(1)概要
名称 フリースペース 越谷絵本館
所在地 埼玉県越谷市赤山町 (越谷駅西口3分)
開館時間 11:00~18:00 休館日 日曜・水曜・祝日
閑静な住宅街にある「こしがや絵本館」。注意しないと見過ごしてしまいそうな外観だが、外の掲示板にはイベントの案内などが貼ってある。玄関の扉を開け、靴を脱ぎ中へ入ると、たくさんの絵本や、地元の人によって作られた暖かな作品の数々、そして優しいスタッフが我々を迎えてくれる。
(2)さいたまコープなくなって…
十数年前までは、近くにあった埼玉コープが近所のコミュニティの場になっていた。しかし埼玉コープが移転してしまい、気軽に立ち寄れる場がなくなってしまった。机一つでもいいから誰もが立ち寄れる居場所が欲しいと考えた代表のAさんは、絵本館の前進となる居場所を作った。しかしながら、資金不足に見舞われ、志半ばの1年半で辞めざるを得なくなってしまう。居場所を作ることを諦めきれなかったAさんは、その後、今の場所を親戚から借り再出発を果たす。
現在は、Aさんを始めとする主婦の方々が絵本館の経営にあたっている。財政的に厳しい部分もあるが、力を合わせ、赤字と黒字を繰り返し、13年間絵本館を続けてきた。「元気でいられる限り、続けていきたい」とAさんはそう語った。
(3)絵本館のこだわり
・絵本館にあるたくさん絵本は、全てAさんが選んだこだわりのものである。数ある絵本の中から自分のお気に入りを見つけ、部屋にある中央の机に座って読むこともできる。
・絵本館には、洋服等のギャラリーがある。そこに飾られている作品は購入することができる。作り手と買い手を結ぶ機能を果たしている。
・地域の人の声に応える趣味の教室を開いている。場所を提供し、講師を呼び、押し花やパッチワーク、折り紙、絵手紙等を楽しんでいる。人気があり、定員が満杯の講座もある。
新しい講座は、やりたいという人が5人集まったら開講するようにしているそうだ。
・無料有料にこだわるのではなく、緩やかに開放し、来たい人がいつでも気軽に来ることができる空間を目指している。また、来てくれた人をがっかりさせないためにも、臨時休業は開業以来、一度もしていない。
・いつでも明るい挨拶を心がけ、集まった人たちを迎え入れている。多い時は1日に30人以上の利用があるという。絵本館で知り合った人のコミュニティの和が広がっていくことも喜びである。
(4)今後について
・現在、赤字と黒字を繰り返す状況だが、安定した経営ができるよう努力をしている。
・Aさんや一緒に活動している主婦の方の高齢化が進み、後見者を探さなくてはいけない状況になった時に、後を継いでくれる人がいるのかということを不安に感じている。
・絵本館に来ない近隣の住民の方に、絵本館の活動を知ってもらい、様々な人が出入りする環境を理解してもらうことが大切であるという。無理やり来てもらうのではなく、積極的に挨拶を交わしたりして、地域に溶け込んだ居場所にすることが目標である。
(5)感想
絵本館では暖かでゆったりとした時間が流れているような印象を持った。また代表のAさんの人柄も人々を呼び寄せているように感じた。
一言に居場所といっても、作ることも維持することもとても大変だと思った。居場所として続けていくためには、管理者の思いと、継続する力が必要不可欠だろう。また、このような場は、職員のみで育て上げるものではなく、利用する人の関わりや笑顔によって成長するということを学んだ。利用する方の笑顔を拝見できたことが何よりも嬉しかった。