げる目的である、介護予防の役割も果たしていると感じた。

しかし、上記のように「居場所」、「押しつけない楽しむ介護予防」を行う場所として初めはつくられていたが、今では「世代を超えた交流」や「商店街活性化」に目的が拡大している。地域のニーズを発見し、ニーズに合った事業を展開することは大切なことである。しかし、多くのコミュニティカフェと同じように、収支状況に苦労している様子から、全てを取り入れようとするのではなく、その地域のニーズは何か、どのような場所でありたいか、という、そのコミュニティカフェの特性や軸を固めることがまずは大切なのではないかと感じた。コミュニティカフェの役割の考え方や目的が変化してしまえば、始め来ていた住民も、その考え方の変化とともに、居場所がなくなってしまうのではないだろうか。また、ある程度の利益も追求し、経営を安定させることも大切だと考える。そして、いつもと同じコミュニティカフェがその場所にあり続けるということがカフェを利用する住民にとって一番安心できることなのではないかと思った。

(2)他機関との関係形成の必要性

今回の調査で、コミュニティーカフェの協力機関の有無や種類はコミュニティーカフェごとに大きく異なることがわかった。どのコミュニティーカフェも来た人がホッとできたり楽しめたりするところになるように工夫されていることは共通しているように感じる。しかし、それプラス、生活サポートだったり、就労の場であったり、子育て支援などが行われていることで協力機関との関係も違いがあるように思った。今回の調査では、各コミュニティーカフェのすべての協力関係について知ることはできていない可能性がある。そのため、傾向から私なりの視点で考察を進める。

今回調査した6つのコミュニティーカフェを2つのタイプに分類し、その2つのタイプを比較して他機関の関係について考えをまとめる。わーくわっく・元気スタンドぷりずむ・青いそら・みぬまハウス大和田の4つは、コミュニティーカフェとして居場所となるだけではなく、生活サポートサービスやワーカーズコレクティブという働き方で就労をサポートしようとしているなど、地域の人々の暮らしそのものを支えていくという面ももっていると考える。一方で、フリースペース越谷絵本館・古本屋ぼんとんの2つは、趣味を通して少しでも生活を豊かにしていこうというような居場所となっていると考える。前者を「①地域の方々の暮らしの支えになることにポイントおいているコミュニティーカフェ」後者を「②地域の人々の暮らしが豊かになることにポイントをおいているコミュニティーカフェ」として2つを比較していく。

①地域の方々の暮らしの支えになることにポイントおいているコミュニティーカフェ

「同じように生活等を支援しているような機関と関係がある」

(例)わーくわっく…民生委員、地域包括支援センター、役所の福祉課など

青いそら…ワーカーズコレクティブ連合会(人々の「働く」を支える)

みぬまハウス大和田…生活支援サービスを協力して行っている商店街

利用者の生活課題に対して、その時点でそのコミュニティーカフェでは対応しきれない場合もどうにかしようとする仕組みを作る傾向があるのではないか。反対に、そのコミュニティーカフェにかかわりがなかった人を必要に応じてつなげることもできるようになっているともいえる。地域の方々の暮らしを支えるという視点では、コミュニティーカフェも他の社会資源もできる限りうまく活用されることは有効であると思えるため、他の機関との関係を持つ必要性は高くなると考えられる。また、暮らしを支えるための支援などをする場合には、多くの人とお金も必要になってくるため、他機関との協力関係が必要になってくるとも考えられる。

②地域の人々の暮らしが豊かになることにポイントをおいているコミュニティーカフェ

「生活を支援するような機関との関係が薄い」

このようなコミュニティーカフェでは、訪れた利用者との関係を作ることに重きをおいていて、そこでできる範囲内で行えることをやっているように思う。そのような関わりの中で利用者が居場所だと感じられる場になっているのではないか。そのため、他の機関との関係を持つことの重要性は低いのではないかと考えられる。

これらのことから、コミュニティーカフェで「地域にとってどのような役割を果たそうとするか・果たしているか」によって他機関と協力関係をもつかどうかは変わってくると考えられる。そして、どのような協力関係をもっているかによってもコミュニティーカフェのあり方が大きく変わってくるのだろう。

(3)参加者や利用者の主体性が動き出す理由に関する考察

コミュニティカフェについて調査をしてみると、もともとは参加者や利用者であった人が気付いたらいつの間にか何かの役割を担っていたり、自分のできることを積極的に行っていたりという例があった。まとめていく中で、なぜ参加者や利用者は主体的に動き出すのか(理由)、何がそうさせるのか(要因)という疑問を抱いたため、この点について私なりに考察しようと思う。

まず、どのような理由から参加者や利用者は自分のできる役割を見つけ行動するに至ったのか考えようと思う。これらを考えるにあたり、「自分の中の主体性が動き出すときとはどのような時だろうか」というように、自分自身もその一人であることを想定して考えてみたいと思う。私だったらば、①自分がその集団に貢献したいとき②いつも助けてもらっている恩返しをしたいとき③その行動を起こすことで自分が満足できるとき④安心してリラックスしているときなどに自分で判断し行動に移すのではないかと考えた。これは私の想像と見解ではあるが、きっと実際の参加者や利用者もこれらに類似した理由から行動しているのではないだろうか。ここに挙げた①~④の理由をさらに深く考えてみたいと思う。

①自分がその集団に貢献したいとき

この前提にはその集団の一員であることを認識していることが挙げられるのではないだろうか。その集団に愛着を抱いていて、その集団のメンバーの一人として何かできることはないかと考えた結果の行動であろうと私は考える。また、自分の特技や能力を発揮することで自己肯定感や自己有用感を抱けるなど、集団(他者)のために行動した結果自分自身も得るものがある互酬性も関連しているように思う。

②いつも助けてもらっている恩返しをしたいとき

悩みを聞いてもらったり、同じ時間・空間を共に楽しんだりすることで、きっとその人と人との間には受け入れられているというような感覚があるのではないだろうか。感謝の気持ちや喜びの表現として恩返ししよう、相手も同じ気持ちにさせてあげたいという心理となる。これは信頼関係が構築された結果なのではと考えた。

③その行動を起こすことで自分が満足できるとき

自分に自信が持てたり、何かに夢中になれたりすることで、自分自身を肯定できたり、存在意義を確認できたりするのではないだろうか。人とつながりたい、生きがいが欲しい、充実した時間を過ごしたいという願いを持って集まる人の精神的な安定のための結果ではないだろうか。

④安心してリラックスしているとき

ここにいてもいいのだ、とその場に受け入れられ安心したり、無理をしないで飾らない自分のまま過ごせたり、精神的に安定し満たされている結果として行動に至るのではないだろうか。

以上のことをまとめてみると、集団や他者に受け入れられることや自己肯定感や自己有用感、精神的な安定が参加者や利用者を主体的に動かす要因として考えられると私は思う。もしこれが仮説ではなく事実であるとするならば、今回のコミュニティカフェは、私たちの調査のそもそものねらいである「居場所づくり」という目的が達成されていると言える。「居場所」とはとても曖昧な言葉である。物理的な居場所と心理的な居場所のとらえ方があって定義づけるのは難しいけれど、自分の存在感を感じられ安心して身を置けるというような心理的な居場所として定義するならば、参加者や利用者の主体性を動かすためには心理的な居場所の存在が大きく影響しているということが考えられる。また、心理的な居場所がその機能を発揮したときに参加者や利用者の主体性が動き出すのではないだろうか。

(4)居場所をつくる団体や個人に対する支援の必要性

近年、地域の中に気軽に立ち寄れる居場所がほしい、住民同士互いに助け合える関係をつくりたい、もっとたくさんの人と出会いたい、などの気持ちを抱いている住民が増えてきている。地域の中に誰でも立ち寄ることのできる居場所をつくり、そこでの住民同士の主体的な関わりが、多世代間の交流の場となり、一人一人が自分の存在意義を見出す場となったり、地域住民同士の助け合いが生まれるなど、さまざまなきっかけの場となるのである。このように今日では、地域にとって居場所が必要であると考える人や団体が多くあり、全国にもたくさんの居場所ができている。居場所にはここに述べたこと以外にもさまざまな効果が期待されるが、地域に根差した居場所をつくることは、決して簡単なことではない。居場所をつくるための資金やプログラムなど、運営をうまくやっていくためにはさまざまなノウハウが必要となるのである。

たとえばNPOや生協などが居場所をつくろうとすれば、そこに関連する機関や団体、もしくは行政から活動を認められて支援を受けることもできるだろう。しかし個人が主体となり居場所をつくっていこうとすると、その考えに賛同し協力しようとしてくれる団体や行政などから支援を受けることは難しい部分がある。地域には居場所が必要だ、居場所をつくってさまざまなプログラムをやろうという想いがあっても、主体が個人となると第三者的な立場として支援をしようと言ってくれるところはほとんどないのが現実である。では、そのような人たちにも居場所がつくれるようにし、さまざまなノウハウを伝えていくにはどうすればよいのだろうか。

現在コミュニティカフェなどの居場所づくりに対する支援機関のひとつに、公益財団法人さわやか福祉財団による「ふれあい推進事業」という支援が行われている。この事業では、居場所を始めたい人や団体へ、居場所立ち上げの資金の提供や、行政とNPO・ボランティアの協働をテーマとしたセミナーの開催、自治体への個別実践アドバイスも行うなどし、地域に根ざした居場所づくりのノウハウを伝えている。このように居場所づくりに行政が関わることで信頼も高まり、地域の住民や団体もより居場所づくりに取り組みやすくなるのである。

このように第三者的な立場で居場所つくりに関わっていく支援は多くはないし、あっても広く知られ、活用されているわけではない。中にはそのような支援機関を知らずに四苦八苦している人や団体も存在するのではないかと思う。居場所づくりに対しての支援が広まっていくために、コミュニティカフェなどの居場所という概念が広く周知され、多くの人から必要とされている現状があれば、さまざまな団体や行政も居場所つくりのための支援策を推進するようになるのではないかと思う。地域に居場所をつくりたいと考えている個人や団体に対しての支援が広がっていくことにより、住民を主体とした住民のための居場所ができ、安心して暮らすことのできる街づくりにもなっていくのではないかと思う。